女性社員が職場でいつまでも輝けるために……
女性の社会進出が当たり前のようになった昨今。それでも女性が企業で働き続けることの敷居はけっして低くはないようで、記者のいとこなども、顔を合わせるごとに「それはもう、たいへんよ!」などとボヤいている。たいへんなことの筆頭は、やはり出産と育児だろう。妊娠を機に女性が会社を辞めてしまうというのは、よく聞く話だ。さらに、日本の企業はそのへんの福祉に対する取り組みが遅れている……というのも、たまに漏れ伝え聞いたりすることではある。そんなときは、「女性の働きやすい環境作りは、まだまだなのかもなあ……」と、漠然と思ってみたり(正直、漠然と思うだけで、何ら具体的な行動が伴わないところが申し訳ないところではあるが……)。
そんな折り、ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)から興味深いリリースが飛び込んできた。DeNAでは、女性社員が活き活きと活躍し続けるための支援プログラムとして“DeNA Women’s Council”を発足、その活動の一環として“育休復職社員向けワークショップ”を開催するというのだ。“DeNA Women’s Council”自体は、女性社員が仕事と家庭を両立するためのサポート活動を目的として、昨年11月に発足されたもの。実際のところ、DeNAの女性社員の数は5年前と比べて2.5倍にもなっており、社員の平均年令は男女ともに31.8歳とのこと。それだけ結婚・出産を迎える社員も数も増えており、「女性がキャリア形成について悩んでいるので何とかしたい」との想いが社内でもあったというのだ。
そこで、「女性社員がいつまでも輝ける職場を目指して」をテーマに掲げて、“DeNA Women’s Council”が発足。産休・育休復職を迎える社員に対する経験者によるワークショップの実施や働きかたのアドバイス、女性社員のキャリア形成サポートなどを中心に仕事と家庭を両立するためのサポート活動を行なっていくことにしたのだという。今回行われた“育休復職社員向けワークショップ”は、“DeNA Women’s Council”発足後、初の大きな取り組みとなり、今年復職予定の15名の女性社員を対象としたもの。具体的には、すでに育休から復職をした4名の女性社員をパネリストに迎えてのディスカッションや復職予定者による懇親会などが行われた。
“復職にあたっての準備・心構え”と題されたパネルディスカッションでは、4名の女性社員が“プライベート編”と“仕事編”に分けて育児と仕事を両立させるための方法をアドバイス。子供の病気対策や、職場の人間関係の築きかたなどを、自身の経験を交えつつアドバイスしていった。「会社の上司や同僚との人間関係は、とにかく自分で築くしかない」や「いざというときのために情報共有を徹底する」、「前の自分に戻れるとは思わないで、環境の変化を受け入れること」など、ときにきびしい指摘もあったりするが、経験者のナマの言葉だけに、まさに実践的。実際のところ、しばらく仕事を休んで復職するのは、女性にとって大いに不安なハズで、こうしたアドバイスは、復職を予定している方にとっては、大いに励まされるところがあったのでは。
ちなみに、記者にとって耳が痛かったのは、夫の協力。そう、この記事を読んでくださった多くの男性ならお気づきの通り、女性が仕事と育児を両立させようと思ったら夫の理解と協力はおそらく不可欠! とはいえ、参加したパネリストたちにとっても、夫の理解を得るのはなかなかたいへんだったようで、「旦那に協力してもらうには、どう説明すればいいですか?」との復職予定者の質問には、「単純にキレました(笑)」とコメントする方も。別のパネリストの方は、「“洗濯をしてほしい”、“子どもを保育園まで送ってほしい”と明確に言えばちゃんと協力してくれますが、みずから率先して何かをしてくれるわけでもない。“あなたの家事には主体性がない!”と言いました」とのことで、まったくもって肩身が狭い。まあ、男性の端くれとしてフォローさせていただくと、もちろんまったく育児に協力する気がないわけではないが、なかなか意識が及ばぬこともあり……というわけで、男性陣はより妻への配慮をしつつ、夫婦間のコミュニケーションを密にする、というのは必須のようです。
さて、せっかくの機会なので、“育休復職社員向けワークショップ”に参加された、女性社員の方に今回の取り組みの感想を聞いてみた。話を伺ったのは、SG事業本部第三統括部の平井梨恵さん。昨年11月にお子さんを出産されたばかりという平井さんに、今回のワークショップに参加してみての感想を聞いてみると、「育休中は、社会から隔離されているという意識が強くなり、漠然とした不安があって悩みに押しつぶされそうになりがちです。それが、こうやって会社にきて、実際に先輩に話を聞く機会があると、すごく勉強になるし、いいリフレッシュになりました」(平井さん)とのことで、非常に有意義だったようだ。
ちなみに、平井さんはDeNAでは、『忍者ロワイヤル』の企画を担当。そう、バリバリのゲーム開発者であるわけで、開発者ともなると、仕事の育児の両立は相当ハードルが高いことが容易に想像されるが……。「そうですね。周りにはひとりもいなくて、けっこう不安いっぱいなところはあります。とはいえ、私の上長(男性ですが)も子どもがいて、妊娠中から理解があったので、そういう意味では心強いです」と平井さん。ゲーム開発にありがちな、完成間近の“修羅場”も、「周りが理解のある方たちばかりなので、作業分担など工夫をすれば、なんとかなるかなと思っています」(平井さん)とのこと。「子どもができても働ける職場を」ということで、DeNAへの転職を決意したのだという平井さん。「やっぱり開発が好きなので、ほかの仕事に就くことは考えられませんでした。主人もプログラマーで理解もありましたし」(平井さん)とのことで、DeNAの「女性社員がいつまでも輝ける職場を目指して」という施策が、平井さんの「ゲームを開発し続けたい」という希望を実現し得たと言えるのだろう。
いずれにせよ、社員がよりよい環境で働けるために尽力するDeNAの姿勢には本当に敬服する。まったくもってうらやましい職場環境だと言えるだろう。「今後より多くの企業が、こういった働く女性のためのサポートに積極的に取り組んでほしいなあ……」と願いながら、DeNAを後にした記者であった。




