命を落としてでも倒そう、そういった気持ちにさせるゲーム

 ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンは、2013年3月7日(木)に発売されたプレイステーション Vita用ソフト『SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)』の試遊体験イベント“『ソウル・サクリファイス』共闘サミット”を、2013年3月9日(土)、秋葉原ベルサールにて開催した。

 本イベントでは、試遊のほか、非売品のスペシャルグッズが当たる抽選会や、本作のコンセプターの稲船敬二氏ほか、SCEJ側、開発を担当したマーベラスAQL側からも制作陣が駆けつけ、トークセッションも開催された。

“『ソウル・サクリファイス』共闘サミット”クリエイタートークセッション、女性ユーザーの存在に稲船氏も手応え _01
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▲魔物がコラージュされた雰囲気たっぷりの試遊台。試遊ではケルベロスやハーピーに挑戦できた。
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▲試遊するとオリジナルグッズが必ず当たる抽選会も。

 本稿では、トークセッションの模様にフォーカスしてお届けしよう。

 登壇したのは、下記の8名。

【トークセッション参加クリエイター】
稲船敬二氏(コンセプター。comcept)
伊藤亜紀子氏(プロデューサー。comcept)
下川輝宏氏(ディレクター。株式会社comcept)
岡村光氏氏(デベロップメントディレクター。マーベラスAQL)
鈴木一徹氏氏(デベロップメントディレクター。マーベラスAQL)
本村健太郎氏(プロデューサー。ソニー・コンピュータエンタテインメント)
鳥山晃之氏(アソシエイトプロデューサー。ソニー・コンピュータエンタテインメント)
菅野有造氏(クオリティマネージャー。ソニー・コンピュータエンタテインメント)

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▲本作の制作陣がズラリ。稲船氏によると、登壇したメンバーの多くが発売後にホッとしたのか体調を崩してしまったのだとか。
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MCはSCEJの宣伝担当の北尾氏と椿姫彩菜さん。
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稲船敬二氏(コンセプター。株式会社comcept)
下川輝宏氏(ディレクター。株式会社comcept)
伊藤亜紀子氏(プロデューサー。株式会社comcept)
ハーピーのモデルなのだとか。
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鈴木一徹氏(デベロップメントディレクター。株式会社マーベラスAQL)
岡村光氏(デベロップメントディレクター。株式会社マーベラスAQL)
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本村健太郎氏(プロデューサー。株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント)
鳥山晃之氏(アソシエイトプロデューサー。株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント)
菅野有造氏(クオリティマネージャー。ソニー・コンピュータエンタテインメント)

「オレはいいからお前は行け!」といった究極のシチュエーションが楽しめる共闘

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 まず、『SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)』で目指したことを問われた稲船敬二氏は、楽しいけれど強大な敵に挑む緊張感、仲間を生贄にできるシステムなど、“命懸けで戦うなかでの駆け引き”が楽しめるマルチプレイを目指したと語り、開発陣も命懸けで本作に取り組んだことをアピール。また、救済や代償といったゲームでは普遍的な世界観、要素を盛り込んで“王道のゲーム”をテーマとした作品にしつつ、とは言え、“ふつうではダメ”だという、ある意味矛盾した作品をテーマにしたという。ディレクターの下川輝宏氏もその矛盾をどう解決するかに四苦八苦したと振り返る。その解決策としては音楽のリミックスが参考になったという。「原曲の象徴的なフレーズで再構成する音楽のリミックスのように、普遍的な世界観を再構成していくと、王道だけれども新しい世界観を生み出すことができるのではないかと考えました」(下川)

 また、本作のポイントとして鈴木一徹氏があげたのは、何をするにしても代償がある、というところ。「これはプレイヤーにとっては面倒くさい要素かもしれませんが、“生易しいゲームじゃない”ことを体感できるところが本作の特徴だと思います」(鈴木)
 この“生易しいゲームじゃない”点として、瀕死の仲間を“生贄”にするか“救済”するかの選択を強いられる局面があるが、これについて稲船氏は「僕は、映画やアニメなどで印象的だったシチュエーションをゲームでどう表現できるか、を考えるんです。“オレのことはいいから、お前は先に行け!”なんてシチュエーションはよくありますよね? それをイベントなどで表現するゲームは多いですが、ゲームで表現できる作品はないと思うんです。プレイヤーがそういったシチュエーションを体感できるゲームにしたかった」と本作の魅力を述べた。

手応えを感じた東京ゲームショウ 2012

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 マルチプレイに関してもバランス調整など苦労が絶えなかったという本作。菅野有造氏は、テストプレイをくり返し行い、プレイヤーからの多数のフィードバックを得たというが、そのテストプレイをくり返すごとにさまざまな意見が出てくるため、このゲームは本当におもしろいのか、と不安もつねに感じていたという。だが、プレイアブルを初出展した東京ゲームショウ2012で好評だったことが自信につながったという。
 これに関しては稲船氏も東京ゲームショウ2012がターニングポイントだったと語り、「新規のゲームはファンがいないので、受け入れられるかいつも不安なんです。東京ゲームショウ2012で開発陣のモチベーションが一気に高まりました。が……発売延期があり(笑)。ただ、開発を延長できたおかげで体験版を作ることができ、さらにそこからのフィードバックを製品に反映できたことで、ベストなものが出せたと思っています」。
 また、敵の強さのバランスに関しては、プレイヤーの中にはアクションが得意ではない人もいることを考慮するか、初見では倒せないシビアなものにするかなど意見が別れたようだが、最終的にはそれなりの強さに落ち着いたようだ。

3社間のプロジェクトについて

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 本作は、制作・プロデュースをソニー・コンピュータエンタテインメント JAPAN Studio、企画・開発をcomcept、開発をマーベラスAQLの3社が担当するという形で進められたプロジェクト。3社で制作を進めるというプロジェクトについてプロデューサー陣にも話が振られた。comceptプロデューサーの伊藤亜紀子氏は、開発が行き詰まる度に稲船氏から明確な方向性が打ち出されたことで、プロジェクトが迷走することなく進められたと振り返った。マーベラスAQLの岡村光氏はデベロップメントディレクターという肩書きだが、プロデューサー的な役割を担い、「下川さん、鈴木が別の方向性に走ることがあったので、そのふたりを同じ方向に向かせるよう、いろいろと苦労しました(笑)」(岡村)。また岡村氏は、イベント関係のディレクションも担当。本の姿をした生きた魔術書“リブロム”の表現などもいろいろとアイデアを提供したとのこと。また、ソニー・コンピュータエンタテインメントの本村健太郎氏は、まずSCE側の役割について説明。SCE側ではBGMやSEを制作したり、さまざまな関係各所とのつなぎ役を果たしたという。SCEのアソシエイトプロデューサー鳥山晃之氏は、BGMのコンポーザーの提案などを行い(一度、開発側からNGが出されるなど紆余曲折ありながらも)、最終的にはスカイウォーカーサウンド(映像制作会社、ルーカスフィルムの一部門。ハリウッド映画など多くの音響制作に携わる)でフルオーケストラの収録するところまで話をまとめるに至った。鳥山氏は、収録に実際に立ち会った際、当初の予定よりオーケストラの数が多かったことなどの制作秘話も披露。そうして完成した音楽に関しては、稲船氏も「ゲーム画面に音楽が乗ったときは鳥肌が立ちました。そんなことは滅多にないんです。本当にいい音楽」と太鼓判を押した。

第1弾アップデート情報も

 既報のとおり(→こちら)、4月上旬には第1弾アップデートが実施されることもアナウンスされ、同アップデートにより、新たな魔物デュラハンとベヒモス、新マップゴリアテなどが追加されることが発表された。トークセッション後半では、実際に開発陣4人がデュラハンと戦うマルチプレイがお披露目された。デュラハンは強敵で、まずはふたりのプロデューサー陣が撃沈。残るディレクターふたりが、プロデューサーを生贄にするという、下克上的な展開で盛り上がりを見せたが、残念ながらデュラハンを倒すにはいたらず。「デュラハンの恐怖、絶望感を味わってください。強大な敵が出てきたときこそ、4人で作戦を立てて、なんとか倒そう、命を落としてでも倒そう、そういった気持ちにさせる、つまり“共闘”を体現できるダウンロードコンテンツになっています。配信日までレベルを上げるなど準備をしておいてください」(稲船)

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 開発秘話やアップデート情報などで盛り上がったトークセッション。会場には女性も多く、「“男性向けのゲーム”と思っている人が多いのでは、と心配していたんですが、女性の方も多数来場してくださっていて、とてもうれしいです。女性にも興味を持っていただけている、ということは、多くの人に『SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)』を理解していただけることの証明だと思っていますので、本当にうれしいです」(稲船)。そして最後に稲船氏は、「このゲームはある意味で完成はしていません。このゲームを“おもしろい”と思った人が、みんなに広めてくれることで初めて完成するゲームだと思っています。なぜなら、みんなと“共闘”することが楽しいゲームだからです。『SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)』がおもしろい、と感じた人はぜひ、まわりの人に広めてください」と挨拶し、トークセッションを締めくくった。

 「共闘サミット」は、今後、2013年3月24日(日)、11:00~19:00 新宿ステーションスクエアでも開催される。気になる人はぜひ足を運んでほしい。

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▲最後は「魔法で狩ろうぜ!」のかげ声で締め。
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▲ユーザーとクリエイターいっしょにアップデートとして配信される魔物に挑戦する共闘マルチプレイセッション。参加者には、開発陣のサインが入ったポスターが贈られた。