次世代型ダンジョンRPG! 『デモンゲイズ』プレイインプレッション
角川ゲームスとエクスペリエンスが、ダンジョンRPGを次世代に向けて展開するプロジェクト“DRPG PROGRESS”の最新作『デモンゲイズ』(2013年1月24日発売予定)。本作は、王道のファンタジー世界を舞台に、“デモン”と呼ばれる異質の生命体を使役しながらダンジョンを攻略していくダンジョンRPGである。今回は、週刊ファミ通でクロスレビュアーも務めるフリーライターのババダイチが、ソフトの発売に先駆けて本作のプレイインプレッションをお届けする。
ダンジョンRPGの“楽しさ”
改めてダンジョンRPGとはどんなジャンルなのかと考えると、ダンジョン探索をメインとし、そこでモンスターを倒しながら武器やアイテムを手に入れ、成長させていくRPG、といったところでしょうか。明確な定義はないのですが、だいたいの人はこんな感じに捉えていると思います。
で、このダンジョンRPGというジャンルですが、流行り廃れが早いこのゲーム業界で、じつにしぶとく生き残っているジャンルのひとつだと思うのです。元祖は1981年に発売された『ウィザードリィ』ですから、じつに30年以上ユーザーに愛されているジャンルということになります。しかもこのジャンルがスゴイのは、根本的な“楽しさ”の部分は、大きく変わっていないところです。
では、ダンジョンRPGの根っことなる“楽しさ”とは何かと考えると、やっぱりダンジョンの謎を徐々に解明していくところではないでしょうか。一歩進んだ先に、何があるのかという期待と不安。進めなくなったときにどうすれば行けるかを考え、実行する試行錯誤。これらを全部ひっくるめて、ダンジョンの謎を解明する“楽しさ”が、形成されていると思うのです。
デモンの存在が大きな個性に
さて本作ですが、ダンジョンRPGと前面に銘打っているだけあって、しっかりとダンジョン探索が楽しめる内容になっています。
広大なダンジョンを一歩一歩進み、マップを完成させていく楽しみ。キャラクターを鍛え、強いアイテムを入手することで先へ行ける達成感。これぞダンジョンRPGといった楽しさが、しっかり組み込まれています。
じつは個人的に、ひさびさのダンジョンRPGだったのですが、感覚が取り戻されていくごとに、懐かしさを感じました。「ああ、そうだこれがダンジョンRPGの楽しさだよなあ」と、遊びながら思い出していったのです。もちろんそれだけでなく、本作ならではの新しい要素、個性もたっぷり入っています。
たとえば、とあるダンジョンでダメージを受ける床が連続していて、先に進めない状況になったとします。そこをどうすれば切り抜けられるか、本作にはいくつも選択肢が用意されています。レベルを上げて、多少のダメージは気にならないぐらい強くしてから進んでもいいし、迂回路になる隠し扉を探してみてもいい。そして、床のダメージを無効化するスキルを持つデモンを仲間にしてから行くという選択肢もある。
ダンジョンRPGの個性というのは、この選択肢で、どんなものをどれだけ用意できるかで出て来る気がします。本作だと、デモンの存在がとくに大きいですね。
デモンは最初、ダンジョンごとのボス敵として登場します。これがダンジョン探索と平行する、明確な目標としてうまく機能しています。ボスを倒すために何をすればいいか、レベルを上げればいいのか、武器をよくすればいいのか、メンバーを増やせばいいのか。デモンが各ダンジョン最大の壁となることで、プレイヤーは自然にいろいろ考えるようになってきます。
さらに仲間にすると、こんどは行動手段のひとつとして選択肢に組み込まれます。まだ未踏のエリアが多いダンジョンに行くときは、探索の助けになるデモンを、強敵に挑むときは、パーティーの攻撃力を高めるデモンを連れて行くといった感じの使い分けが楽しい。なおかつ、デモン自身も成長するので、育てる楽しみもあったりと、デモン要素だけでもお腹いっぱいになれそうなほど、濃いシステムになっています。
ほかにも本作ならではのシステムが満載
もちろんデモンだけでなく、本作の個性はまだまだあります。
たとえば、トレジャーハンティングサークル。これはダンジョン内の何ヵ所かにある魔方陣のことで、ここにバトルなどで入手した“ジェム”と呼ばれる石を捧げ、呼び出した敵に勝利すると、ジェムの種類に対応した財宝を得ることができます。
ダンジョンRPGで目当てのアイテムを入手したいときは、それを落とす可能性がある敵をひたすら倒す、というのが一般的です。それを本作では武器や防具のジャンルごとに、ある程度任意で狙うことができます。純粋なランダムで、敵を倒して入手するというのも、ある種の楽しさは確かにあるのですが、どうしても作業になってしまいがちです。それを本作はトレジャーハンティングサークルを導入することで、ほどよくその作業感を消しています。
また、トレジャーハンティングサークルはチェックポイントとしての役割や、使役するデモンの付け替え機能などもあり、単にアイテムを入手するための存在になっていないのもウマイですね。
モンスターとのエンカウントも、ひとひねりあります。歩いていて遭遇するランダムエンカウントに加え、マップ上に敵の存在が表示されるシンボルエンカウントが混在しているのです。話だけ聞くと「ふたつある意味があるの?」と思うかもしれませんが、なかなかどうしてこれが活きているのです。
シンボルエンカウントの場合、視認できるので避けることもできますが、けっこう避けられないイヤな場所にいることが多かったりします。これが、とくに踏破済みのマップでは、ほどよい緊張感になり、いいアクセントになっているのです。逆にランダムエンカウントは、パーティーがピンチになり、早く宿に戻りたいときなどに、最後まで油断させない緊張感を作り出しています。実際にやってみると分かると思いますが、エンカウント方式がふたつあっても、意外と混乱なく受け容れられました。
魅力的なキャラクターたち
システムからは離れますが、本作のキャラクターにも触れておこうと思います。
いろんなタイプはありますが、基本的にダンジョンRPGは、ベースキャンプとなる場所があり、そこからダンジョンへ向かうという形になっています。本作でのそれは、“竜姫亭”という宿屋に当たります。
ここに住む住人たちが、まあ揃いもそろって個性的なのです。堅実派かと思いきや、常識外れな面もある管理人のフランや、優しくもどこか影のあるランスローナ。いつもケンカをしながら、どこか仲良しにも見えるカッスルとレゼルムの店主コンビなど、クセのあるキャラクターが続々と登場します。
彼らとの交流は、まるでアパートでの合同生活のようでもあり、とてもワイワイと楽しめました。詳しくは書きませんが、序盤のドタバタあり、サービスハプニングありのコメディタッチから、徐々にシリアスな流れへと変わる展開もうまく、引き込まれました。もちろん、実力派声優陣による演技の力も大きいです。ランスローナさんなどは、心の中で“少佐”とでも呼びたくなるほどにカッコイイ!
プレイヤーとともに戦う仲間となるキャラクターには、住人たちほどの濃厚なドラマは用意されていません。ですがそのぶん、奥深いカスタマイズ要素があります。
5つの種族、7つのクラスで分けられた外観イラストは45種類あり、それを選ぶだけでもかなり頭を悩ませました。その後の成長方針や、装備品の選択、さらには"神器"というアイテムで、スキルの付け替えもできますから、どう育てるかは本当にプレイヤーしだい。正直、試行錯誤して育てているうちに、自分の中で勝手にキャラクター設定ができてしまいます。なお自分の場合は、いつの間にかハーレム設定になっていました。
相反するものが両立するゲーム
こうして改めて書き出してみると、本作がダンジョンRPGとしてのスタンダードさを守りつつ、さまざまな相反する要素をぶつけていることが分かります。
ボス敵としてのデモンと、仲間となって使役できるデモン。
敵を倒して入手するアイテムと、トレジャーハンティングサークルで任意に入手するアイテム。
ランダムエンカウントと、シンボルエンカウント。
自分で設定を作り上げるキャラクターと、濃厚なドラマ性を持つNPC(ノンプレイヤーキャラクター:コンピューターが操作するキャラクターのこと)。
それらを両立させるのは、かなり難しいと思うのですが、本作ではそれらがバランスよく成立しています。これは、数多くのダンジョンRPGを作ってきたエクスペリエンスの力もさることながら、ダンジョンRPGが最初から持つ腰の強さというか、懐の深さがあったからだと思います。
そして本作は、むかしからダンジョンRPGが好きな人が楽しめる奥深さと、ダンジョンRPG初心者でも入りやすい入り口の広さも両立させています。システムでも物語でもイラストでも、何かひとつでも引っかかるものがあれば、ぜひいちど遊んでみてください。
■著者紹介 ババダイチ
週刊ファミ通でクロスレビュアーも務めるフリーライター。ゲームは全般的に遊ぶが、それほどうまいというわけではない。最初のダンジョンRPGはもちろん『ウィザードリィ』の第1作。わりと人生の方向性を変えるぐらいに遊んでました。
デモンゲイズ
メーカー | 角川ゲームス |
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対応機種 | PSVPlayStation Vita |
発売日 | 2013年1月24日発売予定 |
価格 | 6090円[税込] |
ジャンル | RPG / ダンジョン |
備考 | PS Store ダウンロード版は5040円[税込]、開発:エクスペリエンス |