あらゆる面でボリュームアップ!

 テイクツー・インタラクティブ・ジャパンから2012年10月25日に発売が予定されているプレイステーション3、Xbox 360用ソフト『ボーダーランズ2』を開発している燃える男のデベロッパー、Gearbox Softwareに潜入! リードデザイナーのジョン・ヘミングウェイ氏とコンセプトデザイナーのスコット・ケスター氏に話を聞いた。銃の種類、敵の種類、環境のパターン、カスタマイズの幅、あらゆる面でパワーアップした本作の核をクリエイター陣に直撃!

リードデザイナーとコンセプトデザイナーが語る『ボーダーランズ2』【ボーダーランズ2ツアー】 _07

――前作と比べてプレイがスムーズに感じましたが、ゲームバランスがかなりよくなったんじゃあないでしょうか?
ジョン・ヘミングウェイ氏(以下、ヘミングウェイ) ありがとう。本作では、ソロでも協力プレイでも、ノーマルモードで最初にクリアするまでの中で、銃のタイプ、各キャラクターの特性、スキル、Modsを理解してもらうようにデザインしている。50~60時間かかるが、この間に自分はどんなキャラに育てたいのか、好きな銃タイプは何か、といったことを発見してもらい、そこから自分のプレイスタイルを作っていく。これがまずは最初だね。
 その次にTrue Vault Hunter Modeに入っていく。銃やスキルはそのままレベルアップしているが、このモードは難易度が上がっているだけではなく、それまでに発見、習得したことをすべて使って生き残らなくてはいけない。単に敵の与えるダメージが大きくなって、体力が多くなっているだけじゃないんだ。
 例えば、シールドを持っている敵が増える。これは協力プレイなら、1人がシールドを削り取る役を引き受けたほうがいいから、ゲームの性質が変わってくるよね。アーマーを持っている敵も増えるので、プレイヤーは弱点を狙ってダメージを与えるために、前より正確に狙いを定めなくてはいけない。
 従って、ゲームバランスを考えた時、ただの数字の問題ではなく、プレイヤーがどのようにゲームにアプローチするかがポイントになる。僕らもツールの使い方などがうまくなって、ゲームの作り方がレベルアップした。異なる場所で様々な敵と戦えることで戦略的に面白くなっているし、それがゲームをスムースかつ面白いものにしているんだ。

――最初のクリアーまではソロでも出来ますか?
ヘミングウェイ その通り。ボーダーランズのいいところは、ソロでも協力プレイでもプレイ可能で、ゲーム側で自動調整すること。人数が多ければ難しくなりバランスが取れる。またレベルシステムがあるので、難しすぎたら、低いレベルで修行して、パワーを得てより賢くなってからまた挑戦すればいい。プレイヤーは遊びたい難易度でプレイするということがわかったからだ。

――自分は前作ではたまに、隠れながらチマチマ撃って戦うしかないこともあったんですが、それはもうしなくて大丈夫ですか?
ヘミングウェイ 今回はプレイヤーがやりたいようにアプローチして欲しい。銃やスキルツリーでキャラクターを定義して、どのようにゲームをプレイするかを決めてくれ。例えばショットガンのJacobが好きなら、それがキミのビルドの基礎になる。これに色々足していって、ショットガンを効果的にするんだ。体力を増やしたり、シールドを盛るのもいいだろう。こうして整えていくことで、プレイヤーはやりたい方法にアプローチ出来る。カバーしながら進みたい人や、スナイパーが好きな人などにも、それに応じた方法がある。

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▲左で発動しているのがフェーズロック。敵を浮かせて一定時間固定する。

――各キャラクターがどんなものになれるのか、幅を教えてください。
ヘミングウェイ 各キャラクターは3系統のスキルツリーからスキルを購入できる。数字は今ちょっと把握していないが、1つのツリーの中にもゲームプレイ・スタイルが非常にたくさんあると考えてくれ。例えばマヤは体力や回復関係のスキルが集まった“ハーモニー”というスキルツリーを持っているが、その中にだって攻撃的なスキルがある。“レック”というスキルは、敵を“フェーズロック”で捉えている間に、ボーナスとしてダメージとファイアレートを得る。フェーズロックでは小さめの敵を捉えることも多いけど、このスキルがあれば攻撃力が上がるから大きな敵も狙いたくなるよね。

――前作に比べて、ソロと協力プレイモードをそれぞれどう調整改善したのか?
ヘミングウェイ 多くはキャラクターのスキル自体でバランスを行っている。モンスターデザインでも調整した。この二つでソロ、協力プレイの性格を変えている。ボクたちは両方のモードで効果的なスキルを好む。例えばマヤなら、“スイートリリース”というスキルを持っている。フェーズロック中に敵を殺すと、回復オーブがたくさん出るんだ。オーブは自動的に倒れているプレイヤーを見つけてヒールする。オーブがバーっと出るから、仲間は「あぁ、彼女と戦ってれば回復フォローが受けられそうだな」と前線で安心して激しく戦える。多くのスキルは、このように自然にプレイヤーが覚えて一緒にプレイしやすくするものになっている。

――では5つのキャラクターを短く定義してみてください。
ヘミングウェイ よし、やってみよう。
1.アサシン: ガン忍者。策略、ステルス。遠くからスナイパーライフルで殺すか、急に敵の後ろに現れて刺す。
2.サイレン: コントローリング・ウィザード。ガンプレイにマジックを加えて、戦場を自分の好きなようにコントロールする。
3.ガンザーカー: 巨大ガンの二挺使い。純粋な憤激と意思の力で、どんな敵の弾にも耐える。あと、ロケットランチャー2つでもぶっ放せる。
4.コマンドー: どんな状況でも戦える準備が出来ている。何に対してもツールを用意している。いずれもベストではないが、でも常に何かが出来る。タレットと自分を使えばどんな状況でも切り抜けられる。
5.メクロマンサー: シングルプレイヤーCoop。危険な状況になった時に、ロボットを召喚して助けてもらう。ダメージを与えるという意味だけでなく、敵に向かっていって攻撃をブロックしたり、注意を引いたりね。

――先ほどプレイしていたら、バリアーを張る敵がいました。ユニークなスキル持つ敵を教えてください。
ヘミングウェイ 例えばグライヤスかな。図体の大きい強い男で、ヘルメットのようなもので頭を守っている。頭を撃つとヘルメットをはぎ取れるが、そうすると怒って暴れまくり、彼の友達でも何でも攻撃する。だからこれを反対に利用して、同士討ちを誘ってやるんだ。ただし、彼が誰かを殺すと体力全回復+レベルアップして強くなるので、注意が必要。賢いプレイヤーは彼の頭を撃って隠れるだろうけど、ほっとくとどんどん強くなってしまうので、自分が殺される前にどこかで彼を倒さなきゃいけない。
 それとプローブなんかもいいね。Hyperionが作ったフライング・ロボットで、ローダー系のロボットと一緒に動く。他のロボットがダメージを受けると、コイツが修理しにやってくるんだ。プローブが飛んでいる間に撃っても倒せないが、修理している間はシールドをしまっているので倒せる。まずロボットにダメージを与えてプローブを呼ばせ、修理している間にプローブを攻撃して、その後ロボットを倒す。
――戦場全体を見ていないといけないようですね。
ヘミングウェイ イエス。戦場を理解しないといけないね。

――巨大なものから小さいものまで様々な敵がいますが、それぞれのキャラクターが戦えるようにデザインするのは難しかったのでは?
ヘミングウェイ そういう点もあった。プレイヤーにはそれぞれ違う敵とそれぞれ違う戦い方をしてもらいたい。プレイヤーがゲームの進め方を決めた時に、願わくばそれが強くあって欲しいと思うが、状況が変われば守備に回ったり、プレイスタイルを変更しなくてはならないかもしれない。でも、これが『ボーダーランズ2』を面白くしているんだ。次の角で何が待っているかわからないから、正しく反応しなくてはならない。ダルそうにしていては勝てない。

――本作では環境がとても多様になりましたが、ゲームデザインをする上で影響は?
ヘミングウェイ 新しい環境は、新しいゲームプレイの機会を作ってくれたので、そこに合った新しいクリチャーも作れた。例えば、ストッカーズという見えない敵がいる。コイツは急に出てきて攻撃してくるんだ。砂漠にはちょっとふさわしくないけど、今回は緑のエリアがあるので自然だ。それに、新しい環境はゲームをさらに探索する機会を与えてくれた。今回は今まで見たことのない新しい場所を探索できる。

――E3でライターのアンソニーさんにインタビューしたんですが、すごい変わった面白い人でした。打ち合わせをしていて面食らうことは?
ヘミングウェイ そういうことはないかな。ボーダーランズ・チームのよいところは、皆何かについて情熱を持っていて、それぞれ何か特別なことをチームに持ち込んでくれることだ。アンソニーはユーモアや面白いストーリー、捻りがあることに情熱を持っていてこだわりがあり、それをストーリーに生かしている。リード・モンスター・デザイナーのルーベンなら、モンスターに情熱を注ぎ込んでいる。自分はスキル・デザイナーなので、スキル・デザインに情熱を持っていてこだわりがある。このように、皆がそれぞれこだわっていることで、それがブレンドしてうまくいっているんだ。

――9TOESには“3つのタマがある”って説明がついていましたが、誰かがこのようなアイデアを出したときには、どんな感じで受け止めるんですか? みんなでいいアイデアだねと言いあうとか?
ヘミングウェイ アイデアはテストしないといけない。いいアイデアであれば、みんなが合意することも多いね。でも、アイデアが他に理解されなかったことも何度かあった。その場合は、厳しい決断を下さなくてはいけない。覚えているのは、Zeroの外見かな。アートディレクターのジェレミー・クックはこのキャラクターの要素が本当に好きだったんだが、チームの他の人は理解出来なかった。でも、社外に見せたらとても反応が良かった。誰かがやっていることが例え理解できないものでも、その人が情熱を持っていれば素晴らしいものが出来ることもあると理解している。

――前作では開発終盤になってアートスタイルを変えて一気にゲームが良くなったとされていますが、今作でそれに匹敵する大発明はありますか?
ヘミングウェイ それほどドラマチックなものでもないんだ。前作は『Diablo』にFPSを入れたゲームにしたかったんだ。だが開発を始めてみて、アートスタイルがリアルであることによる制約が見えてきた。ショットガンに魔法のパワーを与えたくとも、見た目がリアリスティックだと、どうにもかみ合わない。
 もっとクレイジーなことがやりたかったから、徐々にもっとクレイジーで空想に満ちた世界へと移行していき、ついにアートスタイルも変わった。これが最後に必要な大きな変化だった。それですべてがうまく動き出したんだ。
 アートスタイルの変化は、我々がこのゲームが何であるかをはっきりと理解することが大事だったという話だ。デベロッパーはよく“ゲームを見つける”、“楽しさを見つける”と言うが、それに成功した。今作では何がうまくいくかがわかったので、磨きをかけてさらに良くすることに腐心した。

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▲『ボーダーランズ』のアートスタイルが確定する前のイメージ(左)と、『ボーダーランズ2』の極彩色の画像(右)。

――数ある銃のバランスはどのようにしているんですか?
ヘミングウェイ 我々の哲学としては、『ボーダーランズ』とは、プレイヤーが“よりよい銃”を見つけるゲームではなく、“自分の銃”を見つけてもらうゲームだ。それによって自分のキャラクターが完成する銃を見つけてほしいんだ。
 プレイヤーはそれぞれ少しずつプレイの仕方が違う。攻撃的な人もいれば受動的な人もいる。銃を作る際には、プレイヤーが好むすべてのタイプを入れるようにした。1つのカテゴリーの中にも選択がある。ショットガンが好きな人でも、1発でダメージを与えたい人はマガジンサイズの小さいJacobがいいが、倒せなかったらリロードしなくてはいけない。フルオート・ショットガンがよければHyperionがある。
 強いものにはトレードオフがある。ショットガンはパワフルだがリロード時間が長い。敵に近づかなくてはならないので危険だ。リスクと報酬は背中合わせだ。ガン、スキル、キャラクタークラスをデザインする際の哲学を覚えていれば、すべてが自然にバランスが取れるようになっていく。

――ではこのゲームを3単語で表現すると?
ヘミングウェイ Mind Blowingly Awesome!(ブッ飛ぶほど超スゲェ!!)

リードデザイナーとコンセプトデザイナーが語る『ボーダーランズ2』【ボーダーランズ2ツアー】 _02
▲どんな外見で、どんな武器を持ち、どんなスキルを成長させるか……選択によってキャラクターがオリジナルなものになっていく。
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――本作ではとてもカラフルなゲームになりましたね。
スコット・ケスター氏(以下、ケスター) 今回は風景だけでなく、ゲームのトーンも緑の様子も違うものになるように色々検討した。前作ではカラーパレットが全体に落ち着いた色で締め付けられる感じがあったが、今作ではオープンな感じになっている。環境、キャラクター、クリチャーにもそれが見える。だから新しいサイレンも、明るいブルーとイエローの髪にしようと思ったんだ。

――色の付け方ですが、例えば植物のグリーンにしても少し変わった感じの色だし、雪も普通とは違った感じがします。
ケスター そこは意識的にやっている。それに、雪だからブルー系統というだけでなく、ここに2番目、3番目の色を入れて、アクセントをつけて活き活きさせている。敵も同じだ。ブルーな地域だからブルーのクリーチャーと戦うというのでは、平坦で面白くない。カラーでプレイヤーの注意を引きつけてガイドしていくようにして、他は落ち着いた色にしている。

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▲初代『ボーダーランズ』の景色と言ったらこんなイメージ。

――E3で遊んだのは都市っぽい、未来っぽい感じでした。砂漠から砂漠を作るなら流用も出来るかもしれませんが、全く新しく作るのは大変だったのでは?
ケスター 違う環境へプレイヤーを導くなら、砂を違う色にしようとかではなく、大きく変えたかった。クラシックな『ボーダーランズ』らしい砂漠も出てくるが、スコットランドのような高原や南極っぽいツンドラもあるし、未来都市もある。今まで使っていたカラーをまた使うことはしないで、パレットからやり直したよ。クレイジーなガンシューティングをやるなら、カラフルクリーチャー、カラフルキャラクターにしようということになったんだ。

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▲そして『ボーダーランズ2』では、より幅広いフィールドが舞台となっている。

――敵キャラクターを並べたポスターがあって、本当に色々なキャラクターがいるのにグッと来ました。ゲームをやっていると、ものすごくバカでかいキャラクターが出てくるのも好きなところです。クレイジーなキャラもいっぱいいます。こういうキャラはどうやって決めているんですか? ゲームデザイナーやライターから「こんなキャラが欲しい」とリクエストされることは?
ケスター ゲームデザインからは、「何本も手があって、地面から何かを掴んでプレイヤーに投げるクリーチャーが欲しい」とか言われて、デザインすることがある。そうして我々が作ったフレームワークと、カラーや行動を変えるオプションを入れたものを戦闘系のデザイナーがいじって、どんどん磨いていく。我々のクリエイティブ面と、ゲームデザイナーがクリチャーに求めるものでコラボしているんだ。そこから「こんなアイデアも実現できるんじゃないか?」って話が新たに始まることもある。作っていく間に、大きさを変えて腕を付けたり、シールドに小人を3つくくり付けようとか、社内で競争をする感じもある。こうして色々なバリエーションが生まれていく。

――この会社のゲームは常にユーモアが入っているが、仕事をしていて感じることはありますか?
ケスター 常に人を楽しませるゲームを作ろうとしている。気楽に銃を撃って笑って楽しむのが大事だから、いつもヘビーにならないよう、軽くすることも考える。ストーリーには波があるし、キーポイントもあるが、ユーモアセンスのおかげで、悲劇だがバカバカしくておかしいという場面も出てくる。他社で働いたことがないのでわからないが、ここでは誰かがアイデアを出す時は、だいたいいいアイデアだと思う。自分がアーティストとして、アンソニーがライターとして、ポールがデザイナーとして面白いものを検討し、全体として意味が通って納得のいくものなら入れる。プレイしていて、笑っていなかったらダメだ。とにかく友達と一緒に撃って走って笑うのがいい。

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▲FPSでは普通は自分の手元しか見えないが、Co-opがあるならオシャレにも気を使いたいところ。本作では数多くのプリセットをベースに外見をカスタマイズできる。これも本作の“バリエーション”のひとつ。

――前作でうまくいったところと、そうではなかったので今回は変えたという点は?
ケスター 前作では後の方になってアートスタイルを変更した。これによってゲームが活き活きしたと思う。FPSロールプレイングゲームというコンセプトを確立して、すべての面で完全だったとは思わないが、とても良いスタートが切れた。
 今回は、しっかり出来た前作を基礎にして、環境を広げるなど、すべての要素をもっとたくさん盛り込むことにした。前作は茶色っぽいモノトーンだったが、これをカラフルにした。今回はクリーチャーのバリエーションも多い。銃も増やした。つまり今回の大きな要素はバラエティーだ。同じゲームに多少追加するのではなく、ものすごくたくさん追加して、さらに新しい要素とメカニズムを取り入れている。

――好きなキャラ、モンスター、または環境は?
ケスター 自分がやっているのがキャラクターなので、そこからひとつを選ぶのもちょっと変な気分だが、サルバドールが好きだね。身体がデカくて巨大な銃を持っている。彼かゼロのどっちかだな。ステルス、アサシンも好きだからね。ゲームの中には他にも素晴らしいキャラクターが出てくる。全体としては前作のローランドも好きかな。