どんな音楽を奏でられるかは、プレイヤーの腕次第!

『orgarhythm(オルガリズム)』は“能動的な音ゲー”! ネイロ平井武史ディレクターインタビュー【E3 2012】_02

 2012年6月5日~7日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスにて開催中の世界最大のゲーム見本市E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2012。ソニー・コンピュータエンタテインメントブースには、アクワイアのプレイステーション Vita用ソフト『orgarhythm(オルガリズム)』(2012年8月9日発売予定)が試遊可能な状態で出展されている。

 “ミュージック×ストラテジー”をテーマとする本作。これまで具体的なゲームシステムは明らかにされていなかったが、今回、ついにどんなゲームなのかが判明した。

 プレイヤーは、火・水・土、3つの属性を持つ民を従える神。この神と民の前には、多数の敵(敵にも属性がある)が立ちはだかる。属性は3すくみとなっており、プレイヤーは敵の属性と民の属性の相性を考えながら、リアルタイムで各民に指示を出すことになる。

 ……と書くと、一見ただのリアルタイムストラテジーのように見えるが、じつは違う。民に指示を出すときは、背後でつねに流れている4分のリズムに合わせて、指示コマンドをタップしなければならないのだ。どの民に何をさせるかを、トン、トン、トン、トンという4分のリズムに合わせてタップすると、“レベル”が上がる。このレベルが上がると、民の数が増え、流れる音楽もより豪華なものになっていくという仕組みだ。

 “トン、トン、トン、トン”のいずれかのタイミングに合っていれば、いつコマンドをタップしてもよいというのもポイント。“民選択、トン、行動選択、トン”でもよいし、“民選択、トン、トン、行動選択”でもいいのだ。とにかくリズムに合っていることが大事なのである。リズムに合わないタップを行うと、レベルが下がってしまうので注意が必要だ。

 民の行動(矢で攻撃、拳で攻撃など4種類)を選んだ後は、民を配置したい場所を、線を描くようになぞる。これで民は自動的に移動し、行動してくれる。

 基本のゲームプレイは、このくり返し。操作はすべてタッチパネルで行えるシンプルなシステムだが、リズムよく、かつ的確に指示を出すのは、なかなかに難しい。絶妙なバランスになっているのだ。

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▲指示を与える民を選ぶ画面。土、火、水のいずれかのアイコンをタッチしよう。
▲民を配置したい場所に、なぞるように線を引くと、民がその場所へ向かっていく。

 ファミ通ドットコムでは、本作のディレクターを務める、ネイロの平井武史氏にインタビューを行った。

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平井武史氏
ネイロ代表取締役社長。『シェンムー』のメインプログラマーや、『スペースチャンネル5パート2』のテクニカルディレクターなどを担当。キューエンタテインメントで『メテオス』などの開発にも関わる。2010年9月にネイロを設立。

――正直なところ、これまで公開されていた情報では、『orgarhythm(オルガリズム)』はどんなゲームなのか想像がつかなかったのですが……本日、ようやくどんなゲームなのか掴むことができました。
平井 今回が世界初のプレイアブル出展ですからね。本作で僕がとくにこだわったのは、ゲームデザインでした。ゲームデザインだけでリズムゲームを楽しんでもらうには、どういう形がいいのか、本当に考えたんです。これまでの音楽ゲームは、受動的なものが多く、能動的かつリズムに合わせるゲームというのはなかったんですよね。だいたいの音楽ゲームは、一方的に流れてくる音符(に相当するもの)に受動的に反応するものか、ダンスゲームでした。僕自身が目の前で開発を見ていた『Rez』や『Child Of Eden』などは、能動的ではあるのですが、リズムに合わせて行うものではなかった。自分の行動の結果がリズムになる、というものでしたから。

――確かに、そう言われると、能動的かつリズムに合わせるゲームはなかった気がします。
平井 はい。そのいままでにないゲームを目指して作ったのが、『orgarhythm(オルガリズム)』です。本作では、4分のリズムに合わせ、自分の好きなタイミングでコマンドを選ぶことができますよね。タップのタイミングをプレイヤーに委ねることで、演奏しているような感覚が味わえるようにしたんです。

――ということは、この企画の出発点は、“リアルタイムストラテジー”ではなく“音ゲー”だったということですよね。
平井 そうです。遠藤さん(※アクワイア代表取締役の遠藤琢磨氏)の第一声も、「音楽ゲームが作りたい」というものでした。これまで、アクワイアさんが音楽ゲームを手掛けたことはなかったんですよね。僕は10年ほど音楽ゲームを作ってきた経験があったので、その経験を買われ、このプロジェクトに参加させていただくことになりました。遠藤さんは、音楽ゲームでありながら、音楽ゲームの枠を超えたイノベイティブなものを望まれていたんです。イノベイティブなもの――それは、“能動的な音ゲー”なのではないかと思い、開発をスタートしたんです。

――遠藤さんは、「バトルと音を混ぜてほしい」ともリクエストされたそうですが、そこからリアルタイムストラテジーのシステムを取り入れることに至った理由は?
平井 もともと遠藤さんは、リズムに合わせて領地を取っていくようなゲームを思い描いていたようです。でも僕は、“人は能動的に攻められない”という考えを持っていました。人って、ふだんの生活で、能動的に領地を取るモチベーションを持ってはいないですよね? 逆に、恐怖におののいて逃げることはできるから、逃げながら領地を取るゲームにしようか、とも考えたんです。でも、逃げるときに領地を取るモチベーションも人にはないだろうなと考えて。そこで一度“領地を取る”という概念を捨てて作っていったのが、いまの『orgarhythm(オルガリズム)』です。

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――では、この『orgarhythm(オルガリズム)』をプレイするユーザーに、とくに注目してもらいたい点はどこですか?
平井 やはり、ゲームデザインにこだわりましたので、そこを見ていただきたいですね。僕はこのゲームは、“脳活”のゲームじゃないかと思っています。右脳を使って直感的にタップし、左脳を使って民の配置を考える、という行動のくり返しで。自分がいまどの脳を使っているのか、考えながらプレイしていただければいいのではと考えています。ふつうのゲームはリスク&リターンが基本ですけど、このゲームはリズム・集中(右脳)とストラテジー・集中からの解放(左脳)を基本としていますね。

――脳を交互に使うコツをつかむのは、少し時間がかかりますね。
平井 そうですね。最初は、画面をタップすることと、民の3すくみを理解して配置することが両立できないケースが多いです。2回目、3回目から、だんだんわかってくるという感じですね。最初は、3すくみを利用しようと無理に考えないで、とにかくタイミングよくタップすることに集中したほうがよいです。くり返していれば、右脳と左脳をうまく使って、自然と3すくみが利用できるようになってきますから。

――右脳と左脳を上手に使うこと、それがこのゲームの快感のポイントなのですね。
平井 プレイしていると、脳が鍛えられる気がしますよ(笑)。

――本作をプレイした方からの反応はいかがですか?
平井 ゲームデザインのよさを理解してくださった方が多く、うれしかったですね。本作はタッチパネルしか使わないですし、画面が大きくても小さくてもプレイできる。タッチパネルを搭載しているすべてのデバイスで遊べるようなデザインになっているんですよね。あらゆるジャンルを内包している、新しいジャンルであるというお声もいただきました。

――ということは、PS Vita以外のハードでも本作を展開する予定はあるのですか?
平井 はい、検討しています。もともと、ネイロのゲームはすべてPCベースで作っているんです。どのプラットフォームでも展開できるようなコンテンツを作る、それがネイロの強みだと考えています。

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――ところで、本作の開発中、実力派ダンサーを起用してのモーションキャプチャーを行ったとのことですが、その動きはどの部分に活かされているのですか?
平井 神や民、敵の動きに活かされています。彼らはふだんからリズムに合わせて身体を動かしているのですが、レベルが上がるたびに、豪華な踊りを披露するようになるんです。とくに、最終ステージ付近でのプレイで、レベルMAXになると壮観ですよ。

――なるほど、音で楽しめるだけでなく、視覚的にも楽しめるのですね。
平井 はい。最初のうちは音を追うのに必死で、踊りまで目がいかないかもしれませんが、慣れてきたらぜひ見ていただきたいですね。

――日本のユーザーが、発売前に本作を体験できる機会はあるのでしょうか。
平井 まだ詳細は決まっていないのですが、体験イベントはやりたいなと思っています。

――リズムを刻む楽しさは、実際にプレイしてこそもっともよくわかるものですからね。それでは、最後に読者へのメッセージをお願いします。
平井 いままでにない、新しいゲームデザインを実現できたと思っています。これまでの音楽ゲームは受動的なもの中心でしたが、本来ゲームは能動的に遊ぶもの。僕は『シェンムー』の制作に参加したときに、プレイヤーがしたいことをできるフィールドのすばらしさを知りました。これからはいろんなジャンルで、プレイヤーが能動的に遊べるフィールドを作っていきたいと考えています。その第1弾が、音楽ゲームの『orgarhythm(オルガリズム)』です。これからも、みんなが前のめりに遊べるゲームを作っていきたいと思いますので、まずは本作を遊んでいただき、そして今後の作品にも期待していただけたらと思います。

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▲E3会場の平井氏。ト『orgarhythm(オルガリズム)』Tシャツをアピール!