『北斗無双』からどういった変化を遂げたのか?

 『真・北斗無双』は、前作にあたる『北斗無双』と同様に、“北斗の拳”を原作としたアクションゲームである。『北斗無双』は原作コミックのストーリーを追いながらも、これまでの『無双』シリーズとは異なった独自のシステム、ゲーム性を持っていた。その『北斗無双』に比べ、『真・北斗無双』はどこが異なり、どのような部分がパワーアップしているのだろうか。
 より深く“北斗の拳”の世界に踏み込んだ『真・北斗無双』の魅力を、ファミ通Xbox 360を中心にレビューや攻略記事を担当してきた古株ライター、石井ぜんじがインプレッションする。

長大なコミック原作を忠実に再現。伝承者たちの無双の戦いを楽しめる『真・北斗無双』プレイインプレッション_01
長大なコミック原作を忠実に再現。伝承者たちの無双の戦いを楽しめる『真・北斗無双』プレイインプレッション_02
▲プレイアブルキャラクターの数は大幅にアップ。ケンシロウを中心に、北斗神拳、南斗聖拳の使い手など原作に登場した多くの拳法家を使うことができる。

コミック原作の流れを尊重した“伝説編”

 人気コミックのゲーム化、という観点から見ると、本作はとても忠実に原作を再現している。“北斗の拳”は長期にわたって連載された人気コミックであり、その情報量は膨大だ。このような場合、ゲーム版ではストーリーが簡略化されることが多い。だが本作はデモシーン、道中のアクションにより、原作のストーリーがしっかり把握できるように表現されている。メインのモードである“伝説編”をプレイしていくと、そのまま原作コミックを読み返しているような感覚を覚えるはずだ。前作以上に原作コミックをリスペクトした作りになっている。
 本作では『北斗無双』で描かれた“ラオウ編”に加え、“天帝編”、“修羅の国編”、さらには原作最後のストーリー“バット・リン編”も収録されている。そのうちの“ラオウ編”だけをとってみても、プレイ時間はかなりのものとなる。その理由のひとつは、原作のストーリーを再現しているデモシーンの情報量の多さだ。道中にはそれほどめんどうなゲーム的な仕掛けはないものの、デモシーンと合わせると相当なボリュームになる。その結果、ゲーム全体としてはかなりやりごたえのあるボリュームとなっている。
 注意すべきなのは、ケンシロウ以外のプレイアブルキャラクターが出現するのにそれなりの時間がかかること。“伝説編”をプレイして、そのキャラクターのエピソードが終わると“幻闘編”で使えるようになる。“伝説編”が原作通りにていねいに描かれているので、時間をかけてエピソードを進めないとキャラクターが出現しない。たとえば、南斗聖拳の使い手であるシンが登場するのは比較的早いのだが、そこからジャギが使えるようになるまでには時間がかかる。レッドベレーのカーネル、神をも欺く男ジャッカルとデビルリバースなどのエピソードも省かれずに描くので、そのあいだにプレイアブルキャラクターが増えることはない。この点についていえば、ゲームの都合よりも原作の流れを重視した作りであるといえる。
 本作をちょっと遊んだだけでは、あまり多くのキャラクターを扱うことができない。そのぶん最初は少し物足りないかもしれないが、ここでやめてしまってはもったいない。プレイを重ねることによってどんどん“北斗の拳”の世界は広がっていくので、ぜひじっくりと腰をすえて遊んでほしいと思う。

長大なコミック原作を忠実に再現。伝承者たちの無双の戦いを楽しめる『真・北斗無双』プレイインプレッション_03
長大なコミック原作を忠実に再現。伝承者たちの無双の戦いを楽しめる『真・北斗無双』プレイインプレッション_04
▲“伝説編”では人気キャラクターが登場するまでに時間がかかるが、原作の雰囲気を存分に味わえる。レッドベレーのカーネルの放つ飛び道具を、空中に飛び上がってかわすシーンは原作どおりだ。

シンプルでわかりやすくなったゲームシステム

 ゲームシステムは前作と比べると簡素になった。“伝説編”では、道中に設定されていたゲーム的な仕掛けがほとんどなくなり、原作の流れに沿った展開が行われる。ボス、中ボスとの闘いを除けば、襲い掛かる多量のザコを蹴散らしていくことになる。この感覚は、いかにも一騎当千の『無双』シリーズらしいゲーム性だ。ゲーム的にマニアックな部分は少なくなったが、そのぶん敵を蹴散らす爽快感と、原作への没入感は高くなったといえるだろう。
 前作で話題になった“QTE(クイックタイムイベント)”は、本作では簡素なものとなっている。ボタンを連続で押す必要はなく、初めて行う“QTE”シーンでもまず失敗することはない。“QTE”は原作の有名なシーンを再現するために使われており、雰囲気を盛り上げることに成功している。この点はなんら心配することはない。
 プレイヤーは、敵の倒しかたによって成長が変わる。強攻撃で倒すと攻撃力が上がり、弱攻撃で倒すと体力が上がるといったようになっている。ただし実際にプレイしてみると、ふつうにプレイすればある程度バランスよく成長していくようになっていると感じた。弱攻撃しか使わないなど、極端なプレイスタイルでない限り、あまり気にしなくてもいいだろう。
 また道中で手に入れた経絡図を装備することで、プレイヤーの能力をカスタマイズすることができる。手持ちの経絡図の組み合わせを考えて、自分なりの強化を図っていこう。このシステムは前作と比べるとシンプルだが、プレイヤーの好みが反映できるのが優れている。

長大なコミック原作を忠実に再現。伝承者たちの無双の戦いを楽しめる『真・北斗無双』プレイインプレッション_05
長大なコミック原作を忠実に再現。伝承者たちの無双の戦いを楽しめる『真・北斗無双』プレイインプレッション_06
▲キャラクターは敵を倒すことで、リアルタイムに強化されていく。経絡図の組み合わせで、どのパラメーターを重視するか考えるのが悩ましくも楽しい。

さまざまな攻略性、戦略性を含むふところの深さ

 最初のうちは爽快に敵を倒していける本作だが、進んでいくにつれて、ボスを中心に敵の攻撃もきびしくなってくる。そこで大きな役割を果たすのが回避行動だ。回避をすれば、強力な攻撃でも確実にかわすことができる。攻撃によっては、回避などでかわすとボスが混乱し、ひるむことがある。このチャンスを逃さず攻撃すれば、狙い通りにダメージを与えられるというわけだ。
 敵の攻撃をよく見て対策を立て、かわして反撃するというのはアクションゲームの醍醐味のひとつ。『無双』シリーズではザコを倒しまくる楽しさが特徴ではあるが、本作では頭を使ってボスを攻略するおもしろさも体験することができる。
 いっぽう“幻闘編”では、戦略性が重視されたゲーム性が楽しめる。拠点ごとに強さが異なるので、どこから攻撃すれば楽になるか考えていく必要がある。また拠点それぞれに条件が設定されており、それを達成していくと評価が上がる。“伝説編”とはまた違った、ゲーム的なおもしろさを味わうことができるだろう。

長大なコミック原作を忠実に再現。伝承者たちの無双の戦いを楽しめる『真・北斗無双』プレイインプレッション_07
長大なコミック原作を忠実に再現。伝承者たちの無双の戦いを楽しめる『真・北斗無双』プレイインプレッション_08
▲回避行動をうまく使うことで、強敵と思えるボスとも渡り合えるようになる。また“幻闘編”で使えるキャラクターは、それぞれ固有のシステムを持っている。ケンシロウとは違ったゲーム性を楽しむことができるぞ。

 全体的に見ていくと、本作はより遊びやすくなり、バランスに優れた仕上がりになっているといえる。前作『北斗無双』のエッジのきいたゲーム性が好きなプレイヤーには物足りなく思えるかもしれないが、やりこむにつれ評価も変わってくるはずだ。ボリュームがある作品なので、プレイすればするほど選択の幅が広がり、楽しめるようになる。ぜひ最後まで本作をプレイして、“北斗の拳”ワールドの広大さを感じてほしいと思う。

■筆者紹介:石井ぜんじ
おもにファミ通Xbox 360誌で攻略、クロスレビューを担当してきた古株ライター。ゲームの文章を書き始めてから20数年、飽きずに続けております。過去に『NINJA GAIDEN』シリーズ攻略本、シュタインズ・ゲート公式資料集、科学アドベンチャーシリーズマニアックスなどに参加。これらからも、ファンが喜ぶ本作りを目指していきたいですね。


真・北斗無双
メーカー コーエーテクモゲームス
対応機種 PS3プレイステーション3 / X360Xbox 360 / Wii UWii U
発売日 2012年12月20日発売(PS3・Xbox 360)/2013年1月31日(Wii U)
価格 8190円[税込]/Wii U・ダウンロード版:7100円[税込]
ジャンル 世紀末/アクション
備考 TREASURE BOX:13440円[税込](PS3・Xbox 360)、プレイステーション 3 真・北斗無双 LEGEND EDITION:33170円[税込]