『Fable: The Journey』のリードアーティストを務める日本人クリエイター齊藤崇人氏インタビュー【Lionhead Studiosスタジオツアー その3】

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イギリスの大手ゲームデベロッパー”Lionhead Studios”では日本人クリエイターも活躍している。『Fable: The Journey(フェイブル:ザ ジャーニー)』のリードアーティスト、齊藤崇人氏のインタビューをお届けしよう。

●シリーズに新たな風を吹き込む日本人クリエイター

 2012年秋に日本マイクロソフトから発売が予定されているXbox 360の期待作『Fable: The Journey(フェイブル:ザ ジャーニー)』。2012年5月下旬、世界最大のゲーム見本市“E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2012”の開催を目前に控えたタイミングで、同作の開発を手掛けるイギリスの大手ゲームデベロッパー”Lionhead Studios”がスタジオツアーが実施された。こちらの記事では、スタジオで活躍する日本人クリエイター、齊藤崇人氏のインタビューをお届けしよう。


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 齊藤氏は日本でソニー・コンピュータエンタテインメント、ナムコ(現バンダイナムコゲームス)でゲーム開発の現場に携わった後に渡英。1年間イギリスの学校でCGやアニメーションを学び、Lionhead Studiosの子会社へ入る。来年で入社10年目という齊藤氏は、『Fable: The Journey』でリードアーティストを担当。アートディレクターとともに、所属アーティストたちを管理する立場だ。インタビューではゲームの内容はもちろん、齊藤氏自身のキャリアなどについても聞いた。


――Lionhead Studiosにはどういった経緯で入社したのでしょうか。
齊藤 大学生のころにSCEでアルバイトをしていて、その後ナムコに就職しました。そこで1年半くらいお世話になったのですが、ちょうどそのころに妻がイギリスで言語の勉強をしたいと言いまして、私も自分のキャリアを広げるいい機会だと考え、イギリスへ行くことにしたんです。渡英後は学生を1年やって、その後ロンドンにある小さなゲーム開発会社に職を得て、3年ほど働いた後、Lionhead Studiosのサテライトカンパニーへ配属されることになりました。

――英語は渡英前から喋れたのですか?
齊藤 学生時代に2度留学へ行っていたので、当時から英語はそれなりに喋ることができました。

――ちなみにナムコではどんなお仕事をしていたのでしょうか。
齊藤 『エースコンバット3』に関わっていましたが、当時は企画職だったんですよ。

――そこからどうやって、アート関連の仕事へ就いたのですか?
齊藤 じつは、SCEでのバイトはアート系の仕事だったんですよ。また小さいころから絵を描くのが好きで、イギリスで学生をやっていたときに本格的にCGグラフィックを学びました。

――Lionhead Studiosへ入って最初に関わった作品は?
齊藤 当時『BC』という企画がありまして……その前に当時の状況を説明しますね。Lionhead Studiosにはビックブルーボックスという傘下のスタジオがあって、そこでは『Fable』の第1作目を、Lionhead Studios本体では『ブラック&ホワイト』の企画が動いていました。もうひとつインターピットという傘下の会社があって、そこで作っていたのが『BC』です。原始時代を舞台に人間と恐竜の戦いを描くというコンセプトの作品で、そこにアニメーターとして参加したのですが……残念ながら製品化はされませんでした。

――では、つぎに関わったのは……。
齊藤 映画スタジオをテーマにした経営シミュレーションゲームで、ハリウッドでも話題になった『The Movies』というPC用のゲームがあるのですが、それのコンシューマー移植を行うチームに配属されました。でも、それも残念ながら商品化されず……(笑)。あとは、『BC』と『The Movies』のあいだに『ブラック&ホワイト2』の制作を少しお手伝いしました。

――なかなか波乱万丈ですね。
齊藤 ええ、かなり紆余曲折がありました。その後Lionhead Studiosがマイクロソフトの傘下に入ったことをきっかけに『マイロ&ケイト』のプロジェクトへ加わることになりました。Kinectを発表した際(当時はコードネーム“Project Natal”)に披露された技術デモ、あれが『マイロ&ケイト』です。そして同プロジェクトの後に、2010年より『Fable: The Journey』の開発へ参加することになりました。だから、『Fable』シリーズに関わるのはじつは今回が初めてなんですよ。

――『Fable:The Journey』を手掛けるにあたって、アート面ではどんなことに注意しましたか?
齊藤 『Fable』シリーズではいくつか守らなければいけないポイントがあって、ひとつは色合いです。グレーなどの暗い色は控え目にして、できるだけカラフルにしなければいけません。もうひとつは物の形で、細くてヒョロヒョロしたものよりは太くてガッチリしたものを、平行よりはちょっとした歪みがあるものを、といったポイントがあります。

――本作は一人称視点になったので、モンスターの造形もより細かくする必要があったのでは。
齊藤 ええ、キャラクターチームが頑張ってくれました。とは言え、ただリアルにするだけなのはNGだったんです。形がはっきりとわかるようにして、ユーザーにモンスターの実在感を受け取ってもらうことのほうが重要でした。あとは、従来までの『Fable』シリーズと比べてモンスターが大きく表示されるので、アニメーションのクオリティーにもこだわっています。


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▲リアル過ぎるのはNGという『Fable』のモンスター。本作ではアニメーションにもさらにこだわった。

――リアル過ぎるのはNGとのことですが、それ以外にもNG項目はありましたか?
齊藤 歴史のあるシリーズなので、けっこうありましたね。じつは僕だけでなく、アートディレクターも『Fable』に関わるは本作が初めてで、いろいろと新しいことやろうとしたのですが、以前から『Fable』に関わっているスタッフにそれを確認してもらうと「これは『Fable』じゃない」という理由でNGを出されてしまうんです(笑)。

――「『Fable』ではない」こととは、具体的にどんなことですか?
齊藤 そこはもう、感覚の世界ですね……。とくに“ホブ”という小さなクリーチャーにはこだわりがあったようで、いろいろな案を出すたびに「これはホブじゃない」と言われてしまいました。あとは“バルバリン”という狼風のクリーチャーがいるのですが、それをより狼っぽくしようとしたら「バルバリンは狼じゃないよ!」って(笑)。

――開発チーム全体のスタッフで、過去に『Fable』を作っていた人と、齊藤さんのように新規で参加する人の割合はどの程度だったんですか?
齊藤 スタッフ全体の割合ではオリジナルスタッフと新スタッフの割合はほぼ半々でしたね。だから、『Fable:The Journey』ではシリーズに新たな風を吹き込めるのではと期待しています。

――齊藤さんは日本のゲーム会社でも働いた経験があるわけですが、日本とイギリスで会社環境は大きく異なりますか?
齊藤 ええ、けっこう違うところはありますね。ひとつは、日本のゲーム会社は気合いと根性があります。日本は期日が近づくと“やるぞ!”って気合を入れるんですけど、コッチはそこが意外と緩い。もちろん期日が近づけばがんばるんですけど、日本人からしたら「もっとがんばれるはず」と映るでしょうね。まあ、これはゲーム会社に限らずヨーロッパ全体の風土かもしれません。あとは、先輩と後輩の関係がほとんどない。これが自分にとってはいちばん大きな違いでした。誰の意見でも平等に聞く雰囲気があって、たとえばピーター・モリニューが所属していたときは、誰でも彼に「ちょっとピーター、これはどうなってんの?」といった具合に気軽に話しかけていましたよ。

――ピーター・モリニューさんと言えば、先日Lionhead Studiosを退社されましたが、『Fable:The Journey』には退社以後関わっていないんですか?
齊藤 監修という立場で現在も関わっています。週に数回オフィスを訪れてコメントも残していきますね。

――同じ会社の人間から見たピーター・モリニューは、どんな人物でしたか?
齊藤 周囲からも言われている通り天才肌でしたね。とくにゲームデザインのアプローチはすごく勉強になりました。彼はいつもゲームの仕組みを考える前に、どんな体験をユーザーにしてもらうのか? という大きいビジョンを掲げるんです。ピーターがすごかったのは、そこで出てくる発想です。

――『Fable:The Journey』ではどんなビジョンを掲げていたんですか?
齋藤 馬と人の関わり合いにどう感情移入させるのにはどうすればいいか、というものでしたね。

――そのビジョンを表現するために、齊藤さんたちアート側のスタッフはどう動いたのでしょうか?
齊藤 うーん、けっきょくさきほどの話に戻るのですが、リアリティーよりもスタイルや実在感にこだわった絵作り、というやり方ですかね。

――それでは最後に、齊藤さんのように海外で活躍することを目指す人に向けて、何かメッセージをもらえますでしょうか?
齊藤 海外で活躍するためには、英語ができる、できないはあまり関係ないと思います。大事なのは伝えようとする意思。意思さえあれば、英語力はあとから付いてくるはずですから。日本には海外で活躍できる実力を持った人が多くいると思うので、活躍を望む人はぜひ積極的に挑戦してほしいですね。


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