思ったより『デビル』! 疑ってゴメン

 ビジュアルが以前のダンテとはかけ離れているし、開発も実績があるとは言え、カプコンではない会社が担当。トレーラーなどを見るとなかなかイケてる気もするけど、プレイしたことはないので手触りは不明。つまり、よくわからない。「コレ、ほんとに『デビル』なの?」と、半ば疑いながらカプコンブースへと突撃してきました。 

 試遊では、“UNDER WATCH”と“SECRET INGREDIENT”のどちらかを選択。前者はザコと戦いながら街を探索する、チュートリアルを含んだミッション。後者は巨大なボスとの戦闘がメインとなる、少し難度の高いミッション。操作は下の写真の通りで、シリーズ作とは違い、アナログスティックとボタンを組み合わせる操作はナシ。すべての技やアクションは、ワンボタン、あるいはボタンの組み合わせで発動する。ロックオン自体がない(銃撃は、アナログスティックの押し込みで対象を変えられた)のは、ロックオン操作とボタンを組み合わせると技が変化するという、従来作の方式には則っていないからでしょうか。

 記者は最初、アナログスティックと攻撃ボタンを組み合わせて“ハイタイム”などの技を出すというシリーズお決まりの操作がどうしても抜けず、“振り返りながらの挙動不審な攻撃”を何度も暴発。しかし慣れてくると、このシンプルな操作体系が、かなり考えられたものだということがわかってくる。シンプルゆえに、ボタンを押すタイミングや長さによってコンボを変化させられるという、従来作にもあったシステムとの相性もいい。ただ、回避(EVADE)もワンボタンなのは、試遊終盤まで慣れずに苦労しました。人によっては問題ないと思うんだけど、クセって恐ろしい。

 特徴的なのは、L2(LT)を押しながら攻撃すると、鎌を使う“エンジェルパワー”系の技が、R2(RT)を押しながら攻撃すると、斧を使う“デーモンパワー”系の技が、制限なしに出せること。神の左手、悪魔の右手といったところでしょうか。一見すると複雑に思えるんだけど、意外とアッサリしていて使い分けはしやすい。通常攻撃と、エンジェル&デーモンパワーを瞬時に切り換えながらの戦闘では、「オレ、カッコイイ!」感が存分に味わえる。これは、まさしく『デビル メイ クライ』シリーズあるある! こういう方向性での“スタイリッシュ”もアリだなあと、思わせてくれる爽快感がありました。

 エンジェルパワーとデーモンパワー、どちらかの攻撃しか効かない敵がいるのも、戦闘のアクセント。完全に効かないのでゴリ押しはできず、下手に別の属性で攻撃すると、弾かれて隙ができてしまうので、瞬時の判断&使い分けが必要になる。また、敵に高速接近する“エンジェルリフト”と、逆に敵を引き寄せる“デーモンプル”という特殊技をうまく使うことによって、無駄な移動時間がなくなり、戦闘シーンが中だるみしないのもいい。

 シリーズおなじみの“デビルトリガー”は、発動と同時に敵が打ち上がり、ダンテ以外の時間の流れが遅くなるのか、空中に留まったままの相手を攻撃し放題になるという仕様に。世界がモノクロになり、ダンテが従来作に近い姿へと変身するのもポイントで、唯一の色彩である赤いコートが強く目に飛び込んでくる。カッコイイ! また、試遊では確認できなかったものの、一瞬時の流れが遅くなる、特殊な回避アクションもある様子。回避と同時にダンテがオーラをまとっていたので、パワーアップ効果もあるのかも。敵の攻撃を弾くことも可能で、腕に自身のある人は、こういったテクニカルなアクションを使いこなして、華麗に戦うことができそうです。

 なお、モーションについては、若干「軽めだな」と思うところがありますが、まあこのダンテ、若そうだし、『4』が渋かったので余計にそう感じるのかなというくらいで、気になるものではありません。モーションに限らず、“爽快感”に関わる部分は、開発会社のニンジャセオリーのセンスと、伊津野氏を始めとするカプコン側の『デビル メイ クライ』スタッフのノウハウが、うまくバランスを取っている感じがします。

 アクション以上にダイナミックで、新しさを感じたのが、Limbo(リンボ)を呼ばれる世界。ダンテは彼を狙う悪魔によって、現実世界からLimboに引き込まれ、この世界で戦うことに。現実世界とLimboは、位置的には重なっていて、次元が異なるというイメージ。Limboに移行すると、街並など景色は変わらないものの、たとえば建物が左右から迫ってきて道を閉ざそうとしたり、ガンガン床が崩れていったりと、相当な嫌がらせを受けます。わりとしょっちゅうそういうことが起きるうえ、ダンテを中傷する文字が壁に浮き上がったりするのを見るに、相当嫌われてんでしょうね。そうやって刻々と変化する地形を、エンジェルリフトやデーモンプル、エンジェルエアブースト(試遊台での表記名。いわゆる空中ダッシュ)で乗り切る局面は、とてもスリリング!

 「あ、あれ……。疑っていたはずなのに、いつの間にか楽しんじゃってる!」。これが正直なところです。『デビル メイ クライ』シリーズも5作目。上から目線ですが、これくらい、大胆な改革があってもいいんじゃないでしょうか。ちなみに、ダンテというキャラクターについては、確かに外見はぜんぜん違うんですが、ちょっとしたモーションだったり、ボスとの会話で見せる態度や小生意気な表情だったりという部分に、過去作のダンテらしさがチラつく瞬間があります。逆に本場のセンスが取り入れられて、洗練された部分もある。確かに、過去作と比べると違う部分も多い。バトルも、もっとアドレナリンが出るシチュエーションをプレイしてみたい。でも、だからといって「こんなの『デビル』じゃない!」で片づけるには惜しい。ナンバリングを捨て、新たな一歩を踏み出した覚悟の伝わる内容でした。今後のブラッシュアップが楽しみです。