食べるのがもったいない!
既報(→こちら)のとおり、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンは、『ファイナルファンタジー』と『メタルギア』両シリーズのシリーズ生誕25周年を記念して、名シーンやゲームキャラクターを“キャラ弁”として再現し、両ゲームの制作スタッフにお届けする“究極のキャラ弁”プロジェクトを始動。2012年12月18日、その“究極のキャラ弁”の完成披露と『ファイナルファンタジー』と『メタルギア』両シリーズのクリエイターへの贈呈式が、都内品川にあるソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン社内で行われた。
完成披露&贈呈式にゲストとして登壇者したのは、『ファイナルファンタジー』シリーズからスクウェア・エニックス プロデューサーの北瀬佳範氏、『メタルギア』シリーズからコナミデジタルエンタテインメント 執行役員(EVP) 小島プロダクション監督 小島秀夫氏、同じく小島プロダクション アートディレクター 新川洋司氏。
開会に先立ち、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン プレジデントの河野弘氏が登壇。プレイステーションは1994年の誕生以来、18年の歴史があるが、プレイステーションを支えてきた『メタルギア』シリーズと『ファイナルファンタジー』シリーズは、それ以上に長い25周年であることをあらためて紹介。そんな25周年の両シリーズをお祝いしようと、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンのスタッフで話が立ち上がり、「みんなで盛り上がれるお祝いにしたい」という意向で、キャラ弁プロジェクトがスタートした、と今回の経緯を説明した。制作過程では、河野プレジデントはノータッチだったようで、「プレコミュ(プレイステーションのコミュニティサイト)でリポートされる制作過程を見ていると、木工職人さんや漆職人さんが登場し、さらにはスタッフが山奥で玉子を探している。忙しい年末の最中に何をやっているのかと思いました(笑)」と苦笑しつつも、「スタッフが全国をいろいろ飛び回って作ったキャラ弁です!」と熱意を強調。当日初めて実物を見たという河野プレジデントだが、そのデキに自信アリ、といった表情で挨拶を終えた。
続いてゲストの北瀬氏、小島監督、新川氏が登壇し、それぞれまずは次のように挨拶した。
「『FF』シリーズは、ちょうど今日が誕生日(第1作は1987年12月18日に発売)にあたります。25年前というと私は大学生で、一ユーザーとして『FF』を楽しんでいました。神秘的なビジュアルと感動的なストーリーという部分で魅了された記憶があります。それから5年後、制作者として『FF』に携わるようになって20年が経ちましたが、ユーザーのときの気持ちを忘れずに、作り手として届けていきたいなとつねに思っています」(北瀬氏)
「25年前、『メタルギア』を作ったときは、ここまで続けられるとは夢にも思っていませんでした。25年間続けてきて、続けることでいいことがある、というのを実感しています。ただ、25年前に作ったのですが、『FF』さんと違って、中断しておりまして。プレイステーションが出るときに、3Dポリゴンで本当の“かくれんぼ”ができるというので復活させたのが『メタルギアソリッド』なんです。ソリッドというのは立体(3D)という意味もあるので。それ以降、プレイステーションで出させていただいて、ソニー・コンピュータエンタテインメントさんといっしょに歩んできたことで、この25年があると思います。非常に感謝しておりますし、これからもがんばっていきたいと思います」(小島監督)。
「25年前は一ユーザーとして『メタルギア』を遊んだひとりです。入社したとき小島監督に面接していただたき、最初に作ったのが『メタルギア』のシリーズになります。僕自身は働き始めて、何本かほかのタイトルもやっていますが、25年という長期間続けられる仕事というのはなかなかないんじゃないかなと思います。この仕事をやっていて本当に楽しいですし、ユーザーの方々にも楽しんでもらえて、うれしく思っています」(新川氏)。
いよいよ贈呈式。河野プレジデントから風呂敷に包まれた重箱が手渡された。
プレイステーション3型の重箱、食材のこだわりはプレコミュ(→こちら)で。
ビックリ箱のようなさまざまな仕掛けが施されたプレイステーション3型重箱。ディスクカバーの蓋を開けるとプレコミュで募集したファンからのメッセージがブルーレイディスク型のメッセージカードに。
FFキャラ弁
【ポイント】(一の重)
[1]卵白のうす焼きと、ハム、スライスチーズの基本構成。
[2]エッジ部を海苔にして立体的に見せている。
[3]乾燥や海苔の剥がれを防ぐために、表面に寒天を塗装。
【ポイント】(ニの重)
[1]チョコボの顔は、ご飯に卵黄を蒸して混ぜたもの(一の重の卵白の薄焼きで余ったものを使用)
[2]モーグリは、ご飯・かまぼこ・ハムで構成。ヒゲはソーメンを揚げたもの。頭は黄色いプチトマト。
[3]マテリアは白餡入りの白玉団子を着色して七食に
[4]“金の針”をモチーフにした「18金の爪楊枝」
『メタルギア』キャラ弁
【ポイント】(一の重)
[1]肌はマッシュポテトに着色したもの(三人とも)
[2]目はウズラの卵。瞳部分は着色したタピオカ。
[3]オールドスネーク(左)と、ネイキッドスネーク(中央)の髪の毛はいずれも白髪ねぎ。雷電(右)の髪の毛は大蔵大根。
【ポイント】(ニの重)
[1]段ボールに見立てた稲荷寿司。25周年の焼き印をつけている。
[2]段ボールに貼ってあるガムテープに見立てたかんぴょう。
[3]おかかに醤油を混ぜたものを地面に見立てている(下には白米)
キャラ弁を実際に見た感想を問われた北瀬氏は「クオリティの高さにビックリしました。正直、もう少しショボいのを想像していました(会場から爆笑)。モーグリのほっぺの曲線など非常によくできていました。本当にビックリしました」とコメント。小島監督も「こんなキャラ弁見たことない! すごいですよ、蝋人形館のようで(笑)。美味しそうですけど、もったいなくて食べれないですね」と絶賛。新川氏は「フィギュア商品の監修をすることもあるんですが、(このキャラ弁は)よくできてますよね。このままフィギュアにしてもいいくらいのデキです」と、こちらもベタ褒め。正直、失礼ながら記者は「キャラ弁かぁ……」という微妙な気持ちで取材に臨んだのだが、そのデキはちょっとどうかしちゃってるレベルのクオリティ。
無事に授賞式を終えた河野プレジデントも、キャラ弁のデキの良さに、キャラ弁を少し侮っていた、と反省の弁。「こだわりをちゃんと形にしてくれて、お祝いの気持ち、感謝の気持ちを表すことができてよかったなと思います」(河野氏)とプロジェクトスタッフを労い、さらに『FF』と『メタルギア』両シリーズに対して「いろいろな形で応援させていただきます。ぜひ30年、40年もいっしょに盛り上げていきたいと思います」と宣言し、授賞式を締めくくった。
最後に両シリーズの今後の展開が紹介。まずは『FF』シリーズでは、プレイステーションアーカイブスの期間限定の半額キャンペーン(詳細は→こちら)、そして「2013年に発売される『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』と『新生FFXIV』にご期待ください」(北瀬氏)
『メタルギア』では、25周年を締めくくるタイトルとして2013年2月21日に発売される『メタルギア ライジング リベンジェンス』が紹介され、「非常にいいデキになっています」(小島監督)、「プラチナゲームズさんに作ってもらっているのですが、悔しいくらいよくできているなと思っています。今回のキャラ弁に負けないくらいビックリした仕掛けがたくさん詰まっていますので、ぜひ期待して待っていただければと思います」(新川氏)。河野プレジデントも「『メタルギア ライジング リベンジェンス』オリジナルデザインのプレイステーション3も出ます!」としっかりアピール。
以下、質疑応答を追記(22時20分)
――食べる際、どこから手を付けたいと思いますか?
北瀬 ニの重のモーグリからですかね(笑)。一の重は崩すのはもったいないですね。
小島 そうですね、一の重は食べれないですね。3Dスキャンで取り込んで飾っとこうかな(笑)。ニの重の段ボール(のお稲荷さん)をいただこうかな。
新川 ニの重を明けたとき、いい匂いがしたので、段ボール(のお稲荷さん)からいきたいですね。
――キャラ弁というキーワードを聞いたときの最初のご感想を教えていただけますか?
北瀬 リハでも見てなくて、本番で初めて見たんですけど、リアクションをどうしようか考えていたんですけど(笑)、ふつうに驚くほどクオリティが高かったので、よかったです。印象に残るイベントになりました。
小島 子ども用にキャラ弁が流行っていて、本も売っていますし、最初はそういうのをイメージしていました。今日見てビックリしました。キャラ弁というよりアート弁と言いますか。これから毎年お願いできれば(笑)。
新川 非常にSCEさんらしい企画だなと。控え室で監督が、商品化したらいい、と言っていたんですが、まあ、(クオリティはもちろん、おそらくコストも高すぎて)ムリですね(笑)。ビックリしました。
――25周年どうし、それぞれのシリーズに対して、どういった印象をお持ちですか?
北瀬 小島監督はゲームも映像もこだわりが非常に感じられるので、とても尊敬していますし、うらやましくもあります。ウチの息子もPSPで『メタルギア ソリッド ピースウォーカー』などをプレイしているので悔しいなと思いながら、オレのゲームもやれよと言ってるんですが(笑)。中高生に(『メタルギア』シリーズは)ハマっているな、ということをリアルに感じています。
小島 ありがとうございます(笑)。アートワークを含め映画的な作品という印象で、タイトルロゴもオシャレですし。ソニー・コンピュータエンタテインメントさんの力もあったと思いますが、ゲーム(のレベル)が3ステップ、4ステップ上がったのも『FF』があったからだと思います。我々も負けないようがんばりたいと思います。
新川 僕にとっての『FF』のイメージは、尊敬するイラストレーターのひとりである天野喜孝先生のアートです。憧れの人でした。今日は野村さん(野村哲也氏)にも会えるかなとちょっと期待していたんですが、残念でした。