ファミ通.comでは毎日何本ものニュースを掲載しているが、その中で記者が個人的に注目しているのが、バンダイのネット直販サイト“プレミアムバンダイ”のニュース。というのも、出来がいいのはもちろんのこと、「え、こんなの作っちゃうの?」というオモシロ商品がどんどん出てくるからだ。

 たとえば化粧品メーカーのコーセーとコラボレーションした、TVアニメ「スマイルプリキュア!」に出てくるコンパクトを本格派化粧品にしてしまった“スマイルパクト シャイニーフェイスパウダー”とか、TVアニメ「Fate/Zero」の劇中やエンディングに出てくるチェスを立体化してしまった“Fate/Zero サーヴァントモデル チェスピースセット”とか。
 「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」のネルフ型チョコレートケーキに綾波のフィギュアとロンギヌスの槍型フォークがついてくるなんてものもある。ファンだったら買うか買わないかはともかく、どんなものか気になるでしょ?

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インタビューで直撃! 思わずファンをうならせる通販サイト“プレミアムバンダイ”の舞台裏_01
「スマイルパクト シャイニーフェイスパウダー」
「Fate/Zero サーヴァントモデル チェスピースセット」

 そんなわけでプレミアムバンダイ関連の記事は結構盛り上がるものが多く、反応などを見ていると、財布と物欲の狭間で悩まされる人もよく見かける。でも、そもそもプレミアムバンダイって何なんだろうか? そりゃバンダイのネット直販サイトなのは間違いないけど、何で“プレミアム”なわけ? というわけで、プレミアムバンダイを運営するバンダイ ネット戦略室のデピュティゼネラルマネージャー・守屋英一郎氏と、プロモーション担当の押川晃子氏に話を聞いた。

ダイレクト販売サイトというだけでなく、簡易的なメディア機能のコンセプトも

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――まずは現在のプレミアムバンダイができた経緯を教えてください。
守屋 プレミアムバンダイは2009年の4月に始まったのですが、実はそれ以前から、幾つかの事業部がネットで限定品を販売していた時期があったんです。ただ、縦軸である事業部ごとに分かれたサイトになっていまして、現在のように横断して商品をご購入頂けるような構造にはなっていませんでした。
 その後、ダイレクト販売を強化していこうということになったのですが、弊社の場合は(製造)メーカーでありますので、基本的にマスマーケティング(一般市場)が中心です。ですので、大切な取引先の皆様に仕入れて頂いて、店頭に並べていただいている商品と同じ物を並べるわけにはいかない。そうなると差別化が必要なわけで、その答えのひとつが限定品だったんです。

――ダイレクト販売はしたい、でもおもちゃ屋に並んでいるものをそのまま、例えばオンライン特価とかで売るわけにはいかないということですね。
守屋 もうひとつ、バンダイはマスマーケティングをずっとやってきたわけですが、Webのメディアやソーシャルメディアなどが伸びるのにつれ、以前よりマス媒体(テレビ・雑誌など)の力が弱くなってきている。そういった中で、バンダイが毎月出すたくさんの商品を、たくさんの人に知って頂くにはどうするかという問題も別にありました。
 バンダイからもっと情報をプッシュするためには、もっと直接お客様と繋がっていなくてはならない。バンダイはキャラクターのマーチャンダイジング(商品化)が中心ですので、商品をフックにお客様を呼ぶ形がいいだろうということで、現在の通販サイトとしてのプレミアムバンダイが出来ています。簡易的な自社メディアとして、その中で新商品の情報をプッシュしていくというコンセプトもあるんです。

――オンラインのダイレクト販売サイト、そしてキャラクターに惹かれるファン向けの自社メディアとしてのふたつの性格があると。その中で、“プレミアム感”はどう出てきたのでしょうか。例えば限定品だからプレミアムと言ってしまうこともできると思うのですが、それなりに値段がして、それでも物がすごくいいという商品も多いですよね。
守屋 はい。プレミアムバンダイという名前には、「一般商品とは違うプレミアムな商品を作って、お客様に喜んでいただこう」という考えが込められています。バンダイの社員はやっぱり物にすごいこだわりがありまして、やるからにはお客様にとことん喜んでほしいという開発者の思いが強いですね。
 それだけでなく、これまでとは違うコア向けでニッチな商品を作れるようになえい、そのファンの心をくすぐるようなものを事業部の担当者が手掛けられるようになったということがあります。

――各ショップは組織図的にどういう関係にあるんですか?
守屋 各ショップがそれぞれ事業部が運営しているもので、例えば魂ウェブ商店ですとコレクターズ事業部が運営していますし、“ホビーオンラインショップ”はホビー事業部が、“キャラデコショップ”や“キャラ食ネット”などはキャンディ事業部といった感じです。
押川 事業部の中でもジャンルが分かれているような場合は、ひとつの事業部で複数のショップに分けてありますね。
守屋 その上にネット戦略室が運営するプレミアムバンダイがあり、それぞれのショップを横断して買うことができるという構図です。

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▲変わったケーキがいっぱいの“キャラ食ネット”。左から「魔法少女まどか☆マギカ キュゥべえフェイスケーキ」、「EVANGELION Cake ~月面ケーキ&渚カヲル~」、「仮面ライダーウィザード クリスマススペシャルセット」。
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――(一覧を見せてもらいながら)女性向けの商品もあるんですよね。“スマイルパクト シャイニーフェイスパウダー”の記事の反応はすごかったですね。
押川 あれはネットならではというか、あの広がりは驚きましたね。
――先ほどの店舗の話とも繋がってくると思うのですが、例えばあの商品、店舗に出すとしたらどういうお店に並ぶのがいいのかわからないですよね。おもちゃ屋なのか、化粧品店なのか……。ネットだったら欲しい人が直接買いに来てくれますけど。
押川 興味を持って頂いた時にダイレクトに飛んできて頂けるというのはとても魅力的ですね。

――キャラ食も毎回スゴいですよね。毎回キャラクターをモチーフに趣向を凝らしていて。
守屋 キャラクターのストーリーに合わせてケーキを作っていく作業なのでものすごい大変なんですけども、非常にいろいろ考えてもらっていますね。
押川 店頭で販売していた時はキャラデコというお子様向けの人気キャラクター付きのデコレーションケーキシリーズのみだったのですが、プレミアムバンダイではキャラクターの楽しさと食のおいしさにこだわった大人向けのケーキにチャレンジしようということで、今それが功を奏してどんどん新しい商品が出てきているのだと思います。

――限定商品の開発にあたって、レギュレーションなどはあるのですか? 例えば「これはプレミアム感が足りない!」というような。
守屋 そこまで厳密なレギュレーションはないんです。事業部が作る限定品は基本的にすべて載せていきます。あまりネット戦略室の方で断るようなことはありませんね。ちなみにプレミアムバンダイでは一般流通に乗っている商品も扱っているのですが、ここで売るというよりは、ここで見てお店で買って頂くという、カタログ的な扱いなんです。
押川 一般販売のものでも、ネットでの口コミや物の良さを伝える力はすごいので、マッチするようなものはプレスリリースで取り上げることもありますね。最近だと「グラップラー刃牙」のドリンク“刃牙闘士飲料”(バキファイタードリンク)はとても反響がありました。

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「刃牙闘士飲料(バキファイタードリンク) 10本セット」

――はい、もちろん紹介してます(笑)。それで、最初ニュースに釣られて「おっ」と思って来てみると、ほかにもグッと来る商品がないか、他のページもどんどん見ちゃうんですよねぇ。
守屋 ありがたいですね(笑)。毎日来ていただけるような更新感と、商品点数を出していくことは意識しています。

――ネット戦略室で限定商品の開発に関わったり助言することはありますか?
守屋 もう3年以上運営しておりますので、その間に蓄積された販売データなどは全事業部が自由に閲覧できるようになっています。それを開発者が見て、このキャラクターでこれぐらいの値段であれば以前にどれぐらい売れたかといったデータを参考にしてもらっています。それによってヒットの可能性を高めているかもしれませんね。成功事例の共有はよくできていると思います。
押川 ネット戦略室に各事業部の担当がいまして、話し合いながら調整をして適正値を探していくという感じですね。

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――ちなみに、今まで一番反応がすごかったものは?
守屋 プレミアムバンダイはそう簡単には落ちないサーバー構成になっているのですが、それでも2、3回落ちたことがありますね。
押川 最初はエヴァンゲリオンのケーキでした。
守屋 商品の販売個数だけで言えばもっとあるのですが、集中する商品としない商品がありまして、女性向けの商品はすごい集中するんです。「TIGER & BUNNY」の商品や、エヴァンゲリオンのケーキなどはアクセスが一気にガッと来るので、耐えられないことも出てきてしまう。女性心理として「早くしないとなくなっちゃう!」という感情があるのかもしれませんね。なくならないんですけど(笑)

――その辺りもプレミアム感が煽れているということですかね。
守屋 そうですね、それと女性向けの商品は口コミが広まりやすい感もありますね。

――普段ターゲットはどういった辺りを想定されているのでしょうか?
押川 プレミアムバンダイ自体は子供から大人まで全年齢対象なのですが、商品のラインアップから見ても分かる通り、基本的にはハイターゲット(大人)な男性が多いですね。ですが、女性の方も多いです。多分、皆さんが思っているよりも、多くのキャラクター好きの女性に支持を頂いています。
守屋 ただ、ライトユーザーが来ても親しみがわくようなサイトにはしたいと思います。
――そこはバランスを取りつつ、個々のページに行くとディープになることもあると。写真もすごい凝っていますよね。
押川 フィギュアなどでは、より魅力を伝えるために情報が揃ってきた段階で写真や商品情報を追加することもあります。
守屋 写真追加の情報を流すと、それでまた人が来る……というのも珍しい通販サイトですよね(笑)360度画像などもやっているのですが、アップすると皆さん見に来て頂けますね。
押川 『閃乱カグラ』のフィギュア(フィギュアーツZERO 飛鳥)で3D立体視を用意してみたこともあります。
守屋 商品以外でも、映画のキャンペーンなどにも力を入れているんですよ。
押川 普通はなかなか難しいのですが、バンダイならではの部分で、特典付きのチケットプレゼントなども行なっています。そのほかですと、作品とタイアップした毎日当たるキャンペーンや、仮面ライダーがお客様のご自宅にやってくる権利が当たるキャンペーンなど、定期的にさまざまなキャンペーンを行なっています。
――その辺りはやはり、一種のメディア的な機能の部分ですね。
守屋 そうですね。ファンの方がつねに遊びにくるようなサイト作りをしています。
――今日はありがとうございました。これからも思わずファンが唸る商品を期待しています!

「スマイルパクト シャイニーフェイスパウダー」(C)ABC・東映アニメーション
「Fate/Zero サーヴァントモデル チェスピースセット」(C)Nitroplus/TYPE-MOON・ufotable・FZPC
「魔法少女まどか☆マギカ キュゥべえフェイスケーキ」(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Partners・MBS
「EVANGELION Cake ~月面ケーキ&渚カヲル~」(c)カラー
「仮面ライダーウィザード クリスマススペシャルセット」(C)2012 石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映
「刃牙闘士飲料(バキファイタードリンク) 10本セット」(C)板垣恵介(週刊少年チャンピオン)1991