ゲーム事業において大事にしているのは、ブランド、プラットフォーム、タレント

 今年のE3会場でも存在感を発揮しているエレクトロニック・アーツ。多数の有力IPを抱える世界最大手のソフトメーカーは、変化の速度の速い現在のゲーム業界をどのように捉え、舵取りしていくのか? また、日本市場への取り組みはどのように考えているのだろう? そこで、同社の事業戦略を統括するピーター・ムーアCOOに、国内メディアとして単独インタビュー! 日本のゲームファンにもなじみの深い同氏の言葉に注目してほしい。

エレクトロニック・アーツCOOピーター・ムーア氏に独占インタビュー【E3 2012】_01
エレクトロニック・アーツ
COO
ピーター・ムーア氏

--今回のE3でも、有力シリーズの新作を中心に、多数のタイトルがラインアップされています。とくに注目のタイトルから教えてください。

ピーター・ムーア 弊社は3月決算の企業ですが、前期はいい形で着地できました。そのうえで、今期のエレクトロニック・アーツを支えるタイトルをこのE3には出展しています。とくにメディアの皆さん、ユーザーの皆さんから注目を集めているのは『Dead Space 3』(日本発売は未定)、『クライシス3』(日本では2013年春発売予定)、『UFC Ultimate Championship』(日本発売は未定)、『メダル オブ オナー ウォーファイター』(日本では2012年秋発売予定)といったタイトルです。『メダル オブ オナー ウォーファイター』はユーザーからの反応が非常によいと聞いていますし、2012年のエレクトロニック・アーツのFPSは、このタイトルにフォーカスしていきたいと考えています。

--『FIFA 13 ワールドクラス サッカー』(日本では2012年秋発売予定)なども含め、日本のゲームファンが注目しているタイトルも多いです。

ピーター・ムーア とてもうれしいですね。私は昨年10月に日本を訪れて、ビックカメラやヨドバシカメラといった大手量販店を回りました。そのとき、『FIFA12 ワールドクラス サッカー』はファーストクラスの取り扱いを受けていて、とても喜んだことを覚えています。サッカーゲームにおいて、日本には強力なライバルが存在していて、し烈な戦いをくり広げていることは十分に理解していますが、それでも我々はよりよい作品を作り、いま以上の勢いを得たいと考えています。

--日本市場におけるエレクトロニック・アーツタイトル全般の売れ行きに関しては、どのようにお考えでしょう?

ピーター・ムーア 現状の売れ行き以上のポテンシャルを、どのタイトルも持っていると考えています。たとえば『Dead Space』シリーズは、ご存じの通りホラーTPSですが、その発祥の地は『バイオハザード』を生み出した日本です。現時点で『Dead Space 3』の日本発売に関しては残念ながら言及できませんが、シリーズとしては、まだまだ伸びる余地があると信じています。

--ぜひ、日本発売を検討してください(笑)。

ピーター・ムーア わかりました(笑)。それから、FPSも同様にポテンシャルを秘めています。私が初めて日本を訪れたころ、FPSは北米ではすでにPCの人気ジャンルでしたが、日本にはそのジャンルすら存在していませんでした。でも、いまは違います。日本でもFPSのファンは増え、『コール オブ デューティ』シリーズなど、成功を収めているタイトルも存在します。最初に述べた通り、今年、我々が注力するFPSは『メダル オブ オナー ウォーファイター』ですが、これは日本市場でも、必ず成功させたいと思っています。

--日本市場においては、ソーシャルゲームがムーブメントになっていますが、この分野への戦略と方針も聞かせてください。

ピーター・ムーア 日本ではGREEさんと非常にいい関係を築けています。昨年から『FIFA ワールドクラスサッカー』を展開していますが、最近では1日あたりの売り上げも驚異的な大きい数字として記録を更新し続けています。日本のモバイルユーザーが『FIFA』を認めてくれた結果だと思いますし、GREEさんもこのタイトルをアピールしてくれました。そういう意味でも、GREEさんとパートナーシップを結べたことには意義があります。これと同様に世界各国で、最適なパートナーを見つけることも重要だと思っています。

--今後の展開にも期待しています。また、今回のE3では、任天堂の新ハード"Wii U"の詳細が公開されました。同ハードへの印象と、エレクトロニック・アーツとしての取り組みを教えてください。

ピーター・ムーア そうですね……これからの据え置きのコンシューマー機は、テレビに付加価値を与えるような要素を持っていることが、スタンダードになるかもしれません。Xbox 360もその方向性を押し出しましたが、Wii Uのコンセプトには感銘を受けています。また、任天堂という企業のポテンシャル、斬新なイノベーションを与えてくれることにも期待しています。エレクトロニック・アーツとしては、『Mass Effect3(マスエフェクト3』をローンチに出したいと考えています(日本発売は未定)。EAスポーツのタイトルに関しても、任天堂と前向きな話をしていて、適切な時期にリリースするつもりです。

--なるほど。時代の流れを見極め、適切な戦略を打ち立てているような印象が強いですが、いま、エレクトロニック・アーツがゲーム事業においてとくに大事にしている、意識していることは何でしょう?

ピーター・ムーア 3つあります。ひとつは、ブランド。『ニード フォー スピード』、『FIFA』といったブランドを力を入れて育て、さらに大事にすることは絶対です。継続して力を入れる必要があります。つぎに、プラットフォーム。タイトルのポテンシャルを最大に活かすことを考えて、プラットフォームやデバイスの制約を飛び越えて、マルチに展開することは非常に大事です。最後は、タレントです。エレクトロニック・アーツには、製造部門も非製造部門も含めて、約9000人の社員がいます。開発者だけではなく、ゲーム制作に携わるすべての人たちを育て、適材適所で力を発揮してもらうことが、当たり前のことですが、最終的には生きてくると思っています。

--わかりました。では最後に、日本のゲームファンにメッセージをお願いします。

ピーター・ムーア 我々は引き続き、ゲームファンに喜んでもらえるタイトルを作っていきますので、応援してもらえるととてもうれしいです。私は個人的にも昔から日本が大好きですし、日本のゲームファンとゲームの関係性の変化も理解しています。そのうえで、皆さんに喜んでもらえるタイトルを提供していきます。