親になるゲーマーも増えてきた、そして……。
ボストンで開催中のゲーマー向けイベント“PAX EAST 2013”。このイベントではさまざまなパネルディスカッションが行われる。
特定のゲームやメーカー(例えばBIOWAREやGearboxのパネルディスカッションは最大の人気を誇る)に関連したものが多いのだが、抽象的なテーマを採用したものも結構あって、これが中々面白いのだ。その中から、ゲームキャラクターとしての“親”について考えるパネルディスカッションの模様をお届けする。
登壇したのは、3人のゲームジャーナリストと、BIOWAREのクリエイティブディレクターであるMike Laidlaw氏。もちろんそれぞれ子供がいる。
ビデオゲームにおいて“親”がキャラクターとして登場し、重要な役割を果たすようになったのはなぜなのか? 単純にゲームが増えたためにニッチなテーマも扱われるようになったとも考えられるが、『ヘビーレイン』では、主人公が父親であることが非常に大きな役割を占める。
『ヘビーレイン』では子供を失うという体験も描かれるが、親になる前となった後では、ショックのインパクトも変わってくるという。記者は子供がいないためか、ショッピングモールで子供を探しまわるシーンなどは「うろたえすぎじゃないか?」と思ってしまったが、登壇者のひとりBrian Crecente氏が本当に焦って探したというと、場内のあちらこちらから同意する声があがっていたので、これは本当に大きな違いなのだろう……。
ゲームに親が出てくるようになったのは、ゲーマーが親になり始めたこととも無関係ではないといった指摘も行われていた。
一方で、苦い親子関係を描いたゲームとして例示されたのが『Papo & Yo』だ。アル中の父親に虐待されている子供が空想の世界で(父の中の)“モンスター”を治そうとする話。こういった親子の間の複雑な感情を描いたタイトルはより大きな支持を得ることができるだろうか?
ここで意外にも名前が出たのが、『ギアーズ オブ ウォー』。登壇者のひとりBen Kuchera氏いわく、実は本作に関わったメインクリエイター3人は、いずれも若いころに父親を亡くしているのだという。そして、本作のストーリーは、彼らが父を早くに亡くしたことに対処するための隠れた心の動きが働いていると推察していた。
同作における主人公マーカスの父親は、なにか重要な任務を帯びているらしい、直接出てこない不在の存在として描かれるのだが、これがつまり、父が今ここにいないのは、自分を置き去りにしたとかいったことではなく、何か重要な任務をどこかでやっているんだと納得させてきたクリエイター陣の過去の感情が左右しているのではないかというのだ。
これが正しいかどうかは潜在意識の作用なども考慮すると実際のところ誰にもわからないのだが、記者はこういった示唆に富んだ分析が行われることに非常に感銘を受けた。難しい親子関係(虐待)をそれとなく描いたもうひとつのタイトルとして挙がっていた『Contrast』というアクションゲームも、そういう分析をされてからトレイラーを見ると、実に印象が違って見えてくる。記者はリリースされ次第、遊んでみるつもりだ。