セガ鶴見尚也社長が理事に新任
2012年5月23日、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)の定時社員総会が開催。新たな役員体制が決定し、この総会に合わせて行われた記者会見には、CESA理事・事務局長を務める下記の8人が出席した。
会長:鵜之澤 伸氏 バンダイナムコゲームス代表取締役副社長
理事:久保田 裕氏 一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事
理事:田中富美明氏 コナミデジタルエンタテインメント代表取締役社長
理事(イベント委員長):辻本春弘氏 カプコン代表取締役社長COO
理事(調査広報委員長):鶴見尚也氏 セガ代表取締役社長 ※新任
理事(技術委員長):和田洋一氏 スクウェア・エニックス代表取締役社長CEO
理事:渡邊和也氏 NPO法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構専務理事
事務局長:富山竜男氏 CESA事務局長
記者会見では、最初に、6年間CESA会長を務めた和田洋一氏が退任の挨拶を行った。和田氏が会長に就任した際に掲げたのは、“グローバル化”、“ものを作る環境の整備”、“社会との対話”という3つの目標。この目標を達成すべく、和田氏は東京ゲームショウの国際化、CEDECの強化、暴力表現のあるゲームに関する社会の反応への対応など行ってきたことを語り、目標実現のために尽力した関係各社への感謝の意を述べた。なお、和田氏は会長は退任するが、今後もCESA理事は続けていく。
続いて挨拶したのは、新たに会長に就任したバンダイナムコゲームスの鵜之澤 伸氏。鵜之澤氏は、「ここ数年、SNSなどの成長、スマートフォンの普及によって業界が大きく変わり、成長しています。まだ具体的な予定があるわけではありませんが、これからはCESAのメンバーどうしで、新しくパートナーとなった人々も交え、この業界の変化について話し合う機会を設けていくつもりです。ゲーム業界は、歴史もある、日本のコンテンツ業界を代表する業界ですので、世界にアピールしていきたいと思います」と語った。
和田氏、鵜之澤氏の挨拶の後は、CESA事務局長の富山竜男氏が昨年度の活動報告と、今年度の事業計画発表を行った。
■東京ゲームショウ
2011年の東京ゲームショウは、過去最高の22万2668人を動員。2012年は、“GAMEで笑顔がつながっていく。”をテーマとし、2012年9月20日~9月23日の4日間開催予定。新たにビジネスマッチングの場として“アジア ビジネスゲートウェイ”を企画しているほか、公式動画チャンネルを開設予定。東日本大震災の復興支援も引き続き行う。
■CEDEC
技術者向けカンファレンスであるCEDEC。昨年度の受講者数は過去最高の4600人を記録。2012年は、昨年より開催日を早め、2012年8月20日~8月22日に開催予定。“エンターテインメント ダイバーシティ”をテーマとする。
■その他
2011年度は、毎年行われている「ゲーム白書」、「一般生活者調査報告書」の発刊に加え、ソーシャルゲーム市場の調査を行った。今後はCESA会員数の減少を止めるべく尽力していく。
最後に、理事に対する質疑応答が行われた。ここではその模様の一部を紹介しよう。
――和田前会長にお聞きします。グローバル化に取り組まれたとのことですが、世界は日本のゲーム産業をどう見ているとお考えですか。
和田 日本のゲーム産業は、世界から尊敬されております。ゲーム産業発祥の地であること、よいコンテンツを生み出していることがその理由です。いまは「日本のゲーム産業は伸び悩んでいる」という話をよく聞きますが、私は、じつは依然としてゲーム先進国なのではないかという認識を持っています。世界でもっとも早く携帯ゲーム機が収益化したことや、スマートフォンの出だしのよさ、オンラインゲーム・ブラウザゲームが成長していることなどがその理由です。いわゆるソーシャルゲームも、じつはZingaより実利が出ている。ゲームの市場がもっとも成長し、収益化しているのは日本なのです。日本のゲーム産業はいろんな顔を持っている。それを皆さんに知っていただけるよう尽力していきたいと思います。
――では、日本の社会からはどう見られていると思いますか。最近は、ソーシャルゲームに関する厳しい声も聞こえてきますが。
和田 新しいコンテンツが出ると、その都度かならず何か言われてしまうんですよね。家庭用ゲームソフト発足時点は、ゲームは子どものものでした。暴力表現のあるゲームについては、「なんで子どものゲームに大人の表現が入るのか」、と言われました。大人のゲームというのは世間が想定していなかった。でも、いまはソーシャルゲームについて、「どうして子どもに遊ばせるんだ」と言われる。これは、ゲームのお客様のが広がったことの、ある種の証明。マーケットが広がっていることを表していると思います。
――鵜之澤会長は、会長としてどんなことに取り組んでいきたいとお考えですか。
鵜之澤 ゲーム業界のコンテンツは、インターネットを通じてすべてが一元化されているような状態でありながら、横の連動がなかなかないんですよね。会社内でもアミューズメント部門と家庭用ゲーム部門で分かれてしまっていたり、モバイル系のことも、わかりそうでわからなかったり……。これからは、皆様に紹介していただいたり、お声がけをしたりしながら、つながりを作っていきたいと思います。また、日本のゲームは世界……とくにアジアの方面で受け入れられる土壌ができていると思いますので、より多くのお客様に受け入れられるよう取り組んでいきたいですね。
――イベント委員長の辻本理事に伺います。今年の東京ゲームショウの展望を教えてください。
辻本 東京ゲームショウを、アジアのナンバーワンのゲームショウにしたいと考えています。いま、日本ではスマートフォンやPCブラウザゲームの開発者が不足していますが、アジアには、そういったゲームの開発ができる人材がいます。ですので、ゲームショウで、会社と人材のマッチングができればと考えています。そして、日本のゲーム開発に携わった方々が、ノウハウを得て自国でビジネスを行えば、連動して日本のビジネスの道も開けていくと思います。
――鶴見新理事に、調査広報委員長としての今後の展望を伺いたいと思います。
鶴見 いまはゲーム業界が変わってきて、世界中でビジネスができるようになっています。その反面、行政からの指導がございます。行政と協力して、法的に強めるところ、逆に弱めるところを考えながら、業界のための仕事をしていきたいと思います。そして、日本の会社が少しでも外の世界に出られるような情報、可能性をお伝えしていきたいと思います。
――ゲームのダウンロードコンテンツ等について……とりわけいまはソーシャルゲームの課金方法などが問題になっていますが、CESAとしてどうお考えでしょうか。
鵜之澤 ダウンロードコンテンツ配信そのものは、以前から行われているものです。各社さんが、それぞれのプラットフォームのルールの中でずっとサービスをしてきています。現在、CESAの中で見解をまとめるところまでは至っておりません。
――近年、『バイオハザード』など、ゲームをもとにした映像作品が成功してきています。映像分野でのゲームの跳躍についてどうお考えですか。
鵜之澤 私より、いい思いをしている辻本さんが答えたほうがよいかと思いますが(笑)。うちの会社で言うと、『鉄拳』のハリウッド映画なんていうのもじつはあったのですが、悲惨な結果でございまして……(笑)。ゲームの映画でうまくいった例は少ないのですが、そんな中でカプコンさんのタイトルは成功を収めており、きっとノウハウがおありで、優れたスタッフさんとの人間関係が築けているのだと思います。ハリウッド側から見ると、我々のコンテンツの中には、自分たちでは気づかない魅力があるようです。カプコンさんのように、いい形で映像化した例も出てきていますし、これからもチャンスがあればぜひ対応していきたいなと思います。