業績は2年連続で前年比300%増! デザエッグ快進撃の秘密とは
近年、ゲーム機の保護シートや保護ケースなどのアイテムの需要は一般化してきており、ゲームソフトの予約特典などとして登場するケースも増えてきている。とくに最近では、機能性を追求した無機質なものばかりではなく、ゲームタイトルの魅力を活かした美しいデザインのものも多い。
そんな中、熱心なファンのあいだで“デザスキン”、“デザジャケット”という商品が人気になっているのをご存じだろうか。これらは、2009年に設立されたばかりの若き企業“デザエッグ”が手掛ける、新しいタイプの筐体保護商品だ。デザスキンはおもにゲーム機用、デザジャケットはスマートフォン用の商品で、いずれも色鮮やかで、筐体全面を大胆に活かしたデザインが特徴。いままでにないインパクトを持った商品はファンを魅了し、販売実績は右肩上がり。販売しているデザエッグの業績も、2年連続で前年比300%増の急成長を続けている。
そこで本稿では、このデザエッグを直撃。デザスキン、デザジャケット誕生の秘密から、企画・制作の裏話、今後の展開など、気になるアレコレを余さず取材してきた。
※本記事は、週刊ファミ通2012年12月13日発売号に掲載された記事に加筆したものです。
【デザスキン&デザジャケットとは?】
■デザスキン
ゲーム機やコントローラなどを細かな傷や汚れから守り、ドレスアップするスキンシール。特殊素材シールなので貼り付けが簡単で、はがし跡も残らないのが特徴。
■デザジャケット
人気タイトルをもとにしたデザインを液晶保護シート、ポリカーボネートケースにプリントすることで、一体感のあるデザインで包み込むスマートフォン用ジャケット。
※液晶保護シートはiPhone用のみとなります。
デザエッグ 取締役・安藤純一氏にインタビュー!
――まず御社について教えてください。設立が2009年ということで、かなり新しい会社なんですね。もともとは何を生業とする会社だったのでしょうか?
安藤純一氏(以下、安藤) いちばん初めに、私といまの代表(代表取締役社長・中山惠輔氏)とで会社を立ち上げたときには、“オンラインゲームなどのアバターを実際の造形物にする”というビジネスを考えていました。それで、いろいろなオンラインゲーム会社さんにお話を持ち込んだのですが、いろいろと問題がありまして。
――問題というと、具体的には?
安藤 3Dプリンターを使って3Dデータから造形物を作るのですが、オンラインゲーム用のデータって、そのままでは出力できないんです。というのは、ゲームのデータは、不要なところは作り込まれていないんですよね。体の前面はきちんと描き込まれているけど、後ろは何も描かれていないとか。そうでなくとも、もともとが完全な3Dデータではないので、造形用にするには、手間がかかりすぎることがわかったんです。
――なるほど。
安藤 ほかに、日本のオンラインゲームの事情というのもありました。多くのタイトルでは、版元の会社さんが韓国にあるので、スピーディーに動いてもらえなかったり、いろいろと問題があったんです。メーカーさんの反応自体は良好で、「おもしろいね」というふうに言っていただいてはいたのですが、何タイトルかで運用してみただけで、それほど大きく展開するということもなく、いったんそのサービスはクローズしました。
――では、デザスキン、デザジャケットはどのような経緯で誕生したのでしょうか?
安藤 シールを商品化する前に、塗装とデカールを組み合わせて、プレミアムなゲーム機を作って販売するというサービスを提供していた時期があったんです。これは完全に受注生産という形で、Web上で注文を受けて、オンリーワンのガジェットと言うことで展開したものなのですが、限定数十台くらいで始めてみたところ、かなりの反響がありました。本体代金込みで50000円~60000円という高額な商品だったにも関わらず、即日で限定数に達するくらいでした。
――そこで、ゲーム機をデコレーションしたいというニーズがあることがはっきりしたわけですね。
安藤 はい。濃いファンの方に受けるという手応えを感じました。ただ、そのままでは高額すぎますし、作業としても、本体をバラして、塗装して、特注のデカールを作って、それをクリア塗装で閉じて……と手間がかかりすぎます。より安価に、広く普及できないかということで考えたのが、スキンシールだったんです。
――それでデザスキンが誕生したわけですね。ここまでデザインに主眼を置いた商品は、いままでになかったですよね。
安藤 ありそうでなかったと思います。じつは海外では、スキンシールで有名なブランドがけっこうあるんですよ。でも日本では、シールの文化自体にあまりなじみがなくて、iPhoneでもシールよりはケースが一般的ですよね。日本にはなかったというところと、濃いファンの方のために、キャラクターを全面に出して、キャラクターごとのデザインを豊富に展開した、というところをご支持いただいているのではないかと思います。
――実際に商品を見ると、手作り感さえ感じるような、リッチな趣がありますよね。
安藤 印刷方法は、生産の枚数によってケースバイケースなのですが、弊社としては、基本的にデザインを多くするという方針があって、少なくとも5種類、多いものだと10種類以上で展開しています。そのため、どうしても量産はしづらくて、オフセット印刷で数万枚刷ったり、ということはできません。ですので、必然的にデジタル印刷で、少量のロットで作る必要があります。そのために、それに対応してくれる工場を探して、密にやりとりしながら生産しています。でも逆に、1デザインで大量に売れるものや、OEMで大量に作る場合は、オフセット印刷で大量に刷る場合もありますね。
――OEMというと、具体的にはどんな商品ですか?
安藤 ゲームの初回特典に採用していただいたり、というケースです。今年ですと、PS Vitaの初回特典が多いですね。たとえば『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』の先着購入特典は、弊社が制作したものです。
――PS VitaはPSPよりも本体が大きめなぶん、デザスキンが映える印象がありますね。
安藤 おかげさまでPS Vitaの保護シートについては、弊社の製品が占める割合がかなり多いと思います。
――つぎに、デザスキン、デザジャケットの商品企画についてですが、商品化するタイトルの選別などは、どのような流れで決定されるのでしょうか。
安藤 最近では、ゲームメーカーさんから商品化のお声をいただくケースも増えていますが、基本的には弊社から提案しています。選ぶ基準としては、やはり濃いファンの方がどれだけいるかというところです。とても人気があって誰もが知っているタイトルというだけでは、盛り上がるとは限らないんですよね。ガストさんのタイトルや、アトラスさんのタイトルなど、いわゆる濃いファンの付いているタイトルは、非常に受けがいいです。
――タイトルの選別が絶妙ですよね。確かに、そういった濃いファンが多そうなタイトルを的確に突いているなぁ、といつも感心させられます。
安藤 じつは、恥ずかしながら私も中山も、それほど詳しくはないんです。最近は、そういったコンテンツが好きな社員が増えてきたので、だんだん社内でそういう知識が多くなってきて助かっていますが(笑)。いまのところは、いろいろなユーザーさんの声や、メーカーさんのご意見をうかがいながら、選定している感じです。
――いずれにせよ、濃いファンをターゲットにしているという点では徹底しているわけですね。
安藤 デザインを多くというのは、そういった、濃いファンのいるタイトルでこそ効果を発揮するものなんです。ありがたいことに、まとめて購入してくださる方も多いですし、なかにはコンプリートで買ってくださる方もいらっしゃいます。
――多デザインを用意されると、売れ方に偏りが出たりしますか?
安藤 そこは偏りますね、やっぱり。
――「このキャラだけ売れないなぁ」とか……?
安藤 ありますね。本当に……売れないものもあります(苦笑)。
――それでも全キャラクターを揃えると。
安藤 そうですね。版元さんとしても、「ひとりだけいないのは、ちょっと……」となりますし、ファンの方としても不満に思われるでしょうから。逆に、キャラクターがあまりに多いタイトルの場合、たとえば公式サイトなどで人気投票をしてくれたりすると助かりますね。それと絡めて、“人気投票1位から5位までを発売”といった理由付けがあれば、許される部分があると思いますので。
――ちなみにいまの商品の中で、とくに人気があるのは、どのタイトルの商品ですか?
安藤 『ペルソナ4』関連は相変わらず人気ですね。あとは『うたの☆プリンスさまっ♪』や、オトメイトさんの作品など、女性ファン向けの商品も強いです。女性ユーザーさんは、全体の数としてはそれほど多くはないと思いますが、濃いファンの方が多いですね。
――商品としては、iPhone/Android用の“デザジャケット”と、ゲーム機用の“デザスキン”がありますが、販売数量はどちらが多いのでしょうか?
安藤 最近はiPhone用が多くなってきました。ゲーム機のほうでは、PS3が新型になり、筐体が変わってしまいましたよね。新型は筐体がギザギザしているために、シールが貼りづらいんですよ。
――となると、今後新型PS3用のデザスキンは作りにくいですね。
安藤 そうですね。真ん中の部分がギザギザになっていて、トレイがスライドする仕組みなので、シールを貼るとしたら上下部分しかないので、格好良く作るのが難しいですね。
――12月からはAndroid用も発売となりましたね。
安藤 Androidの場合、機種ごとに形やサイズが違うので、多機種展開で手間はかかりますが、ユーザーさんからのご要望もたくさんいただいていますし、今後増やしていきたいと考えています。
――ちなみにデザインシールは、購入して自分で貼ることになりますが、貼るのは難しいのでしょうか?
安藤 たとえばPSP用シールなどは、穴が多いぶん難しめですね。慣れている我々で5分、慣れていない方だと15分~30分以上かかることもあるようです。ただ、再剥離性のシールなので、剥がすのは難しくはないです。シールなので、強く引っ張って伸びてしまうと貼り直しにくくなりますが、そこさえ気を付けていただければ大丈夫だと思います。
――ただ、自分で貼る作業は楽しそうですよね。
安藤 カスタムツールですし、ユーザーさんも、貼ること自体を楽しんでいる方が多いようです。ですので、うまく貼れた後で、Twitterなどに写真をアップしている人も多いですね。ああいう口コミはとてもありがたいです(笑)。
――今後の展開について教えてください。
安藤 今後はアニメ系に力を入れていこうと考えています。すでに種まきはしていますので、来年以降、タイトルとしては一気に増やしていくと思います。あとはAndroid用や、最近普及台数が増えてきたiPad用についても、展開していきたいと考えています。
――なるほど。いろいろな製品で、業界を盛り上げてくれることを期待しています!
安藤 やはり私たちは、こういった周辺アイテムを作っているメーカーという立場ですし、ゲームあってこそ、アニメあってこその商品ですので。少しでも業界を盛り上げることに貢献できればうれしいですね。