『エスカトス』から『ギンガフォース』への系譜
『ギンガフォース』は、2012年6月に発表されたXbox 360用の縦スクロールシューティング。当初は2012年8月30日発売予定だったが、諸般の事情で延期となり、約半年ほど遅れてのリリースとなった。制作会社は有限会社キュート。一般的なゲームファンへの知名度はまだまだかもしれないが、2011年に発売したXbox 360用ソフト『エスカトス』でシューティングファンの多いXbox 360ユーザーに存在感を示し、その第二弾ということで本作も注目と期待を集めていた。
その『エスカトス』は、1980年代のテイストを意識した縦画面シューティング。一見すると無個性な作品に映るかもしれないが、実際に遊んでみると、納得感の高いゲームシステムにしっかり練られた敵配置、FM音源を再現した音色で奏でられるサウンド、テンポのいい展開と3D演出がもたらすトリップ感など、随所にこだわりが光る仕上がり。何かが劇的にすばらしいとか、突出して凄まじいというわけではないが、あらゆる要素がガッチリとかみ合い、1980年代シューティングへの愛情、敬意、熱意、郷愁――そういったものがヒシヒシと感じられる、シューティングの魅力が凝縮された良作だった。現在は低価格のWonder Price版や、ゲームオンデマンドでも配信されているので、本作に興味のある人は合わせて楽しんでみてほしい。
そんなわけで、筆者も『ギンガフォース』にはおおいに期待していた、いちシューティングファンである。このような前置きを含み置いたうえで、インプレッションを読み進めてもらえれば幸いである。
7番目の惑星に隠された秘密とは!?
本作の舞台となる時代は、遥かなる未来。人類は太陽系の外に新天地を求め、すでに6つの惑星を開拓。7つ目の地球型惑星“セブンティア”の開拓に着手し、いくつかの企業と移民が移り住んで繁栄のときを迎えていた。
プレイヤーが操る主人公は、惑星セブンティアの警備会社“ミツルギ・セキュリティ・サービス(通称MSS)”の特殊部隊に所属するふたりのメンバーだ。新人パイロットのアレックスと、教育係のマーガレットがチームを組み、警備用の武装航空メカに搭乗して出撃することになる。ちなみにセブンティアを統治しているのは、MSSの親会社である大企業のマグニ社。MSSはマグニ社の専属警備会社で、実質的にこの星における警察の役割を担っている。また、セブンティアでは、とある希少資源を採取できることから、水面下でこの資源を巡ってさまざまな思惑を持つ者たちが暗躍している。そのためか、物騒な事件が発生する機会も多く、アレックスたちは強盗やハッカー、テロリスト、武器商人など、さまざまな犯罪者たちを取り締まりながら、セブンティアで起きていることの核心に近づいていく……。
このようなバックグランドを持つことからもわかるように、本作はストーリー性やキャラクター性も重視された作り。メインモードは、10のチャプターでメインシナリオが展開するストーリーモード。各チャプターはドラマ仕立てで、冒頭や終盤にはカットシーン(スキップ可)が流れるほか、ゲーム中はシームレスにフルボイスの会話デモが挿入される。会話デモは、アレックスとマーガレットの掛け合い、MSSのオペレータや特殊部隊の隊長からの指示、犯罪者とのやり取りなどが流れて、ストーリーが展開。また、16:9のワイド画面をフルに使った、いわゆる“横画面縦シュー”であることも演出に生かされ、3D視点や俯瞰視点など、ダイナミックにカメラが動いて、戦いを盛り上げる。主題歌つきのオープニングムービーも用意されており、演出とビジュアルに関してはひとかたならぬこだわりが見てとれる。
再挑戦を促す、ありそうでなかったシステム
演出やビジュアル、ストーリーがいいに越したことはないが、それもシューティングゲームとしておもしろければこそ。純粋にシューティングとしてのデキも気になるところだろう。結論から言うと、『エスカトス』のファンなら何の心配もいらない。カットシーンや会話デモがゲームプレイを阻害することはなく、視点の変化などの演出も自然に溶け込んでいる。むしろこれらの演出は、臨場感と没入感を高める一助となっていると感じた。
自機の操作は方向パッド+4ボタンで行う。ボタンの内訳は、メインウェポン、サブウェポン、スペシャルウェポン、スピードチェンジとなっている。これらの武装はカスタマイズが可能で、1プレイごとに入手できるゲーム内通貨の“CR”を使い、パーツショップで新調できる。パーツはメインウェポン(25種)、サブウェポン(28種)、スペシャルウェポン(12種)、エンジン(6種)、エクストラアイテム(29種)、カラーリング(12種)の6系統。これらを自由に組み合わせて、お好みの機体にアレンジするのも本作の醍醐味になっている。比較的万能な組み合わせはあるものの、特定のチャプターで絶大な効果を発揮するものもある。臨機応変に組み替えながら進んでいきたい。
逆に、本作で初めてキュートのシューティングに触れる人は、いわゆる“弾幕シューティング”ではないことにご注意を。自機の当たり判定は極小ではなく、敵弾は間に入るよりも、まとめて大きくかわしたほうが安全だ。また、敵弾を消す手段としてスペシャルウェポンがあるものの、溜めが必要だったり、ゲージの管理が必要だったりと若干クセがある。ある種“覚えゲー”の要素もあり、慣れるまでは難しく感じるかもしれない。実際のところ、イージーでもかなりの歯ごたえがあり、後半のチャプターは突破するまでにけっこう苦労した印象が残っている。コンティニューができないこともその理由のひとつで、ゴリ押しの利かないゲーム性も含め、ここは1980年代のテイストが受け継がれている部分かもしれない。しかし、なかなか先に進めない半“ハマリ”のような状況に陥っても、モチベーションが下がることなくクリアーまで楽しく続けられた。これはレベルデザインの妙とでも言おうか、絶妙な難易度設定もキュート作品の特徴である。だが、こと『ギンガフォース』に関しては、(詰まっても続けやすい)明らかな理由がふたつあると推察する。
ひとつ目は、カスタマイズの存在だ。初期のパーツは強さがかなり抑えられており、あるパーツを装備しただけで急激に楽になることが何度かあった。さらに、ゲームが途中で終わっても、そこまでに稼いだCRは加算されるので、リトライのくり返しが苦にならないのだ。また、パーツの開放条件として、プレイ時間を参照するものもある。
もうひとつは、残機のシステムである。本作の残機は原則としてどのチャプターも3機設定。だが、プレイを続けていると1UPアイテムが出現することがある。キュートに確認したところ、チャプターごとに累計の敵機撃破数がカウントされていて、一定の撃破数ごとに出現するようになっているとのこと。そして1UPを取ると、現在の残機だけでなく、そのチャプターのデフォルトの残機数も増えていくのだ。一瞬でゲームオーバーになったとしても、何回もプレイをくり返せば1UPはちゃんと出現する。ということは、どんなに難しいチャプターでもいつかは光明が見えるはず。デフォルトの残機数を増やすエクストラアイテムもあり、これを併用すれば10機くらいまでならすぐに伸ばせる。とくに昔のゲームの場合は、特定の場面で突破口を見出せないと、そのままあきらめてしまうケースも多く見受けられた。本作の残機システムは、それに対するひとつの回答とも言え、ありそうでなかった秀逸な仕組みだと思う。
筆者はイージーを先にプレイしたが、クリアーまでに多くのパーツが開放されたため、むしろノーマルのほうがラクに攻略できた。ただし、ハードだけはまったくの別モノ。相当な歯ごたえがあるので覚悟されたし!
ギンガを救いに、いますぐ飛び立とう!
ストーリーモード以外のモードに触れておくと、まずはランキングに対応した“スコアアタック”がある。自機はパーツ構成が固定のTYPEA~Cの3機。クリアー済みのチャプターから、好きなひとつを選んでプレイし、スコアを競う内容となっている。そのほか、セブンティアの歴史やキャラクタープロフィール、作中のムービーなどを閲覧できる“ギャラリーモード”も用意されている。
新たなユーザー層へ向けた施策が豊富で、なおかつ既存のファンにも満足できる内容とボリュームを誇る『ギンガフォース』。シューティングが好きな人には安心してオススメできるが、そうでない人もぜひやってみてほしい。ストーリーはある意味ベタだが、そのベタで王道的な展開が熱い! 終盤の盛り上がりは必見だ。
■筆者紹介:バロンマサール
古の時代から活動するフリーライター。本作では、スピードチェンジを行うとバックファイアを噴射し、後方の敵を攻撃できる。これは『イメージファイト』(1988年/アイレム)のオマージュ……かどうかはわからないが、狭い場所で後方から敵が出現するシーンがしっかり用意されている。後方を攻撃できるショットや、誘導性能のあるホーミングミサイルもあるため、無理に使う必要はないのだが、活用ポイントがちゃんとあるのは心憎い。
ギンガフォース
メーカー | キュート |
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対応機種 | X360Xbox 360 |
発売日 | 2013年2月14日発売 |
価格 | 7140円[税込] |
ジャンル | シューティング |