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 セガが2013年春よりサービス開始予定のPC用ゲーム『カオス ヒーローズ オンライン』(基本プレイ無料)。本作は、韓国のNEOACT社が開発し、SESISOFT社がプロデュースする、“AOS(対戦型戦略ゲーム)”というジャンルのゲームだ。

 AOSは、RTS(リアルタイムストラテジー)のゲーム性や戦略性に、MMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)の育成要素、FPS(一人称視点シューティング)で求められる判断やテクニック、TCG(トレーディングカードゲーム)で楽しめる心理戦の要素など、人気ジャンルのおもしろい要素が詰め込まれたもの。“MOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ)”という名前で呼ばれることもあり、日本ではまだまだ知られていないものの、世界各国ではすでに大人気のジャンルで、『League of Legends』などのヒット作も生まれている。セガは、この『カオス ヒーローズ オンライン』をもって、「AOSを日本で流行らせる」と宣言している。

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▲本作では、プレイヤーは“神聖連合”と“不死軍勢”に分かれ、自分が操作する“ヒーロー”を選び、5対5で戦う。プレイヤーは、どちらの陣営で戦うか、遊ぶたびに自由に選択できる。
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▲敵陣地にあるタワーを破壊していき、最終的に敵の本拠地を壊滅させたチームが勝ちとなる(時間切れの場合は、獲得ポイントの多かったチームが勝利)。
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▲試合は、つねにすべてのヒーローがレベル1からスタートする。その試合の状況に合わせて、スキルを習得したり、アイテムを購入したりして、ヒーローを成長させることが必要になる。
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▲試合中にカメラ視点を変更できるのも、本作の特徴のひとつだ。

 ファミ通ドットコムでは、セガの遠藤峻亮氏、NEOACTのキム・ヒョンミン代表、ジョン・クッミン開発プロデューサー、日本版サービスコーディネーターを務めるSESISOFTのユン・ヘジョン氏に、『カオス ヒーローズ オンライン』の魅力や、日本での今後の展開を聞いた。

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左から、NEOACT ジョン・クッミン氏、セガ 遠藤峻亮氏、NEOACT キム・ヒョンミン氏、SESISOFT ユン・ヘジョン氏。

新たなジャンル“AOS”の魅力

――本作は、“AOS”という日本ではまだ馴染みのないジャンルのゲームですが、AOSの概要と魅力を教えてください。
ジョン AOSを、“RTSのようなもの”と捉えている方もいらっしゃいますが、RTSとはちょっと違います。RTSは、プレイヤーが司令官となって、味方兵士に指示を与え、敵の司令官を倒していくようなジャンルです。軍隊の長になるようなイメージですね。一方のAOSは、ヒーロー、ひとりの英雄の操作に集中してプレイするゲームです。『カオス ヒーローズ オンライン』は、5対5でプレイする対戦ゲームで、自分や相手がどのヒーローを選ぶかによって、味わえる楽しさが変わります。

――RTSもAOSも、“状況を見てキャラクターを動かす”という点は同じですが、RTSは味方のユニットたち、AOSは自分が選んだひとりのキャラクターを動かすという点が異なるのですね。
ジョン はい。また、AOSは、スキルを学んだり、アイテムを買ったりしたときの喜びや、友だちといっしょにプレイするおもしろさ、相手の戦術を読んで対応できたときの快感など、さまざまな魅力があります。

――すでに展開している『カオス ヒーローズ オンライン』韓国版は、どのくらいの数のプレイヤーが遊んでいるのですか?
ユン 韓国では2011年上半期にサービスを開始しまして、現在は70万人のユーザーさんが楽しんでいます。

――今後、日本を含めたほかの地域で、どのように展開していく予定ですか?
ユン すでにインドネシアで展開しているほか、2013年は、日本を始め、3月にはタイ、上半期には台湾と中国、ヨーロッパでそれぞれサービスを開始する予定です。

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――『カオス ヒーローズ オンライン』日本版には、日本のプレイヤー向けに調整されている部分はありますか?
遠藤 各ヒーローのボイスは、日本の声優さんに演じていただいて収録しました。また、ゲームのマイページのデザインは、もともとはシンプルな作りだったのですが、日本の皆さんが収集要素をより楽しめるよう、コレクションしたものがキレイに表示されるように調整を行いました。それから、力を入れて調整しているのは、AI戦ですね。

――コンピューターとの対戦モードですね。
遠藤 『カオス ヒーローズ オンライン』は対戦ゲームですが、いきなり他プレイヤーと対戦するのは抵抗がある……という方も多いので、AI戦を用意しています。AI戦では、自分が操作するヒーローだけでなく、対戦するヒーローも選ぶことが可能です。どのヒーローが敵に回ったら、どんな戦いかたをすればいいのか、自由に試していただけます。また、3段階の難易度(初級・中級・上級)を用意し、皆さんが自分のレベルに合わせてスキルアップできるような作りにしています。

――日本版だけに登場するヒーローはいますか?
遠藤 セガが運営するということで、セガのIPのキャラクターを登場させるつもりです。すでに制作に取りかかっているキャラクターもいますよ。「まさか、こんなキャラクターが出るなんて!」と、驚いていただけると思います。ヒーローが装備すると見た目や演出が変わる“アバターアイテム”も、セガならではのものをご用意します。

――それは楽しみですね!
遠藤 きっと日本の皆さんに喜んでいただけると思います。ご好評いただければ、日本以外の地域でも提供するかもしれません。

――本作は、基本プレイ無料とのことですが、プレイヤーはどのようなときに課金をするのでしょうか?
遠藤 有料のポイントを購入していただくことで、ゲーム内ではヒーローやアバターアイテムを購入できます。ですが、本作の開発における絶対的なルールとして、“有料アイテムの使用によって、強さに差が出てはいけない”という決まりがあるんです。ですので、ヒーローは有料のポイントでも買えますし、ゲームをプレイして“GP”というゲーム内ポイントを貯めることでも購入できます。アバターアイテムは、一部はGPで、一部は有料のポイントで購入できるようになっています。

――早く新しいヒーローを使いたい人は課金、そうでない人はじっくりプレイしてGPで開放、という手法がとれるのですね。
遠藤 はい。また、本作には、1日2ヒーローまで、自分で所持していないヒーローをお試しで使用できるというシステムがあります。このシステムを利用して、自分に向いているヒーローを探していただければと思います。

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――ヒーローは全部で何人いるのですか?
遠藤 日本版は、初めは20人のヒーローを用意する予定です。韓国版には80~90人のヒーローがいて、1ヵ月にふたりのペースで増え続けています。AOSのポイントのひとつに、ヒーローが増えることで、戦略も増えていくということが挙げられます。ユーザーさんは、つぎはどんなヒーローが来るのか、楽しみにされているんですよ。

――そんなに多くのヒーローがいると、ゲームのバランスを調整するのがたいへんそうですが……。
ジョン 韓国では、新ヒーローのテストをする際、プロ級のプレイヤーを招待して、2週間ほどプレイしてもらいます。また、彼らが見逃すポイントもあるので、中級プレイヤー、初級プレイヤーの方にもテストしてもらいます。

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神聖連合
アルリアのダンサー シルク
声:斉藤佑圭
神聖連合
拳法パンダ チャン
声:津田健次郎
不死軍勢
殺戮の救援者 レオニック
声:置鮎龍太郎
不死軍勢
双頭の毒蛇 バイパー
声:???

――プレイヤーたちと協力しながら、かなりバランス調整に気を配られているんですね。
ジョン はい。私たちは、各ヒーローの勝率が45~55パーセントになるよう、つねにバランス調整を行い、毎週パッチを配信しています。また、問題が発生した場合、すぐに対応できるような開発体制をとっています。
遠藤 以前、韓国に出張したときは、現地のプレイヤーにまったく歯が立ちませんでした(笑)。今度は、日本の強いプレイヤーを連れて出張したいと思っています。
ジョン 楽しみにしています。

――ところで、日本では“フロンティアテスト”が始まりますが、このテストで体験できる内容を教えていただけますか?
遠藤 フロンティアテストでは、神聖連合10人、不死軍勢10人、合計20人のヒーローが登場します。ノーマル対戦・ランキング戦のどちらかと、チュートリアル・AI戦のどちらかはプレイできるようにしたいと思っています。ヒーロー数は、韓国版に比べると少ないですが、ゲームの基本的な要素はすべて遊んでいただけます。

――正式サービスは、春を予定されているとのことですが。
遠藤 はい。2013年4月中のサービス開始を目途に、調整を進めています。

――先ほどお話されていたセガのIPキャラクターは、サービス開始と同時に実装されるのですか?
遠藤 サービス開始よりも、少し後になると思います。1回目か2回目の、大きなアップデートでお見せしたいですね。セガの、本作に対する姿勢を、皆様にアピールしたいです。

評価が二分されたことが決め手!?

――そもそも、セガが『カオス ヒーローズ オンライン』を日本で運営することになった経緯を教えていただけますか?
遠藤 セガには、さまざまなPCゲームのテストプレイを行う部署があるのですが、『カオス ヒーローズ オンライン』は、その部署の中で評価が二分されていたんです。テストプレイを行うのは、みんな熟練のプレイヤーですから、だいたい皆さん、同じゲームに対しては同じ評価をされるのに、本作は違った。熟練の人たちでも評価しきれなかったゲームって、どんなものなんだろう……そう思ってプレイしてみたら、おもしろくって。それから、AOSのジャンルについて調べていって、世界では流行しているのに、日本ではまったく知られていないことを知りました。このAOSが日本にやってきたら、FPSが日本に来たときのようなムーブメントが起こるかもしれない……そう思ったんです。

――AOSに可能性を感じたということですね。
遠藤 僕はこれまで、7年ほどオンラインゲームに携わってきましたが、オンラインのRPGは、よほどの大作でないと、日本で成功するのは難しいと感じていました。セガにはすでに『ファンタシースターオンライン2』がありますから、これからセガでやるなら、新ジャンルで攻めていきたい。そう思って、上司に「『カオス ヒーローズ オンライン』をやりましょう!」とプレゼンしたのですが、なかなかオーケーが出ず、4回ほどプレゼンをやり直して、ついにゴーサインが出たんです。それが、2012年11月ごろのことでした。

――4回もやり直したんですか! 遠藤さんの熱意には、頭が下がります。
遠藤 セガという会社には、“パイオニア”になる、新しいことに挑戦する、というイメージがあると思います。ですので、何としても、AOSにチャレンジしてみたかった。社内でも『カオス ヒーローズ オンライン』は注目されていますよ。日本でAOSをやるとどうなるのか、みんな気になっています。

――では、遠藤さんから「日本で運営したい」と聞いて、尹惠貞さんたちはどう感じられましたか?
ユン セガさんからお話をいただいたときは、うれしく思いました。AOSは日本では浸透していないので、最初は不安に思う部分もありましたが、日本のユーザーさんの傾向や、ローカライズの方法などについて、遠藤さんとお話しするうちに、「これなら、いけるのではないか?」と思うようになりました。

――日本のユーザーとゲーム市場について、どういうイメージを持たれていますか?
ジョン 日本は、ゲームやアニメ、マンガなどのエンターテインメントコンテンツの歴史が長いので、コンテンツに求める完成度の基準が高い方が多いと感じています。『カオス ヒーローズ オンライン』では、アバターアイテムやヒーローのクオリティーを作り込んできたのですが、セガさんからその点を高く評価していただけたんです。コンテンツをはかる基準が高い日本で、私たちのコンテンツが受け入れられるのであれば、ほかの地域でも展開していけるのではないか、考えています。
ユン セガさんといっしょに仕事をさせていただくと、学ぶことが多いです。私たちが気付いていなかった点、細かい点を指摘してくださいますが、それができるのは、長年のゲーム作りのノウハウがあるからだと思います。また、クオリティーを高めるために、有名な声優さんやイラストレーターさんを起用してくださるなど、さまざまな配慮をしてくださって、本当に感謝しています。遠藤さんのことは100パーセント信頼していますので、ぜひこれからも、いっしょにお仕事したいです。
遠藤 そう言っていただけて、よかったです(笑)。
ユン お世辞ではないですよ!(笑)

――(笑)。遠藤さんは、NEOACT、SESISOFTの皆さんといっしょに作業をしてみて、いかがですか?
遠藤 僕も長年オンラインゲームに携わっているので、開発していて、「この部分は、おそらく対応してもらえないだろうな」と感じるポイントがあるのですが、皆さんは、それをいとも簡単にやってくださるんです。開発技術力の高さと、熱意を感じますね。

――ユーザーにとっても、すぐに対応してもらえるのは魅力的ですよね。
遠藤 はい。何かトラブルがあったとしても、すぐに対策できる技術力があるというのは、大きな武器になると思います。ユーザーの皆さんに長時間ご迷惑をかけることはしたくないですから。
ジョン それでも、弊社の代表からは、「まだ対応が遅い!」と言われています。もっとスピーディーに対応できるよう、尽力していきます。

――ますます日本での運営に期待が高まりますが、本作の大会やイベントを、日本で開催する予定はありますか?
遠藤 「AOSをやりたい」といったときから、オフラインイベントで盛り上げていきたいと思っていました。もちろん、まだAOS自体が知られていないので、いきなり何百人もの方にいらしていただけるとは考えていません。FPSが最初に日本に入ってきたときも、イベントには5人、10人しか来なかったと聞いています。それでもあきらめず、イベントや企画をくり返してできあがったのが、いまのFPS市場です。ですので、たとえ最初は人が集まらなくても、がんばって市場を育てて、大きい会場で大会ができるようにしたいと思います。また、ユーザーさん自身でイベントを企画して楽しめるタイプのゲームだと思いますので、その際は、「セガのスタッフを呼んでくれたら、会場に行くよ!」という姿勢を示したいと思います。

――では、動画の配信などは予定されていますか?
遠藤 ニコニコ生放送での番組配信はすでに検討していて、どのタイミングで行うかを考えています。

――発表を楽しみにしています。それでは、最後に日本のゲームユーザーにメッセージをお願いします。
キム オンラインゲームは、“サービス”が重要だと思っています。日本の皆様からの提案・意見は、随時取り入れたいと思っていますので、よろしくお願いします。
ジョン 日本で初めてAOSを披露できることを、光栄に思っています。最初は「難しい」と思うかもしれませんが、RPGやFPSなど、いろいろなジャンルのおもしろさが混ざっているので、多くの方に楽しんでいただけると思います。ぜひ体験してください。よろしくお願いします。
ユン 『カオス ヒーローズ オンライン』は、いままでのゲームとはぜんぜん違うおもしろさがあるオンラインゲームです。かわいくておもしろいヒーローがたくさん登場し、自分の好みによって選べます。たくさんのモードやシステムが入っておりますので、皆さん、ぜひプレイしてください。よろしくお願いします。
遠藤 日本のオンラインゲーム市場で、AOSを流行らせていきたいと思います。そのために、日本のユーザーさんの要望をお聞きしたいので、フロンティアテストに参加して、どんどん意見を送ってください。きちんとスタッフに伝えて、よりおもしろいゲームにしていきたいと思います。「AOSを流行らせてやるぞ!」という気持ちで楽しんでもらえるとうれしいです。