政府もゲーム産業を支援する台湾
日本とは歴史的関係が深く、アニメやマンガ、テレビ・ビデオゲームなど日本文化も浸透している台湾。ASUSやAcer、BenQなどのPC関連メーカーがあり、HTCといった世界的なスマートフォン・PDA製造メーカーなど、エレクトロニクス関連の大企業も数多く拠点を置いている。そんな台湾の台北で、2012年6月26日から27日までの二日間、ゲームデベロッパーズカンファレンス(GDC)が初めて開催されている。ここでは、同イベントの初日となる、26日に実施された基調講演の概要と、ゲームショップなどの現地リポートと合わせ、台湾のゲーム事情を紹介しよう。
台湾の2011年のゲーム市場規模は436億NTD(台湾ドル)で、前年比3.36パーセントの成長率だとか。世界のゲーム産業の傾向に合わせ、台湾でもWebゲーム、スマートフォン、タブレットPCアプリケーションなどの新しい領域のゲームに力を入れる開発会社が多く、高等教育機関でもデジタルコンテンツ産業の関連部門が設立され、積極的にゲーム業界の人材を育成するなど、政府もゲーム産業を支援している。今後は海外との連携をさらに強化し、ゲーム産業のさらなる発展を目指しており、そういった背景もあることから、今回、台湾でもGDCが開催される運びとなったようだ。
台湾は、ほかのアジア地域と同じくオンラインゲーム、とくに基本無料のオンラインゲームが人気のお国柄。2011年のオンラインゲームの市場規模は428億NTD。日本と同様、スマートフォンなどの普及により、モバイルのオンラインゲーム、いわゆるソーシャルゲームも成長の兆しを見せているものの、オンラインゲーム全体の市場割合としては8.91%程度だという。GDC会場や街では、スマートフォンを持ってる人を多く見かけるが、移動に2輪やクルマを使う人が多く、電車でも移動範囲が狭いため、隙間の時間が少ないというのが、ソーシャルゲームがイマイチ勢いに乗れない要因のひとつかもしれない。
中文版ローカライズでコンシューマー市場も広がる!?
基調講演ではコンシューマー(家庭用)ゲームに関してはあまり触れられなかったが、台湾唯一のコンシューマーゲーム雑誌ファミ通台湾版の編集長に聞いたところ、市場規模は小さいものの、一部の熱心なファンが多い、という点が台湾のコンシューマーゲームの特徴のようだ。一般的に広く普及していない要因は、ローカライズの問題。台湾のゲームショップを覗いてみると、北米・欧州、そして日本の最新作がズラリと並び、日本のゲームショップとさほど印象は変わらない。ただ、その多くはローカライズされていないため、十分に物語などが楽しめず、一般のゲームファンにとっては敷居が高いものになっている。ただ、ゲームで日本語を覚えるユーザーも少なくないほど、日本のゲームは人気だ。その人気の要因のひとつはキャラクター。日本と同じく、(アニメやマンガの影響か)欧米のキャラクターデザインに抵抗を感じる人が多く、日本のゲームキャラクターは人気だという。
プレイステーション関連のソフトに関しては、最近はソニー・コンピュータエンタテインメントタイワンが中文翻訳に力を入れており、ファーストパーティのタイトルなら、その多くが日本と同時に中文版が発売されている。『TOKYO JUNGLE』の中文版も、台湾では日本と同時発売されていた。サードパーティのソフトに関しても、日本の発売からさほど間を置かずにローカライズされる傾向が強まっている。日本の発売とほぼ同時期に、さらに数多くの新作がローカライズされれば、日本文化と親和性が高い台湾市場がより魅力的な市場になることは間違いない。Xbox 360についても、ローカライズは行われており、台湾ユーザーを喜ばせている。また、Kinect(キネクト)が思いのほか好調で、2011年は『Kinect スポーツ』が大ヒット。住宅事情は日本とあまり変わらない台湾で意外に感じるが、コンシューマーよりゲーム市場規模が大きいアーケードでもリズムアクションゲームが人気を博しており、台湾のゲームファンは体を使うゲームを好む傾向が強いのかもしれない。
※一部誤りがあった箇所を修正しました。18時37分
最後に、台湾のゲーム開発事情についても少し触れておこう。PCタイトルに関しては、各社が海外市場を意識した展開によりいっそう力を入れていく傾向にある。2011年は合計92タイトルで海外進出を果たし、合計の売り上げは4.03億(米)ドルともなっている。今後は発展目覚ましい中国との関係も重視しつつ、大陸に対してさらの市場開放と交流を呼びかけことが重要(中国の人口は約12億人という巨大市場だけに、言語をほぼ共有する大陸の巨大市場は、台湾にとってかなり大切)になるだろう、ということだ。