デフォルメされたF1が楽しめる
モータースポーツの花形といえば、国際自動車連盟が主催するレースの最高峰“FORMULA ONE”こと“F1(エフワン)”。これまでにもF1をモチーフにしたレースゲームが多数リリースされてきたが、『F1 レース スターズ』は「えっ、こんなのアリ!?」と誰もが驚くスーパーデフォルメされたファンタジー色あふれるカジュアル路線。
デフォルメされているとはいえ、各マシンの外観は“F1マシン”そのもの。登場する全14チーム中、ゲームオリジナル以外の2チームのほかはすべて2012年シーズンの“F1公式”12チームがズラリ勢ぞろい。さらにはフェルナンド・アロンソ、ルイス・ハミルトン、セバスチャン・ベッテルなど各ドライバーが実名で登場! マシン同様にデフォルメされた姿が、これまたとてもカワイイ。シミュレーター路線が多かったジャンルだけに、まさに“ありそうでなかった”F1レースゲームなのだ!
操作は超シンプル ~スピードメーター? そんなのなくても問題ない!~
カジュアル路線らしく、本作は操作系も超シンプル。方向キーまたは左スティックでハンドル操作、各ボタンでアクセル/ブレーキ(長押しでリバース)/アイテム使用となっている。視点は斜め後方固定で、ボタンを押している間だけ後方確認が可能だ。
驚くべきは、なんと“スピードメーター”がないこと。画面内のインフォメーションは、左上に順位、上に次のコーナーへの距離を示すコーナーインジケータ、右上にラップカウンターとラップタイムを表示。右側には現在位置を示すレース進行状況インジケータがあり、左下に現在所持しているパワーアップアイテムと、これまた実にシンプル。
最初はスピードメーターさえないことに戸惑ったが、プレイしてすぐに納得した。本作は後述する“パワーアップアイテム”でコロコロ順位が変わるため、スピードメーターがあったところで何の意味もないのだ。パワーアップアイテムによる妨害が頻発するため、現実よろしく少しずつ加速していてはゲーム展開が停滞してしまう、というわけ。すぐトップスピードに戻れるので、常にハイテンポかつ爽快なゲーム展開が続く。
「じゃあ、コーナーとかレースゲーム的な要素も全然意味ないの? それはそれでどうよ?」と疑問を抱かれるかもしれないが、数々のレースゲームを手がけてきたコードマスターズだけに、そこは当然きちんと作られている。本作の各レースは、1000cc、2000cc、3000ccとクラス分けされており、当然ランクが上がるほどトップスピードも高くなる。1000ccクラスならアクセルベタで余裕なコーナーも2000cc、3000ccと上がるにつれて難しくなっていく。
難しいといっても、画面上のコーナーインジケータを見ながら「これくらいのカーブはブレーキちょい押し」、「ここはキツイからやや長めだな」といった“感覚”によるブレーキで十分間に合うのが本作のいいところ。「すぐトップスピードに戻れるなら、きれいにコーナーをクリアする必要あるの?」と思われそうだが、ギリギリの競り合いをしているときにコーナーでガンガンぶつかっていたら、アッという間にライバルたちの先行を許してしまう。カジュアルではあるが、こうした部分はきちんとプレイヤーのテクニックが反映される。当然、コースアウトでもガクンとスピードが落ちるので、カジュアルだからといって雑な走りは禁物だ。
パワーアップアイテムと特殊能力 ~どんな手段を使ってもライバルを蹴落とせ!~
本作では、コース上にある星型マーカーと接触すると“パワーアップアイテム”が獲得できる。パワーアップの内容はブーストなどのレースゲームらしいものもあれば、3色それぞれの性能が異なる泡をぶつけてダイレクトに妨害したり、紙吹雪で視界を遮ったり、セーフティカーで全体のペースをダウンさせるなど全14種類が存在。星型アイテムはコース中のあちこちに配置されており、ライバルたちも頻繁に使ってくるので、レース展開は過激かつ凄まじいものになる。
本作のもうひとつのポイントは、こういったアイテムの効果がチームによって変化する場合があること。各チームには特殊能力が設定されており、たとえば、レッドブル・レーシングはスリップストリーム状態が一定時間続くとブーストが使えるようになる“スリップストリームブ―スト”、ボーダフォン・マクラーレン・メルセデスはアイテムボタン長押しでパワーアップアイテムの切り替え、スクーデリア・フェラーリは追跡バブルを後方に発射できるなど、それぞれ独自の効果となっている。
ちなみにゲームオリジナルチームの特殊能力は以下のとおり。
・Satsu-Aceler[ピンク]……他チームの特殊能力をレースごとにひとつ使える“ランダムボーナス”
・TecNova-Star[パープル]……オフロードエリアを高速で走れる“オフロード”
オフロードは役立つ場所こそ限定されるものの、うまく使えばレースが有利に展開する面白い特殊能力だ。
コースの特徴をいかしたレース展開も重要 ~慣れてきたらKERSコーナーに注目~
ゲームに登場するサーキットは、ベルギー、ドイツ、イタリア、ブラジル、アブダビ、モナコ、シンガポール、オーストラリア、アメリカ、イギリス、日本といった11ヵ国。それぞれのお国柄をイメージした(?)ファンタジックなデザインや仕掛けがふんだんに盛り込まれている。起伏に富んだコースレイアウトもさることながら、背景グラフィックの美しさや楽しさはカジュアル路線のレースゲームの中でも屈指の仕上がり。レース中は忙しくてなかなか難しいかもしれないが、気になる人はぜひ注目していただきたい。
さて……すでに触れているように、ライバルとの差をつけるにはパワーアップアイテムが一番手っ取り早いが、コース上にある仕掛けも地味に重要だ。「これにぶつかったらダメだよ~」と言わんばかりに配置された妨害オブジェクトを避けることはもちろん、鍵アイテムを拾ったプレイヤーのみ使えるショートカットや、コース上に数ヵ所登場する“KERSコーナー”をどれだけ上手に使えるかが要所で効いてくる。
コース上が青色と星型マークでペイントされたKERSコーナーでは、一瞬アクセルを離して再び押し込む操作で、マシンの背後にあるKERSブーストインジケータが蓄積。最大3回までチャージでき、そのぶんKERSコーナーを抜けた瞬間に爆発的なブーストが得られる。ブーストは短時間だが、KERSコーナーは最低2ヵ所、多い国では8ヵ所もあるため、これを確実に使えるかどうかはレース展開を大きく左右する。RがきついKERSコーナーもブレーキング併用でMAXブーストが得られるので、慣れてきたら少しずつ練習するといいだろう。
シングル、仲間同士、オンライン ~時と場所を選ばず誰でもすぐに楽しめる!~
ゲームモードは好きなサーキットやイベントが選べる「クイック・プレイ」、最大12人でオンラインプレイが可能な「オンライン・プレイ」、ワールドツアーに参戦しトロフィーなどをアンロックしていく「キャリア」、ベストタイムに挑戦する「タイムトライアル」があり、また、マイバナーのカスタマイズやコンテンツ購入、成績などが確認できる「マイページ」も同一画面に用意されている。
ひとりのときはクイック・プレイやキャリア、身近に友だちがいるときは画面分割による対戦、より多人数でレースを楽しみたいときはオンライン・プレイと、シチュエーションに応じて手軽に楽しめるのがうれしい。冒頭で触れたとおり、F1を題材にしたレースゲームの多くは“リアル路線”が多く、プレイ前に「さぁ、やるぞ!」と気合を入れる必要があった。ゆえに「ちょっと遊びたいけど……」といった状況を経験されてきた人も少なくないだろう。
その点、本作は肩肘はらず、本当にカジュアルに遊べる。ライセンスを得ていない“なんちゃってF1”ではなく、公式チームとドライバーが登場するのもポイントだ。なお、ドライバー選択時に「オハヨゴザマース!」など明らかに本人と異なる声色とイントネーションを発する小林可夢偉選手など、ボイスに関してはご愛嬌といったところだが、そこまでこだわる人もほとんどいないと思うので……。
話がちょっとそれてしまったが、兎にも角にも本作は、じつに気持ちよく爽快。なおかつダイナミックなレース展開が味わえる。従来のシミュレーター的な作品もいいが、こうしたカジュアルな作品も新鮮だ。細部まで丁寧なグラフィックはもちろん、操作性もすこぶるよく、レースゲーム初心者からコアな層まで幅広く楽しんでもらえるはずだ。
■筆者紹介 豊臣和孝
フリーライター。ここ10年ほどはWebゲーム媒体を中心に執筆中。本作はパワーアップアイテムによる逆転劇が熱く、友だち同士でワイワイ遊ぶにはもってこいだと思います!
F1 レース スターズ
メーカー | コードマスターズ |
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対応機種 | X360Xbox 360 / PS3プレイステーション3 |
発売日 | 2013年3月7日発売 |
価格 | 7140円[税込] |
ジャンル | レース / F1 |