温故知新タイトルとKinectが魅惑の融合!
初出が約30年前、さらには若年層から「レーザーディスクってなんですか? Blue-rayとかDVDの新しいやつ?」などと根本的な質問さえ飛び出しかねない今日このごろ。『Dragon's Lair』は、ビデオゲームの歴史に名を残すエポックメイキングなタイトルとして、今もiPhoneなど最新プラットフォームに移植され続ける名作のひとつだ。
プレイヤーは主人公ダークとなって、城に幽閉されたダフネ姫を救出すべく悪いドラゴンを倒しにいく。道中には、悪の魔法使いが仕掛けた罠やモンスターたちが手すぐねひいて待ちかまえている。
本作はキャラクターを操作するのではなく、自動進行していくアニメーション映像の流れに沿って“適切な入力操作”を行なうことで、罠やモンスターなどの難関をクリアしていく。
操作はコントローラーとKinect(キネクト)に対応。Xbox LIVE アーケード版最大の特徴は、Kinectによる体感操作にあるといっていい。これまでレバー(方向キー)やボタンで行なわれてきた操作を、主人公ダークになりきって全身でプレイする。
やりかたはとてもカンタンで、画面に表示されるアイコンに従い、前後左右にステップ、その場で走るように足踏み、左右どちらかの手を上げる、剣で一刀両断する要領で手を振り下ろす、左右の手をあげて何かをつかむといたジェスチャーを“タイミングよく、なおかつ素早く”行なう。
いずれのジェスチャーもタイミングがとても重要で、要領がつかめないうちは「えっ、ちゃんとやってるつもりなのに!」と困惑するかもしれない。おおまかなコツとしては、アイコンが出た瞬間にほんの一瞬タメを意識しつつ、メリハリをつけて瞬時にスパッとジェスチャーを完了させるといい。
アイコンが連続して表示される場面などは、慣れたつもりでも結構ミスを連発しがち。このあたりは展開を覚えてテンポよくジェスチャーをこなしていきたい。前後左右のステップと剣を振る動作が続くような場面では、各アイコン動作をワンセットで覚えておくと成功しやすくなる。
Kinectモードの難易度は、冒険、クエスト、挑戦の3段階。冒険はミスしてもダークが死なずそのまま最後までゲームが進行。クエストは何度かミスするとダークが死亡。挑戦はオリジナルと同じ難易度で、ワンミスでダークが死亡してしまう。
コントローラー使用時、難易度はイージーとハードの2段階。ゲームモードはアーケードとホームの2種類で、前者はダークが死ぬと新しいシーンからゲーム再開、後者はLDゲーム版を再現したものでクリアしないと各シーン先に進行できない。
両操作系とも、オプションで字幕、ムーブ音、ムーブガイド、アーケードモニターのオン・オフが選択可能。“ムーブガイド”は、オリジナルのアーケード版同様にインフォメーション皆無でゲームが進んでいく。ざっくりいうと、現在デフォルトで表示されているアイコンがまったく出現しない。
こう書くと「えっ、そんなの完全に覚えないとクリアできないじゃん!」と思われるかもしれないが、1983年当時、それは激ムズながら当然の仕様として受け止められており、決して理不尽でもなんでもなかった。当時中学生だった筆者は、某駅近くのゲームセンターで海外スメル満載の革新的新作に胸躍らせつつも「……こりゃ激ムズだわ」と他の人のプレイをガン見しておおいに参考にさせていただいていた。
ここで「あれ?」と思われた人も少なくないだろうが、後年『God of War』シリーズで大ブレイクした「コンテキスト・センシティブ・アタック (Context Sensitive Attack) 」や「クイック・タイム・イベント(Quick Time Event)」の元祖としてよく引用される『Dragon's Lair』の入力操作。実は「アニメーションの内容から“次の展開と入力タイミングを予想”してゲームを進めていく」ことがシステムの大前提で「画面に表示された方向キーやボタンを素早く押していく」というものではない。
とはいえ、Kinect前提でオリジナル仕様をデフォルトにしたら、タイミングや種類が間違っていたのか、ジェスチャーに失敗していたのか判別がつかないといったことになるので、今回のアレンジは無難かつ丁寧なものといえる。個人的には「Kinect操作は、もうちょっとジェスチャー判定がゆるくてもよかったのでは?」と感じたが、それだとオリジナル映像とテンポに手を加える必要性が生じるため、まぁ止むを得ないかなといった印象だ。
全身で名作を体感! ~オリジナル世代は懐かしのモード+コントローラーでまったりプレイも可~
アーケード版で魅了され、後年IBM-PCやAMIGAなど海外ホビーPC版を見て「すげー! 家で『Dragon's Lair』ができる!」と喜びつつ、そんな大金は持っていないので秋葉原などのパソコンショップ店頭デモを触って店員さんに「(いつまでやってんだよ)」と内心嫌な顔をされたりと、オリジナル世代には思い出話が尽きない名作中の名作。
その後ファミコンなどコンシューマゲーム機にも多数移植され、自律アクション化されたアレンジ版や冒頭でも述べた携帯コンテンツなど、現役世代にも末永く愛され続けている。古典的名作ではあるが、ゆえに30代後半~40代以降など完全なジジイゲーマー向けというわけでもない。
若年層向けという観点では絵柄の古さこそ否めないが、死亡アクションのコミカルさは現代でも十分通用すると思う。Kinectを使った全身プレイも、若干シビアながら子供向けとしては申し分なく、大人もふと気づけば軽く汗をかいて息が上がるという悲しい肉体的現実を突きつけられるため、遊びながらメタボ解消の一助というのも悪くない。
「いやまぁ懐かしいけど、俺もうおっさんだし! しんどいのは嫌!」という人は、コントローラープレイがおすすめ。オリジナル当時の曲面ブラウン管に比べれば、液晶TVで見るリマスター映像のクオリティは美化された記憶をはるかに上回る。アップライト筐体の再現は無理にしても、オプションのアーケードモニターをオンにすれば当時の空気が醸し出され、味わい深い雰囲気でプレイできる。
シリーズのファンでKinectをお持ちのかたは、お手頃価格ということもあり、ぜひ本作をチェックされてはいかがだろうか。初体験という人も、温故知新ということでこの機会にぜひ一度お試しいただきたい。
●筆者紹介
豊臣和孝:フリーライター。ここ10年ほどはWebゲーム媒体メインで執筆中。ファミ通 Xbox 360ではインディーズコーナーを担当。
Dragon's Lair (Xbox LIVE アーケード版)
メーカー | 日本マイクロソフト |
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対応機種 | X360Xbox 360 |
発売日 | 2012年5月18日 |
価格 | 800 マイクロソフト ポイント |
ジャンル | アクション & アドベンチャー, 懐かしのゲーム |
備考 | CERO B - 12歳以上対象 |