『キングダム ハーツ 3D』三者三様の魅力的な楽曲の秘密――『KH3D』インタビューその2

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『キングダム ハーツ』シリーズ10周年に発売されたニンテンドー3DS用ソフト『キングダム ハーツ 3D[ドリーム ドロップ ディスタンス]』。ここでは、同作の楽曲を手掛けた、3人のコンポーザーの方々のインタビューをお届け。

●下村陽子氏を中心に3人体制で作られた『KH3D』の楽曲

 『キングダム ハーツ』シリーズ10周年に発売されたニンテンドー3DS用ソフト『キングダム ハーツ 3D[ドリーム ドロップ ディスタンス]』。ここでは、同作の楽曲を手掛けた、3人のコンポーザーの方々のインタビューをお届け。なお、関戸氏は大阪の開発チームから、テレビ電話でご参加いただいた。

※本インタビューは週刊ファミ通2012年5月10日・17日号(4月26日発売号)に掲載されたものです。


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▲下村陽子氏(左)、関石剛氏(中央モニター)、石元丈晴氏(右)

■夜の遊園地のような曲

――今回の楽曲のコンセプトは?

下村 今回は“夢”や“夜”ですね。キラキラする夜の遊園地というイメージで、ちょっとヒミツを持っているような、それでいてかわいい曲ができたらいいなと思って作っていました。

――ディレクターの野村さんから、曲に関するオーダーはありましたか?

下村 先ほどお話しした“夢”といったキーワードをもらいましたね。それと、「とにかくテンポを早くして、にぎやかなイメージの曲にしてほしい」と言われました。

――今回は、新ワールドも多かったですが?

下村 印象的だった新ワールドは、『三銃士』の“カントリー・オブ・ザ・マスケティア”ですね。いままでにない雰囲気のワールドでしたので、楽しんで作れました。ただ、『ノートルダムの鐘』の“ラ・シテ・デ・クローシュ”も“カントリー・オブ・ザ・マスケティア”も、どちらもパリを舞台にしたワールドですので、似たような曲にならないように、暗く重い雰囲気と元気なイメージで、分けています。

――“カントリー・オブ・ザ・マスケティア”では、『One for All』、『All for One』の曲が対になっているのが印象的でした。

下村 これは世界的に有名なフレーズですので、タイトルは意識してつけました。対になる曲であり、ふたつで1曲になるようなイメージでもありますね。


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■三者三様の魅力的な楽曲

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――石元さんと関戸さんは、『KHBbS』に続いての、『KH』への参加となりますね。石元さんが参加することになった経緯は?

石元 今回は、僕が担当した『すばらしきこのせかい』の楽曲が使われることもあって、その部分と『トロン:レガシー』の“ザ・グリッド”の曲をやりたいなと、自分から手を挙げました。ただ、「やります!」って言ったのはいいけど、『トロン:レガシー』は映画の原曲がよすぎるので、「こりゃたいへんだな……」と(苦笑)。

下村 やってくれて、ありがと(笑)。

――トラヴァースタウンの楽曲と、『すばらしきこのせかい』の楽曲は、同じワールドでも曲調がまったく違いますよね。

下村 最初は「どうなっちゃうの!?」と思ったのですが、実際に聴くと意外と合っていたよね?

石元 そうですか?(笑)

下村 え! そうじゃない!? いまどきのカッコいい曲の『すばらしきこのせかい』と、いつもの『KH』らしいトラヴァースタウンの曲
が同じワールドで流れるのは、いいなあと思ったんだけど。

――『すばらしきこのせかい』の曲は、原曲からいろいろとアレンジが加えられていましたね。

石元 これまで、アレンジアルバムを出したりと、アレンジはし尽くしてきたのですが、今回はボーカルを変えたので、それだけでかなり違う雰囲気になったと思います。


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――アレンジ版の聴きどころは?

石元 『TWISTER -KINGDOM MIX-』で、伴奏のアコースティックギターとボーカルだけになる瞬間ですね。初めて聴くときは、驚くかなと思います。

――関戸さんの担当楽曲は、ダイブでかかる『Storm Diver』など、明るい曲が多いですね。

関戸 じつは、最初に2曲くらい作ったのですが、野村から「曲はいいんだけど、『KH』らしくない」と言われて、2回作り直しましたね。暗くならないように注意しながら作ったのですが、3回目は震えながら提出しました(笑)。

――(笑)。下村さんは、おふたりの曲を聴きながら楽曲の制作をされたのでしょうか?

下村 いえ、私は楽曲のデータを受け取るよりも提出することが多かったですし、ゲームをプレイして楽曲をチェックをするときも、自分の担当部分を優先して確認する必要があったので、開発の終盤にちょっと聴くだけでした。でも、私の曲とは違う雰囲気でいいですよね。「関戸さんの担当するボス曲は明るくていいなあ。私のはなんでこんなに暗いんだろう」って思いました(笑)。

――でも、下村さん担当の『Dream Eaters』では、「ランランラン♪」と、明るい歌が流れますよね? 初めて聴いたときは驚きました(笑)。

下村 あれは、評判を聞くと、賛否両論なのかな? って。最初は、あの歌をおじさんが低音ボイスで歌うという、キモかわいい曲なんてどうかな? と考えていたのですが、哲さん(野村哲也氏)に反対されて(笑)。それで、いまのかわいい声になったので、私の中では王道路線のつもりだったのが、予想以上にユーザーさんから驚かれましたね。ある意味、いいインパクトになったのかなと思います。


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■新たな息吹を与えるアレンジ

――タイトル曲の『Dearly Beloved』は、ワルツのような明るいアレンジになりましたが?

下村 今回は、最初から前向きに明るい感じにしようと決めていたんです。それと、タイトルが“3D”なので三拍子に(笑)。

――そういう理由なんですね(笑)。同じ曲を何度もアレンジするには、何かコツが?

下村 コツみたいなものはないですねー。サラッとできることもあれば、「この曲のアレンジは無理!」と、先に伝えているものもあります。今回、関戸さんが『My Heart's Descent』と『The Eye of Darkness』というふたつの曲で、『KH』の『Destati』をアレンジしてくださっていますが、私には浮かばないアレンジだったので、さすがだと思いました。まったく切り口の違うアレンジが出てくるのは、ありがたいことですね。

――関戸さんが『Destati』で2種類のアレンジを担当することになった経緯とは?

関戸 もともとはダイブモード用にアレンジをしていたのですが、その曲が使われる場面が、過去のシーンが走馬灯のように出てくる場所だったので、ほかのダイブモードと異なるように、リズムを刻むものと、リズムを刻まないものの2種類を用意したんです。そうしたら、なぜか両方の曲が異なる場面で使われるようになって。しかも、1曲はボス戦で使われるということで、そんな重要な場面ならコーラスを入れたほうがいいと、河盛くん(河盛慶次氏。本作のシンセサイザーオペレーター)が追加してくれたんです。あのコーラスは、河盛くんのファインプレーですね。

――ではこの2曲は、下村さんにとっても印象深い曲になったのでしょうか?

下村 そうですね。『すばらしきこのせかい』の曲で最初のインパクトを出して、ボスは関戸さんのアレンジで締めるという、おいしいところを持っていかれたような気分です(笑)。

関戸 いやいや、僕らは下村さんの手の平で阿波踊りを踊っているようなものですから(笑)。

下村 なんで阿波踊りなの!?(笑)

関戸 ああ、盆踊りか! それか、フラダンスでもいいですよ(笑)。


■3人体制の楽曲制作

――『KH』は、今後も3人体制で楽曲を作られるのでしょうか?

下村 私は、そうしたいけどなあ……。

――3人体制は、いかがですか?

下村 すごく安心します。ヘンなたとえですが、私が体調を崩して倒れたとしても、何とかなりますから。逃げではなく、もし私に何かあっても、『KH』の曲をこの人たちが仕上げてくれるという安心感と、誰かといっしょに担当することで、自分のやりたかった曲がほかの人の担当になってしまうかもしれないという緊張感が生まれるので、3人での作曲のほうが刺激になりますね。

石元 つぎも3人体制になるかはわかりませんけどね。僕は、今後も継続的に『KH』を担当するという意識はないんです。「下村さんがたいへんなときにはいつでも手伝います」というイメージです。

関戸 僕も補助的な立ち位置で参加させてもらっている感じですが、『KH』のスタッフロールに載せてもらえるのがうれしいですから、機会があればまた!(笑)

下村 私は、もちろんつぎも作曲したいと思っていますが、哲さんがきびしい方ですので……。じつは、哲さんとは会う機会がほとんどないので、作る曲の評価がほぼすべてになるんですよね。ですから、しっかり作らないと。……と言いながら、またおふたりにはお願いしたいなーって思っています(笑)。

――野村さんは、『KH』10周年特集(週刊ファミ通4月19日号掲載)で、『KH』の楽曲の定義について「“下村節”であること」と答えていらっしゃいました。

下村 光栄です。でも、ふだんはそんなことおっしゃってくださらないですけど(笑)。

――やはり、リテイクは多いのでしょうか?

下村 シリーズを重ねるに連れてリテイクは少なくなっていますが、その分、私も曲を提出するのが遅くなっているので……。というのも、私も歳を取るごとに、自分のハードルが高くなってきていて、曲を出すときに「これじゃダメだろう」と判断することが増えているんですね。自分が一部納得できていない曲を出しても、その箇所をピンポイントで指摘されてしまいますし。だから、以前以上に、自身で納得して出すようになった分、リテイクではなく、「曲のテンポを早くして」といった追加リクエストや修正が、増えてきたように思います。

――なるほど。『KH』が10周年を迎えたことについては、いかがですか?

下村 歳を取ったなあ(笑)。石元くんは『KH チェイン オブ メモリーズ』と『KHII』でマニピュレーターをやってもらったんだよね。あのときは、ご迷惑をおかけしました!

石元 いえいえ。10年かー。まさか、この3人でひとつのパッケージをやるとは思っていませんでした。だって、下村さんは、僕がスクウェア(当時)に入るときの面接官ですよ(笑)。

下村 ああ、そうだったね! 当時の仕事の流れは、お酒の場で進むことも多くて、それで面接のときも、お酒に強い人かどうか知りたくて「お酒を飲みますか?」と聞いていたんです。そういう場合、酒豪でも下戸でも「そこそこに」と曖昧に答える方が多いんですが、それが、石元くんは「僕は飲みません」とキッパリ答えて。それで、「ああ、この人は意志が強いなー。きっと信頼できるな」って思ったんです。当時は、『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』を担当していたときで、マニピュレーターの人手が足りなくて、すぐに信頼してお仕事をお願いできる人を雇うための面接だったので、最後のひと言で彼を信頼してお願いすることにしたんですよ。……でも、本当はお酒飲むよね?(笑)

石元 本当に、少しだけですよ。

下村 関戸さんは飲むよね?

関戸 僕、飲めません(笑)。

下村 みんな飲めないんだからー。……そんな飲めない3人でやっています(笑)。

関戸 下村さん、すごい飲むでしょ!(笑)

――(笑)。では、最後にファンにメッセージを。

石元 もともと作曲者としてこの会社に入ったわけではないので、作曲ができるだけでうれしいんです。ですから、ゲームやサントラを買ってもらって、曲も含めて楽しんでもらえるのがいちばんの喜びですね。ぜひサントラを買っていただいて、Twitterなどで感想を言ってほしいです。

関戸 ゲームがあったうえで、よりおもしろくなるための演出として、いろいろ工夫しながら作曲をしていますので、まずはゲームを楽しんでもらいたいですね。それでサントラも買ってもらえると、来月のご飯が食べられます(笑)。それは冗談ですが、ゲームと合わせてサントラも楽しんでもらいたいですね。

下村 ゲームを遊んで「この曲いいじゃん」と思ってサントラを買っていただき、久しぶりにサントラを聴いて、ゲームがもう一度遊びたくなるというように、相互が影響するように長く楽しんでもらえるとうれしいですね。



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