“ウィザードリィ ルネサンス公式設定集”の発売にあわせて実施した、ウィザードリィ ルネサンス総合プロデューサー、岩原ケイシ氏へのインタビュー。後半となる今回は、その本の見どころと、“ウィザードリィ ルネサンス”の世界観を持つ『ウィザードリィ オンライン』の今後の展開を聞いてみた。

ウィザードリィ ルネサンス総合プロデューサー 岩原ケイシが語る『ウィザードリィ』を“ウィザードリィ ルネサンス”として再構築したわけとその世界観(後編)_01

“ウィザードリィ ルネサンス 公式設定集“を制作するにあたって苦労したこと

――本の制作を振り返って、大変だと思う部分はありますか?

岩原 一番の苦労は、足の骨を折ったことですかね(笑)。さあやろうか! という段階になって、別件でドイツに行った時、ポッキリと。全治半年のとんでもない骨折で、出社もできず、半年くらい自宅作業でしたね。本の打ち合わせも私の自宅近くの喫茶店でしたね(笑)

――本の仕様を決めなければならない時期に、連絡が取りづらいという、大変なことになっていましたね。

岩原 なかなか伝えたいことが伝わらない、そして伝わってこない(笑)。表紙のデザインも、確定するまでずいぶんかかりましたから。

――それだけで、1カ月以上時間をかけました……。あと、今だから言えますが、発売日も何回か延ばしましたよね。始めは2012年の秋くらいを予定していましたから。

岩原 それは私の骨折のせいじゃないかと(笑)。最初は年末、次は年明けに発売予定! となって、最終的に2月1日の発売になりましたからねぇ。ずいぶんかかりましたね。そういえば、全治半年の骨折が、その期間に治りました(笑)。まあ、その分じっくりと腰を据えて手をいれることができたので、クオリティはよくなったことが救いです。完成度の高いものに仕上がったので、ぜひぜひ読んでみてくださいね。

――では、この本の見どころを教えてください。

岩原 書いた本人が言うのもアレですが、すべてですね(笑)。1章の歴史から8章の妖魔まで順番に読み進めると、すんなりと世界が頭に入ってくる作りで読みやすくしてありますから。もちろん、気になる章から読み始めてもらっても大丈夫です。私個人としては、ゲーム本編には描かれないことが多い「この世界の住民の生活感」がこの本から読み解ければいいなと思います。あと、見どころとは違うのですが、制作関係者全員の頭を悩ませた表紙のデザインも細かく見てもらえるとうれしいです。シンプルながらも高級感のある『ウィザードリィ』らしい体裁に仕上がったと思います。

――完成した“ルネサンス”の設定本。どのような方に読んで頂きたいですか?

岩原 う~ん……。過去の『ウィザードリィ』シリーズが好きなかたには、「こんなの違う」とツッコミ入れて頂きながら読んでいただきたいところですね(笑)。それぞれに「これが『ウィザードリィ』だ」というイメージがあると思うので、この本に違和感が生じても当然だと思っていますから。あとはロールプレイング好き、妄想好きな方にオススメしたいですね。授業中とかに、授業聞かずに「もしこの授業中に悪魔が攻めてきたらオレがバッタバッタと薙ぎ倒してあの子とあの子を助けて……。」といったことを妄想して楽しんでいた、俗に言う“中二病”だった人!(笑)。そういう妄想が好きだった人は、この本を読むとニヤニヤしちゃうと思いますよ。

――想像の世界に浸れる人ということでいいですよね。

岩原 言い方を変えれば想像力豊かな、中学校2年生くらいの純真な心を持つかたですね。いつまでも純粋な心を持っていて、ちょっと誰もいない空に向かって話しかけちゃうような。「誰かに俺見られてる!」、街中で「オマエ、俺の心の中を読んでいるな!」と言っちゃうような、そういう人たちに読んで欲しいです。

――そのまま書きますけど、大丈夫ですか?(笑)

岩原 真面目に言いますと、想像をする楽しみを知っている人ですね。見たものだけで楽しむのではなく、この先に何があるのかなとか、もしこうだったらおもしろいのにな。という部分を楽しめる人に読んで欲しいです。想像のベースにできる本ですので、この本に書いてある設定から、さらに書かれていない部分の世界を膨らましてもらえるとうれしいです。それを漫画にしたり、小説にしたりするのもいいですよね。

本誌購入特典のゲーム内アイテムについて

――本書には、ゲーム内で使えるアイテムがついていると聞きましたが。

岩原 『ウィザードリィ オンライン』だけの特典で申し訳ないのですが、キャラクターに装備するアバターアイテムがつきます。本書用に用意した、オリジナルデザインのマントで、非常に豪華な見た目になっています。“ルネサンス”の設定を読んで、その世界を味わいたいなと思ったら、『ウィザードリィ オンライン』の世界に足を踏み入れていただき、さらにこのマントを手に入れてみてください。装備すると、ゲーム内でも目立つこと間違いなしです。

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――『ウィザードリィ オンライン』を始めたばかりの人でも装備できるのでしょうか?

岩原 装備の条件はないです。ゲーム内でシリアルコードを入力するとマントを入手でき、そのまま装備すればグラフィックに反映されますよ。作成したばかりのキャラクターでも大丈夫です。このマントを装備している人は、設定本を購入してくれた人なので、ほかに見かけたら、“ルネサンス”の世界について語り合うのもいいかもしれませんね。

『ウィザードリィ オンライン』2013年の展開について

――『ウィザードリィ オンライン』の話になったところで、こちらの今後の展開について教えてもらえますか?

岩原 『ウィザードリィ オンライン』ですが、これまでの『ウィザードリィ』シリーズと違って本作は4人パーティでした。それを6人パーティにする仕組みを導入します。また、6人パーティ用に広い新しいダンジョンを追加します。洋館チックで、いままでにはない雰囲気のエリアになりますよ。あとは上位職(エリートクラス)の実装も行います。ロード、ニンジャ、サムライ、ビショップが入って、本来の『ウィザードリィ』らしさがここで完成するという感じになります。これらは2月末から順次実装していきますので、ご期待ください。また、今後の展開もいろいろ考えています。ですので、プレイしながら変わっていく世界を楽しんで欲しいですね。変化を楽しむことも『ウィザードリィ オンライン』のひとつの醍醐味ですから。

 それと、日本国内だけではなく北米、欧州でのサービスもスタートしました。アメリカで生まれた『ウィザードリィ』が、逆輸入のような形で帰っていくことは、どう受け入れられるか心配でした。ただ、アメリカでも、最近はゆるいゲームが増えてきているようで、硬派なゲーム好きには楽しんで頂いているようですね。今後もほかの国でもサービスをしていきますので、世界中にこの物語が広がればいいなと思っています。

すべての『ウィザードリィ』シリーズのファンへ

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――最後に、『ウィザードリィ』を愛する人たちへコメントをお願いします。

岩原 “ルネサンス”は、みなさんが考えている『ウィザードリィ』とは違うかもしれません。ただ、これも数ある中の、ひとつの『ウィザードリィ』と思って楽しんでいただけると幸いです。もしこの物語を気に入っていただけたら、ここからまた派生させた自分だけの『ウィザードリィ』を作ってもらえるとうれしいです。

――ありがとうございました。

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