すべてが刷新された『アサシン クリードIII』とは?

 これまでヨーロッパを舞台に展開していたが、シリーズ最新作『III』で舞台をアメリカに移した『アサシン クリード』。開拓時代のアメリカで、ネイティブ・アメリカンの血を引く新主人公のコナーが活躍するというユニークな設定が、ゲームファンのあいだで話題を集めている。ということで、開発のキーパーソンにソフトの魅力について聞いてみた。

『アサシン クリードIII』クリエイターインタビュー【E3 2012】_01
associate producer
Julien Laferriere氏

――まずは自己紹介をお願いします。

Julien Laferriere氏(以下、Julien) 本作のアソシエイトプロデューサーです。ゲームデザインと技術全般を担当しています。

――『アサシン クリード』シリーズは、いまや世界中に愛されるフランチャイズとして定着しています。シリーズのナンバリングタイトルである『III』のプロジェクトは、かつてないほどのスケールになっていると思いますが、その規模はどんなものでしょうか?

Julien 私たちは、『アサシン クリード3』を約3年近く作っています。スタッフはモントリオールスタジオが中心となっていますが、シンガポールやアンシー、ブカレストやケベックなど、世界中のスタジオが開発に携わっていて、プロジェクトの規模としてはこれまでにないほど大きなチームとなっています。『アサシン クリード リベレーション』のプロジェクトの規模と比べるとしたら、だいたい2倍くらいの大きさだと思います。

――それだけ大きな規模のプロジェクトを円滑に動かす秘訣はなんですか?

Julien 何と言っても一番大事なのが、コミュニケーションとお互いを信頼することですね。たとえば、シンガポールスタジオは、本作では船を使った戦闘のパートを担当しており、アンシースタジオではマルチプレイヤーを担当していたりと、パートごとに分かれて作業を進めているわけです。スタジオどうしは長年かけて築き上げてきた信頼関係があるので、ベースの部分は任せつつ意見交換をしていくのです。また、開発を主導しているモントリオールスタジオの中でも、『アサシン クリード』シリーズの1作目と2作目や『プリンス・オブ・ペルシャ』シリーズなどに関わったスタッフも多くいるので、信頼できるスタッフとコミュニケーションを密に取ることでプロジェクトを円滑に進めています。

――『アサシン クリード』シリーズは、リアルな歴史をベースにした物語が描かれることが有名ですが、今回はどんなリサーチをしましたか?

Julien リアルな歴史をベースに作っていることも、本シリーズのウリのひとつです。今回は、アメリカ独立戦争のスペシャリストの歴史家を呼んでさまざまなヒアリング行っています。ただ、リアルにこだわるのは大事ですが、それだけではおもしろくないので、「もし歴史の中にアサシン教団とテンプル騎士団が介入していたら?」という観点のエピソードを盛り込んでいます。そういった話をまとめ挙げるために大量の歴史的資料にあたることになりましたが、18世紀のアメリカは歴史的な資料が保存状態がいいままでたくさん残っているので助かりました。こうして膨大な資料にあたることで、リアリティー溢れる歴史を再現できたのです。

――『アサシン クリードIII』では、舞台がアメリカに移りました。これにはどんな意図がありますか? ストーリーの自然な流れのほかに、北米マーケットを意識したことはありますか?

Julien アメリカ独立革命は、アメリカ合衆国という超大国が誕生したという歴史的瞬間であり、非常に興味深い出来事なので、今回こうしてゲームの題材にすることができてうれしく思います。また、アメリカはゲームのフィールドとしても魅力的なロケーションだったりします。森林や海などの大自然が広がっていて、天候にもバリエーションがあるので、ゲームのメカニズムに組み込みやすいと感じました。もちろん、今回は北米を題材にすることで、アメリカンのゲームファンにもウケるのではないかという狙いもありますね。とは言え、ヨーロッパ在住のゲームファンにも、アメリカ独立戦争は魅力的に映るでしょう。と言うのも、アメリカ独立戦争はもともとヨーロッパの戦いが飛び火した結果生じたものですから。本作では、そういう歴史的な戦いを自分で体験できるのもおもしろいポイントだと思います。

――これまでの主人公、エツィオは魅力的で求心力のあるキャラクターとして、世界中のゲームファンから愛されていましたが。新主人公コナーはどんな魅力を持ったキャラクターなのでしょうか?

Julien もちろんコナーもエツィオのような人気者になってほしいと考えています。私たちは長くあいだゲームの開発に携わっていくうちにコナーを愛するようになっていますし。かなりの時間を掛けて、彼の魅力を表現できるように考えています。イタリア人のエツィオは、やや自己中心的で自身の復讐に燃えています。それに対してネイティブ・アメリカンとイギリス人のハーフであるコナーは、周囲の人々のために行動する人物です。コナーの村はイギリス人に破壊されていますが、そのことでイギリス人を恨むのではなく、もっとネイティブ・アメリカン全体が抑圧されていること自体を解決したいと思っています。こうして見るとエツィオとコナーはまったく異なる情熱を燃やしているのです。コナーはエツィオのふたりは対照的な魅力を持ったキャラクターなので、ぜひ注目してほしいですね。