“新たな心と出会うRPG”開発者インタビュー

『テイルズ オブ ハーツ R』開発陣が語る“再構築”へのコダワリ【開発者インタビュー】_01

 心の出会いを描いた物語と、神秘の武具“ソーマ”を駆使する爽快なバトルが楽しめるRPG『テイルズ オブ ハーツ R』。当記事では、あらゆる要素が再構築(リ・イマジネーション)されている本作の楽しみどころについて、バンダイナムコスタジオの開発陣に訊くぞ。

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写真中央:プロデューサー 大舘隆司氏
写真左:制作プロデューサー 村北美夏氏
写真右:ディレクター 直井啓訓氏

――まずは、オリジナル版の『テイルズ オブ ハーツ』を振り返っていただけますか?

大舘 オリジナル版は、客観的に見て、ニンテンドーDSで最高の『テイルズ オブ』を志向したタイトルだったと思います。実際、相応のクオリティーとボリュームを実現していましたし、プレイステーション Vita向けの本作『テイルズ オブ ハーツ R』を発表したときの反響からも、期待度の高さが感じられました。

村北 皆さんが楽しんでくださった『ハーツ』を再構築するにあたっては、物語やキャラクターなどから感じられる“印象”はそのままに、変えるところは大胆に変えよう! という姿勢で臨みました。『テイルズ オブ イノセンス R』(2012年1月26日発売)で培ったノウハウも活きています。

――本作が発表されたときに話題となったのは、オリジナル版では主人公のライバル的存在として描かれた“カルセドニー・アーカム”の参戦ですね。

村北 ある意味では、新キャラクターが登場すること以上に、カルセドニーが仲間入りすることのほうが、『ハーツ』ファンの方に喜んでいただける新要素ではないかと思って、初報で真っ先に公開しました。オリジナル版では仲間になりそうでならなかったカルセドニーですが、彼があるタイミングで仲間入りすることで、物語の後半における主人公との関係も際立ちます。パーティー内での立ち位置や、ほかのキャラクターとの絡みにも注目してほしいです。

直井 バトルにおけるカルセドニーは、空中戦を得意とします。敵として現れたときは手強いですが、味方になると頼もしいですし、空中用の強力な術技やスキルも習得できるので、操作するのが楽しいですよ。(※編集部注:バトル中、操作するキャラクターは任意で変更可能)

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▲辺境の村で暮らしていた少年シングと、村の海岸へ流れ着いた少女コハクの出会いから始まる本作。結晶騎士団の隊長であるカルセドニーと、シングはどのような経緯で共闘することになる……?

――新キャラクターの“ガラド・グリナス”について教えてください。

村北 「45歳の男が新キャラクターなのか!」と驚かれた方もいらっしゃると思います(笑)。私たちが考えたのは、どんな仲間が加われば物語をおもしろく再構築できるだろうか、ということ。その結果、浮かび上がった答えが“パーティーを導く大人”だったんです。ガラドは、突っ走りがちなシングやヒスイ(コハクの兄)をなだめる役どころでもありますが、亡くした娘とコハクの姿が重なり、感情的になってしまうこともあります。

大舘 彼は、オリジナル版でも登場したような気がするくらい、自然に物語に絡みますよ。当初は、新キャラクターを出すなら女性がいいなぁとも思っていたのですが、村北たちの考えを聞いたら納得できて、いまではすっかり彼を気に入っています(笑)。

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▲ガラド・グリナス(声:石川英郎)
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▲ガラドは約20年前、“デスピル病”により妻と娘を亡くしたことがきっかけで、ソーマ使いになったという。コハクを蝕むデスピル病が特殊なものであることをひと目で見抜き、コハクを救う方法を見つけることが、デスピル病の根絶にもつながると考え、シングたちに同行するのだ。

――いのまたむつみ先生(キャラクターデザイナー)には、ガラドについてどんなリクエストを出しましたか?

村北 年齢などの設定はお伝えしましたが、デザインに関してはとくに指定しなかったです。初期構想の段階では、森とか山で狩猟生活をしている、みたいなアイデアも話していました(笑)。サングラスも最初は描かれていませんでしたね。

大舘 あるタイミングで、先生がサングラスを描いてきて、僕たちも「これはいいね!」となったんです。あとは、顔の表情がわかるようにグラスの濃さを調整していただいたり、森の中に住んでいたような装いを描いていただいたり。腰巻などは、狩猟生活の名残りですね。

直井 ガラドは戦いかたもユニークです。ほかの仲間たちとのバランスをふまえて、“中距離”タイプの攻撃をくり出せるキャラクターが加わったらおもしろそう! というわけで、彼には斧型のソーマを持たせ、それを投げて攻撃できる特徴をつけました。ソーマを投げた後、軌道を自在に操る派生技を使えるほか、思念術も駆使できます。経験に裏打ちされた彼らしい戦いぶりを、ぜひ楽しんでほしいですね。

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――バトルの新要素“チェイスリンク”について教えてください。

直井 バトルシステムに関して、オリジナル版をプロデュースした馬場(英雄氏)からは、「3Dで再構築するのであれば、オリジナル版のスピード感やエアリアル感を大切にしながら、新しい遊びを打ち出してほしい」と託されました。本作の“チェイスリンク”は、3Dのフィールドで非常にテンポよくコンボを続けられるシステムです。攻撃中に条件を満たすと、操作キャラクターが“チェイスリンク”モードに移行し、どんな状況からでも一瞬で敵に追いつくことが可能になります。

大舘 従来のシリーズ作品では、敵を吹っ飛ばしたら、走って追いかける必要がありましたよね。その点、チェイスリンクは本当にテンポがよくて、気持ちいいです。

直井 なおかつ、チェイスリンクは、瞬時に追いつく演出を“見るだけ”という形ではおもしろくないと思いまして。自由なタイミングで敵に追いついてコンボをつなげる以外にも、トドメの一撃として“チェイスフィニッシュ”をくり出したり、味方との協力攻撃“クロスチェイス”を発動したりと、いろいろなアドリブができるシステムに仕上げました。空中戦は難しそうというイメージを持たれている方も、チェイスリンクは簡単に使いこなしていただけるでしょうから、誰もが本作ならではのエアリアル感を味わえますよ。

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▲チェイスリンク中、敵を吹き飛ばしつつ○ボタンを長押しすると発動する“チェイスフィニッシュ”。
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▲チェイスリンク中、画面下部にある味方のアイコンが点滅したら、“クロスチェイス”を発動できるチャンス。アイコンをタッチして、華麗に仲間と連携しよう。

――ちなみに、メインシナリオがフルボイス化され、セリフはすべて新規録り下ろしとのことですが、オリジナル版と比べて、ボイスはどれくらい増えていますか?

大舘 オリジナル版も相当な量のボイスを収録していましたが、本作は、その倍くらいでしょうか。新たに収録するうえで気をつけたのは、ドット絵ならピッタリだったセリフや演出が、3Dモデルで描くとなると違和感を覚えることもある点。たとえば、キャラクターが両手をバタつかせながら「あわわわ」などと言うのは、ドット絵ならかわいいけれど、3Dモデルではおかしい。

村北 オリジナル版のシナリオを書いた山本(尚基氏)と、『イノセンス R』でもシナリオの再構築を担当した前田(圭士氏)が共同で、細かいところまで気をつけながらセリフなどを見直してくれましたね。

――シナリオもバトルも楽しみです。最後に、読者へのメッセージをお願いします。

村北 本作を発表したとき、「『イノセンス R』もおもしろかったから楽しみ」という声もあって、すごくうれしかったです。そんなご期待に必ずやお応えするべく、完成に向けてがんばります!

直井 いちユーザーとして遊んだオリジナル版は本当にすばらしく、大ボリュームの作品だったので、皆さんが抱いている愛と期待を裏切らない“再構築”に全力投球しています。ぜひ、お楽しみに!

大舘 僕はいま、開発中のROMをプレイしているところです。本作を遊ぶ前にオリジナル版で予習していただければ、いっそう楽しめると思いますが、逆に、本作のあとにオリジナル版を遊んでも楽しいはず。それくらい、“再構築”にこだわっていますよ!

※『テイルズ オブ ハーツ R』公式サイトはこちら


テイルズ オブ ハーツ R
メーカー バンダイナムコゲームス
対応機種 PSVPlayStation Vita
発売日 2013年春発売予定
価格 価格未定
ジャンル RPG / ファンタジー
備考 キャラクターデザイン:いのまたむつみ