低レイテンシーなクラウドサービスを従来より安価に構築可能
NVIDIAが、クラウドゲーム用プラットフォーム“NVIDIA GeForce GRID”を発表した。このプラットフォームを活用することで、次世代のハイエンドゲームを、どのような機器にも遅延を気にせず配信可能だという。
ゲームをプレイする環境は、PC、アーケード、家庭用ゲーム機、携帯ゲーム機、スマートフォンと多様化を続け、主流のデバイスも変わってきた。家庭用ゲーム機を組み込んだテレビもあったし、スマートフォンが次の主流だと言うアナリストがいるかと思えば、スマートTVに注目する人だっている。
クラウドゲームは、ゲーム自体の内部処理をサーバー側で行い、端末に映像をストリーミングすることで、ハードウェアの制約をさらに取り払うものだ。それがテレビだろうとPCだろうとタブレットだろうとスマートフォンだろうと、適切な回線とディスプレイとコントロールのための入出力とストリーミング映像処理を行う処理能力さえあれば問題ないという仕組みになっている。
OnliveやGaikaiなど、PCゲームを提供するクラウドゲームサービスが立ち上がってきたが、これまで大きなネックとなってきたのが遅延問題だ。今回の発表でキーポイントとなるのは、NVIDIA GeForce GRID GPUとクラウド対応グラフィックス・ソフトウェアを組み合わせることで、サービス提供者がこれまでより低レイテンシー(遅延)かつ低コストにサービスを提供できるということ。
プレスリリースでは、NVIDIAのクラウドゲーム担当ジェネラルマネージャーのフィル・アイスラー氏が「ゲーマーのみなさんには、今後、携帯電話でもタブレットでも、TVでも、もちろんPCでも、いつでもどこでも世界トップクラスのゲームをシームレスに楽しんでいただけるようになります。GeForce GRIDの登場は、ゲームの提供方法とプレイ方法の一変を意味するのです」と語っている。
GeForce GRIDのプロセッサーは、Kepler GPUをベースにしたGPUを2基搭載しており、GPUごとに専用のh.264のハードウェアエンコーダーも付属。最大で8本のゲームを同時にエンコーディングして配信可能で、1ストリームあたりのサーバー消費電力を従来の半分程度まで低減できるという。GPUコンピューティングによりゲーム自体の処理も高速化し、理論的には(恐らく現行の)家庭用ゲーム機をテレビに繋いでプレイしているのと同等の遅延で遊べるとしている。
現在開催中のGTC(GPU Technology Conference)では、Gaikaiの協力により、16キロメートル離れたサーバーにLG製のスマートTVをオンライン接続し、Gaikaiアプリケーションを経由して、ワイヤレスUSBゲームパッドで複雑なPCゲームをプレイするというデモを行なっているとのこと。
ある人はゲームパッドを繋いだスマートTV、ある人はBluetoothのゲームパッドを繋いだiPad、ある人は同じくゲームパッドを繋いだAndroidスマートフォンでmini HDMI経由で大型ディスプレイに画面を映してプレイ……といった具合に、環境がバラバラ、でも遊んでいるのは全員『コール オブ デューティ』級の超絶美麗なハイエンドゲーム、ということが近い未来に実現するかもしれない。
現状のクラウドゲームサービスは、注目はされてきたものの、十分に成功を収めているとは言い難かった。今回の発表のような技術的進歩によりブレイクスルーを果たすのか、そしてその場合、既存のゲーム業界にどのような影響を及ぼすのか注目だ。