まず最初に謝らなきゃいけない。Take-Two Interactive Japanの前広報のMさん、スンマセンでしたっ! いやまぁそのなんだ、ファミ通.comの洋ゲー脳野郎であり、血が出ないゲームをやっていると編集部員に驚かれる(失敬な! 『ラブプラス』どころか『タイムリープ』だってやるわい)ワタクシことミル☆吉村ですが、E3だなんだというたびに「ユー、『XCOM: Enemy Unknown』やろうよ、結構出来いいよ」と前広報さんにオススメされてたのに、「そんなことよりシューターの方の『XCOM』どうなった」とか言ってうやむやにして逃げまわってたんですな。
理由はいくつかあって、まずはワタクシ、ストラテジーゲームがかなり苦手なんです。ファミコン時代の我が家には「ゲームはクリアーするまで新しいのを買ってもらえない」というルールがあったんですけど、『SD戦国武将列伝 烈火のごとく天下をとれ』(バンプレスト)を買ったあと、「あぁ、俺もうソフト買ってもらえないじゃん」って思ったぐらい。まぁ嘘ついて回避したんだけども。『シヴィライゼーション』シリーズもいくつかやったけど、致命的な戦況の現実逃避にシヴィロペディアを読む時間のほうが次第に長くなる派であります。
もうひとつは、最近音沙汰ないシューター版『XCOM』の方が本当に気になってたわけです。だって黒いネバネバの何かとか、幾何学的な立方体とかが敵に出てくるんだもの。ヒト型エイリアンなんて何万体もゲームで撃ってるけど、こっちは意味わかんなくて超怖い。
だから本作へのイメージは「今更「やっぱストラテジー版も作ります」だと?」ぐらいのテンションだったんです。元々ストラテジーゲームなんだから、オリジナルのファンにしてみれば「シューターの方が突然変異だろ」って反応がフツーだろうにね。
で、そんな具合に完全スルーで来た『XCOM: Enemy Unknown』なんですけども、最近ゲームプレイ映像見たら俄然「なにこれ、おもしろそうなんですけど……」と興味が湧いてきたんですヨ。あぁ、長い前置きだけど、文字数稼ぎとかそういうんじゃないですからね。編集部員が書く場合は何文字書いても原稿料0円だから。
宇宙人とか新兵に人権なんざねぇよ! というイカシた精神にあふれたストラテジーゲーム
さて本作は、1994年に出た『X-COM: UFO Defense』から始まる由緒正しいストラテジーシリーズ(Steamでまとめ買いできるよん)のリブート作品になります。ちなみに1997年に『X-COM 未知なる侵略者』としてメディアクエストからプレイステーションでも出ていたりするんですが。
簡潔に説明すると本シリーズは基本的に、「UFOで宇宙人どもが地球侵略してきたんで、部隊を各地に派遣して宇宙人ドモを倒しつつ、新武器を開発したり、宇宙人を解剖したり尋問して、とっとと撃退しちまえ」というもの。
ゲーム面でも基本は変わっていなくて、昔の『X-COM』も、今回の『XCOM: Enemy Unknown』も、施設を拡大したり、各部署に命令したり、金策に困ったりする組織運営パートと、ターンベースで宇宙人と戦う戦闘パートに分かれております。
基本的には平時には組織運営を行ってるんですが、「あれくれ、これくれ」という部下の頼みと、「ちょっとお前、こちらお得意さんだから良くしてやってくれな」という謎の評議会からの指令をへいへいとこなしつつ、奪ったエイリアンテクノロジーを研究し、武装が足りなければ開発を行い、施設を建てすぎて電力が不足したら今度は発電所を設置し……と、帳簿のやりくりと上下の板挟みな感じが中々の悲哀。
評議会は各国政府の皆さんがパトロンなので、各国のパニック度が上がったりすると怒りの脱退をちらつかされたりもするわけです。だから監視衛星をあげてやったり、迎撃機を配備してやったりもするんですが、拉致事件が同時に3件発生されたりすると、「南アフリカ、ロシア、インドかぁ……報酬は南アフリカがオイシイけど、評議会の定例報告の前にこれ以上インドのパニック度あげたくないし、クリアーしやすいのはロシアっぽいんだよなぁ……」と、イヤーンな悩みにまいっちゃうのであります。
というわけで、各地で事件が起きると緊急出動して戦闘パートに突入です。んで、ココがワタクシがグッと来たポイントなんですが、『X-COM』当時にはもちろんなかった、TPS(三人称視点シューティング)風のカバーリングやアクション中のカットシーンなんかが実にうまく組み込まれているんですね。
フィールドの様子は記事の後半に死ぬほど貼ってありますので省略しますが、見下ろし型のビューになってます。キャラクターが進んでいくと視界が開け、敵を発見したりするという辺りは実にオーソドックスな感じです。
んで、壁やオブジェクトなんかにユニットを接するように置くとカバーリングに入り、命中確率を下げてくれるんですな。ユニットは基本的に2回行動が可能で、2回分を移動に使うも、1回を移動、1回を攻撃に使うというのもアリ。当然、移動してカバーリングを確保してから攻撃というのがベターなんですけど、まぁそう毎回都合よく1回分の移動距離にカバーリングポイントがなかったりする。このバランスが結構絶妙です(ちなみに回避率には高低差も影響してくる)。
で、カットシーンは、攻撃時や、室内への突入時なんかにカメラがグッと切り替わって、勇ましくドアを蹴破る様子なんかが表示されます。本作の戦闘はターンベースなんで、それなりにじっくり考えることができる。ここで思考や感情のテンポがちょっと落ち着くんですね。でも逆に、攻撃時とか突入時なんていうのは考えぬいた行動の成否が出る場面ですから、グッと力が入るわけです。そういった瞬間にカメラもちゃんと寄って演出してくれるので、気持ちがさらに高まってヒジョーにナイス。
各キャラクターにはクラス(職業)と成長の概念があって、等級が上がるとクラス固有のスキルも覚えていきます。このスキルや装備を組み合わせて、どう部隊を編成するかというのも腕の見せ所のひとつ。シチュエーションによって複数人のスキルがコンボのように連動して効いてくることがあるので、狙った通りのパターンにはめられた時は「宇宙人どもめ、死ねぇっ!」と爽快な気分になれること間違いナシ(コンボシステムとか、アクティブスキルが連動して発動するような仕組みがあるわけじゃないです。詳細は以下)。
ちなみに、兵隊さんたちの命は映画「スターシップトゥルーパーズ」並に激安で、“復活の呪文”なんてないので、死ぬ時は死にます。でもその無常感がいい。プレイが進むに連れてプレイヤーの中に勝手に思い入れやストーリーが築かれていくので、「こいつ、あの激戦から生還したのに、こんな所で死ぬなんて……」としんみりすること間違いナシ。兵隊さんは名前とか顔を好きに変えることもできるので、古今東西の死にキャラを揃えて哀愁の突撃部隊を結成するのもいいでしょう。
もちろん宇宙人の扱いも解剖したり尋問したりやりたい放題なわけで、そこら辺も「スターシップトゥルーパーズ」的な価値観であります。まぁその、『X-COM: UFO Defense』で、グレネードのタイマー弄って特攻部隊を作る(確か、特攻して死亡する-->グレネード落ちる-->0ターンで爆発して巻き込んでおいしい)とかいうテクを昔聞いた時には「ひどいことするもんだなぁ」と思いましたが、そんなワタクシも、開幕から部隊を一気に展開させたい時に、とりあえず新兵を前方に走れるだけ走らせて人間レーダー兼囮役にするぐらいのことはやりますので、大きなことは言えません。
ノーマル難度でも油断すると鍛えた兵が一瞬の判断ミスであっさり死んだりしますので、ゲームとしてはそれなりにハードコアなんじゃないでしょうか。ミッションも、単なる掃討作戦だけでなく、捕獲作戦、要人の救出作戦に、市民の救出作戦(モタモタしているとどんどん数が減っていく)など、さまざまなシチュエーション、目的が用意されていて、なかなかやりごたえがあると言えるでしょう。
UFO迎撃(これは迎撃機さえ配備しておけばオートで行われる)で迎撃機がもりもり損傷した後、ようやく撃墜したUFOの残骸捜索作戦でベテラン兵士が蹂躙されて全滅したりすると、「俺が何したってんだよ!」と空に向かって叫びたくもなりますので、セーブはコマ目にするほうがいいかもしれません。
でもストラテジー苦手な当方がいまんとこ10数時間夢中で齧りついてるぐらい面白いです。
「オーサカで要人を救出せよ!」スペルゴッド作戦、開始!
つーことで、1ミッションがどんな感じに進んでいくのか、オレ長官が序盤の1ミッションを振り返る形でお届けします。動画がいいよ! って人は英語版のインタラクティブトレイラー(選択肢によって作戦が進行していく)をどうぞ。
2015年○月✕日 グレイ型宇宙人“セクトイド”の解剖結果を待っていると、あと1日ってとこでどうにも中二病臭い組織“評議会”に呼び出される。話を聞くに、日本でお偉いさんが捕まりかけているらしい。当然のことながら「チミィ、わかってるだろうね」と、緊急救出すべく“スペルゴッド作戦”に部隊を派遣することになる。
だが頼りのペレス軍曹(ヘビー)、エースサポートのワシントン伍長、エーススナイパーのフォーニアー伍長が前回の戦闘の負傷により揃って入院中。昇格したばかりのジョンソン一等兵とペティット一等兵に何とかしてもらうしかない。先の戦闘でコイツらが弾を外しまくったり、敵の攻撃でパニック状態に陥ってくれたりしたおかげで、軍曹たちが名誉勲章ものの奮闘をするハメになったわけだが……。不安をグッと飲み込み、新兵3人を預け「期待しておるぞ」と送り出す。
ファースト・コンタクト
現場はどうも高速道路のような場所だ。現地部隊との接触も完了の報告。保護対象者であるファンドールン将軍のおおよその場所を示すと撤退してしまったらしい。
現場は幅が広くなく細長で、障害物もそれなりにあり、これ幸いと5人の隊員を3分割して展開させ、警戒しながら兵を進める。ほどなく敵を発見。ドクターから依頼されていたエイリアンの生け捕りにも成功。
ラン&ガン、そして脳筋作戦
しかし今度はもう一体のエイリアンが監視状態で“待ち”に入っており、近付きがたい状況。しかし今回の作戦にはスナイパーがおらず、どうにも厳しい。そこで一発撃たれるのは覚悟して、その代わりに可能な限り近付いてから攻撃することに決める。ここはジョンソン一等兵に頑張ってもらうしかない。
ほどなくトラックの陰に隠れた将軍と、その背後の高架道路にいる2体のエイリアンを発見。新兵ペータースを将軍の護衛につけ、ジョンソンとペティットで撃退を狙うという作戦に。こちらが下にいる状況はやや不利だったが、ふたりの一等兵の活躍で何とか撤退開始にこぎつける。今考えれば、残り体力からしてピストルを使えば確実だった気もするが、まぁ賭けに勝っているうちはいいか。ショットガンで吹き飛ばすほうが楽しいし。
退却開始
一体を撃ち漏らしたものの、深追いはせずに撤退を優先させることにする。案の定数体のエイリアンの待ちぶせを受けるが、新兵3人が互いのカバーをできるよう距離を保って進んでいたので、いくつかミスがありながらも何とか将軍を回収することに成功した。
セービング・プライベート・スミルノフ
そしてさっき撃ち漏らしたエイリアンを掃討して帰ろう……と思っていると、新兵スミルノフが不意の攻撃に重傷を負う。ヤツが2発目をスミルノフに撃ち込む前に救えるか?
ケツ論はもう書いちゃったのでマルチプレイについて
まぁそんなわけでこの3連休、2日長尺の取材に行った以外はほとんどコレをやっていた当方。いまんとこの感想は「ノーマル難度なら何とか行けるかな……」という感じ。でも調子こいて大進軍した先に敵の大群がいて完全終了したことも何度かあるし、ストラテジーゲームが得意な人向けにはさらなる難度も用意されているので、幅広いプレイヤーが挑戦する価値のあるゲームになっていると思います。気になる点と言えば、UFO迎撃は準備ですべてが決まっちゃうというところでしょうか。もう迎撃機落とされるの辛い……。
さて、締め切りの関係と、発売前ということもあり、今回遊びきれなかったマルチプレイについても紹介しておきたい。下記のPAXでのデモ映像を見ればわかる通り、戦闘の基本はシングルプレイと同じで、人類側プレイヤー対エイリアン側プレイヤーで戦うこと、試合前にポイントを使って部隊を編成しなければならないという点が異なる。もちろんAIではやらなそうな裏取りなんかの戦略もあるだろうし、人間相手で駆け引きの面白みが倍増するだろうことは想像に難くない。
■著者紹介 ミル☆吉村
ファミ通.comの洋ゲー脳編集者。たまーに紙の仕事もしたりしなかったり。基本的には、アメリカ各地、カナダ、アイスランド、シンガポール、中国、韓国と、世界中を飛ばされまくる人。本作でカメラの回転が効かなくなったらそれは多分日本語入力に切り替わっちゃったせいなので、半角/全角キーとか押すといいと思うよ。