週刊ファミ通のニュースページ“エクスプレス”で連載中のゲームに関連した著名人へのインタビューコーナー“Face”。誌面スペースの都合などからカットした部分を網羅した完全版をファミ通.comでお届け。今回のゲストは、作曲家の藤田淳平さんです。

藤田淳平(Elements Garden):『特殊報道部』【週刊ファミ通Face完全版】_02

■今週のお題
特殊報道部
プレイステーション Vita 日本一ソフトウェア 
2012年8月23日発売 6090円
※PS Store ダウンロード版は5000円[税込]

超常現象を追う報道番組"トクホウ"のスタッフたちが謎の解明に挑むアドベンチャーゲーム。主人公は、"トクホウ"の新人アシスタント・ディレクター柚原遼。彼は仲間とともに真実を追い、番組を作ることになる。その過程によって、番組の内容や、視聴者に伝わる真実が変化していく。

「俺が作曲する!」と強く主張しました

藤田淳平(Elements Garden):『特殊報道部』【週刊ファミ通Face完全版】_01
作曲家
藤田淳平(Elements Garden)

アニメ・ゲームを中心に活動している音楽制作集団Elements Garden(エレメンツ・ガーデン)に所属する作曲家。水樹奈々を始めとする著名アーティストに楽曲を提供しているほか、『幻想水滸伝ティアクライス』や『ガーネット・クレイドル』など、多数のゲームの楽曲制作にも携わる。

 日本一ソフトウェア20周年記念タイトルのひとつである『特殊報道部』。本作は、人気アドベンチャーゲーム『流行り神』シリーズを手掛けたスタッフが贈る完全新作だ。今回は、本作の楽曲を手掛けた音楽制作集団Elements Gardenのメンバーのひとり、藤田淳平さんがゲスト。『特殊報道部』の楽曲のコンセプトや、曲作りの過程などについて聞いた。

――『特殊報道部』の楽曲制作には、Elements Gardenのメンバー全員が参加されたのですか?
藤田 いえ、今回の参加メンバーは、僕と若手作家のふたりです。『特殊報道部』は独自色が強い作品なので、少人数で作ったほうが、その個性を曲の中でまっすぐ表現できると思いましたので。

――では、楽曲の方向性は、藤田さんが決められたのですね。
藤田 はい。僕は、最初に今回のお話をいただいたときから、自分が担当したい! と思っていまして。『ファミコン探偵倶楽部』や『探偵 神宮寺三郎』シリーズのような、オカルトものや推理もののゲームが好きだったので、もちろん『特殊報道部』にも飛びついて。「俺、俺がやる!」と主張しました。

――今回の楽曲は、どのようなコンセプトで作られたのですか?
藤田 日本一ソフトウェアさんからは、「ジャズテイストを入れてほしい」とリクエストがありました。僕も「推理ものにジャズは合うな」と思ったのですが、『特殊報道部』は舞台も見た目も現代風ですし、ゲーム内にはテレビ局のさまざまな最新機材が登場するので、「この現代風のテイストに、ジャズだけを合わせると浮いてしまうな」と考えました。そこで、テイストを3つ入れることにしたんです。

――その3つとは?
藤田 ひとつ目はジャズテイスト。ふたつ目は、現代のデジタルな雰囲気が感じられる2000年代のテイスト。そして3つ目が、1980年代のテイストです。

――なぜ80年代のテイストを入れたのですか?
藤田 80年代って、オカルトものがとても流行った時期だったんです。テレビでは、よく呪いのビデオや心霊写真を取り上げていました。『特殊報道部』の資料を読んでいて、そのころの音楽を思い出したので、80年代の匂いを曲の中に入れてみたんです。

――ひとつの曲の中に、複数のテイストが入っているのですか?
藤田 そういう曲もありますし、推理シーンの曲はジャズ風、キャラクターたちのテーマは現代風、オカルト色の強い曲は80年代風というように、意図的に分けている部分もあります。

――とくに気に入っている曲は?
藤田 やはりメインテーマですね。最初に作った曲で、イラストを見ながら、ジャズテイストを入れて作りました。

――藤田さんはもともとアドベンチャーゲームがお好きとのことですが、作曲するときは、「こういう風に遊ぶんだろうな」と想像しながら曲を書かれるのですか?
藤田 そうですね……。アドベンチャーゲームの音楽に限ったことではないのですが、ゲームプレイをジャマするようなノイズやトリッキーな音は入れないように気をつけています。その一方で、曲だけで聴いても飽きないように、メロディーをはっきりさせたり、起承転結を入れたりしています。たとえば、『ドラゴンクエスト』シリーズの曲って、メロディーがはっきりしていて、口ずさめますよね。そのような曲になるように心がけていますね。

――『ドラゴンクエスト』の曲は、自然と覚えられますよね。
藤田 じつは、僕はすぎやまこういち先生を心の師匠だと思っているんです。音楽を始めたのも、『ドラゴンクエスト』の楽譜を手に入れて、エレクトーンで弾いたことがきっかけでしたし。子どものころは、本当にファミコン小僧だったんですよ。

――では、昔からゲーム音楽の作曲家を目指されていたんですね。
藤田 いえ、一時期、洋楽ばかり聴いてカッコつけていた時期は、「アーティストになりたい!」なんて思っていたのですが……。でも、原点に戻って考えてみたら、やっぱり「コンテンツに曲をつけるのが好きだ」と思ったんですよね。

――ちなみに、藤田さんは超常現象に遭遇したことはありますか?
藤田 音楽スタジオには昔から霊的なものが憑きまとうと言われていますね。夜にスタジオで寝ていると金縛りに遭うとか、電気が消えているブースの中を横切る人影が見えるとか……。僕自身は一度だけ金縛りに遭いましたが、あれは疲労のせいだと思います(笑)。スタジオでの仕事は過酷なので、ほかのみんなも疲れていただけじゃないのかな(笑)。

――(笑)。では、最後に読者へのメッセージをお願いします。
藤田 ゲームをプレイした皆さんに、音楽が違和感なく受け入れてもらえたらいいなと思っています。『特殊報道部』というコンテンツを構成する、ひとつのエッセンスとして楽しんでください。