2012年8月2日にスクウェア・エニックスより発売されたWii用ソフト『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』(以下、『DQX』)。発売から4ヵ月が経過したいまも多くのプレイヤーを魅了し続けている『DQX』。2回目の大型アップデートを控えた12月某日、本作のプロデューサーを務める齊藤陽介氏とディレクター藤澤仁氏にインタビューを行い、『DQX』のこれまでと現状、そして今後の展望について話をうかがった。

もっと『ドラゴンクエスト』らしく、もっとオンラインゲームらしく

『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』プロデューサー齊藤氏、ディレクター藤澤氏ロングインタビュー【中編】_01
『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』プロデューサー齊藤氏、ディレクター藤澤氏ロングインタビュー【中編】_02
齊藤陽介氏
藤澤仁氏

──世界の流通という意味では、旅人バザーはとてもおもしろいですね。そのときのトレンドが価格や需要、供給に反映されますし。ハウジングで使う素材が一時期高騰し、行き渡ったらまた落ち着くという状況もありましたからね。
藤澤 そうですね。ハウジングは、プレイヤーの数から考えると、売れている家は相当数ですね。みんな待っていてくれてたんだな、と感じました。
齊藤 外装や内装にものすごく凝る人もいれば、とりあえず寝る場所だけという人がいるのもおもしろいですね。

──ハウジングの売れ行きはいかがでしたか? 全体的な感想をぜひお聞かせください。
齊藤 施設があるところから売れていきましたね。とくにトゥーンタウン地区(オルフェア)と草原地区(グレン)は、使いやすさという意味で人気があります。
藤澤 ガタラの古代遺跡もね。
齊藤 ただ、ひとつだけおもしろかったのは、ウェディの皆さんです。ジュレットの住宅は、施設ではなくて景色を選んだ人が多く、施設がないにも関わらず、白亜地区が先に売り切れましたね。

『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』プロデューサー齊藤氏、ディレクター藤澤氏ロングインタビュー【中編】_03
▲大人気と噂の、ジュレット住宅村・白亜の臨海都市地区。

藤澤 しかも、白亜地区はSサイズの土地が6つあるので住宅供給量が多いんです。にも関わらず先に売り切れたので驚きましたね。''

──いまは入れない区画がありますが、施設のない地区に施設が建つなど、住宅村の構造が変更されることはないですか?
藤澤 カンタンに変更できるところではないんですが、皆さんの要望が多ければ検討させていただきます。現状のまま町がまったく発展しないというのもおもしろくありませんから、何か変更を加える場合は、しっかりと説明したうえで、やれる範囲で調整を行いたいと思います。

──バトルシステムに関してですけれども、バージョン1.1で行った調整の反響はいかがですか?
藤澤 そうですね。いろいろなご意見をいただきました。バトルシステムについては、我々が実際に自分の目で見て、使われているかいないかの意見も参考にして、「もっと強くてもいい」と判断した部分については、職業、呪文、特技などの強化を実施しました。それによって各武器の特徴がよりエッジが利いたものになったので、そこはうまくいったと思っています。全体的にはプレイヤー側の強化につながる修正がほとんどだったんですが、一部の呪文や特技については弱体化の修正をしたので、それに対して残念がる声が多かったのは認識しています。もちろん、検討を重ねた上で実施した修正だったので、全体のゲームバランスは向上したと思っているのですが。

──おもしろいと思ったのが、当初「タイガークローの消費MPが増えたため、使いにくくなった」という声が大きかったじゃないですか。でも、蓋を開けたらみんなタイガークローでタコメットを狩っている状況になっていて(笑)。

『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』プロデューサー齊藤氏、ディレクター藤澤氏ロングインタビュー【中編】_04
▲経験値稼ぎのターゲットとして人気が高い、タコメット。タイガークローはツメスキルで修得できる特技。

齊藤 相変わらずタイガークローは人気ですね。ウデ装備に“MP消費しない率”の錬金効果をつけるなど、アップデート後からは工夫が見られました。

──それが健全だと感じました。それまでは、“MP消費しない率”はそれほど注目されていませんでしたよね?
藤澤 いまは人気がありますよね。それに関してはおっしゃる通りで、不便に感じたことが工夫を生むんですよね。そういう意味では、必要な不便さ、必要なストレスというのはゲームの楽しさに不可欠な要素だと考えているので、今後もそれを考慮したゲームデザインは続けていくことになります。ただ、あまりに急ハンドルを切ると、傷つかれたり、ついていけなくなってしまうプレイヤーの方もいらっしゃると思うので、ちゃんとその辺りのバランスは意識しながら、ですが。

──自分はまんべんなく各職業のレベルを上げているので、たとえばツメでやるときもあれば、棍でやるときもあり、格闘をやるときもあるんです。その際、それぞれの武器の特徴、有効な敵、レベル帯に合った敵などを発見する楽しさがあって。誤解を恐れずに言えば、それはスキルポイントの振り直しができるようになったアップデート後からの楽しさですし、より世界が広がると言いますか、新たな発見も生まれると感じて……。
藤澤 そう思ってもらえたらうれしいですね。ただ、実際のところ、すべてのプレイヤーの方がすべての武器を試すほどの時間があるわけではないですからね。ふつうに遊んでいる大多数のプレイヤーにとっては、いま使っている武器こそがすべてであって、「この武器を強くしてほしい」と思われるのは当然のことと思います。

──たまたまパーティを組んだ方から「この武器いいよ」という話を聞いて、「じゃあやってみようかな」とか、たまたまパーティを組んだ方が使ったことのない武器を愛用していて、「こんなに強いんだ」と気づくことってありますよね。
藤澤 そうですね。そういった仲間と出会う機会があった人は幸せだと思います。仲間といえば、“いまどんな?設定”ってあるじゃないですか。あれを使って、プレイヤーがどんな設定にしているかをモニタリングしているんですけれども、ひとりで遊んでる設定にしているプレイヤーさんが非常に多いんですよね。これについては、『ドラゴンクエスト』はもともとひとりで遊ぶゲームですし、“ひとりで遊べます”と僕たちも言ってきたわけですから、それでいいと思うんですが、もしも機会があれば遊びの要素のひとつとして、ほかの人と話してみたり、パーティを組んだりということも試してもらえればいいと思います。そうすることでオンラインゲームならではの楽しさの片鱗を感じてもらえれば、新しい世界が広がっていくと思います。また、ハロウィンのイベントなどがそうですが、あまりお節介になりすぎない程度に、ほかのプレイヤーさんと遊ぶ仕組みを僕らも提供していきたいと思っています。

──では、発売から4ヵ月ほど経過しての全体的な感想はいかがですか?
藤澤 発売当初は、『ドラゴンクエスト』のオンラインゲームというものを世の中に出したらどうなってしまうのかということを、100%予想できていたわけではありませんでした。それが実際にこうやって世に出て、多くの方に遊んでいただいて、「いいね」と言われたり「よくないね」と言われたりしながら、それでも4ヵ月間やってこられたということに対しては多少の安堵感はありますね。ただ、まだまだほっとしてる場合じゃないという思いもあるので、今後もますますがんばらなくちゃなと思っています(笑)。

齊藤 開発のスタッフ全体についても、いままでは予期せずお客様にご不便をかけていた部分を補強することに注力してきたのですが、開発現場では週報を作っていて、実際にお客様の反応を見てさまざまな意見や提案がプログラマー、プランナー、デザイナーなど、職種を問わず出てきています。運営が落ち着いてきたところで、「こういうデータを取れば、自分たちがつぎに何をお客様に提供していけばいいのかが見えてくるんじゃないか」という話がよく出てくるようになったので、今後はそちらのほうに軸足を移していくことになると思います。

藤澤 スタッフがゲームを遊んでいる率が本当に高く、週報の中で「ゲーム内で会った人がこう言ってたよ」という情報を共有してくれるので、いい環境だな、と思いますね。

──アンケート結果を特別に公開されていましたが、想定内だった部分、想定外だった部分、意外なリアクションなどはありましたか?
齊藤 アンケートは、ふだん提案広場で発言しない方々も数多く答えてくださいまして。プレゼントも何も差し上げないアンケートだったのですが、8万人ものプレイヤーに答えていただけたのは、すごいことだと実感しています。提案広場ではきびしいご意見をいただくことも多いですが、そういったご意見を寄せている方たちは、しっかりと遊んでくれている方たちでもあるんですね。それ以外の、普段あまり書き込みもしない方のご意見、暖かい応援などのご意見も含めてたくさんいただけたことで、「もっともっとがんばらなければ」と強く感じました。
藤澤 “開発・運営だより”にも書きましたが、個々の要素を見ると「もっとがんばってほしい」というご意見もありましたが、「今後も遊び続けたいか」という項目では「まだまだ遊びたい」という意見が圧倒的多数でした。それは「これからも遊ぶから、もっとがんばれ」という叱咤激励だと感じましたし、とてもありがたいと思っています。

──オンラインゲームではコンテンツのおもしろさを求めてプレイする人もいれば、そこで出会った人たちとのつながりがある限りプレイするという人もいると思います。居心地がよくて、その居心地を味わいたいからプレイを続けるという。そういった部分をより広げ、満たすような施策を今後考えていらっしゃるのでしょうか?
藤澤 ええ、考えています。バージョン1.2の開発開始時に、僕から全スタッフに掲げたテーマは、「もっと『ドラゴンクエスト』らしく、もっとオンラインゲームらしく」というものでした。そのうえで、いまの『DQX』に足らなくて、オンラインゲームとしてなくてはならないものとして、ふたつの要素を挙げたんです。そのうちのひとつが「ほかのプレイヤーがいっしょにいるからおもしろい」。いま言われたコミュニティー部分の強化についてですね。もうひとつは「キャラクターをもっと個性化できるようにしましょう」。つまり「自分は人と違う」という個性を、ちゃんとゲームの中で表現できるようにしましょうというものです。このふたつをとくに重視しようと、スタッフと共有しています。

──ふたつ目の“人とは違う”というのは、強さやレベルではなく、“個性”ですか?
藤澤 これは完全に“見た目”ですね。いまはまだレベルの制限もありますし、世界に存在している装備品の数もまだ少ない状況ではあるんですけれど、今後も装備品の数はどんどん増やしていきますし、装備品自体にもオシャレができる要素を加えていきたいな、と思っています。

──それは楽しみです。ちなみに、装備品は上下を着たときと、上だけを着たときでは見た目が変化するなど、プレイヤーが工夫して着こなしを楽しんでいる印象がありますが……。
藤澤 着回しが利くようにというのは、開発途中からデザイナーと相談して意識はしていたので、想定していなかったわけではないんですけれども、「これとこれをいっしょに着るとかわいいよね」という部分は、こちらが考えていた以上に、プレイヤーの皆さんが工夫されていると思います。
齊藤 装備品の種類としてはまだまだ足りないと思いますし、もっと遊び心のあるものを入れてもいいと思いますけれど、その中でも“冒険者の広場”のライブカメラに映る方々はですね、いろいろと手を変え品を変え、多彩な格好でカメラに映りにきていますね(笑)。たまに私も映りにいくのですが、じつは常連さんがたくさんいるんですよ。

──周囲を見渡せば、齊藤さんのキャラクターを見つけられるかもしれませんね(笑)。
齊藤 私はガタラにしかいないですから(笑)。

──いつか聞きたいと思っていたのですが、齊藤さんのその“ドワーフ愛”はどこから生まれているのですか?(笑)
齊藤 そこは、やっぱり、ねぇ。かわいいんですよ(笑)。
藤澤 作っている側からすると、ドワーフはすごくかわいいのですが、このかわいさが伝わるのに、ちょっと時間がかかるんだろうなと思ってたので、親の責任としてドワーフのよさはアピールはしていかないとな、と(笑)。

──ドワーフのかわいさはまだまだ広まっていないのですか?
齊藤 使用されている種族の割合でみれば、以前と比べればずいぶん平均化してきたとは思います。まぁ、まだ開きはありますけども(笑)
藤澤 これはどこにも言っていない情報ですが、ドワーフの女の子は、全種族の中でもっとも“人間に戻らない率 ”が高いんですよ。つまり、ドワーフを選んだ人は、見た目も含めてドワーフを愛してるってことですよね。使っている人の愛着が深いというところがドワーフの特徴なのかな、と思うんですよ。

『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』プロデューサー齊藤氏、ディレクター藤澤氏ロングインタビュー【中編】_05
▲”人間に戻らない”率ナンバーワンの、ドワーフ女子。この愛くるしさに魅了される人は後を絶たない!?

──ガタラの外にはプテラノドンも休んでいますしね(笑)。
藤澤 よくご存じですね(笑)。知らない方のために説明すると、僕が自分のTwitterで「ガタラを出てすぐの高い岩山のてっぺん。夜になると、昼間飛んでいるプテラノドンが休んでいること、どれくらいの人が気づいてるかなー」とつぶやいた件ですよね。

──そのつぶやきのように、プレイヤーが気づいてないモンスターの生態というのはまだまだあるのですか?
藤澤 ええ、たくさんありますよ。プテラノドンのようなアイデアは、ほかにもたくさん用意しています。気づいている方は気づいていると思っていたのですが、あまり広まっていなかったので、今回はみずからつぶやいたんですね。言い過ぎるとプレイヤーさんの楽しみを奪ってしまうことになりますので、あまりたくさんは言いませんけれども(笑)。

──モンスター以外の生き物も各地にいますよね。たとえばゲルト海峡のコウモリですとか。
藤澤 あのコウモリは、開発途中に気づいて、僕もビックリしたんですよ。
齊藤 上を見ないと気がつかないですからね。

──何気ない日常でも注意深く観察すれば発見があるというわけですね。
藤澤 そうですね。逆に言うと、プレイヤーさんの“気づき”というか、発見ポイントがあるということは、担当しているスタッフががんばって作っている部分ですので。おそらく、まだほとんど誰も気づいてないような小ネタもありますし……。たとえば、アグラニの下層にいるネズミとか。

──ネズミ……いましたっけ?
藤澤 発見するのにコツがありまして(笑)。下層に荷台があるんですが、その荷台に近づくとネズミは隠れちゃうんです。ですので、ちょっと離れたところから見ないと発見できないという。さすがにマップデザイナーのチーフに、「それ何のため?」とは言いましたけど(笑)。もちろん、褒め言葉として。

★変わり続けるこの世界の歴史を、皆さんといっしょに積み重ねていきたい
『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』プロデューサー齊藤氏、ディレクター藤澤氏ロングインタビュー【後編】に続きます!
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ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン
メーカー スクウェア・エニックス
対応機種 WiiWii / Wii UWii U
発売日 Wii U版:2013年春発売予定 Wii版:2012年8月2日発売
価格 Wii U版:価格未定 Wii版:通常版は6980円[税込]、Wii USBメモリー同梱版は8980円[税込]
ジャンル RPG / 冒険・ファンタジー
備考 ネットワーク対応、USBメモリー16GB以上必須 製作・開発:スクウェア・エニックス、ゼネラルディレクター:堀井雄二、キャラクターデザイン:鳥山明、音楽:すぎやまこういち、プロデューサー:齊藤陽介、ディレクター:藤澤仁