次世代のゲーム……ではなく、次世代の“ホーム”はこうなる!?

三井ホームのハイテク次世代実験住宅にKinectが導入! 手を振るだけで照明やブラインドをコントロール!!_01

 三井ホームは、三井不動産によるスマートシティプロジェクトが進行中の千葉県・柏の葉キャンパスシティにおいて、木の家2×4工法による実証実験住宅 次世代スマート2×4“MIDEAS(ミディアス)”(→詳細はこちら(pdf))を、2012年9月4日(火)に完成させた。その実験住宅に、なんとKinect(キネクト)が採用されているのだ。この実験住宅では、Kinectの技術を住宅に応用し、ブラインドやテレビなどを手振りで操作できるというもの。2012年9月10日に、その実験住宅の見学会が実施されたので、その使い心地を体験してきた。

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▲太陽光発電などエネルギー対策、多彩なセンサーで室内環境をコントールするなど、超ハイテクな次世代住宅。室内で野菜を栽培できるなど、自然を活かすテクノロジーも。
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 医療業界など、ゲーム以外でも採用されつつあるKinect(ここでKinect for Windows センサーのほうを指す)だが、住宅業界で導入されるのは今回が初めて。そもそも、なぜ次世代住宅にKinectが? 「次世代住宅には、身振り手振りで操作する時代がやってくると思っていました。次世代スマート2×4“MIDEAS”のプロジェクトがスタートし始めたころ、Kinectが発表され、“これだ!”と感じて、日本マイクロソフトさんにお声掛けさせていただいたのが、そもそもの経緯です」(三井ホーム 技術企画部 技術開発グループ マネジャー 池澤仁志氏)。実際に次世代住宅に採用されてしまうとは、Kinectの高いポテンシャルが改めて証明された形と言えるだろう。

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▲そんなハイテク住宅にKinect。

 今回、実際にKinectで操作できた部分は、テレビの操作(電源のオン・オフやチャンネル切り替え、ボリューム調整など)、ブラインドの上げ下げ、照明のオンオフ。操作も簡略化されており、操作するパターンとしては手を上下左右に動かすのみ。実際に、Kinectを操作してブラインドを上下させたり、照明のオン・オフを操作してみると、近未来的な感じで「おおっ!」と思わず声を発してしまいそうな感動がある。ただ、操作できるものが少ないのでは……とも感じてしまったのだが、これについては現段階は実験というこで、操作できるものを限定しているということ。「ほかにもさまざまな操作をKinectで実現しようと思えば簡単にできるのですが、操作が複雑になるというのが問題としてあるので、今回は(操作できるものを)絞っています。」(池澤氏)。確かに、誰もが使えるといった簡単なものではないと、家庭で使うにはなかなか厳しいかもしれない。個人的には、テレビやハードディスクレコーダーなど、何かとリモコンが増えがちなリビング環境で、操作をすべてKinectで完結できれば、かなり便利だと思うのだが……。ところで、操作が複雑になる問題は、Kinectの音声認識を使えば、解決するのでは!? 「音声認識の採用はもちろん検討していまして、いまはいろいろ実験中です」(池澤)とのこと。

 また、将来的なKinectの使いかたとして、「実現できたらおもしろいかもしれません」(池澤)、といったレベルの話という前提だが「ゲームと連動させて、たとえば、RPGなどで極寒地が行った場合、クーラーが稼働するとか、ダンジョンに潜ったら照明が消える、などといったことができたら、臨場感が高まるでしょうね(笑)」(池澤)といったユニークなアイデアも。これが実現したら、自宅にいながらにして、アトラクション的な体験ができるかもしれない。

 今回の実験では、Kinect for Windows、つまりWindowsPCがKinectを制御する形となっていたが、実用化に向けては、たとえばPCをずっと起動させたままにしておくのか、また、操作を複雑化せずにどの程度までKinectで操作させるようにするのか、といった課題はあるものの、基本的な操作性については、いますぐ実用化されても問題なさそうな完成度、といった印象を受けた。

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▲ソファーに座っての操作ももちろん問題なし。リモコンを探すことなく、さくさく操作できて便利。
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▲操作メニュー。ご覧のとおり、操作は簡素化されている。テレビや照明以外のもののコントロールを加えた場合、操作が複雑にならないようにすることが課題だとか。

 次世代スマート2×4“MIDEAS(ミディアス)は、高断熱・高気密の木の家ツーバイフォー工法と最新の高効率のスマート設備を導入し、太陽光発電、蓄電池、アシスト電源などを採用した、エネルギー自給自足技術型でCO2排出量の削減を実現するという世界最高峰のハイテク住宅。総工費は、約8000万円(土地代は別)ということ。それぞれの商品・サービスは、新築・リフォームでも展開予定とのことなので、いずれはKinectのシステムだけの購入も可能になるかもしれない。

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千葉慎二氏

 最後に、見学会に同席されていた日本マイクロソフトのKinect国内開発担当の千葉慎二氏に、今回の次世代住宅にKinectが採用された件についてお話を伺ったので、そのミニインタビューをお届けしよう。

――三井ホームさんからKinectを使いたいというお話があったということですが、どういった形で話が進められたのですか?

千葉慎二氏(以下、千葉) 我々がKinectで目指しているところは“ナチュラル・ユーザー・インターフェース”なのですが、三井ホームさんはそれを住宅で実現したい、ということでした。

――導入するにあたって、苦労した部分はあったのでしょうか。

千葉 最初、Kinectの技術的な概要を説明するなかで、どういうことを実現させたいかもうかがい、いろいろ打ち合わせしながら「こういった形で実装していきましょう」といった流れで、スムースに進めることができました。基礎的なプログラムはこちらで用意して、それを三井ホームさん側が実用化に向けて、カスタムしていった感じです。

――ゲーム以外でも、医療現場などKinectの技術が使われ初めています。

千葉 はい。医療やリハビリ関係でKinectの技術を採用していただくケースも増えてきています。とくにリハビリでは、ゲームっぽい要素を入れることで、苦痛なリハビリを少しでも楽しみながらできるような使いかたをしていただいているようです。

――今回の住宅の場合でも、体が不自由な方になどとっても楽に操作できていいかもしれないですね。

千葉 そうですね。従来だとリモコンで操作していたものでも、リモコンが遠くにあった場合など、それを取りに行くことすらたいへんな方には、すぐその場で操作できるKinectのほうが便利かもしれないですね。

――実際、住宅に組み込まれたKinectをお使いになったご感想は?

千葉 ゲーム画面が反応するのではなく、家が反応するというのはワクワク感がありますし、先進的な気分が味わえますよね。まだまだ改善すべきところはありますが、感覚的にはスムースに操作できていますので、こういう家に住めるといいですね(笑)。今後は、自然に生活するなかで使えるものになればいいかなと思います。たとえば、主婦の方が台所で洗い物をしていて何も触れないときに、音声認識機能を使って声で指示が出せるようになったり。そういう場合は、子どもに指示を出すことが多いと思うのですが、家に指示を出すといった感覚で使えればいいですよね。