2012年11月18日に北米で、同30日にヨーロッパでWii Uが発売された。そして今週末、ついに日本にもやってくる。すでにお伝えしている通り、ニューヨークではローンチイベントが行われ大盛況。ファミ通.comでも記者が購入したので、インプレッションをお届けする。
 なお、本記事は北米販売版のWii Uでのインプレッションであり、日本版とは本体にインストールされているソフトなどが異なるほか、ソフト・ハード両面で細かな動作仕様が異なることが考えられる。あらかじめその点を割り引いて参考にして頂ければ幸いだ。

 購入したソフトは『New スーパーマリオブラザーズ U』と『ZombiU』。すべてをプレイして把握したわけではないが、そこにはいくつかの驚きがあった。中でも、これまでビデオゲームにつきまとっていた我慢や妥協を強いる制約のいくつかを見事に取り除きつつ、新たなゲームの遊びを実現していることに大いに驚いた。

北米で買って遊んでわかった、Wii Uというハードがいかにゲームから我慢と妥協を取り除くかということ_01
北米で買って遊んでわかった、Wii Uというハードがいかにゲームから我慢と妥協を取り除くかということ_02
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▲11月18日に北米で、30日にヨーロッパで発売されたWii U。いよいよ今週末日本にもやってくる。(右端のみNintendo UK提供)

例えばテレビとの関係が変わる

 例えばそれはテレビとの関係だ。これまで据え置き機のゲームは、家族とのテレビ画面の奪い合いだった。自分の部屋とテレビを貰う以前、ゲームを遊ぼうとしたらお父さんが野球中継を観ている間は我慢したり、お姉ちゃんがドラマを観ようとして強制終了されたことはなかっただろうか?
 近年の据え置き機の至上命題は、いかにリビングのテレビ画面を専有するかにあったと言える。テレビに繋がれたDVR(デジタルビデオレコーダー)やケーブルテレビのセットトップボックスなどではなく、いかにゲーム機の電源をオンにしてもらうかという問題。だからこそ各社が投資を惜しまず、特定のテレビ番組や映画をゲーム機の中で観られるようにしたり、テレビ/レコーダー機能を取り込もうとしていたわけだ。

 でもWii Uでは、ソフト次第だが(今回買ったソフトなら『New スーパーマリオブラザーズ U』ならオーケーで『ZombiU』は無理)、Wii U GamePadだけで遊ぶこともできる。テレビ画面を家族が必要とするなら喜んで明け渡せるこの解決法は実にユニークだ。
 Wii U GamePadにはリモコン機能もついていて、一度自分の家のテレビに対応するよう設定しておけば、チャンネルを打ち込めばその通りに切り替わり、音量の調節もオーケー。メイン画面をWii Uの入力に戻せるよう、映像ソースのインプット切り替えのボタンも用意されている。
 これはつまり、テレビ自体を操作したいならテレビのリモコンを使わなければいけないことからの解放でもある。

1.テレビ画面でゲーム
2.その後家族がテレビを見たがったのでチャンネルを変えてやる
3.家族が見終わったのでふたたびテレビ画面でゲーム
4.寝静まったのでテレビを消して手元のWii U GamePadとヘッドフォンでプレイ

 という程度の流れならば、一度もテレビのリモコンを発掘せずにWii U GamePad上の操作だけで対応することも可能だ。ちなみにリモコンをなくすことに定評がある記者としては、ゲーム中のテレビの音量調節も手元でできるのが嬉しいところ。北米取材では、これがちょっと物珍しくて、ホテルのテレビの音量を変えている動画も撮ってみた。

 ちなみに、北米とヨーロッパの一部地域向けには“Nintendo TVii”というテレビ番組を始めとした映像コンテンツと連携するサービスもあるのだが……と書こうとしたところで日本版も発表。2012年12月8日から配信されるネットワークアップデートで使用可能になるとのこと。
 日本版サービスは独自のものになり、インタラクティブ・プログラム・ガイド提供のサービスにより、「番組のあらすじや、出演者情報、出演者のプロフィールなどを閲覧」可能で、登録した番組やキーワード、出演者をキーにおすすめ番組を自動的に提案する機能や、「『Nintendo TVii』から直接テレビ番組を変更できる赤外線チャンネル切り替え機能(オプション:有料)も提供」(インタラクティブ・プログラム・ガイドのプレスリリースより)するとのこと。
 また、これらの機能はWii U Gamepad上での表示・操作が可能で、テレビ視聴を妨げることなく、情報の検索や閲覧を行えるという。
 Wii Uはそのほか、定額映像配信サービスのHulu(記者使用の北米版では大手配信サービスのNetflixなども対応)にも対応しており、サービスを契約していれば、テレビ画面だけでなく、Wii U GamePadでの映像視聴も可能となっている。つまり、見たいものがあれば見たいスタイルでそれを実行可能なのだ。

プラットフォーム本体と紐付いたコミュニティ“Miiverse”

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▲感想、攻略、さまざまな情報が飛び交うMiiverse。不適切な投稿はユーザーが報告できるほか、管理者も巡回している模様。写真はある投稿が削除されている様子。

 先ほどはテレビ周りの機能を例に挙げたが、Miiverseも実際に触ったことで真価がわかった機能のひとつだ。
 あるゲームについて、みんながどんな感じに遊んでいるか知りたいとか、ちょっと感想を語り合いたいけど周囲にやってる人がいないとか、攻略法がわからないといった時、掲示板やWikiなどのコミュニティ(あるいは海外で言えばフォーラム)を見る人は多いと思う。

 でもそうしたことで、思わず求めた以上のネタバレを見てしまうこともあるし、そもそもそういった行為には、“別にPCを立ち上げなきゃいけない”とか“スクリーンショットを撮る方法が別に必要”とか、まぁいろいろな我慢や妥協がある。

 Miiverseは、いわばWii Uに内蔵されたちょっとマイルドな掲示板/フォーラムだ(記者はフレンド0人なので詳しく検証できないが、もちろんSNS的でもある)。
 マイルドと書いたけれども、投稿されている内容は実にさまざまで、感想、攻略法相談、イラスト投稿、ネタ投稿などなど、本当にいろいろある。ネタバレ(海外ではSpoilerと呼ぶ)の投稿だってあるし、ゲームの途中で起動してスクリーンショットとともに疑問点を投稿するといったこともできる(ゲーム中にMiiverseを起動した場合は、自動的にその時点の画面のスクリーンショットが保存され、投稿するかどうか選べる)。

 ちなみにネタバレ投稿の内容は、Miiverseのタイムライン上では伏せられているので比較的安心。閲覧したい人だけ、クリックして開くことができる。ネタバレかどうかは投稿の際に自己申告することもできるし、他人の投稿に対して報告を行うこともできる。
 
 コミュニティがうまく行くかはソフト次第の部分も大きいと思うが、例えば『ZombiU』の場合は、『ニンテンドーランド』(北米では日本のプレミアムセットにあたるデラックスセットにバンドルされている)と『New スーパーマリオブラザーズ U』に続く、サードパーティとしてはトップ規模のコミュニティが出来ており、非常に盛り上がっている。中にはこのコミュニティの盛り上がりを見て「なんか盛り上がってるけど、買うべき?」なんて質問をしている人もしばしば見かけるぐらいだ。

多彩な機能の組み合わせの妙で新たなプレイ感覚が生まれる

 Wii Uには、これまで外部デバイスやサービスで実現していたようなさまざまな機能が用意されている。一個一個が実によく練られて作られていたり、触ると組み合わせの妙に感動するものの、それまでまったくなかった機能というのは意外と少ない。例えばMiiverseも上に書いたような感想に対して「自分はPCでネットを巡回する方がいいし」と言い切られると「そうかもしれませんね」としか返せない。
 だが、いろんなことが“それをしたいと思えばWii U内で完結できる”ようになっていること、さまざまな機能が組み合わさることで新たな遊びのスタイルが浮かび上がってくることこそが大事なのだと考える。

 例えば『ZombiU』ではWii U GamePadのディスプレイやスピーカー機能をうまく使っているが、マルチディスプレイ自体はニンテンドーDSシリーズにあるものだし、コントローラーにサウンド機能があるのはWiiにもあった機能だ。
 でもこれを組み合わせると新たなプレイ感覚が生まれるのだ。『ZombiU』では、Wii U GamePadをゲーム中に登場するタブレット端末として使う。基本設定での役割分担は以下のようになっている。

・テレビ プレイヤーのいる環境そのものを映す。メインの環境音を鳴らす。
・Wii U GamePad 手元のマップやインベントリ(アイテム袋)などを映す。プレイヤーに語りかけてくる謎の男ペッパーからの無線通信を鳴らす。

 つまり、テレビには周囲の世界全体を映像と音声で出力し、Wii U GamePadにはプレイヤー個人に関わる映像と音声を出力するという形で統一されている。『ZombiU』はサバイバルホラーゲームだ。世界(テレビ画面)を恐る恐る進み、周囲にビビりながら個人的な情報をチェック(Wii U GamePad)、ふたたび世界(テレビ画面)を進む……というくり返しが、プレイの雰囲気を実に高めてくれるのだ。
 設定を変更することでサウンドをまとめることもできる(これは例えばヘッドフォンでプレイする際に向いている)のだが、一度はデフォルトのサウンド設定でプレイするのをオススメしたい。

まとめると……。

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▲海外ゲーム担当として地味に気になるのが、ニンテンドーeショップでインディーゲームが結構いい位置にコーナーを持っていること。PCやXbox 360で配信されているアクションRPG『Trine 2』のWii U版『Trine 2: Director's Cut』が人気の模様。

 記者の専門領域は海外ゲームと関連技術である。その観点から遊びを構築する構造面の話を長々としてきた。アップデートにかかる時間や、メニュー間の移動の際の遷移時間など、ちょっとばかり気になる点もあったが、そこはアップデートでの今後の改善に期待するとして、いま多くを語ろうとは思わない。

 むしろ気になる部分がまだまだある。ビジネス面でも、ニンテンドーeショップでのパッケージタイトルの販売が今後どのように展開していくのかとか(個人的には、PCの配信プラットフォーム“Steam”のようにセールなども行うようになったら、などと妄想したりもする)、インディーデベロッパーはこのハードをどう活かすのかとか(Wiiで出た『World of Goo』はWiiの特性をうまく活かしていて楽しかった)気になるし、Ubisoftが自社タイトルのユーザー向けプラットフォーム“Uplay”のアプリをWii U向けに配信(国内展開は不明)と聞けば、Miiverseとの関連からゲームメーカーの情報発信の新たな可能性を思わずにいられない。
 結論としては、非常に多様な要素が揃ったこのハードに、今後どういったタイトルが出てくるのか気になって仕方がない。といったあたりでこの長い原稿を終わりにするものであります。

■著者紹介 ミル☆吉村
ファミ通.comの洋ゲー脳編集者。たまーに紙の仕事もしたりしなかったり。基本的には、アメリカ各地、カナダ、アイスランド、シンガポール、中国、韓国と、世界中を飛ばされまくる人。今週末、また行ったことのない国に飛ばされる予定。最近はちぃと取材が忙しいので、朝テレビをつけずにWii U GamePadで『New スーパーマリオブラザーズ U』ちょっとやって、Miiverseの投稿を眺めて済ますゲームライフ。