主要クリエイターにインタビュー~前編~

主要クリエイターインタビュー~前編~ 『アサシン クリードIII』プレスツアーリポート【第3回】_01

 18世紀のアメリカ独立戦争の背後でくり広げられるアサシン教団とテンプル騎士団の抗争を描く『アサシン クリードIII』。ここでは、2012年9月下旬にアメリカのボストンで開催された“ボストンプレスツアー”の様子をお届け。このプレスツアーのリポートは、全部で5回更新予定。気になる人は前回の記事をチェックしてほしい!

第1回:ゲームの舞台、ボストンの街紹介 2012年10月22日(月)更新
第2回:ボストンフリーダムトレイルツアー 2012年10月23日(火)更新
第3回:クリエイターインタビュー(前編) 2012年10月24日(水)更新
第4回:クリエイターインタビュー(中編) 2012年10月25日(木)更新予定
第5回:クリエイターインタビュー(後編) 2012年10月26日(金)更新予定

 ボストンプレスツアーの目玉は、前回紹介したボストンフリーダムトレイルだけではない! ツアー2日目の午後には、ボストンにあるイベントスペースで『アサシン クリードIII』のデモンストレーションが開催された。ファミ通取材班はそこで本作の開発におけるキーパーソンへのインタビューを行った。これから3回に分けて掲載するので、しっかり読んでほしい。

キーパーソン#1 クリエイティブディレクター アレックス・ハッチンソン氏

主要クリエイターインタビュー~前編~ 『アサシン クリードIII』プレスツアーリポート【第3回】_08
ゲームの開発を統括
クリエイティブディレクター
アレックス・ハッチンソン氏
Alex Hutchinson

――『アサシン クリードIII』は発表後、E3やgamescomなどのゲームイベントで数々のアワードを受賞し、世界中から注目されています。発売前の段階で、ある程度成功を収めたことに対してどのように感じていますか?
アレックス・ハッチンソン氏(以下、アレックス) 皆さんが本作を楽しみにしてくださっているのは、とてもすばらしいことですが、期待が大きい分だけプレッシャーも感じています。開発チームは3年間一生懸命がんばってきたので、いまはゲームの開発が終わってホッとしているところです。日本、そして世界の皆さんが、このゲームを楽しんでくれるとうれしいです。

――ユーザーはゲームのどこに期待しているのだと思いますか?
アレックス それが100%わかっていれば、リッチになれますよ(笑)。それは冗談として、このゲームの長所は、ほかのゲームと違うゲーム体験が味わえるところだと思います。開発当初はユービーアイソフトでも「18世紀のアメリカをゲーム化してもうまくいかない」という指摘がたくさんありましたが、我々開発チームは、これまでのシリーズ作とも違う、新鮮なゲームプレイを提供したいと思って制作を続けたのです。

――本作への期待が高まるにつれて、アレックスさんの発言が世界中のメディアに注目されることをどう思いますか?
アレックス 自分たちが手掛けているゲームの注目度が上がり、皆さんが「もっと情報が欲しい」と思ってくれるのは光栄なことです。もちろんスポットライトを当てられるプレッシャーもありますが、私は思っていることをストレートに発するタイプの人間なので、いつも出し惜しみせずに自分のありのままの気持ちを伝えるようにしたいと思っています。

――オーストラリア出身のアレックスさんが、カナダのモントリオールスタジオで、アメリカが舞台のゲームを、フランスのゲーム会社の依頼で作っていることを、不思議に感じませんか?
アレックス 『アサシン クリードIII』の開発チームには、さまざまな国のスタッフが集まっています。個人的には海外に住んでいろいろな国の人と触れ合うのは、とてもすばらしい経験です。ときにはトラブルもありますが、ワクワクすることのほうが多いですね。国や文化によって、歴史の見かたや考えかたが違うので、それがゲームを豊にしてくれると思っています。でも、ゲーム開発は本当に楽しいのですが、カナダは寒すぎるのが玉に傷だったりします(笑)。

――(笑)。本作の舞台となったボストンの街をどう思いますか? 文化や地理的特徴、または歴史など、気になったことを教えてください。
アレックス ボストンには島と丘がたくさんあり、都市としての機能も小さくまとまっているので、ゲームの舞台にはぴったりの場所です。現在のボストンはアメリカ有数の観光地ですが、ゲームではいまとは雰囲気がガラリと異なる、イギリス植民地時代のボストンの姿をお見せすることができるでしょう。

――『アサシン クリード』シリーズと言えば、歴史的建造物を観光気分で満喫できる点が魅力でしたが、今回も同じようにゲームで歴史に触れる楽しみかたはできますか?
アレックス 今回のプレスツアーで紹介したように、現存している建物や多くの教会が登場します。でも、本作でもっとも興味深いのは、ボストン虐殺事件やボストン茶会事件といった、歴史的に有名イベントに参加できることだと思います。ただ建物を眺めるだけではなく、その地で起きた歴史そのものを追体験できるのです。独立戦争で有名なバンカーヒルの戦いも、プレイヤーの皆さんに楽しんでもらいたいですね。

――アレックスさんがお気に入りのランドマークやイベントはありますか?
アレックス オールド・ステートハウスです。この建物の前で、アメリカ独立戦争のきっかけとなるボストン虐殺事件が発生しました。イベントのほうは、物語のネタバレになりそうなので、ちょっと慎重に発言しないといけませんが……ひとつ挙げるとしたら、ボストン茶会事件ですかね。船の上から紅茶が入った木箱を海に投棄したこの事件は、ゲームにぴったりの内容となっています。プレイヤーは、歴史の流れに身を置くことができますよ。

――これまで『アサシン クリード』シリーズは、アサシン教団とテンプル騎士団、国家と民衆、過去と現在、父と子など、いろいろな対立を描いてきました。今回は、おもにどんな構図が描かれるのでしょうか?
アレックス 本作では、“父と息子”の対比の構図が大きいと思います。まずは、イギリスが植民地のアメリカを子ども扱いするのがそのひとつ。そして、デズモンドと彼の父ウィリアムも大きなテーマのひとつです。ほかには、自然と都市の対比もありますね。自然世界である森林と都市の産業のせめぎ合いです。都市ではコナーのことを誰も知らないし、群集に紛れることもありますが、森林の中ではたったひとりで自然と向き合うことになります。

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――本作でもっとも表現したいテーマは?
アレックス その質問に、ネタバレせずに答えるのは難しいですね(笑)。皆さんがすべてのミッションをクリアーしたころにお話をしたいと思いますが、現時点で言えるのは、「コナーとはいったいどんな男で、どの世界に属する人間なのか?」ということ。彼はネイティブ・アメリカンなのかアメリカ人なのか、アサシンなのか独立運動家なのか。コナーがみずからのあるべき姿をどうやって発見するか、その道のりが本作のおもしろいところです。前作までの主人公エツィオは生粋のイタリア人で、裕福な家庭に育ったいわゆるインサイダーですが、コナーは貧しい育ちのアウトサイダーです。自分はアウトサイダーだと意識している人には、共感してもらえると思います。

――『アサシン クリード』の1作目は、中世ヨーロッパが舞台と思ってプレイしたら、突然現代に生きる青年デズモンドが出てきて、ビックリしました。それ以来、シリーズの新作が出るたびに、いろいろ驚かされましたが、今回もシリーズのファンが驚くような仕掛けがあると期待していいのでしょうか?
アレックス そこに関しては、ぜひご期待ください! いまは詳しく話せませんが、ディスクを入れてゲームをスタートした途端に、絶対にびっくりすると約束します。

――触りだけでも教えてもらえませんか?
アレックス それは絶対にダメです(笑)。でも、すばらしい体験ができるのは確かですよ。

―― 残念です(笑)。最後に、本作を楽しみにしている日本のファンにひと言お願いします。
アレックス 日本のゲームをプレイして育った私としては、日本のプレイヤーにも本作を受け入れてもらいたいと思っています。私は、自分が作ったゲームは必ず日本版を買うんです。自分のゲームを日本語でプレイしたときの、ちょっと変わった感覚がおもしろくて。本作は、とにかくスケールの大きさにこだわって作りました。プレイヤーの皆さんには、不思議な出来事に驚嘆する気持ちや、フロンティアやボストンを自由に探索出来る壮大な気分を味わってもらえたらうれしいですね。

キーパーソン#2 シニアプロデューサー フランソワ・ペラン氏

主要クリエイターインタビュー~前編~ 『アサシン クリードIII』プレスツアーリポート【第3回】_09
コンセプト設定や品質管理など
シニアプロデューサー
フランソワ・ペラン氏
Francois Pelland

――本作におけるフランソワさんの役割を教えてください。
フランソワ・ペラン氏(以下、フランソワ) シニアプロデューサーという仕事は、プロジェクトによって異なります。『アサシン クリードIII』では、コンセプト作り、ゲーム制作、出荷にいたるプロセスのなかで、やるべきことが変化していきます。開発当初はこのゲームに合ったチーム、アイディア、内容、ゲーム設定、既定、目的を組み立てました。開発が進むにしたがって、最初のコンセプトからブレずにクオリティーが維持されているか、そして予定通りに開発が進んでいることを確認する、という作業が増えていったのです。

――本作の開発チームは、シリーズでもっとも規模が大きいとうかがいました。大所帯を管理するのは、たいへんだったのでは?
フランソワ おっしゃる通り、今回のチームはシリーズ最大規模で、それだけ大きなチームを管理するのは困難でした。私たちのチームは長年いっしょに仕事をしてきて、『II』の直後にはもう、『III』の開発に取りかかりました。とても苦労したのですが、優れた人材に恵まれていたので、開発を楽しむことができましたね。

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――ゲームのクオリティーを上げるために、どのような工夫をしたのですか?
フランソワ まず初めに、ゲームのクリエイティブな方向性をチーム全員に明確に把握してもらうために、“ターゲット・ゲームプレイ・フッテージ”と呼ばれる短い映像を作りました。これは、『アサシン クリードIII』がどんなゲームであるかを映画のように表現した内容で、雪に覆われたフロンティアをコナーが動き回るシーンなどが描かれていました。これを3年前にきっちり作り、チームの重要なコミュニケーションツールとして活用したのです。

――ゲームの舞台がヨーロッパからアメリカに移り、コナーという主人公が登場しました。これはマーケティングを意識したのか、それともクリエイティブな決断だったのでしょうか?
フランソワ 完全にクリエイティブな決断です。ゲーム史のなかでも、エツィオはもっとも魅力的なキャラクターのひとりに数えられる存在です。しかし、エツィオのストーリーは前作で完璧な終結を迎えたので、いい機会だったと思います。我々は新しい作品を作るためにコナーという人物を登場させたのです。

――『アサシン クリード』シリーズは、今後どのように展開していくのでしょうか?
フランソワ ゲームとしての『アサシン クリード』は、我々が持つ大きなブランドなので、たくさんの時間を費やして、将来のプランやストーリーを考えています。現時点ではそれ以上は言えません。さらに、ゲーム以外のメディアも拡張展開していく予定があります。『アサシン クリード』の世界は奥深いので、どんな方向にも進めると思っています。今後の展開にぜひ注目してください!

キーパーソン#3 アニメーションディレクター ジョナサン・クーパー氏

主要クリエイターインタビュー~前編~ 『アサシン クリードIII』プレスツアーリポート【第3回】_10
キャラクターのモーションを制作
アニメーションディレクター
ジョナサン・クーパー氏
Jonathan Cooper

――まずはジョナサンさんの役割について教えてください。
ジョナサン・クーパー氏(以下、ジョナサン) キャラクターのモーションを担当するアニメーションチームに指示を与えています。アニメーションチームはモントリオールスタジオ、ケベックスタジオ、アヌシースタジオ、シンガポールスタジオに分かれていて、それぞれのスタッフの仕事のクオリティーやスタイルを考えて仕事をしました。

――アニメーションチームの規模はどのくらいですか?
ジョナサン アニメーターだけで50人ほど。そのほかにも数人のプログラマーがいます。

――本作のアニメーションの特徴は?
ジョナサン 主人公がエツィオからコナーに変わったので、すべてのモーションを作り直しました。ジャンプしたり、走ったりと、開発チームが有する優れた技術と物理演算を利用して、流れるようにスムーズな動きを実現しました。

――もっとも苦労した点を教えてください
ジョナサン フロンティアは地面の高低差が激しいので、コナーの足がきちんと地面に立っているように見せることに苦労しました。物理演算エンジンをフル活用して、方向転換する際は身体を傾けたり、軸足に力を溜めてその反動でスピードを上げるように見せたのです。フィールドのわずかな起伏にも反応する、コナーのステップに注目してください。

――コナーは人間離れした運動神経を持っているので、モーションキャプチャーで役者が演じるには苦労したのではありませんか?
ジョナサン そうですね。通常の人間ではコナーの超人的な動きを再現できなかったので、機械を身体につけて高くジャンプし、腕をスイングしたりして、それをもとにアニメーションを起こしました。この作業をしているときがいちばん楽しかったですね(笑)。

――ジョナサンさんがぜひ見てほしい、コナーのアニメーションはありますか?
ジョナサン 暗殺がとてもクールだと思いますが、動物と関わるところも好きだったりします。本作では、街を歩いている犬や鶏などの動物をなでたり、餌を与えたりできますよ。

――動物をかわいがるといいことがある?
ジョナサン いえ、とくにメリットはなく、ただかわいいだけですけどね(笑)。

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アサシン クリードIII
メーカー ユービーアイソフト
対応機種 PS3プレイステーション3 / X360Xbox 360 / Wii UWii U
発売日 2012年11月15日発売予定(※Wii U版は2012年12月8日発売予定)
価格 各7700円[税込]
ジャンル アクション・アドベンチャー / 暗殺
備考 開発:モントリオールスタジオ