本誌ではお届けできなかった完全版
フロム・ソフトウェアのプレステーション3、Xbox 360用ソフト『アーマード・コア V』は、膨大な数のパーツ群を使って、自分だけの戦闘メカ“AC”(アーマード・コア)を組み上げて戦いをくり広げる人気アクションゲームのシリーズ最新作。今回は、プレイステーション3版が6月14日、Xbox 360版が6月19日に実施された大規模なアップデートについて、本作のプロデューサーである鍋島氏に直撃インタビュー! 本誌掲載版では、ページの都合で掲載しきれなかった完全版をここにお届け。
『アーマード・コア V』プロデユーサー
鍋島俊文氏(なべしま としふみ)
『AC』シリーズの開発には第1作から関わっており、『ACV』ではプロデューサーを務める。
――本作発売から初めての誌面でのインタビューとなるわけですが、まずは発売日から本日に至る間についてお聞きしたいと思います。
鍋島俊文氏(以下、鍋島) はい、『ACVV』は、発売と同時に販売本数という意味では、予約本数を含めて全シリーズ中でも、かなりいい数字を出せました。しかし、発売当初からさまざまなトラブルがあり、とくにオンライン関係ではこちらの対応の遅れなど、大変申し訳のないこととなってしまいました。今回のアップデートを含めてですが、オンライン要素の強いタイトルとして製作していたのに発売後に遊びやすい環境を作れなかったことは、非常に申し訳ないと思っています。
――サービス開始以降で、実際にユーザーさんからさまざまな反応があったと思いますが、想定されていたこと、または想定外だったことはありますか?
鍋島 いままでは1対1の戦いがメインでしたが本作ではチーム戦になっています。そのあたりにどんな反応があるのか、期待半分、不安半分でした。そして、そうとう上手な人がいるというのは想定していましたが、それよりも遥かに上にいく人が多かった。いろいろな意味で予想を上回る遊びかたをしてくれていると感じています。
――領地ミッションや、フリー対戦の比率などプレイヤーの分布はどうでしたか?
鍋島 対戦をこだわりたい人はもっとフリー対戦に流れていくかと思っていました。既存シリーズのことを考えると、対戦をこだわりたい人は最終的にはフリー対戦に流れていくのかなと予想していたのですが、思っていたよりチームで領地ミッションを やってもらえている印象があります。
――領地ミッションに置ける、人気マップの偏りなどは想定されていましたか?
鍋島 いままでのシリーズでもマップを作るときには、戦いかたが同じにならないように、これまでのシリーズの対戦マップでも遊びやすいマップ、ネタ的におもしろいものといった形でバリエーションは用意していました。そこで当然偏りが出るんですが、今回はそれがかなり大きくなった感じはあります。もっとも標準的なマップという意味で、砂漠(BURIED FACILITY)をメニューのいちばん上に持って行きましたが、かなり一極集中の傾向にありますね。
――ブーストドライブができないタンク型でも、戦いやすいといったところも人気の理由じゃないかと思いますが……。
鍋島 そうですね。一通りのタイプがそれなりに活躍できるマップではあるかもしれません。
――領地戦の偏りと言えば、初期の二大チームによる支配などは想定されていましたか?
鍋島 最大で1チームに20人いるとはいえ、24時間交代制でつねにプレイしているんじゃないかといった勢いでしたね。発売前に、どのくらいのペースでプレイされるのかとか、1シーズンはどのくらいの時間がいいのか? などは当然こちらでも試算はするんですね。見積もりが大きすぎると間延びしますし、小さすぎるとあっという間に流れてしまうので適切なところが難しいのですが、本作の場合はとくに見込みを相当上回られた感があります。正直、脱帽としか言えない感じです。
――パ-ツパラメータの修正も過去2回行われてきましたが。
鍋島 これは本作にかぎった話ではないですが、オンライン要素が強いタイトルの場合、ひとりでプレイするストーリーミッションなどとの整合性が難しいところはあります。発売日にクリアする人もいますし、時間がかかる人もいるので、その時々での全体のユーザーさんの動向との兼ね合いも考慮していく必要があります。ただ、ユーザーの皆さんがこうなったら遊びやすい、楽しい、といった方向性は可能なかぎり反映できるように調整していきたいとは思っています。
アップデートファイルver1.04について
――今回のアップデートについてお尋ねしますが、最大の特徴はやはり領地ミッションのマッチングの改善でしょうか?
鍋島 そうですね、とにかく領地ミッションで対人戦をしたいという人が快適に遊べるように"防衛セッション検索"を追加しました。たとえば砂漠で侵攻を選んだ場合、砂漠で防衛セッションがあればまずそこにマッチングします。もし砂漠に該当するセッションがなければ、ほかのエリアを探してそことマッチングをするものです。条件はあまりこだわらないから、とにかく対戦という人向けのクイックマッチ的な機能です。
――領地評価との対応は?
鍋島 それも最初に侵攻側が設定した条件で優先的に探しますが、合致するものが見つからなければ設定以外の防衛セッションでもマッチングするようになっています。
――砂漠下位侵攻だったのが、ほかのエリアの上位侵攻になる場合も?
そうなります。対人戦をやりたいという要望を実行できる機能として実装しました。なるべく待ち時間がなく、対人戦ができることを優先した結果こうなりました。
――つぎに、チームや傭兵のコメント関係の拡充についてお聞かせください。
鍋島 チームを組めない、チームメンバーを探したい、新しいチームを作りたいといったユーザーさんをサポートする機能です。チームデータのコメント欄のボリュームを増やして、活動時間20時~23時とか、おもな活動は土曜日や日曜日メインだとか、チームの活動情報を書いてもらって、自分にあったチームを探しやすくしたものです。
――傭兵関係もコメントや検索面でかなり手が入りましたが。
鍋島 傭兵システムでは登録時のプロフィールおよび検索条件に活動拠点やチーム移籍希望の設定を追加しました。傭兵システム自体は、ディープなコミュニケーションをしなくてもいい気軽なスタンスであるべきだと思っています。とはいえ、傭兵をやっているうちに、より深くチーム戦に参加したいと思う人や、長く傭兵をやっているうちにおなじみさんができて、そのチームに合流したいという人も少なくないと思います。そんな人に向けて、きっかけ作りとしての チーム移籍(入隊)希望の表示を追加しました。
――雇う側にも便利な新機能や傭兵宛メッセージの追加がありますが。
鍋島 ユーザーさんから、"せっかく参加してくれたのに負けてしまって申し訳ない"といったものを追加してほしいという意見が多かったんです。ですから、ミッション終了時に傭兵へ送るメッセージを新規に10個増やしました。もちろん好評価のメッセージもいろいろ増えているので使い分けてくれるとうれしいですね。また、傭兵の機体構成の詳細表示を追加しました。これも要望多かったもので、内装までわかるものを追加していますので、傭兵を雇うときに役立ててください。
COM傭兵について
――アップデート告知されてから話題を集めていたCOM傭兵ですが、どのような目的が?
鍋島 COM傭兵は、少人数チームへのサポートを目的としています。ストーリー、オーダーミッションで撃破した敵ACを、最大で3体COM傭兵として雇うことができるんです。雇えるCOM傭兵はリストで配信され、その中から好みのものを選ぶことになります。フレイムフライやビーハイヴなどで部隊を編成してもいいですし、ゾディアックなどの強そうな連中を集めて編成するのもありですよ。
――配信リストはどのくらいで更新を?
鍋島 当面はシーズンごとに更新する予定ですが、様子をみて変更していきたいですね。ある程度こなれてきたら数時間単位でリストを更新したいと思っています。
''――COM傭兵は、どんなミッションに連れて行けるのですか?
鍋島 COM傭兵にはいくつか制限があって、EXミッション、ストーリー&オーダーミッションには連れて行けません。また、領地戦ではNPC部隊であるMoHとはマッチングしません。領地ミッションの侵攻、防衛、決戦ミッション系のサポート機能ですね。雇用主プレイヤー、人間傭兵、COM傭兵の混成部隊も作れるので、いろいろな面で活用してください。
――COM傭兵は、具体的にどんな動きをしてくれるのでしょうか?
鍋島 基本的には雇用主(部隊のリーダー)に追随して移動し、敵をみつけると各キャラクターに設定されているロジックで攻撃を始めます。このときプレイヤーや人間の傭兵がスキャンモードでスポットした対象を優先的に攻撃するようになっています。人間の傭兵だと細かい指示出しができませんが、その場で臨機応変に行動できる。逆にCOM傭兵は行動がパターン化されていますが、スポット指示で的確に目標を攻撃します。
――差別化はできているんですね。
鍋島 そうですね。あとCOM傭兵は人間の傭兵よりさらに気楽に雇うことができるので、バンバン雇って領地ミッションでチーム戦の楽しさを体験してほしいと思います。また、新規の方には、COM傭兵を集めるといった意味でストーリーミッションやオーダーミッションを進めていく楽しみもできたんじゃないでしょうか。
今後の展開、さらなるアップデートは?
――今回大規模なアップデートがありましたが、これから先同じような更新や機能拡充はあるのでしょうか?
鍋島 今回のアップデートで、お終いということはありません。今後もタイミングを見て、色々施策をしていきたいと思いますし、つぎの形を考えております。ただ、今回は大きなアップデートでしたので、その様子を見ながら考えていきたいと思っています。
――パーツパラメータはいかがでしょうか?
鍋島 パーツパラメータのバランスは、今後も要望のあったものの調整を検討しています。
――今後のダウンロードコンテンツ関係は?
鍋島 エンブレム大会も第二回、第三回を予定していますし、DLC第4弾も控えています。
――システム音声などの拡充もありますか? 英語版音声やキャロルやアンジーのシステムボイスあたりも要望が多いと思いますが。
鍋島 期待してもらっていいと思います(笑)。
――たとえば、追加マップやミッション、追加パーツなどは配信されないのでしょうか?
鍋島 購入した人としていない人で、ゲーム内で明確な差が生じるようなものはやらないという基本的な方針は堅持していくつもりでいますので、DLCだけのパーツを足したりということは今後もやりません。これについてもユーザーさんの要望を反映しつつ、さまざまな検討をしていきたいと思っています。これからの『アーマード・コア V』にもご期待ください。
アーマード・コア V
メーカー | フロム・ソフトウェア |
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対応機種 | X360Xbox 360 / PS3プレイステーション3 |
発売日 | 発売中 |
価格 | 各7800円[税込] |
ジャンル | アクション / SF・ロボット |
備考 | プレイステーション3版はPlayStation Network対応、Xbox 360版はXbox LIVE対応 プロデューサー:鍋島俊文 |