当たった人、みんなちゃんと遊んだかな?
2013年1月26日午前2時から29日午後5時まで開催中の、『シムシティ』βテストを、血が出るゲームをやってないと編集部でザワつかれる洋ゲー野郎のわたくしことミル☆吉村も遊んでみたのである。だって『シムシティ』ですぜ。しかも、天才ウィル・ライトがもういないとはいえ、Maxisが開発した『シムシティ』としては約10年ぶり。こりゃあやるっきゃないデショ。
その間に、バリバリ3Dの『シムシティ ソサエティーズ』なんかもあった。でも作ったのはMaxisじゃなかった。最初はちょっと出来もアレだった。他社では『City Life』シリーズなんかもあった。
10年つったら結構長い時間だ。新生『シムシティ』がシンプルなタイトルに戻ったのも、この長い年月を一回リセットして、2010年代にふさわしい『シムシティ』をふたたび作ろうという決意の現れなんじゃなかろか。
というわけで気になるのは「10年ぶりのそれにふさわしい感じに仕上がっているのだろうか?」という部分だ。あ、ちなみにクローズドβテストは英語で行われましたが、製品はちゃんと日本語化される予定なのでご心配なく。
「あれどこだっけ?」がないのサイコー
過去にプレスイベントでも試遊しているんだけども、今回時間を気にせずプレイ(1時間しか作れないのでその度にリセットだけどね)してみて改めて再確認したのは、あらゆる意味でのアクセスのしやすさ。
本作は基本的に、とりあえず道路敷く→各種ゾーンや基礎インフラを整えて街を作り始める→大きくなるにつれ問題が出てくる→要望に応えて対策を打つ→しばらくして新たな問題が出る→対策を打つ……というくり返しで出来ている。
だから街を作るツール群にも、状態を示すデータ群にも、何千回、何万回とアクセスすることになる。
必然として、ユーザーインターフェースがとっちらかっていたり、やたら階層を深く潜らないとお目当てのものにアクセスできなかったりしたら、地獄である。「あれにアクセスするにはどこだっけ……」が一回数秒でも、あっという間に塵が積もって本当に山になってしまうのだ。
ここでちょっと、道路の敷設、各ゾーンの定義、電気・水道を引く様子を動画でお見せしよう。
本作では、こういったインターフェース周辺がよく練られている。例えば水道のアイコンをクリックするような時に、プレイヤーが考えていることは大体以下のような感じだろう。
1.水道に関連する施設を建てたい
2.汚染具合を知りたい
3.水がちゃんと行き渡っているか知りたい
そして本作では、これらがちゃんと2クリック以内にカバーできている。水道のアイコンをクリックすると、まず即座に道路にそって流れる水道の様子がレイヤー表示される。
そこで足りてない場所があったりして、追加の給水ポンプを建てようとすると、即座にマップ表示が切り替わり、埋蔵されている水量が表示される。
そして汚染状況を見たければ、水道のメニューから1クリックで表示可能。その他、健康状態などの関連情報も1クリックで表示できる。
電力、教育、警察、消防、その他の情報も同様。現在の行き渡り具合、必要な関連情報が即座にマップ上に表示可能で、建てなければいけないものがあればそのままセレクトできるし、建てた場合の影響範囲などもリアルタイムに重ねて表示してくれる。
思うがままの都市計画という点では、道路も重要なツールだ。ゾーンは道路沿いに定義するものだし、あらゆるインフラは道路に沿って行き渡っていく。
道路を敷くツールは、直線、カーブ、四角形、円形、自由と5種類のツールがあり、一旦敷いた道路沿いには一定距離離れたガイドも表示されるので、細かいグリッド表示がなくても、同じような感じに道路を展開していくこともできる(ただし建築物がどういう間隔で建つかわかりにくいので、厳密に埋め尽くしたい人は慣れが必要だろう)。
ゾーンはその道路に合わせてぴーっとドラッグしていけばオーケー。もちろんゾーンのツールを選んだ時点で、すでに定義したゾーンがレイヤー表示されるので、「この辺りの住居地域、ここで止めといたけどもうちょっと拡大しとくか」とか、すぐに判断することができる。
気にすべき項目がそんなに細かくないのもイイ。というのも、これは個人的な意見なのだが、『シムシティ』は都市計画ゲームの横綱として、かつてそうであったように、普段ゲームしない人も遊べるものであって欲しいからだ。それこそ、「へぇー、新しいの出たんだ。ウチのパソコンで動くの?」ぐらいの人でも。
問題が起これば対応するアイコンが光り、クリックして開くと、起こっていること、さらに情報を集めるためのデータ類、対応するツールがすべて揃っているというのは、間口の広さという点でも実によろしい感じだ。
ミニチュア感がたまんねぇ~
この後はもう、道路を伸ばし、各ゾーンを適宜増やして拡大しながら、市民の皆様のニーズに応えて、学校や病院や消防署建てたり、モジュールで拡張したり(建てたユニットをクリックしてエディットを押すと、即座に追加モジュールを呼び出せる)、関連ユニットを建てたり(例えば市内各所にスクールバスの停留所を置くことで学校の影響範囲を広げられる)していくというターン。
手っ取り早く言ってしまうと、もう後はプレイヤーの数だけの体験になっていく。何かに特化した街作りとかをするのは製品版のお楽しみ。
なわけですが、まだ書きたい部分もある。それはミニチュア感。この手のゲームは総じて“箱庭作り”と称されたりするけど、どこか丸っこいグラフィックや、わらわら動きまくる市民(シム)たち、『ザ・シムズ』な感じのあの英語っぽいシム語の会話なんかがもう、最強に“動くミニチュア感”バリバリなわけですよ。
街作りの合間に、ふとシム人をクリックしてずーっと追ってみたりすると、「あ、このお父さんの家ここなんだ」とかわかって楽しいんですな。まぁたまに「道路わけわかんないルート通りすぎだろ」とか「この子供、やたら人ん家入んない?」とかあるけど、まぁそれはそれで。
そしてこの機能、万引きした奴が帰るさまを追うことなんかもできる。調子こいて警察署を建てるお金がなくなっちゃった時、万引き発生(お店をクリックすると高笑いする犯人シムの声が聞こえる)から、安全にソイツが帰宅するまで、眺めるしかないのは辛かった……。
あぁそうそう、このミニチュア感あふれるグラフィックスタイルは、色のトーンを何パターンかから選ぶこともできる。そして、あらゆる人に見やすくわかりやすくという点では、色盲の人用の設定もちゃんとある。このあたりは、さすがMaxisとしか言いようがない。
今回ないもの、なかったもの
とはいえβ版はβ版。一部ツールや建物は本編のお楽しみということでβテストでは利用できなかった。そのほかにも以下のようなシステムがなかったし、遊べなかった。まぁそれはそれ、これはこれ。
・地形エディタは(そもそも)ない
ファンからの質問に答えて、クリエイティブ・ディレクターのオーシャン・クイグリー氏がシムシティ4のゴッドモードのような、地形を操作するモードはないという趣旨のことを語っている。
・マルチシティ/マルチプレイでは遊べなかった
最大の特徴である、マルチシティモードはβ版では自由に遊べなかった。
本作では、プレイヤーに広大な地域“リージョン”が与えられる。リージョン内には都市を建設可能な場所が複数あり、それぞれ地形や特性が異なっている。これらをすべて自分でプレイしてもいいし、友達やその他の人を呼び込むこともできる。これがマルチプレイでもあるマルチシティモードだ。
ただし、チュートリアル部分でその片鱗を見ることはできた。チュートリアルでは、ある街から余剰力がある特定のサービスの提供を受けるとか、不足した物資をグローバルマーケットから購入するといったことを体験できた。
で、話は冒頭の結論に
ここで冒頭の「10年ぶりのそれにふさわしい感じに仕上がっているのだろうか?」という疑問に戻る。プレイしての感想は、今のところはだけど、かなりイケてるぜ! といった感じ。さっき書いたような間口の広さがイイ。
で、逆にディープな部分はというと、街をどう特化させていくかもそうなんだけど、今回は明らかにマルチシティプレイが相当にディープだよね、コレ。ひとりで1リージョン丸々支配してもいいんだし、全員超絶バリバリのプレイヤーで大事業に挑戦してもいいんだし、多分SNSやら掲示板やらの繋がりでマルチプレイしたらカオスだぜ、きっと。となり町のテキトー市長をチャットでそれとなくいさめつつ、手腕を発揮して乗り切るのもまたヤバい。
というわけで、パッケージタイトルのβテストの個人的な感想としてはですよ、発売されたら、場合によってはそのね、ちょっと会社休みがちになるかもねという感じ。遊ぶか遊ばないかの答えはそんなに悩む問題じゃないと思うんだな、もう。『ディアブロIII』は一応入れるだろ? とか、ホリデーシーズンは一個ぐらいFPSやるだろ? みたいな感じ。
■著者紹介 ミル☆吉村
ファミ通.comの洋ゲー脳編集者。たまーに紙の仕事もしたりしなかったり。基本的には、アメリカ各地、カナダ、アイスランド、シンガポール、中国、韓国と、世界中を飛ばされまくる人。オーストラリアで本作のプロデューサーであるジェイソン・ヘイバー氏にインタビューした際に、収録後に「どうだった?」と聞かれて「Take My Money!!(俺の金もってけや!)」つったら「ウハハハハハハハ」と高笑いしておりました。