そもそも『Diablo』シリーズとは?
2012年5月、PCゲーム『Diablo III』が発売された。海外のみのリリースだが、発売日近辺では秋葉原をはじめとした多くのショップが輸入盤を取り扱っていたので、目撃した人も多いのではなかろうか。
そもそも『Diablo』とは、1997年に登場したアクションRPG。ダンジョンにもぐって敵を倒し、レアな装備品を見つけて主人公を強化していくという、ストイックなやりこみ要素が話題に。当初PC版が発売され、ついで初代プレイステーションにも移植された。日本語版も発売されたため、ハマった人もいることと思う。
また当時としては珍しいオンラインプレイに対応したことも大きな特徴。協力プレイという新しいゲームの魅力は業界に大きな影響を与え、『セイクリッド』シリーズや『ファンタシースターオンライン』シリーズなど、現在のMORPGの礎を築いた作品でもある。
そして2000年には続編となる『Diablo II』が登場し、前作を上回る空前の大ヒットを記録する。その完成度はもとより、数年間にわたってアップデートが行われ、ゲーム内容がどんどん進化していったため、人気は長期間持続した。こないだまで遊んでいたよ、というプレイヤーも多いのではないかな。
時は流れて12年、ついに待望の最新作が登場。初週販売630万本という、これまた大ヒットとなった。世界が熱狂しているのはどんな作品なのか、インプレッションをお届けしよう。
キャラクターを作成していざ出陣!
本作をプレイするにはオンラインへの接続が必須だ。アカウントの作成を行い、ゲームを起動したら、まずはプレイヤーキャラクターの作成を行う。
今作で選べるクラス(職業)は、BARBARIAN、DEMON HUNTER、MONK、WITCH DOCTOR、WIZARDの5種類。前作では拡張パック導入後だと7種類から選択できたが、クラスによって性別は固定されていた。今作ではクラスごとに性別を自由に選べるため、外観のバリエーションは増加した形だ。
物語は、主人公がある街にたどり着いた場面からスタート。周囲に現れたゾンビを倒して街に入り、住民から依頼されるクエストをクリアーしてストーリーを進めていくスタイルだ。
発生するクエストの順番は一定で、さらに内容も“アイテムを見つけてこい”だの“ボスを倒してこい”といった単純な目的ばかりだ。オープンワールドRPGのような自由度の高さは期待できないが、そのシンプルさゆえに英語が苦手な人でも何をすればいいかわかりやすい。
バトルの中核をなす豊富なスキル
プレイヤーキャラクターは、多彩なスキルを使用できる。スキルは、自分でボタンを押して使用するアクティブスキルが6カテゴリと、選択すれば効果が持続するパッシブスキルの計7カテゴリが存在する。
アクティブスキルはマウスの左右ボタン、キーボードの1~4ボタンが各カテゴリに対応。たとえばマウスの左ボタンにはPRIMARYカテゴリが割り当てられており、このカテゴリには数種類のスキルが存在している。そのうちひとつをあらかじめ選択しておき、以降はマウスの左ボタンを押すだけでそのスキルを使用できる、という仕組みだ。レベルが上がると新しいスキルを覚えていくため、ゲーム進行に応じてバトルの選択肢がどんどん増えていく楽しさがあるのだ。
さらに、各スキルにはルーンが存在する。これはスキルに新たな効果を付与するもので、各スキルごとに数種類存在する。こちらもスキルと同様、レベルが上昇すれば新しいルーンを覚えていく。
今回はWIZARDを例に紹介してみよう。PRIMARYカテゴリの“Magic Missile”は、紫色の光弾をひとつ発射する基本的な攻撃スキルだ。レベルが上昇し、このMagic Missileの“Split”というルーンを選択すると、光弾の数が3つに増えるのだ。1発あたりのダメージは標準状態より下がってはいるが、総ダメージは上昇しているし、また数が増えているため敵に当たりやすいというメリットがある。
続いて、今度はスキルそのものを“Magic Missile”から“Spectral Blade”に変更した場合。主人公の前方を魔法の剣で斬りつけ、周囲にいる敵すべてにダメージを与える、という攻撃に切り替わる。もちろんレベルが上がれば、“Spectral Blade”のルーンも増えていき、より攻撃のバリエーションが増えていく。
本作ではキャラクターにステータスが存在するが、前作のレベルアップ時に自由に割り振れる方式から、自動的に上昇する仕組みに変更された。膨大な数のスキルから6つの組み合わせを選択することで個性を出す、という方式に変わったのだ。
スキルを駆使して強敵に立ち向かえ!
本作のバトルは、前述のスキルをいかに活用できるかが勝負だ。PRIMARYのスキルはいわゆる通常攻撃に当たるものが多く、とくにリソースを消費せずに発動できる。その代わり威力や特殊効果は控えめだ。それ以外のスキルは、マナや時間といったリソースを使うかわりに強力な威力を持つものが多い。基本的にはこれらを主軸に戦い、マナがつきたときや、スキルのクールタイム(使用不可能時間)時に、PRIMARYスキルで乗り切ったり、逃げたりするわけだ。
キャラクターの体力やマナは、ポーションを使用することで回復できる。ただし前作とは異なり、使用すると再使用まで一定の時間が必要になる。つまり連続使用できないため、ポーション連打でごり押しする、という戦法が行えなくなっているのだ。
その代わりに、まれに敵を倒したときヘルスグローブが出現するようになった。これを入手すると体力が回復するため、基本的にはこちらがメインの回復手段となる。ポーションはどちらかというと緊急回復用、という位置づけだ。
本作の敵キャラクターにはいくつか種類が存在する。通常の敵に加えて、青い名前のチャンピオン、黄色い名前のレア、紫色の名前のユニークだ。いずれも通常に比較して数倍の強さを誇る。チャンピオンは固体の性能はそこまで強力ではないが、複数で出現するため苦戦は必須。レアは1体のみながら非常に強力で、複数の手下を従えている。ユニークはいわゆるボスキャラクターで、当然ながら強烈な攻撃を行ってくる。
これらの特殊モンスターは、周囲に壁を発生させるもの、テレポートするもの、分身するものなど、さまざまな特殊能力を持っている。また通常の敵に混ざって出現するため、たとえボス戦でなくても気を抜けない。緊張感あふれる戦いがつねに楽しめるのも本作の魅力のひとつだ。
まだ見ぬアイテムを求め、さきへ進むのだ!
本シリーズの魅力のひとつに、トレジャーハント(トレハン)がある。本作の武器や防具といったアイテムには、基本的な性能に加えて、まれに効果が付与されたマジックアイテムが存在する。付与される効果やその威力はランダムのため、よりよい装備を求めて冒険を続けるという楽しみかたもできるのだ。
敵がドロップするアイテムは、敵のレベルが高ければ高いほど良質になるため、基本的にトレハンはレベルを最高まで育ててからの楽しみかただ。だがキャラクターの育成中では、最高性能にはほど遠くても良質の装備を入手できれば嬉しいし、すぐさま戦闘で効果を体感できるため、バトルの魅力にも直結している。
また、入手できるのは武具だけではない。まれに宝石を入手でき、これをソケットが空いた武具にはめ込むと、さまざまな効果を付与することができる。不必要な武器や防具は、商人に売ってお金に換えるほか、マジックアイテムならば分解して素材にすることも可能だ。
宝石にはサイズがあり、小さな宝石を複数材料にすると、より効果が高い大きな宝石にすることができる。また武具を分解した素材をもとに、新たな装備品を作ることもできる。これらのクラフトを行うには、職人に頼む必要がある。職人にはレベルが存在し、お金やアイテムを渡して職人のレベルを上げると、より高度なアイテムが作れるという仕組みだ。
また、プレイヤーキャラクターがアイテムを保存できる保管庫が存在する。保管庫の中身は同一アカウントで共有しているため、キャラクター間でのアイテムの受け渡しがスムーズに行えるのだ。保管庫に入れられるアイテムは最初は少ないが、お金を払うことで拡張できる。
ほかのプレイヤーと売買できるオークションハウス
本作から登場した新たな要素に、オークションハウスがある。これはゲーム内におけるオークションで、誰でも落札や出品が行える。アイテムトレード自体は過去作でもプレイヤー間で行えたが、システムとして実装されたため、より手軽かつ安全に取引が行えるようになったわけだ。
本作最大の注目点として、通常のオークションハウスに加えて、現金でトレードを行える“リアルマネーオークションハウス”(RMAH)が運営されていることだ。MMORPGの『EverQuest II』をはじめ、過去作で同様のシステムを導入していた例があるため、先駆者というわけではないが注目度は高い。利用するしない、好き嫌いはひとまず置いておき、今後の動向を見守っていきたい。
良作ではあるが前作が偉大すぎた?
シリーズの基本コンセプトはそのままに、細かなシステムは現代風に改良を加え、とても遊びやすく作られた本作。たとえば前作では、未鑑定のアイテムを入手した場合、スクロールを使用して鑑定する必要があった。街に帰るためのポータルを開くのも同様に、スクロールが必要だった。対する今作では、どちらも使用回数が無限になったため、わざわざスクロールを買いだめする必要がなくなったのだ。その代わり、発動するまで数秒の時間がかかるようになったため、緊急時にポータルを開いて脱出、というのは難しくなった。単に簡単になったというわけではなく、面倒ではないが使用するタイミングに戦略が要求されるようになったのだ。
緊張感あふれるバトルは健在だし、キャラクターを成長させる楽しさもたっぷり味わえる。同じクラスでもスキルのチョイスによって戦いかたがガラッと変わるため、末永く遊べるポテンシャルを秘めている。また今回紹介できなかった要素も、まだまだ存在する。
ただし、現在は最高難度のバランスに少々難があるようで、ネット上の評判は賛否両論のようだ。ふつうに遊ぶぶんには問題ないが、コアプレイヤーになるにしたがって、厳しい評価を下す傾向にあるようだ。
残念ながら前作の完成度は超えられなかったようだが、『Diablo II』自体が長期間にわたるアップデートによって完成度を高めていったため、本作もそうなることを期待して遊んでいこうと思う。
著者紹介 喫茶板東
ファミ通Xbox 360で海外ゲームマニアックス、実績解除愛好会などを担当するフリーライター。本作はもっと遊び込みたいのだが、残念ながら時間が足りない。『Minecraft』の時間泥棒っぷりがパネェ!