日本人クリエイターの活躍にも言及

 2012年6月5日~7日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスのコンベンションセンターにて開催中の世界最大のゲームの見本市、E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2012。会期中、ファミ通.comは日本のゲームメディアでは唯一、マイクロソフト コーポレーション コーポレート バイスプレジデント マイクロソフトスタジオ担当のフィル・スペンサー氏にインタビューする機会を得た。今年のマイクロソフトは、『Halo 4(ヘイロー 4)』に『Gears of War: Judgment』といったオンリーオンXbox 360の大作が注目を集めたほか、Xbox SmartGlassというエンターテインメントの可能性をさらに広げる新サービスも発表している。ユーザー視点では非常に充実したE3 2012になったと感じられるが、発表した側の感想も気になるところ。そこでフィル氏には、E3 2012の手応えを聞きつつ、Xbox 360の今後についても語ってもらった。

マイクロソフトスタジオ コーポレートバイスプレジデントのフィル・スペンサー氏、E3 2012を語る【E3 2012】_01

――今年のプレスカンファレンスはいかがでしたか?
フィル すばらしいゲームを数多く揃えられたと思う。とくに『Halo 4』をカンファレンスのオープニングでお披露目できたことがうれしい。開発会社の343 Industriesが動き始めたのは約3年前ですから、今年は彼らにとって、そして我々にとっても一種のハイライトになりました。また、『コール オブ デューティ ブラックオプスII』や『SPLINTER CELL BLACKLIST』もすばらしかったです。

――今回発表した、あるいはブースに出展した中でイチオシのタイトルは何ですか?
フィル マイクロソフト以外のメーカーから挙げると(笑)、『アサシン クリード3』はとてもよくできていると思いました。とくに二隻の船でくり広げられる海上バトルがすばらしい。また、任天堂ブースでユービーアイソフトのWii U用ソフト『ZombiU』をプレイしましたが、Wii U GamePadのスクリーンを使った遊びという面においてはまだ発展段階だが、ゲームとしてとてもよくできていたし、何よりも遊んでいて楽しかったです。

――ゾンビのゲームと言えば、『バイオハザード6』がカンファレンスで登場しました。
フィル 『バイオハザード6』はスケールが大きいタイトルなので、カンファレンスでデモを行うことができて光栄に思います。同シリーズは、Xbox 360が日本のメーカーにとってまだプラットフォームとして十分に成長していなかったころから参入してくれていたので、我々としても今回のような舞台が用意できたことはとてもうれしいです。

――日本と言えば……『Fable: The Journey』、『Halo 4』、『Forza Horizon』という現在のマイクロソフトを代表するタイトルには、日本人クリエイターが目立った活躍をしているという共通点があります。日本人クリエイターと仕事をするメリットとは何でしょうか?
フィル 個人的には、ビデオゲームは日本で生まれたものだと思っています。いまE3が開催されているのも、任天堂の宮本茂さん、KONAMIの小島秀夫さんといった才能あるクリエイターたちが、すばらしいゲームを作ってきたからこそでしょう。ベストなゲームを作るためには、日本のクリエイターが持つ伝統的な技術や考えかたが必要だと思います。

――日本にも多くの開発スタジオがあります。いっしょにやってみたいと思うところはありますか?
フィル キューエンタテインメントとはいっしょに仕事をする機会があったのですが、同社の水口哲也さんはすばらしい才能を持っています。『ルミナス』を遊んだときは、すぐに「これはすごいゲームだ!」とメールを送りました(笑)。とても楽しい関係だ。また小島監督とも、ぜひいっしょにやってみたいと思う。

――話をカンファレンスに戻しますが、Xbox SmartGlassを投入する狙いについて教えてください。
フィル 自分には13歳と16歳の娘がいるのですが、ふたりともテレビを観ている最中もゲームを遊んでいる最中も、つねにタブレットやスマートフォンを使っています。この状況を見たとき、デバイスを連携させて情報を集合させてみてはどうかと思いました。Xbox SmartGlassは年内投入予定ですが、今後2年くらいはクリエイティブな人たちから新しいアイディアをどんどん出てくるでしょう。

――海外では好調なXbox 360ですが、正直なところ日本では苦戦が続いています。この状況を打開する戦略などはありますか?
フィル 成功するためにまず必要なのは、私たちがいまよりいいゲームを作ること。日本の市場ではとくにクオリティーの高いゲームが求められるので、今後も努力を続けていく必要があると考えています。また、ただクオリティーが高いだけでなく、日本人の好みも考えなければいけません。あとは、我々は日本市場に対してつねに最大限の努力をしていますので……ぜひこのメッセージをもっと広く知ってほしいところですね(笑)。

マイクロソフトスタジオ コーポレートバイスプレジデントのフィル・スペンサー氏、E3 2012を語る【E3 2012】_02

――Xbox 360は今年で発売から7年目を迎えます。そろそろ次世代機への期待も高まっていると思いますが……。
フィル やはりその質問が来ましたか(笑)。まずお伝えしたいのは、マイクロソフトがゲームビジネスに参入して11年が経過しましたが、我々はこれからも“グレート・ゲーム・カンパニー”として全力を注ぎます。もちろん、ユーザーの皆様が新しいプラットフォームを求めることもわかっています。しかし、Xbox 360は私たちにとって長期の投資。ファンやゲーマーの皆様には、引き続き熱心な取り組みを続けていきます。

――では、あくまでも個人の意見として、次世代ゲーム機に望むものを教えてください。
フィル ゲームが目指すのはすべての人が楽しめるものだと考えていますが……実情はと言うと、一部の人に対して“コントロールが難しい”とか、“お金が掛かる”といったバリアを作ってしまっている面があると思います。ゲーム業界は、そういったバリアを解いて、より多くの人々にゲームを経験してもらうようにしなくてはいけません。たとえば、カンファレンスで紹介した『Nike + Kinect Training』はその第一歩です。私は老若男女問わず、誰もがXboxで楽しんでいるところを見るのが大好です。だから、誰でもコンテンツを楽しめるように、幅広いエンターテイメントが経験出できるようにしたいと思う。つまり、誰でも楽しめるプラットフォームの提供。それが次世代機に対して私が望むことです。