大盛り上がりの座談会

 2013年2月14日、ガンホー・オンライン・エンターテイメントが運営するハートフルオンラインRPG『エミル・クロニクル・オンライン(以下、ECO)』のデザインが詰まった画集『エミル・クロニクル・オンライン オフィシャルデザインワークス』が、小社エンターブレインから刊行された。

 本書には運営チームへのインタビューのほか、開発を手がける株式会社ヘッドロックのデザインチーム座談会も掲載。座談会にはキャラ(モーション)班から5名、マップ班から1名、企画班から1名の計7名に参加いただいた。

 その深すぎる『ECO』愛ゆえに、誌面に入りきらなくなるほど座談会は大盛り上がり。座談会終了まで、終始笑いが絶えなかった。このままお蔵入りにさせるには惜しいということで、こぼれ話を掲載する。

<<座談会の参加者>>
・キャラ班/モーション班
キャラやアイテム、モンスターなど、ユーザーの目に留まるものの多くを制作しているチーム。A・H氏、H・T氏、M・H氏、N・O氏、C・K氏の5名が参加

・企画班
『ECO』のイベントや方向性を考案する企画班からは髙橋一樹氏が参加。当初は座談会に立ち会うだけの予定だったが、あまりにも盛り上がりすぎて、ついついトークに加わってしまった。

・マップ班
さまざまなイメージをもとに『ECO』の大地を作り出すマップ班からはD・H氏が参加。なお、キャラクターや装備のデザインについてお聞きしている本記事では不参加となっている。

創意工夫で仕様の限界を超える

 『ECO』はそのかわいらしいグラフィックや豊富な装備(衣装)により、女性人気も高いタイトルだ。装備を作っているのはデザインチームのキャラ班。女性が多く在籍しており、この座談会の出席者も5人中4人が女性だった。男性とは異なる視点やこだわりを持ってデザインを行っており、見えない部分も想定して作っているという。
 座談会は和気あいあいとした雰囲気で進行し、話は徐々にこだわりの部分へ突入。ゲームの仕様上、自分が想定しているかたちで実装できないこともある。そんなときはどうやって対応してきたのだろうか。

――こだわりを持って作ったものがあれば教えてください。

H・T 2012年の水着について語らせてください。

――ぜひ、お願いします!

A・H しっかりと作業スケジュールを計算しながら作っていたのに、やりたいことが爆発してしまって、結局すごく大変だったという……。

H・T 髙橋さんの案も含めて、最終的に8種類ほど作りました。じつは2012年の水着を着ると身長とプロポーションが若干変わるようになっています。衣装を作るときはテクスチャーの貼り替えや既存のモデルの改造で対応することも多いんですけど、あの水着はイチから作りました。

――わざわざ手間をかけたのは、やはり作り手のこだわりですか?

H・T そうですね。イメージどおりに仕上がったので満足しています。「どの方向から見てもオッケイ!」みたいな。

A・H やりたいことを成し遂げたH・Tは死にそうだったけど、幸せそうでした。

一同 (笑)

H・T 太もものふくらみはイラスト的な表現ですけど、うまくやればポリゴンでも表現できるんじゃないかと思ったんです。

C・K こだわりの部分ですからね。

H・T 3Dポリゴンでその部分を作るのはたしかに大変ですけど、ハイポリゴンで表現しているゲームはあるんですよ。ポリゴンの構成やエッジの角度を工夫すれば、そんなにポリゴンを使わなくても何とかいけるんじゃないかと思って挑戦しました。

――工夫でハイポリゴンに勝とうとするとか、すごい話ですね。ほかに、スタッフのこだわりが凝集された衣装はありますか?

A・H 髙橋さんのこだわりと言えばスパッツですよね。

髙橋 ベルト+スパッツの水着は、私が希望を出しました。

H・T 守護魔ウヅキのスパッツも髙橋さんきっかけですね。

髙橋 セーラー服+スパッツが欲しいと思ったんですよ。でも、じつはセーラー服の部分はそれほど気にしていなくて、単体でスパッツが欲しかっただけなんですけどね。

H・T 私が『ECO』チームに入ったころから、ずっと言ってますよね。

――念願がかなったんですね。おめでとうございます。

髙橋 実際、仕様的に難しい部分もあったんですよ。これができるようになったのも、デザイナーの工夫の結晶です。

H・T しばらくしたら、新しいスパッツを作りましょう。

髙橋 そうだね。

一同 (笑)

N・O スパッツって、装備としてはコーディネートもしやすいと思いますけど、ありそうでなかったような気がしますね。

髙橋 一応、単体のスパッツもあるんですけど、かなり初期のものなので、いまの技術なら、まだまだこだわれる! と。

一同 (笑)

――髙橋さんは企画班ということで座談会のお目付け役だと思っていたんですが、意外とぐいぐい来ますね。

髙橋 大胆になり過ぎると『ECO』には合わないので、デザインについても希望を出すことはありますよ。騎乗モーションなんかでも、角度によっては見えるかもしれないから、もう少し体をかがめてほしいとか。

A・H “見えているからいいもの”ではなく、“見えないからいいもの”ということですよね。

――すごいまとめかたですね(笑)。

H・T 7年も続いているゲームですから、いま流行っている機能を入れようとしても、なかなか難しい部分があります。工夫の積み重ねがあるからこそ、いまの『ECO』があるんだと思います。たとえば、キャラクターの前髪や洋服のレースを透過させる処理も昔はできなかったのですが、ポリゴンを描画する優先度や階層をいじればデータを重くせずに済むことがわかったので、使えるようになりましたし。

M・H こういう工夫をするようになってから、デザインの幅が広がりました。いろいろ作れるから楽しいですね。

『エミル・クロニクル・オンライン オフィシャルデザインワークス』デザインチーム座談会こぼれ話_03

談笑のなかに見え隠れする、たしかなデザイン力

 ゲームの仕様は厳密に決まっているものなので、ふつうはその枠をはみ出してはいけない。だが、『ECO』デザインチームの面々は、まるで裏技を探すように工夫をくり返し、やがて不可能を可能にしてしまう。開発を続ける7年間のうちに技術力が高まってきたからという理由もあるだろうが、“自分の好きなものを作るのが楽しい”というシンプルな気持ちがあるからこそ、新しい方法を発見できるのだ。2013年は“ロア”と呼ばれるキャラクターを中心に通年イベントが展開される。ロアたちのデザインやちょっとした仕草にも注目したい。

『エミル・クロニクル・オンライン オフィシャルデザインワークス』デザインチーム座談会こぼれ話_05

『エミル・クロニクル・オンライン オフィシャルデザインワークス』

『エミル・クロニクル・オンライン オフィシャルデザインワークス』デザインチーム座談会こぼれ話_04

 『エミル・クロニクル・オンライン オフィシャルデザインワークス』では、アルマやネコマタといった人気キャラクターのデザイン画&設定画はもちろんのこと、本誌のために描き下ろされた新イラストも掲載。また、深い話についてもうかがっているほか、運営の中核を担う寺田美絵氏&榊田毅氏へのインタビューも掲載。7年の歴史を凝縮した内容となっている。

【特典アイテム】
ペットアイテム『ダンプティー・アルマ

商品名:「エミル・クロニクル・オンライン オフィシャルデザインワークス」
発売日:2013年2月14日
価格:2,940円[税込]
装丁:A4版 128ページ オールカラー
発行元:株式会社エンターブレイン
発売元:株式会社角川グループパブリッシング
販売店:全国書店、オンライン販売サイト

『エミル・クロニクル・オンライン オフィシャルデザインワークス』デザインチーム座談会こぼれ話_01
『エミル・クロニクル・オンライン オフィシャルデザインワークス』デザインチーム座談会こぼれ話_02
▲チョイ見せするとこんな感じ。
『エミル・クロニクル・オンライン オフィシャルデザインワークス』デザインチーム座談会こぼれ話_06
▲“ダンプティー・アルマ”です。ペットです。