エレクトロニック・アーツより本日(2013年3月7日)発売されたプレイステーション 3、Xbox 360、PC用ソフト『クライシス 3』のプレイインプレッションをお届け。
ナノスーツの力を借りて、孤独な戦いへ
唐突な書き出しだが、『クライシス』というタイトルを目にしたときに某ライダーの「クライシスの仕業か!」というセリフを真っ先に思い浮かべた人はいませんか?(おもに30代)。だが、ここで言う『クライシス』とは当然、悪の結社ではなく、驚異的なグラフィックで知られるFPSシリーズのこと。一応、念のため……。
とはいえ『クライシス』シリーズには、変身ヒーローものと無関係とは言い切れないノリがある。主人公は“ナノスーツ”と呼ばれる強化スーツを着用し、人間を越えるパワーを発揮して戦う兵士なのだ。
「ナノビジョン!」「クローク発動!」「マキシマムアーマー!」などのパワー発動時の電子音声を聞きつつ、敵をなぎ倒していく感覚は、僕らにとっても馴染み深いはず。
ちなみにこのナノスーツ、人間にとって決して安全な代物ではない。そのメカニズムは外宇宙から来た侵略者“セフ”の技術をベースにしており、スーツは着用した者と分子レベルで結合、そのDNAをどんどん上書きしていく。人間でも機械でもセフでもない存在に変わりつつある主人公。地球や人類の運命だけでなく、主人公の人間性もまた危機(クライシス)を迎えているというわけだ。
一般的なFPSでは味わえないパワードスーツを駆使したプレイ感や『クライシス』シリーズの特長である映像美。そして、前作までとはどのような違いがあるのか、といったテーマを中心に『クライシス 3』のキャンペーンモード(シングルプレイ)を遊んだ感想をお伝えしたい。
天候を感じさせるエフェクトが印象的
実際にゲームをプレイすると、やはりというか、まずグラフィックに驚かされる。前作『2』の崩壊していくニューヨークのイメージも強烈だったが(ニュースや映画などでよく見るあの街並みが破壊されていく!)、今回の鬱蒼とした緑に覆われた廃墟も「終わっている感じ」が凄まじい。
前作『クライシス 2』は近年のFPSの中でも飛び抜けたグラフィックを実現していた。さすがにそこから飛躍的な進化を遂げているわけではないが、『クライシス 3』においても建物や植物の細部にまでこだわった精細な描写は健在。また、舞台が大幅に変わったぶん、「何に力を入れて描くか」の重点を変えた感じがある。降りしきる雨、立ちのぼる霧、大地を覆う草木が風に吹かれる動き、太陽光を遮りなら動く雲の影、日陰にも届く乱反射した光……。天候のリアリティにこだわった表現がとくに印象深かった。また前作と比べて生身の人間が登場する場面が増えており、その表情や演技のキャプチャー、カメラワークなどは明らかに進歩している。
さらにSFらしいメタリックな質感や高エネルギー体の発光表現なども美しく、「絵になるシーン」に心を奪われる瞬間が何度もあった。
ナノスーツを自分の肉体同様に使いこなせ
しかし!
本作はグラフィックだけがウリのゲームではない。プレイヤーの行動に応じて、ゲーム展開がダイナミックに変化する点も大きな魅力である。そして、それを可能にしてくれるのがスーツのさまざまな能力だ。
たとえば多数の敵が待ち構えるゾーンを突破するために、どんな方法を取ればいいのか。敵を全滅させて悠々と進みたいなら、スーツの力を最大限に活かして戦えばいい。こちらの姿はクロークで隠すことができるため、孤立した敵を背後から襲うことは容易だ。敵が集まってきたら姿を隠してその場から退避し、物陰でスーツのエネルギーの回復を待つべし。こちらを見失った敵は最後に姿を確認した場所や、敵の死体がある付近から捜索を始めるので、あえて姿を見せて敵を誘導し、集まったところを爆弾で一気に吹き飛ばすといった戦い方もできる。
そういった小細工が嫌いならアーマーを発動して、敵の弾丸を弾きながら戦ってもオーケー。神出鬼没の『ランボー』派も、アーマーで強引に戦う『コマンドー』派も(または『ターミネーター』派も可)、思う存分戦闘を楽しめるわけだ。ただし、こちらが正々堂々とした戦いを選んだ場合、敵も増援部隊を呼ぶので戦闘はより激化する。スーツの能力は無限ではないので油断は禁物だ。
「戦闘はできるだけ回避するべし」がモットーという人もご安心を。フィールドをよく観察すれば、点在する地下道や排水管、建物の高い部分、建物のあいだに張られたワイヤー、水中といった敵の現れないルートを見つけることもできる。また、それと意識していなくても、予想もしていなかった場所に抜け道を発見して驚かされることもしばしば。
敵にマーカーを付けることで、敵の位置や向きを把握しやすくすることもできる。こうすれば相手の視界を巧みにかわしながら先に進むことも容易になる。
敵が重点的に警戒している場所には機銃や地雷などが設置されていることが多いが、これをハッキングし、逆に敵を攻撃させるのも有効な戦法のひとつになっている。
さらに、ナノスーツ能力は強化することも可能だ。「アーマーでもっと弾を防ぎたい」「クロークで姿を消せる時間を伸ばしたい」と感じたら、アップグレードキットを入手して能力を強化(アンロック)しよう。ただし、強化した能力はすべてが有効になるわけではなく、スロットに最大4つまでセットできる仕組みになっている。このセットは3種類保存しておけるので、「強引に突き進むセット」「隠密・暗殺セット」といったようにシチュエーションに合わせたセットを用意して、すみやかに使い分けることもできる。
いずれはスーツの外側も自在にコントロールできるように
緑に侵食された都市での作戦行動を、まるで自分の体験のように楽しめる本作のキャンペーンモード。スーツ能力の扱いに慣れるまでは、敵に囲まれて死ぬことが多いかもしれないが、一度慣れてしまえば敵の攻撃に反応してアーマーを発動させたり、姿を消して追跡を振り切ったりと、ふだん遊んでいるFPSとは趣の異なる楽しさを味わえるだろう。大げさに思えるかもしれないが、スーツによる身体機能の拡張によって、最終的には戦場全体が自分の体の延長だと感じられてくる。
もう少しわかりやすく表現するなら、自分がアクション映画の主演男優とアクションシーンの演出を兼任しているようなプレイ感とでもいうべきだろうか。単に生き延びることを目的にしてもいいが、自分がカッコいいと思えるスタイルや戦闘の流れを作ることを意識するとより楽しめるはずだ。
最後に余談だが、『3』のエンディングはかなり衝撃的というか、果てしなく男らしい内容なので、ぜひプレイして自分の目で確かめてほしい!!
■筆者紹介 高橋祐介
ゲーム、デジモノ界隈に出没するフリーライター。『クライシス 3』では子供のころに観た映画『ランボー』や『プレデター』のノリで、神出鬼没な狩りを楽しんでいる。