豪華メンバーが多数参加

 神戸に校舎をかまえる神戸電子専門学校において、2012月6月23日(土)~2012年8月24日(金)の期間、多数の企業による業界セミナーが実施された。

 ゲーム業界からは、インテリジェントシステムズ、カプコン、グラスホッパー・マニファクチュア CEO須田剛一氏、ゲームフリーク、comcept CEOコンセプター稲船敬二氏、サイバーコネクトツー 代表取締役社長松山洋氏、セガ 取締役名越稔洋氏、スクウェア・エニックス シニアプロデューサー時田貴司氏、フロム・ソフトウェア、日本一ソフトウェア、プラチナゲームズ、ヘキサドライブ 代表取締役社長松下正和氏。IT・ソーシャル業界からは、ペンシル 代表取締役社長覚田義明氏、ミクシィ、楽天。3DCG業界からは、デジタル・フロンティア、ポリゴンピクチュアズ。アニメ業界からは、シンエイ動画 監督やすみ哲夫氏、ぴえろ、プロダクション・アイジー 取締役/作画監督・キャラクターデザイン 後藤隆幸氏。

▲真剣な眼差しでセミナーに参加する学生たち。

■インテリジェントシステムズ
 2012年8月24日(金)、任天堂ブランドの人気ゲーム作品を数多く手掛けるゲーム開発会社株式会社インテリジェントシステムズで、人事採用を担当する鈴木 浩信氏が来校。“ゲーム企業が求める人材”をテーマにしたゲーム業界セミナーに多くの高校生・在校生が詰めかけた。ディレクターやプロジェクトマネージャーとして『ペーパーマリオ』シリーズなどの作品開発にも携わってきた鈴木氏は、現在採用担当者として、若きゲームクリエイターの発掘に力を注いでいる。

 鈴木氏は、採用のポイントとなる“企業が求めるチカラ”として本気力・思考力・行動力・コミュニケーション力を挙げ、これらを学生時代に身につけることで企業に採用される可能性、また将来にわたって活躍出来る可能性が高くなることを強調。「履歴書や提出作品から見えてくるのがその人の本気度や人間像。モノづくりを目指す人にとっていちばん説得力を持っているのが作品です。」と述べた。「採用側と学生側の意識のギャップをこのセミナーで少しでも埋めることが出来たら」という鈴木氏の真剣な想いは、学生たちにも伝わったと思われる。

 降壇後のインタビューで鈴木氏はこのように語った。

 「ゲーム業界だけに限らず、仕事に欠かせないのがコミュニケーション力。相手が伝えたいことを理解した上で、自分の想いを相手に伝える訓練を高校時代から続けてください。プログラマーを目指すのなら、数学や物理など理系分野の基礎をしっかりと身につけておくことも大事です。弊社の特長の一つに社員定着率の高さ(※)が挙げられますが、仕事へのモチベーションが高く、お互いの価値観が共有できることも長く仕事を続けていくための条件かもしれません。」
※鈴木氏が採用に携わってから入社した社員(5~6年の間に約50人)が現在も全員在籍中。

■カプコン、フロム・ソフトウェア、日本一ソフトウェア
 2012年7月22日(日)、カプコン、フロム・ソフトウェア、日本一ソフトウェアの採用担当者による対談セミナーが主にプログラマー目指す学生に向け実施された。

 カプコンからは、人事部開発採用チーム長の川島藍氏、フロム・ソフトウェアからは、管理部人事課課長の立野怜子氏、日本一ソフトウェアからは管理部総務課の本間翼氏が来校し、登壇。ゲーム業界の現状や展望、仕事の現場、求められる能力などゲーム業界への就職に役立つ多くのヒントやアドバイスを学生に伝えられた。

 「人を楽しませたい、喜ばせたいという意欲をもっているかどうか」とカプコンの川島氏。「一緒に成長していくことを前提に採用するので、長くやり続けられるかどうかが大切」とフロム・ソフトウェアの立野氏。「自分が作りたいものを作るのではなく、お客様が求めているものを作るという気持ちで」と日本一ソフトウェアの本間氏。

 ほかにもプログラマーに必要なものとして「ロジカルな思考」「新しいものを柔軟に取り込む知的好奇心の旺盛さ」「さまざまな作品に触れることで磨かれる演出家としてのセンス」「チーム全員でモノをつくるという意識、協調性」などがあげられ、質疑応答の時には、多数の学生から質問が出る状況の中、すべてに対し丁寧に答え、受講した学生たちにとってゲーム業界で仕事をするということが、より身近に感じられるセミナーになっていた。

▲インテリジェントシステムズ 総務部課長 鈴木 浩信氏
▲カプコン 人事開発採用チーム長 川島 藍氏(左)、 フロム・ソフトウェア管理部人事課課長 立野 怜子氏(中央)、日本一ソフトウェア管理部総務課 本間 翼氏(右)

■グラスホッパー・マニファクチュア
 2012年8月8日(水)、グラスホッパー・マニファクチュアCEOの須田剛一氏が同校ソニックホールで「世界市場へ向けたゲーム制作」をテーマのセミナーを行った。須田氏は1998年に同社を設立後、『シルバー事件』をはじめ『NO MORE HEROES』シリーズ、『シャドウ オブ ザ ダムド』などのゲーム作品でディレクター、脚本、ゲームデザインを務めている。最新のディレクション作品は今年2012年6月に発売された『ロリポップチェーンソー』。

 セミナーでは、プロレス好きがきっかけで採用が決まったゲーム業界との運命的な出会いや世界に向けてのターニングポイントとなった『killer7』など代表作品の紹介、作品制作における日本と海外での考え方の違いなどについて語り、約3年をかけて制作した『シャドウ オブ ザ ダムド』の話題では、年間300作品を扱うメガパブリッシャーとの制作から発売までの過程における戸惑いや、多国籍な人たちがイメージを共有できることが前提となる作品作りの難しさについて具体的に紹介。質疑応答後、達成するという意識を持ち続けること、結果を求めてあせらず自分にゆとりを持つことが大事であることを伝え、「ゲーム制作の最終段階の現場でいちばん頼りになるのは、プログラマーのタフさ、メンタルの強さです。そのためには学生時代にバイト労働などを通じて社会のサイクルを経験することもいいかもしれません。スポーツやバイトなどで培われた基礎体力や精神力は社会人になっても裏切りません。」とゲーム業界を目指す学生たちへ励ましのメッセージで締めくくった。

■ゲームフリーク
 2012年8月4日(土)、『ポケットモンスター』シリーズを手がける株式会社ゲームフリーク開発部プログラマーの玉田 荘介氏と一楽 克彦氏が登壇。最新作『ポケットモンスターブラック2・ホワイト2』の制作現場やソフト開発についてわかりやすく紹介した。

 ゲームフリークにおけるものづくりの基本姿勢として「ヒットするかどうかよりも、まずは自分の中で“本当に楽しいか”を常に問い続けています」と玉田氏。神戸電子の卒業生でもある一楽氏は、入社後『ポケットモンスターブラック2・ホワイト2』の開発プロジェクトに携わった経験をもとに、ゲーム制作の具体的な仕事内容や現場の雰囲気、また試行錯誤の中で学んだことを本音で語り、超満員の会場は、第一線で活躍するゲーム開発者の話に耳を傾ける在校生や高校生の熱気に包まれていた。

 降壇後のインタビューで玉田氏は、「さまざまな職種からアイデアや提案を求め、妥協することなく“楽しさ”を追求しながら作品を作り上げていくのがゲームフリークのスタイルです。“ポケモンより面白いゲームを作りたい”という野心のある人、ぜひいっしょにやりましょう」、一楽氏は「3年前までは神戸電子の学生として、がむしゃらにゲーム作りに取り組んでいました。プログラマーの仕事は、みずからゲームの面白さを追求でき、多くの人に楽しんでもらえることが大きな魅力。本気で面白いゲームを作り続けてください」と学生達にエールを送った。

▲グラスホッパー・マニファクチュアCEO/ゲームデザイナー 須田 剛一氏
▲ゲームフリーク開発部プログラマー 玉田 荘介氏(左)、一楽 克彦氏(右)

■comcept
 2012年8月9日(木)、株式会社comcept(コンセプト) CEOでコンセプターの稲船 敬二氏による、「変革期を迎えたゲーム業界の将来に迫る」と題したセミナーが同校で実施された。稲船氏は、1987年株式会社カプコンに入社後『バイオハザード2』、『鬼武者』などのヒットシリーズを生みだし、2006年からは執行役員として開発部門のマネジメントやコンテンツの統括を行い『モンスターハンター』シリーズ『バイオハザード4・5』などを成功に導くなど業界のTOPクリエイターのひとり。2010年にゲーム業界の活性化と自らのクリエイターとしての領域を広げるべく自らの会社を設立、現在は作品づくりと並行して国内外での講演活動にも力を入れている。

 セミナーでは、「ゲーム作りで最も必要なことは柔軟性、良いプログラムを組めるのは柔軟性のあるプログラマー」と述べ、自己責任において判断することの重要性を強調。満席の会場の高校生・在校生に、「時代によって変わっていくルールはあくまでもひとつの基準にすぎない。優秀なプログラマーになるには、技術だけでなくビジョンを持つこと。世界で活躍出来るゲームクリエイターになるという高い意識を持って挑戦して欲しい」と語った。降壇後のインタビューでは「人は好きなことや慣れたことに縛られてしまうもの。若いうちはゲーム以外のコンテンツにも積極的に触れてください。みんなが面白くないと思っていることをあえてやってみるとか、プチチャレンジすることが大切なんです。失敗しないと新しい発見もありません。若いうちの幅広い経験が、将来仕事にも必ず生きてくるはずです」と語っていた。

■サイバーコネクトツー
 2012年7月28日(土)、サイバーコネクトツーの代表取締役社長の松山 洋氏と同社の開発部でプログラマーとして活躍中の鄭 直氏が来校。同社の看板タイトルで世界で100万本以上も売れた『NARUTO-ナルト- ナルティメットストーム』など人気作品の紹介やゲーム開発の裏側、ゲーム業界の現状について熱く語った。中国出身の留学生として同校でゲームプログラムを学び、東京ゲームショーにおける日本ゲーム大賞2011アマチュア部門で優秀賞に輝いた鄭氏は、入社半年ながら同社を代表する『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム3』を手掛けるなどプログラマーとして重要な役割を担っている。

 セミナーでは、松山氏が監督を務めた劇場用3Dアニメ作品『ドットハック セカイの向こうに』を題材にさまざまな媒体で同時多発展開を展開する同社のメディア戦略やライセンス商品・アニメ版権などについてもわかりやすく解説。DVDなど8000本以上を保有し、さらに年間4000本以上増え続けているライブラリー“松山文庫”などスタッフ間の情報共有を重視した仕事環境やユニークな企業風土についても披露していた。

 鄭氏は、「どんな作業もスケジュールを事前に見積もる」「アンテナをMAXにして、業界の情報・技術用語を詳しく知っておく」「チーム制作の経験を積んでおく」といった体験に基づくアドバイスが学生たちに向け発せられた。質疑応答を経て、最後に「同行の特化型カリキュラムや学生指導、学習環境は理想的。ぜひ全員ゲームの世界に入って来て欲しい」という松山氏からの励ましの言葉を学生たちは真剣な眼差しで聞き入っていた。

 降壇後のインタビューで「神戸電子専門学校は日本でも1、2を争うゲーム制作が学べる専門学校だと思います。それは在学中にプロが現場で使っている最新技術やチーム制作など、プロのクリエイターが学校でマスターしておいて欲しいことをすべて学んでいるから。代表的タイトルを入社半年のプログラマーが手がけている事実がそれを証明しています」と松山氏は語った。鄭氏においては「実績や経験に関わらず、プログラマーとしての意見をきちんと言えて、やりたいことを出来る会社です。社長を筆頭にスタッフはゲーム、アニメ、漫画が大好きで、楽しんでゲーム作りが出来る環境が仕事の結果にもつながっていると思います」と語っていた。

▲comcept CEO/コンセプター 稲船 敬二氏
▲サイバーコネクトツー 代表取締役社長 松山 洋氏(左)、プログラマー 鄭 直氏(右)

■セガ
 2012年8月5日(日)、セガ 取締役/Chief Creative Officerの名越稔洋氏が、「新たなデジタルエンターテインメントの時代を支える人材とは」というテーマで同校ソニックホールにて登壇。

 学生たちからの名越氏の人気は高く、約300人収容可能な会場のソニックホールは満席状態。現在、名越氏は、『龍が如く』シリーズの総合監督を務める経験豊富なクリエイターであると同時に、1,700人の部下を抱える、会社の幹部という立場である。セミナーは、上記タイトルテーマをはじめ、「ゲーム業界の市場の現状・見通し」「ソーシャルゲームについての見解」「新卒採用基準について」などのテーマについて、司会進行役とのQ&A形式で繰り広げられた。

 名越氏からは、「今の時期、自分の目指す領域をある程度しぼることが大事です。つまりある分野に特化して能力や技術を伸ばすということ。やっぱり、まんべんなくできる人より、何かが飛び抜けている人が気になるもの。それプラス、人づきあいですね」といったアドバイスはじめ、示唆に富んだアドバイスがたくさんあったセミナーであった。

 名越氏は降壇後のインタビューでつぎにように語り締めくくった。「ゲーム産業は、いわば“ひまつぶし産業”。いかにひまな時間を豊かにできるかを一生懸命考え、そのための作品を一生懸命つくるのです。“ホントに楽しいものって、何だろう?”と真剣に意見をぶつけ合える友人をたくさんつくってください。あとの知識や技術は、プロになってから教えてもらえばいいんですよ」

■スクウェア・エニックス
 2012年7月30日(月)、『FINAL FANTASY LEGENDS-光と闇の戦士』など数々のヒット作品を手掛けたスクウェア・エニックスの時田貴司氏が、高校生を中心にゲーム企画会議を行い、プレゼンテーションするゲーム企画体験会を開催した。

 最初に、時田氏がゲーム業界に入った経緯やこれまで手掛けてきた作品など自身のプロフィールを紹介した後、ゲーム企画のポイントを解説した。

 今回企画するゲームのテーマは“正義”。参加した高校生は8チームに分かれ、それぞれのチームにはサポート役の在校生が付きチームを活気づける。最初は遠慮がちだった高校生も時間が経つと活発に意見を述べ、各チームとも大いに盛り上がり、約2時間の企画タイムはあっという間に過ぎ、全6チームの各チームの代表者が企画をプレゼンし、全員の拍手の多さで順位を決定するというルール。「学校をつくってヒーローを育てる」企画で見事優勝したチームにスクウェア・エニックスの最新作など豪華なプレゼントが贈られると、会場は大きな歓声と拍手に包まれた。

 最後は、時田氏といっしょに全員で記念撮影。参加した高校生にとっては忘れられない夏休みの1日となったようだ。

 降壇後のインタビューで時田氏は、このように語っていた。「今回テーマを『正義』にしたのは、いじめ問題など、社会が矛盾をたくさん抱えているなかで、若い人たちが今の社会をどんな風に感じているのかを知りたかったからです。学校を作ってヒーローを育てるゲームだとか、原発問題をもとにした新しいエネルギーを探すゲームだとか、今の社会を映した企画が出てきて、僕自身とても興味深かったです。今回の体験会を通して、ゲームづくりの面白さとともに、仲間といっしょに何かをやり遂げる楽しさを感じてもらえたら嬉しいですね」

▲セガ 取締役/Chief Creative Officer 名越 稔洋氏
▲スクウェア・エニックス シニアプロデューサー 時田 貴司氏

■プラチナゲームズ
 2012年7月21日(土)、『ベヨネッタ』、『ヴァンキッシュ』などのヒット作品を数多く手掛けるプラチナゲームズによるセミナーが行われ、リードプログラマーとして活躍中の千星修一郎氏は1992年に、大西亮氏は2年前に同校を卒業して同社に入社、ゲーム開発の中枢を担うプログラマーである。同社で管理を担当する取締役の佐藤賢一氏とともにゲーム制作やプログラマーの仕事についてさまざまな角度から語られた。

 セミナーでは、同社開発の人気ゲーム『ヴァンキッシュ』のプロトタイプ映像なども交えながら、リアルなゲーム制作の現場について解説。プログラマーの仕事の魅力や、つらかったことなど本校卒業生ならではの本音トークに会場の高校生や在校生たちは真剣に聴きいっていた。

 仕事の魅力を千星氏は、「最初のユーザーになれることが、プログラマーとして最大の喜び。20年続けてもまだまだ楽しいと思える仕事です」。また入社していちばんつらかったのはという問いに大西氏は「自分の仕事が止まるとほかの人の仕事もストップしてしまい、すべて自分にはねかえってくること」と回答。ゲーム業界を目指す学生たちへ大西氏からは「ちょっとでも興味を持てることや初めてのことに積極的に挑戦して欲しい」。千星氏からは「いちばん好きなことを職業にでき、誇りを持って仕事に取り組めるのがこの業界の魅力です」と熱いエールを送っていた。

■ヘキサドライブ
 2012年6月23日(土)、同校ソニックホールでヘキサドライブによるゲームプログラマーセミナーが実施された。同社は、大手ゲーム会社でミリオンタイトルを手がけてきた一流プログラマーたちが集結し、2007年にスタートしたゲーム開発会社。『METAL GEAR SOLID SNAKE EATER 3D』、『The 3rd Birthday』などのビックタイトルの開発を手がけ、今後はスマートフォン向けソーシャルアプリの開発にも力を入れていくとのこと。今回は代表取締役社長兼CEOの松下 正和氏と、開発部チーフテクニカルディレクターの岩さき(山偏に立、可のさき) 順一氏が登壇。

 ヘキサドライブでは、ゲームをより効率的に制作するためのツールである「ゲームエンジン」の開発にも力を入れている。同社オリジナルの「ヘキサエンジン」のデモを交え、プログラムという仕事の魅力、取り組む姿勢、積んでおくべき経験や勉強などについて、熱く語った。「提案のできるプログラマーに」「一番身近なユーザーは同僚」といった有意義なアドバイスも多々。講演後も学生と登壇者の間で多数の質疑応答が繰り広げられていた。

 松下氏は、「私がゲーム制作に携わった当時と比べて、いまではインターネットなどを活用してゲーム制作を学ぶ手段が格段に増えています。今日は、必要な知識やおすすめの本なども紹介したので、がんばってほしいですね。私たちも、ヘキサドライブのオリジナルゲームブランド確立を目指して日々邁進しています」とコメント。

 一方岩さき氏からは、「皆さん、熱心に聞き入ってくれていました。最近は弊社がゲームエンジン開発も手がけていることを知って、エンジン(ツール)プログラマーでの入社志望が増えているんです。次世代に向けて、さらなる技術力で制作陣を支えるツールを創り出していくつもりです。今日の話で、ぜひエンジンプログラマーにも興味を持ってくれればいいですね」と、学生へ期待をこめたコメントで締めくくった。

▲プラチナゲームズ プログラマー 千星修一郎氏(左)、大西亮氏(右)
▲ヘキサドライブ 代表取締役兼CEO 松下正和氏(左)、開発部チーフテクニカルディレクター 岩さき(山偏に立、可のさき) 順一氏(右)

■楽天×ペンシル
 株式会社ペンシルの創設者・覚田 義明氏と、楽天株式会社チケット事業 プレイガイド事業部長の安本 卓史氏が「IT業界のこれから、求められている人材」をテーマに対談するセミナーが同校ソニックホールで開催された。IT業界を目指す学生達で300人収容の同ホールも満席状態であった。

 まず、安本氏が年商3兆円規模にもなる楽天グループの現状とビジネス戦略、覚田氏は数々の企業のWeb戦略を成功に導いてきたペンシルのこれまでの軌跡や経営理念など、それぞれの企業概要を紹介。その後は「新卒採用のポイントは?」「学生に求める能力は?」から始まって、「Web通販サイトにおけるITエンジニアの役割について」「IT業界で仕事をしていく上で必要な能力」などより具体的なセッションテーマに基づいて進められた。「誰よりも深く知って得意だという技術を身につけると同時に、デザインなど幅広い知識をつけた“T型人間”が求められる」「なにより勉強をし続ける姿勢が大切」など、業界で活躍されている人ならではの視点から、求められる人材像が語られていた。

 IT業界・Web関連業界をめざす学生たちにとって、具体的なアドバイスがたくさんあり、非常に収穫の多いセミナー内容であった。

 セミナー後の楽屋で覚田氏は、「IT業界はまったく違う技術が突然生まれてきて、びっくりするぐらい変わります。つねに切磋琢磨しなければ、取り残されてしまいます。だから、常に勉強しておくという姿勢がとても大切です。そして、ITは社会に役立つ、日本経済を支える仕事です。若い皆さんには、高い志をもって頑張ってほしいですね」

 引き続き安本氏は、「初めて訪れたのですが、神戸のこんな環境の良いところに神戸電子専門学校さんの建物がたくさん並んでいてびっくりしました。ソニックホールはひとりひとりの顔が見え、熱心に聴いてきくれて様子がよくわかり、とても話しやすかったですね。こんなに環境も設備の整った学校で学べるのは、とても恵まれたことだと思います」

■ミクシィ
 2012年7月21日(土)、業界連携スペシャルセミナーのIT部門で、日本のソーシャル業界最前線「mixi」を運営する株式会社ミクシィからからコンテンツ部プロデューサーの木村弘毅氏と、コンテンツ部プラットフォーム開発グループマネージャーの木村真氏が登壇。会場のソニックホールは在校生や高校生で超満員、ソーシャル業界への関心の高さがうかがわれた。「ソーシャル業界は楽しい」「どうしたら活躍できる」「ソーシャル業界に入る方法」の3つのキーワードから、SNSの魅力を伝え、好きなものを仕事にする楽しさを紹介。「シンプルに好きなことを見つけよう、ソーシャル業界の楽しさを伝えようというのが、今回のテーマです」とプロデューサーの木村 弘毅氏。開発グループマネージャーの木村 真氏は、コンテンツ開発の具体的な仕事内容を実際の現場の雰囲気を交えながら伝えていた。

 最後の質疑応答では、技術的なことからマーケティングの視点での疑問など、たくさんの質問が寄せられ、予定時間をオーバーするほど。最後まで熱気溢れるセミナーとなった。
セミナー後のインタビューに対し、木村 弘毅氏は、「神戸電子の皆さんはサーバーを立ててSNSサービスをつくっている人がいたり、ユーザー数の推移を研究している人がいたり、その行動力には驚きました。この業界はまだまだ若いので、新しいものモノをつくればだれでも評価され、チャンスもたくさんあります。好きなことを追求して、新しいことにどんどんチャレンジしてください」、続いて木村 真氏は「会社に入ることがソーシャル業界に入ることではなく、普段の生活の中でも、こんなものがあったら世の中はもっと便利になるよね、という意識があれば、自分でサービスをつくることもできます。今回のセミナーをきっかけにして、サービスをつくることに興味をもってもらえればうれしいですね」と語っていた。

▲楽天 チケット事業部 安本 卓史氏(左)、ペンシル 代表取締役社長 覚田 義明氏(右)
▲ミクシィ コンテンツ部プロデューサー 木村弘毅氏(左)、コンテンツ部プラットフォーム開発グループマネージャー 木村真氏(右)

■デジタル・フロンティア
 2012年8月4日(土)、3DCG業界から、株式会社デジタルフロンティアの鈴木伸広氏(CG制作部プロデュ―サー)、堀部亮氏(同ディレクター)、元生晃司氏(同シニアデザイナー)が同校に来校し、登壇した。

 デジタル・フロンティアは、映画『サマーウォーズ』、『GANTZ』などの有名作品を手がけてきた映像制作プロダクション。多数の学生が参加し、会場となった同校ドームホール内は満席状態。

 今回は、話題作『おおかみこどもの雨と雪』の、実際の絵コンテやメイキングなど貴重な画像を使用し、3DGC制作について解説を行った。

 本作品におけるCGの役割とテーマは、「これまでは一枚もので動かなかった背景美術を、3DCGを使って動かす」、アニメキャラクターの周りでいかに自然に背景を見せるかがポイントであったことを明かした。

 「3DCGを使うことで表現手法や選択肢が広がりました。今後、2Dと3DCGの融合はさらに進むでしょう」(元生氏)、「自社のオリジナル作品制作をいつかやってみたいですね」(堀部氏)、「世界中に認められるような作品をつくるのが目標です」(鈴木氏)といった、それぞれのクリエイターが描く今後の展望も語られた。

 降壇後、楽屋でのインタビューで、このように語った。「私たちはみんな、皆さんくらいの歳のときはまだCG業界には縁もゆかりもありませんでした。その点皆さんはすごいと思いますね。3DCGをつくるって、やっぱりすごく大変。制作中は、“ホントに終わるのかな?”なんて、先が見えない状態に陥ってしまうこともあるんですが、ゴールは必ずあります。それが楽しさ、やりがいにつながっていきます。皆さんはまだまだ若いし、先も長い。自分を信じて頑張ってください」

■ポリゴン・ピクチュアズ
 2012年7月21日(土)、3DCG業界からポリゴン・ピクチュアズの経営管理部・人事担当マネージャーの兼松厚氏が来校し、登壇。

 300人ものスタッフを擁する同社は、国内最大級、かつ国内で最も歴史の長いCGアニメーションスタジオ。国内の作品はもちろん、ディズニーやルーカス・フィルムなど海外の著名な映像作品の3DCG制作にも携わっている、業界でも際立った存在。そんな大規模なスタジオで人事を担当する兼松氏。同社の業務内容やこれまで手がけた作品を概観し、参加者が最も気になる“制作現場の雰囲気”も、朝の9時半にきちんと全員が出勤し、終業時間も決まっているなど、詳しく話してくれた。

 「皆さんはCGが好きで今の道を選んでいると思いますが、“心から本当に好き”かどうかが大事。そうでなければやっていけないと思います」と、生き残りの厳しさをうかがわせる一面も。「企業への応募時に送る作品で最も重視すべきなのは、わかりやすさです。いい作品は、何を伝えたいかがすぐにわかるんです。そして一所懸命に、真剣につくったものを送ってください」といった、人事担当者ならではのアドバイスを送っていた。

 講演後のインタビューでは、「最近の学生さんはみんな、いいものを持っていると思います。すばらしい作品を期待しています」とのメッセージ送った。

▲デジタル・フロンティア CG制作部ディレクター 堀部亮氏(左)、同シニアデザイナー 元生晃司氏(中央)、同プロデュ―サー 鈴木伸広氏(右)
▲ポリゴン・ピクチュアズ 経営管理部・人事担当マネージャー 兼松 厚氏

■シンエイ動画
 2012年8月18日(土)、アニメ業界からはシンエイ動画のやすみ監督が登壇。やすみ氏は『おぼっちゃまくん』『忍者ハットリくん』『あたしンち』など、往年の名作から現代の人気アニメまで、長年子ども向けアニメ制作に関わってきた超ベテラン監督。さまざまな年代、国、スタイルのアニメーションを紹介しながら、アニメの幅広さと奥深さを語るやすみ氏。自身が関わった人気アニメも披露した。時代の変化により、それらの作品を知らない学生や高校生も多いと思われる、懐かしのアニメの数々を紹介。昔のアニメ制作ならではの工夫や苦労話を、若い参加者たちは興味深く聞いていた。

 「立ち上げから始まって、背景はどんなものだろうか、どうすれば面白くなるだろうか、などと考えてひとつの作品をつくり上げるのは、大変だけど楽しいですよ。よいものをつくるためには、いろんなタイプのアニメをたくさん見てください」と締めくくった。

 降壇後の楽屋でのインタビューでやすみ氏はこう語った。「今の時代は、コンピュータを使ってあらゆることが可能になりました。若い人たちには、最新技術を作品づくりにうまく生かして、今だからこそつくれる新しいアニメーションを生み出してほしい。大事なのは、どんなに短くてもいい、何か作品を一編完成させてみることです。楽しさや面白さ、苦労などは、一連の作品づくりが完結して初めて見えてくるもの。どんどんチャレンジしてみてください」。

■ぴえろ
 2012年7月21日(土)、アニメ業界から株式会社ぴえろの執行役員・人事総務部長、浅賀央起氏が同校に来校し、登壇。

 『幽☆遊☆白書』『ヒカルの碁』『NARUTO-ナルト-』……1980年代から30年あまり、つねにその時代を代表する人気アニメをつくり続けてきた株式会社ぴえろ。『NARUTO-ナルト-』はこの夏に劇場版が公開され、話題を呼んでいる。

 「まったく違う業界から12年前に転職して来た」という浅賀氏。「アニメづくりは厳しい世界。でも厳しさの向こうに大きな楽しさ、喜びがある。初めて劇場版アニメのエンドロールに自分の名前を見たとき、不覚にも泣いてしまいました。私みたいに、絵が全然描けなくてもアニメづくりを支えることは十分できます。」と、アニメーターなどの制作部隊ではなく、管理部門の統括者としての目線で見たアニメ制作会社の現場を楽しく語っていた。

 講演後の質疑応答では、「アニメだけを見るのではなく、いろんな遊びを経験してください」「面接では、いかに映像作品にかける情熱が強いかを見ています」「模写力だけでは不十分、デッサン力をぜひつけて」など、有益なアドバイスが多数。多くの参加者が熱心にメモをとっていた。

 降壇後のインタビューで浅賀氏は「夢を持てる業界です。女性も多く、年功序列のない世界。30歳くらいの人が最も活躍しています。だから皆さんも10年後、そうなってやる、という気持ちで情熱を見せてほしいですね」と学生達にエールを送った。

▲シンエイ動画 監督 やすみ 哲夫氏
▲ぴえろ 執行役員 人事総務部長 浅賀 央起氏

■プロダクション・アイジー
 2012年8月4日(土)、アニメ業界からプロダクション・アイジーの取締役・後藤隆幸氏(作画監督・キャラクターデザイン)が同校に来校、登壇。プロダクション・アイジーは、『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズや『戦国BASARA』シリーズなどを担当してきたアニメ制作会社。後藤氏は「アニメーションの世界を目指すきみたちへ」と題して、アニメーターになったいきさつから、アニメに対する考え方、アニメ制作の手順などを詳しく語った。『攻殻機動隊 S.A.C.』制作時の、本物の絵コンテを用いての解説は、学生たちにとっても大いに刺激になっていたようだ。

 「アニメーターを目指す人は、ただ好きなイラストを描くだけではなく、“動いたときにキャラがどうなるか”を意識することが重要です」といったことなど、いろんなアドバイスを行っていた。

 講演後の楽屋に多数の学生達が詰めかけ、熱気あふれる質問タイムが行われた。

 降壇後のインタビューで後藤氏はこのように語った。「私は19歳の時に初めてアニメ業界のことを知りました。絵画のような背景美術に憧れて専門学校に入ったのですが、なぜかアニメーターで就職。キャラの絵を線画で描くことは苦手だったので、初めは何も描けず苦労しましたが、いまとなっては逆にそれが良かったと思っています。真っ白な状態からたくさんのことを受け入れることができましたから。だから多少絵が下手でも頑張りさえすればアニメーターとして成功できると思っています。」

▲プロダクション・アイジー 取締役/作画監督・キャラクターデザイン    
後藤 隆幸氏