社内Game Jamの注意点を解説

即席チームでゲームを1本作る、バンダイナムコゲームスが社内で実施したGame Jamの裏側とは?【CEDEC 2012】_01
バンダイナムコスタジオ
プログラム1部 リードプログラマ
湊和久氏

 2012年8月20日~22日、パシフィコ横浜にて開催された日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス“CEDEC2012”。ここでは、3日目の2012年8月22日に同イベントのショートセッションとして、バンダイナムコスタジオ プログラム1部 リードプログラマの湊和久氏が行った“~ゲーム作りによる教育と、教育のためのゲーム作り~ 会社でGame Jam! バンダイナムコゲームス社内 Game Jam レポート”の内容を紹介しよう。

 Game Jamというのは、その場で組んだ即席チームで、48時間以内にゼロから1本のゲームを作る開発イベント。日本国内だけでなく、海外でも大小のGame Jamが行われており、“Global Game Jam”が最大規模のイベントとして知られている。バンダイナムコゲームスは、2012年10月にGame Jamの社内版を社員旅行の1コースとして実施。その背景について湊氏は、Global Game Jamに参加したスタッフが、そこで使用したゲーム開発ツール“Unity”を社内で普及させるのが目的と説明。社内でUnityの勉強会が行われるほど盛り上がってきたこともあり、社員旅行を利用してGame Jamを行うことになったという。

 しかし、社員旅行でのGame Jamの実施はひと筋縄ではいかなったと湊氏は語る。まず、社員旅行先(コース)にするには、複数の幹事がコース企画を提案する中で、参加者を20名以上集めなくてはならない。そこで、ノートPCの貸し出しやセミナー併設といったさまざまなサポートを入れることで、Unityを触ったことがない人も安心して楽しくゲーム開発ができるだけでなく、実際に作った作品を社内コンペに提出するという、作品を披露する場を設けたことで、38名の参加者を集めることができた。

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 つぎに、予算について。社内Game Jamで使用する“Unity Pro”は、有償のため全員分を確保するには高額な費用を要する。そこでUnity Technologies社から社員旅行前から社内コンペまでの期間限定でUnity Proのトライアルコードを発行してもらったり、2011年の節電対策用に社内で使用されていたノートPCや社内のプロジェクターを利用することで、コストを大幅に削減することができたという。

 社内Game Jamの内容は、バスの車内を含め、6時間ほどセミナーを行ったのち、参加者のチーム分け。通常のGame Jamでは、テーマに沿ってゲームを開発するのだが、今回はまず企画を発表し、その内容に興味を持った人をベースに職種のバランスを見ながらチームを振り分けていったという。参加者の職種の大半はプログラマーで、そのほかにアーティストやアニメーター、特許部、営業部などとなっており、チームによってはイチから新作を作ったり、既存のゲームの開発中に入れられなかったアイデアを試したり、Unityのパフォーマンスをひたすら追及するなど、さまざまな開発・研究が行われた。

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 湊氏は、社内Game Jamの成果として、コンペにかなりの数の作品を提出。うち1作品が改良を重ねながら現在も進行中であることや、Unity導入に拍車がかかったことを説明すると、社内Game Jamの費用の内訳を公開しながら、「私たちはタイミングよく社員旅行を利用してGame Jamを行いましたが、休日に社内の会議室を使い、コストをかけずにGame Jamを行っている企業もあります。Game Jamを通じて参加者どうしが情報交換を行いながら、新しいゲームを作るための環境を日本全体で作っていきたいと考えています」と、講演を締めくくった。