『シェルノサージュ』をモデルに、ゲームへのクラウド導入を提案

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 2012年8月20日~8月22日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜・会議センターにて、ゲーム開発者の技術交流などを目的とした“CEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス)2012”が開催されている。

 開催2日目となる8月21日、ガストのプレイステーション Vita用ソフト『シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~』(以下、『シェルノサージュ』)を題材にしたセッション“コンシューマゲームでの挑戦! ネットワークを活用したゲームの構築と運用「シェルノサージュ」の事例”が行われ、ガストの土屋暁氏(『シェルノサージュ』ディレクター)、CRI・ミドルウェアの佐藤修氏、ブロックバスターの渡邉幸二氏らが登壇した。

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▲ガスト 土屋暁氏。
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▲CRI・ミドルウェア 佐藤修氏。
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▲ブロックバスター 渡邉幸二氏。

 『シェルノサージュ』は、“コミュニケーションパート”、“シナリオパート”、“交流パート”の3つのパートから構成されるゲーム。コミュニケーションパートではクラウドを採用しており、シナリオパートではダウンロードコンテンツによるシナリオ追加に対応。交流パートでは、ほかのユーザーとコミュニティを作って楽しむことができる。

 今回のセッションでは、コミュニケーションパートで使われているクラウドに焦点を絞って講演が行われた。

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■『シェルノサージュ』クラウドの持つ可能性

 『シェルノサージュ』における、ヒロイン・イオンの来ている服、疲れ具合、期限、空腹度合、交流履歴、所持アイテムの情報は、すべてクラウドに保存されている。これはつまり、“さまざまな機種で同じ世界を創造できるということ”だと土屋氏は語る。プレイステーション Vitaだけでなく、スマートフォンやウェブアプリでも、この世界を共有できる、ということだ。

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▲たとえば、スマートフォンでアイテム調合を行い、そのアイテムをプレイステーション Vitaでのコミュニケーションで使ったり、ウェブと連動して、スペシャル壁紙をユーザーにプレゼントしたり……といったことが可能になる。
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■『シェルノサージュ』のデータ更新の流れ

 シェルノサージュのクラウド通信では、通信時のアナウンスはバックグラウンドで行われ、プレイヤーには見えない。エラーが起こった際も、プレイヤーに告知はせず、自動的に再度通信を試みるようになっている。

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▲各種データは、CRI・ミドルウェアが手掛けた“Savebox”というミドルウェアを介し、ブロックバスターが手掛けた通信モジュール“ACHttp”を使って更新される。
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▲ゲームを実際に使って、セーブデータがいかに更新されるかを紹介。イオンを着替えさせると、Web上で閲覧可能な、イオンの服装のデータも更新される。いまのイオンは“リーベルドレス”を着ているが……。
▲“リンカージェン”に着替えたイオン。
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▲Webを更新すると、表示が“リンカージェン”になる。

■ACHttpとSavebox

 『シェルノサージュ』のクラウド利用を実現させたのは、先ほども登場した、“Savebox”と“ACHttp”だ。

 “ACHttp”は、『シェルノサージュ』の通信すべてをハンドリングするモジュール。コミュニケーションパート、シナリオパート、交流パートのすべての通信は、ACHttpを介して行われる。“Savebox”は、『シェルノサージュ』のために開発された、ゲームデータの同期通信用ミドルウェアだ。

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▲ACHttpのポイントと、タスクの流れ。
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▲Saveboxを使ったデータのクラウド化の流れ。“ひみつの展開”とは!? 気になる!
▲当初は、Savebox独自のネットワークモジュールを使用する案もあったが、ネットワークはすべてACHttpが管理する仕組みに変更。

 いまは人々がさまざまなハードウェアを持ち、どこでもネットへの接続が可能な時代。土屋氏は、「この時代だからこそ、ハードウェアの垣根を越えたゲームの実現のため、クラウドを利用することを提案したい」とまとめた。

 発売後、定期的なアップデートやダウンロードコンテンツを展開している『シェルノサージュ』。今後、クラウド導入ゲームの先駆者として、どのような遊びを提案してくれるのか、期待が高まる。

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▲本セッションへの注目度は高く、多くの参加者が集まった。