E3 2012に先駆けて最新バージョンをプレイ

 2012年秋に日本マイクロソフトから発売が予定されているXbox 360の期待作『Fable: The Journey(フェイブル:ザ ジャーニー)』。改めて説明するまでもないと思うが、同作はXbox 360を代表するRPG『Fable(フェイブル)』シリーズの流れを汲む作品だ。あえて“シリーズ最新作”という表現を避けたのには理由がある。と言うのも、同作はシリーズで初めて、Kinect(キネクト)専用タイトルとして開発が進められているのだ。2012年5月下旬、世界最大のゲーム見本市“E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2012”の開催を目前に控えたタイミングで、同作の開発を手掛けるイギリスの大手ゲームデベロッパー”Lionhead Studios”がスタジオツアーを実施。世界各国から招待したメディアに向けて、『Fable: The Journey』の最新デモなどをお披露目した。

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▲スタジオがあるのはロンドン郊外のギルフォードという街。緑が多くのどかなところで、スタジオの敷地内には池もある。
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▲スタジオの入り口およびエントランスには『Fable: The Journey』のパネルが。
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 デモに先立って行われたプレゼンでは、開発陣みずから本作の概要を解説。先日開催された“Spring Showcase 2012”で明らかにされた内容と若干重なる部分もあるが、改めて紹介しよう。

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 前述した通り『Fable: The Journey』はKinect専用タイトルだが、スタジオのヘッド(代表)を務めるMark Webley氏は「Kinectのゲームによく見られるようなミニゲームの集まりではなく、キャラクターとストーリーにこだわった非常に没入感のある冒険ゲーム」と説明。加えて「これまででもっとも美しい『Fable』になっていると思う」と、ビジュアルの向上も強調した。

 クリエイティブ・ディレクターのGary Carr氏からはゲームの具体的な内容が語られた。本作は大きくわけてふたつのシーンからゲームが構成されている。Kinect操作によるマジック(魔法)バトルと、馬による移動だ。詳細はデモプレイのリポート内でお届けするとして、ここでは本作のKinect操作に関して特筆すべき点に触れておこう。さきほど紹介したMark Webley氏の言葉からもわかる通り、『Fable: The Journey』はじっくりと腰を据えて遊ぶ作品となっている。それがもっともわかりやすく現れているのが、“椅子に座ってプレイ”するというプレイスタイルの採用だ。現在発売されているKinect対応タイトルの多くは立った状態でプレイするように設計されているが、それは本作のように長時間遊ぶことを前提としたゲームの場合、ふさわしいスタイルとは言えない。座ってプレイするスタイルを採用した事実は一見些細なことのようだが、本作が目指すゲーム体験を考えた場合、その意味は非常に大きいといえるだろう。

 そのほかCarr氏は、Kinectを採用した経緯にも言及。「我々はアルビオン(※1)にもっと入り込んで、ヒーローになれたら楽しいと思いました。つまり、Kinectで世界に触れてもらうというゲームデザインです。そのためにも、ゲームを一人称視点(※2)にすることは大事だった」。また、一人称視点を採用したことに伴いゲームのグラフィッククオリティーをさらに向上させるため、本作では多くのビッグタイトルで使われているミドルウェア“アンリアルエンジン”を使用。これによって「ゲームの世界はリッチで非常に美しいものになった」という当初の目的であったより美しい映像の実現以外に、従来までのように自分たちでツールを作成する必要がなくなったため「ゲームのデザインとクオリティにフォーカスできた」という効果も生むことになったそうだ。

※1:すべての『Fable』シリーズで物語の舞台となる大陸
※2:『Fable』シリーズはこれまですべて三人称視点を採用してきた

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■デモプレイリポート:フィールド編
旅(ジャーニー)を象徴する馬の存在
 今回のデモプレイは、本編冒頭の約2時間を1時間程度に短縮した特別バージョンとして公開された。“Albion”、“Bridge Collapse”、“Devourer Chase”、“Gauntlet Trial”、“Cave Escape”という5つのシーンから構成されており、最初の3つが馬による移動、残りのふたつがバトルという流れになっていた。順に沿って、以下馬による移動シーンの内容からお届けしよう。

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▲主人公ガブリエル(右)と、彼を導く女性テレサ(左)。

 『Fable: The Journey』の主人公はシリーズで初めてデフォルトの名前を与えられた主人公だ。“ガブリエル”と名付けられた彼は、過去の作品同様、物語が始まった時点ではまだ英雄ではない。一介の旅商人として仲間のグループといっしょに行動しているところからデモはスタートした。移動画面は馬車の中からの視点で、右上には馬車の幌の縁に掛けられたランプが揺れている。こちらはカスタマイズが可能で、先日ダウンロード販売がスタートしたXbox LIVE アーケード用タイトル『Fable Heroes』で一定条件を満たせば特殊なデザインのハンギング・グッズも入手できるという。

 操作方法は現実に即したもので(と言っても記者に乗馬経験はないが……)、馬から伸びる手綱を両手で握るような姿勢を取り、それを叩きつけるように動かせば馬は移動を開始。もう1度叩くと走り出し、さらに叩くとレースゲームで言うところのブースト状態になる。手綱を2回叩いた状態での移動にはゲージを消費し、それが尽きると使えなくなってしまう。ただし、ゲージは時間経過で回復するうえに、フィールド上に落ちている赤色のオーブを拾えば一気に回復することが可能だ。スピードを下げたいときは手綱を胸元に持ってくるように引き、完全停止する場合は頭上に両手を上げる。左右の方向調整は左に行きたければ左手を引く、といった具合。いずれもとくに難しい操作ではないが、気を抜いてはいけない。フィールドは平坦な道ばかりではなく、デコボコに荒れた場所や、足場が非常に狭いところもあるからだ。デコボコな道にスピードアップした状態で突っ込めば馬はダメージを受けてしまうし、狭い足場は慎重に進まなければ落下してしまう。地面の状態にはつねに注意しておこう。なお、本作はくり返し述べている通り“長時間遊べるRPG”だ。そのため、馬の移動中はずっと手を上げていなくてもいいシステムになっている。必要なときだけ腕を上げて動かし、あとは画面に集中していればいい。こういった細かい心配りは、実際にプレイするとそのありがたみがよくわかる。

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▲物語の最終目的地である、いにしえの塔。

 デモの内容に話を戻そう。しばらく移動を続けていると一行は、前方に謎の建造物“いにしえの塔”を発見する。興味を惹かれそこに向かうが……集団の最後列にいたガブリエルが塔が立つエリアにつながる橋を渡ろうとした瞬間、目の前で崩壊。ひとり取り残されてしまう。いにしえの塔に何があるのかはわからないが、仲間に追いつくために彼は大回りして道を探すことに。こうして、全長300マイル(約420キロ)にもおよぶ壮大な旅(ジャーニー)がスタートするのだ。ちなみに、『Fable』シリーズを遊んできた人はすでにお気づきだろうが、いにしえの塔は『II』にも登場している。そのときは存在理由などが明かされていなかったが、『Fable: The Journey』では明らかになるそうだ。

 ガブリエルが塔へのまわり道を探しに走り始めて間もなく、ひとりの女性が森の中から飛び出してきて「やつらに追われている!」と助けを求めてくる。テレサという名前の彼女は、すべてのシリーズに共通して登場する盲目の女性で、本作では主人公を英雄へ導く存在となるのだ。とは言え、そんな事情はこの時点ではまだわからない。とにかくテレサを馬車に乗せ、何かから逃げるために走りだすガブリエルだが、周囲の様子が先程とは大きく変わっていることに気づく。空は赤く染まり、道の両側からは血を思わせる赤黒い液体が迫ってくる。触れればダメージを受けることから、それが邪悪なものであることは確かだ。馬も緊急事態を察知したのか、常時ブースト状態になって逃れようとするが、侵食はさらに激しさを増し、隕石のようなものが降ってきたり、手のような形をした何かが主人公たちを捕らえようとしてくる。侵食を避けながらしばらく走ると、前方に光の差し込む侵食の及ばないエリアが現れるが、そこへ辿り着く直前、馬にアクシデントが。どこからか放たれた矢のような破片が体に刺さってしまうのだ。どこかで馬を止め、抜いてあげなければ体力を奪われてしまう。しかし、後方からは邪悪な存在が迫っている……ここで記者が取った判断は、とにかく逃げる!

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 残念ながらこの判断を誤りであった。途中にチラッと見えたのだが、道の左側にPIT INを指示するエリアがあって、本来はそこで馬から降りて傷を癒してあげなければいけなかったという。そして、移動シーンのデモプレイはここで終了となった。

 RPGにおけるフィールドの移動は、ときに退屈で面倒なものになってしまうが、『Fable: The Journey』は「フィールドの移動こそがゲームの中核かもしれない」という印象を受けた。馬(馬車)を使った移動は、それほどに楽しいものだった。また馬は、『Fable II』および『Fable III』で登場した犬のように、主人公の相棒としてコミュニケーションが取れる大切な存在になるという。たとえば、さきほどのように体に何かが刺さったときは速やかに抜いてあげたほうがいいし、傷を負ったときは手綱を叩くのを控えてあげるなど、状態に気を配ってあげるのが大事なのだ。なお、乱暴に扱ったからと言って馬の態度が変化するといった設定はないそうだが、旅を続ければプレイヤーの中で馬に対する愛着は間違いなく増すわけで、人情的に乱暴に扱うのは控えたくなる……はず。

■デモプレイリポート:バトル編
想像以上に戦略性の高い魔法コンバット
 バトルシーンのデモはチュートリアルからスタートした。『Fable』シリーズの戦闘は、多彩な武器や魔法を使ったバトルが特徴だったが、本作では魔法に特化。画面に向かって手を突き出して魔法を放つというKinectらしいシンプルな操作で、左右の手には右手が攻撃系、左手が特殊能力系と、異なるタイプの魔法が振り分けられている。なお、チュートリアルは、右手から基本となる攻撃魔法“ボルト”が、左手からは敵を弾き飛ばす“プッシュ”を撃つことができる状態で行われた。

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 チュートリアルステージの舞台となるのは湖の上に立つ神秘的な建造物で、ターゲットとなるのはモンスターの形をした石像。最初に、画面内のさまざまところに出てくる石像を撃つという基本中の基本を学んだら、いよいよテクニックを習得する番だ。敵はつねに体を晒した状態で登場するわけではなく、障害物や盾で身を守っていることがある。そんなときは真正面から魔法を撃っても無駄なので、“アフタータッチ”という操作で敵の隙を付かなければいけない。アフタータッチは、一度放った魔法にもういちどジェスチャーを加えることで、効果に変化を与えるというもの。たとえばボルトは、通常だと直線にしか飛ばないがアフタータッチによって、軌道を変えることができる。魔法を放ったあとに腕を伸ばしたままの状態にして、ここぞというタイミングで腕を振れば、振った方向へ魔法が方向転換するといった具合だ。これによって、障害物を回りこんだり、盾で守る敵の背後から攻撃が可能となる。プッシュのアフタータッチは、敵を捕らえて任意の方向へ投げ飛ばす。穴へ落下させたり、敵どうしをぶつけるなど用途は幅広いが、攻撃以外に一部の背景を動かすなんて効果も。行く手を阻む大岩をどかすという必須テクニックや、ダンジョン内で天井から垂れ下がったつらら状の岩を落として敵を押し潰すといった具合だ。

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 なお、今回のデモでは見られなかったが、魔法は上記のふたつ以外にもさまざまな種類が存在する。スタジオツアーの中でいくつか、その情報も得ることができたので合わせて紹介しておこう。“シャード(Shard)”と呼ばれる魔法は鋭利な破片を召喚し、敵に向けて投げると、刺さった敵が飛んでいくというもの。アフタータッチを行うと、破片がさらに細かい破片に分散し、複数の敵を攻撃できるようになる。“ファイアーボール”はその名の通り炎の塊を敵に飛ばし、アフタータッチを行うと手を動かした範囲が火の海となり、広範囲の敵にダメージを与えることが可能だ。

 チュートリアルでは魔法以外に防御、横移動という操作も学ぶことができる。防御は、敵が攻撃を仕掛けると画面に赤いターゲットが表示されるので、それが表示されているあいだに左腕を体の前にサッと動かせばOK。横移動は上半身を行きたい方向へ傾けるだけ。広いエリアではさまざまな方向から敵が攻撃を仕掛けてくるので、移動しながら戦うのがいいだろう。

 チュートリアルが終わったらいよいよ本番。カニのような敵が出現する洞窟を進むことになる。チュートリアルで学んだテクニックを駆使すればとくに苦労することはないが、中ボスクラスの敵を倒すにはちょっとしたコツが必要だ。雑魚の親玉と言った感じのこの中ボスは守りが非常に堅く、アフタータッチで後ろから攻撃しても効果が薄い。ではどうするのかと言うと、右手と左手の魔法のコンボである。プッシュで動きを止めつつ、ボルトを放てばダメージを与えることができるのだ。中ボスを倒したらつぎは崩壊する洞窟からの脱出。こちらはフィールド編のデモプレイにあった邪悪な存在とのチェイス同様、馬が常時ダッシュ状態になる。狭い洞窟内を猛スピードで進むのはかなりスリリングで、しかも脱出したと思った瞬間、主人公の数十倍はあろうかという巨大な体躯を持つトロールが出現! ここで、今回のプレイデモはすべて終了となった。

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 直感的かつシンプルな操作で楽しめるバトルシーンだが、アフタータッチやプッシュによる環境攻撃、魔法のコンボといった要素のおかげで、非常に戦略性が高い印象を受けた。また、物語が進むと、馬に乗りながら戦うシーンなどもあるとのことで、どんなシチュエーションが用意されているのかも興味深いところだ。