話題沸騰の完全新作の内容が明らかに

 処刑人となって殺し屋=凶悪犯罪者に鉄槌を下す、愛と処刑(コロシ)のファンタジーアクション『KILLER IS DEAD(キラー イズ デッド)』(以下、『KID』)。本作は、近未来の世界を舞台に、隠密国家機関“処刑事務所”の新人であるモンド・ザッパとなって、凶悪犯罪者たちを始末していくアクションゲーム。モンドは右手の刀と左手の換装武器を利用して、敵の血液に含まれる“ダークマター”を吸収し、自身のエネルギーへと変えるのだ。ここからは、角川ゲームスの安田善巳氏とグラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏へのインタビューをお届けするので、お見逃しなく!

新たな“殺し屋”シリーズ、『KILLER IS DEAD(キラー イズ デッド)』! 開発のキーマンを直撃!!_01
新たな“殺し屋”シリーズ、『KILLER IS DEAD(キラー イズ デッド)』! 開発のキーマンを直撃!!_02
新たな“殺し屋”シリーズ、『KILLER IS DEAD(キラー イズ デッド)』! 開発のキーマンを直撃!!_03
角川ゲームス
代表取締役社長
『KILLER IS DEAD(キラー イズ デッド)』
エグゼクティブプロデューサー
安田善巳(やすだ よしみ)氏

須田氏との共同プロジェクト『ロリポップチェーンソー』がヒット。本作でも社長業と兼任でゲーム開発に携わる。
グラスホッパー・マニファクチュア
CEO/ゲームデザイナー
『KILLER IS DEAD(キラー イズ デッド)』
エグゼクティブディレクター
須田剛一(すだ ごういち)氏

『ノーモア★ヒーローズ』や『killer7』などの個性的な作風で、世界的にファンを持つゲームデザイナー。

――まずは『KID』開発の経緯をお教えください。

安田善巳氏(以下、安田) 始まりは『ロリポップチェーンソー』の開発が軌道に乗ってきた、2009年の年末ですね。そのころ須田さんから新しい企画をいくつかいただいて、その中から私が『KID』を選んだ形です。候補の中から『KID』に決めた理由は、私自身が須田さんの作る“殺し屋シリーズ”のファンだったからです。殺し屋シリーズの系譜の作品を、ぜひいっしょに作りたいと思いまして。

須田剛一氏(以下、須田) 『ノーモア★ヒーローズ』や『killer7』など、僕が作ってきた一連の“殺し屋シリーズ”を、またゲーム化したいという思いが自分の中にありました。その思いがあり、安田さんにお見せした企画書のひとつに『KID』を入れて……。『ロリポップチェーンソー』が、ポップで明るい“陽”のイメージのゲームだったので、つぎは"陰"のものを作りたい、という狙いがあって。

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――本作におけるおふたりの役割は?

安田 須田さんがゲームの制作全体を指揮して、私が品質管理をするというのが、おおまかな立ち位置になります。『ロリポップチェーンソー』のときと同じで、自然と互いの住み分けができました。ゲーム内容に関しては明確な仕事分けはしていませんが、須田さんはおもにゲームデザイン全般とビジュアル関連を、私は戦闘パートやイベントシーンに注力していることが多いですね。

――『KID』は、須田さんの“殺し屋シリーズ”の系譜にある作品とのことですが、今回の主人公であるモンドは殺し屋ではありませんね。

須田 殺し屋ではなく処刑人ですね。敵を殺害するという行為に、さらに処刑という意味合いを持たせています。トリプルA級の国際犯罪者、いわゆる極悪テロリストと呼ばれるような“大悪党”を、職業として抹殺していく主人公です。時代劇の『必殺』シリーズや、平田弘史先生の劇画『首代引受人』シリーズを僕が大好きで、それらの影響も受けています。さらに現代的な要素と、アメリカという舞台設定が加わって、モンドという主人公ができました。政府の下部組織であるブライアン処刑事務所に入社し、そこの職員としてしっかりスーツを着ている人物というイメージです。

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――ゲームの海外展開を意識すると、たとえば海外受けがいいマッチョな中年の男性という方向性もあったかと思いますが……。

須田 マッチョな中年男性というアイデアは、どうしても出てこなかったですね。その役割は、すべてブライアンに任せています(笑)。モンドは、本当に人を殺せるのか不安なほどスマートな見た目ですが、仕事のスイッチが入った瞬間にオーラが切り換わるキャラクターです。映画『アメリカン・サイコ』でクリスチャン・ベールが演じた二面性の狂気なども意識しています。モンドは処刑という仕事に対して割り切っていて、感情をほとんど表さない男としてシナリオを描いています。

――それではゲームのストーリーは、ハードボイルドなものになるのでしょうか?

須田 シリアスではありますが、主人公は孤独なヒーローではありません。モンド自身は孤高な存在だけれど、まわりには彼を支える仲間がいます。チームに支えられながら、ひとりの職業人として成長していく物語になります。処刑人の孤独とともに仲間との絆も垣間見えるような、そんなハードボイルドだけではない物語にしたいと思っています。

――モンドの仲間には、ブライアンのほかにヴィヴィアンとミカという女性がいますが、彼女たちとのロマンスはあるのでしょうか?

須田 どうでしょうね……。それに関しては、プレイしてのお楽しみということで。ただ、やはり社会人としては、同僚に手を出してはいけないかな、と(笑)。とはいえ、彼女たちふたりがヒロインなのは間違いないですよ。

――ヴィヴィアンは25歳で、35歳のモンドより年下ですが、お姉様といった印象ですね。

須田 じつは最初は、“美魔女”の設定でした。68歳で整形しまくっているという(笑)。いろいろあって、現在の年齢に落ち着きましたけどね。ミカは対照的に後輩キャラクターだったりします。モンドの妹というか愛らしいペットというか、そんな役回りです。

――これまでの須田さんの作品では、男女の恋愛をしっかり描写する側面もありましたが、本作でも恋愛描写はあるのでしょうか?

須田 もちろんです。さらに今回は、“ジゴロモード”というゲームシステムも存在します。詳細はまだ話せませんが、世界中の美女とロマンスをくり広げるといったモードです。モンドには、映画『007』シリーズの主人公であるジェームズ・ボンドのイメージもあるので、やはりそうなると“モンドガール”を登場させないといけませんから(笑)。

安田 ジゴロモードに関しては、私もかなり積極的に企画を出しています(笑)。現時点ではその内容をお伝えできないのが残念です。

須田 開発当初、ジゴロモードはそれほど重要な要素ではありませんでした。しかし、開発が進むうちに開発スタッフのテンションがどんどん上がってきて、いつのまにか大きな存在になり、「これはゲームの中で実現させるしかないだろう」と(笑)。

安田 美女との軽妙な駆け引きを楽しむ、いい意味でおバカなシステムになっています(笑)。ハードなアクションパートに対する、息抜きとして楽しんでもらいたいですね。

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――なるほど。先ほど世界中の美女が登場するという説明がありましたが、それはステージが世界各国にまたがるということですか?

須田 そうですね。世界のあちこちで戦うことになります。ただ残念ながら、ステージごとに美女が登場する、というわけではありません。さすがに『007』でも、そんなに頻繁には出てきませんから(笑)。そこはボンドガールと同じく、厳選された数人くらいと思っていてください。多すぎるとメインヒロインのふたりが目立たなくなりますしね。

――ちなみに、ジゴロモードで現れる美女は、須田さんの趣味で選ばれたのでしょうか?

須田 いえ、こればかりは僕の趣味だけでは決めさせてもらえませんでした(笑)。合議制というか、単純な多数決ではなく、皆で集まってその場の熱量で決めていった感じです。

――須田さんは2012年4月の取材で、「『KID』はダークサイドの『007』」とコメントしていましたが、その意図を教えてください。

須田 ボンドは諜報員ですが、それでも表世界の事件を裏で解決している人物ですよね。世の中にはもっと、表世界とは一切関わりのない、魔窟みたいな世界があると思うのです。その中で決して表に出ることなく、日夜戦っている男がいるのではないかと。それが“ダークサイドの『007』”という意味になります。

――つぎにストーリー以外のビジュアルやアクションパートについて教えてください。

須田 まずビジュアル面は独特の陰影表現がウリの“ハイコントラストシェーディング”という新しいトゥーンシェイダー技術を使っています。これを利用して、かなりていねいに絵を作り込みました。ゲーム画面を見て、ひと目で『KID』だとわかる、自己主張のある絵にできたのではないかと思っています。

――陰影が強調された『killer7』のビジュアルの、進化形なのかなとも感じました。

須田 『killer7』は、あの時代のあのタイミングでは、ベストのアート表現ができたと思っています。ただ、あの表現をそのまま再現しても、どうしても古いものにしか見えない。ですので、いまだからこその絵作りを追い求めました。現在の形になるまでには、相当な試行錯誤がありましたね。

安田 最初はもっと、写実的な絵にしようと開発を進めていましたよね。それを変更して。

須田 写実的でコントラストが強いビジュアルを試してみたのですが、このゲームならではの自己主張が感じられなかったんです。それで、いったんすべてをひっくり返しました。

安田 今回は、リアルさよりも様式美を追求してできたビジュアルですよね。それがゲーム内容にも、非常にマッチしていると思います。殺意も愛もむき出しになった世界を、日本ならではの繊細なタッチで表現していくこと。そういったビジュアル表現は、本作の大きな魅力のひとつになっています。

――剣術と銃の両方を使ったアクションは、どのようなものになるのでしょうか。

安田 どちらかというと、剣術がメインですが、左腕の銃で敵の姿勢を崩したり、ザコ敵を一掃するといった、さまざまな使いかたができます。ほかにも左手を換装することで、特定のボスに対して有効な武器になったりと、シチュエーションごとに戦いかたが変わる、幅広いバトルになっていますね。

――ゲーム中にいつでも換装できる左手というアイデアは、開発当初からあったのですか?

須田 はい。最初は左手でもっといろいろなことができるようにしたいと考えていました。食事中はフォークになったり、ドライバーで大型機械の敵を分解したり。最終的には要素を削ぎ落として、武器の換装システムに落ち着いて。ただ、男のロマンとして、ドリルに変形する案だけは外せませんでしたね(笑)。

――(笑)。モンドの左手は、敵の血液を吸収する能力も持っていますよね。

須田 奪った血液は、RPGのマジックパワーのようなものと思ってください。刀で血を奪い、貯まった血が左腕の武器の弾になるようなイメージです。設定としては、敵の血には“ダークマター”と呼ばれる人間の悪意が含まれていて、それがエネルギーになるのです。

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――主人公の成長要素などはありますか?

安田 ゲームをやり込むことで連続技が増えるといった、オーソドックスな成長システムを基本に、本作ならではの要素が組み込まれています。たとえば、プレイヤーは敵にトドメを刺すときの技を数種類から選べますが、その選択次第でキャラクターの能力やスキルが変化していきます。アクションで成長の方向性が決められるわけですね。ほかにも、敵を倒すと出現する鉱石のようなアイテムを集めて、武器を成長させる要素もあります。この出てくる鉱石の数は、敵の倒しかたによって増減するんですよ。そこを意識することで、またひとつ上の楽しみかたができるようになっています。ただボタン連打で敵を倒すのではなく、モンドをどう成長させるかを意識してゲームを遊んでもらいたいですね。

――ところで、須田さんの作品にはふつうのゲームでは体験できないようなぶっ飛んだテイストを期待しているファンも多いと思いますが、そういった要素はあるのでしょうか。

須田 さきほどの左手のドライバーの話みたいに、実装できなかったアイデアが多いのですが……(笑)。今回実現したのが、“虎に乗ったヤクザと戦う”というシチュエーションです。古風な建物が並ぶ京都で、虎に乗った敵とバイクに乗ったモンドが戦うんですよ!

――それはまさにぶっ飛んでますね(笑)。

須田 そういった、ほかのゲームではなかなか体験できないシチュエーションが満載です。京都での戦闘は、不思議と最初からイメージとしてありましたね。海外のプレイヤーに京都を見せたいと思ったんですかね(笑)。

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――現在の開発状況はどのくらいですか?

須田 だいたい70%くらい。基本はほぼできあがっていて、これからバランス調整です。

――最後にメッセージをお願いします。

須田 『ロリポップチェーンソー』に続いて、新作アクションゲームを作れるのはうれしいです。グラスホッパー・マニファクチュアとして、今年もいくつかの開発ラインが動いていくわけですが、まずはこの『KID』に全力投球します。皆さんにゲームを触ってもらったとき、「ああ、このゲームを買ってよかった」と思えるものにするべく、ゲームをしっかり作り込んでいます。1フレームレベルでのボタンを押す気持ちよさであったり、美しさであったりを感じ取れる、これぞ日本のアクション! というゲームを目指しています。発売時期は夏ですが、それまで徹底的にブラッシュアップして、気持ちいいアクションに仕上げるので、楽しみにお待ちください!

安田 『KID』は、須田さんと二人三脚で長い旅をしてきたような感覚が残るプロジェクトでした。試行錯誤という回り道はたくさんしましたが、「僕らが探してきたものは、きっとこれだね」と、旅の道中でつかんだ手ごたえを皆さんにお届けできるように、これからしっかりと仕上げていきます。また、『ロリポップチェーンソー』のときと同じように、思いきり楽しいプロモーションを仕掛けようと準備しています。新機軸にもチャレンジしようと考えていますので、ぜひご期待ください。

※このインタビューは、週刊ファミ通2013年2月7日号に掲載されたものと同じ内容です。


KILLER IS DEAD(キラー イズ デッド)
メーカー 角川ゲームス
対応機種 X360Xbox 360 / PS3プレイステーション3
発売日 2013年夏発売予定
価格 価格未定
ジャンル アクション / 処刑
備考 エグゼクティブプロデューサー:安田善巳、エグゼクティブディレクター:須田剛 一、開発:グラスホッパー・マニファクチュア