いまも昔もゾンビは大人気!?
すっかりゲーム業界に定着したモンスター“ゾンビ”。RPGの敵役をはじめにさまざまなゲームに登場し、『バイオハザード』シリーズや『Left 4 Dead』シリーズ、『デッドライジング』シリーズ、直近では『ロリポップチェーンソー』など、ゾンビを大きくフィーチャーしたタイトルは非常に多い。ウィルスが原因でゾンビっぽくなった“感染者”、なんて設定のものも多いが、まあざっくりひとまとめにゾンビということで。
もちろんゲームに限らず、映画やドラマでもゾンビは人気。そんな状況のなかで近年注目を集めているのが、『The Walking Dead』だ。大本はアメリカのグラフィックノベルで、それをドラマ化したら大ヒット。日本でもFOXチャンネルで放送したほか、DVD、ブルーレイ、原作グラフィックノベルの翻訳版などが発売されている。
そんな『The Walking Dead』がゲーム化、Xbox 360とプレイステーション3、PCにて配信中だ(日本は未配信)。というわけで、さっそくしてインプレションをお届けしようと思う。
原作とは異なるストーリーが展開
本作の主人公は、オリジナルキャラクターのLee Everett。歴史教授だった彼は、とある事件で有罪判決を受けてしまう。パトカーで彼が輸送される場面から、この物語はスタートする。
運転手の警官と会話をしていると、突如道路に人が出現。パトカーは避けきれずに衝突し、大クラッシュしてしまうのだ。気がつくとLeeは足をケガした状態。運転手の警官は車外に投げ出され、動く気配はない。なんとかして車外に脱出し、警官に近づくと、あろうことか彼が襲いかかってきた。何が原因かはわからないが、警官はゾンビになってしまったのだ! ここから、ゾンビから逃げ続ける長い逃亡劇が描かれていく。
懐かしさが漂うアドベンチャーゲームのシステム
本作は海外製タイトルとしては珍しい、アクションアドベンチャー。左スティックで主人公の移動、右スティックでカーソルを動かすというスタイルだ。画面上の特定ポイント、たとえば電話や柵、ほかの登場キャラクターなど、なにかありそうな場所にカーソルを合わせると、コマンドアイコンが表示される。その状態で4つのボタン、または方向パッドを押して、会話や調べる、アイテムを使う、といったアクションを行うのだ。
実際のプレイで中心となるのは、画面上の調べられるものを見つけ出すこと。特定の条件を満たせばつぎのシーンに進むというスタイルで、プレイ感覚は1990年代に一世を風靡した日本のアドベンチャーゲームに近い。昨今では珍しいスタイルのため、筆者のようなおっさんゲーマーには懐かしく、逆に若い世代のゲーマーには新鮮に感じられると思う。
また、会話シーンが多いことも本作の特徴。相手の返答に対する答えは最大で4種類のなかから選択でき、返答に制限時間が設定されている会話も存在する。
素早く正解を見つけ出す、緊張感あふれるバトルシーン
本作の見所は、ゾンビに対する緊張感が見事に描かれていることだ。アクションゲームではゾンビを倒す爽快感を主軸に置くことが多いが、本作はアクションアドベンチャーのため、ひとつひとつのゾンビ戦を重視した作りになっていると感じた。
たとえば、ある家を探索中にゾンビが襲いかかってくる場面。急に背後からゾンビに抱きつかれるので、ボタン連打でふりほどく。そのまま主人公は逃げるが、床の血で足を滑らせ、転んでしまう。ぼやける視界のなか、素早くゾンビにカーソルを合わせ、対応するボタンを押して、ゾンビを蹴り飛ばさなければならない。その後もジリジリとにじり寄ってくるゾンビ、ふと気がつけば家の入り口にはカナヅチを持った少女が。急いでカナヅチにカーソルを合わせて受け取り、今度はゾンビにカーソルを合わせてカナヅチを振り下ろす……という流れだ。
これがアクションゲームの場合ならば、たとえばいったんゾンビから遠ざかる、手持ちの武器を確認して銃を撃つ、角材で殴る、もしくはそのまま逃げるなど、多数の選択肢が用意されていることが多い。だが本作はその真逆で、限りある時間のなかで“ゾンビを蹴る”や“カナヅチを受け取る”といった、正解のアクションを見つけ出さなければならない。一瞬の戸惑いが命取りになる、緊張感バツグンのイベントを楽しめるというワケだ。
イベントは濃いがリプレイ性は低い……かも
マップの怪しい場所をカーソルで探索するという、古典的なゲームシステムで作られた本作。自由度が低くなるというデメリットはあるが、代わりにイベントシーンの演出を凝った作りにできる。そのため、緊張感あふれるバトルシーンを体験できる。バトルシーンはそこまで多くなく、また2度のプレイでは正解がわかっているため緊張感が大きく下がるというデメリットもあるが、初プレイ時は存分にイベントを楽しめるだろう。
ちなみに本作は全5エピソードで構成されており、2012年6月現在は最初のエピソードのみ配信中。そのため1エピソードのボリュームは少ないが、比較的お手頃な値段設定となっている。原作のファンはもちろん、ゾンビゲームが好きな人はぜひともチェックしておきたいタイトルだ。
著者紹介 喫茶板東
ファミ通Xbox 360で海外ゲームマニアックス、実績解除愛好会などを担当するフリーライター。本作以外に、最近では『ロリポップチェーンソー』に『ドラゴンズドグマ』、『Minecraft』などでゾンビ的なモンスターを倒しまくってます。