ついにヴェールを脱ぐ『Halo 4』のストーリー
2011年のE3のマイクロソフトカンファレンスでサプライズ発表され、同年8月の“Halo Fest”や2012年2月の“Microsoft Spring Showcase”で断片的に情報が公開されたものの、いまだ謎に包まれたままの『Halo 4』。『3』で一旦は完結した『Halo(ヘイロー)』シリーズ本編の再起動となる本作を手掛けるのは、“『Halo 4』を作るために設立した”とも言える343 Industries(インダストリーズ)。Bungie(バンジー)から『Halo(ヘイロー)』という偉大なフランチャイズを引き継いだ彼らが目指すのは、シリーズの再起動と“今後10年間戦える『Halo(ヘイロー)』”の創造だ。そして、去る2012年3月某日に、アメリカ・シアトルにある343 Industriesで、一部の関係者を招いたスタジオツアーが開催された。ついにヴェールを脱いだ『Halo 4』――そこで記者が目撃したのは、世界中のゲームファンを熱狂させたあの『Halo(ヘイロー)』であり、同時にいままで見たことのない『Halo(ヘイロー)』だった。
ファミ通.comでは343 Industriesスタジオツアーで得た『Halo 4』の最新情報を4つの記事にわたってお届けする。第1弾となるこちらの記事では、“マスターチーフ”と“コルタナ”の新たな物語を描く、キャンペーンモードの概要を紹介しよう。
「Wake Up Chief, I need you」コルタナの呼び掛けで目覚めるマスターチーフ
今回のスタジオツアーではこのキャンペーンモードの冒頭約5分のデモプレイが、 クリエイティブ ディレクターを務めるジョシュ ホルムス氏のプレゼンテーションと併せてお披露目された。まずは、キャンペーンモードの内容から見てみよう。
すべての知的生命体を絶滅させる力を持つ最終兵器“Halo”を中心に、人類、コヴナント、フラッドによる三つ巴の戦いを描いた『Halo(ヘイロー)』3部作(『1』~『3』)。この物語の中心人物でありシリーズの主人公“マスターチーフ”は、すべてを終息させた後、彼の相棒とも言える高機能AI“コルタナ”と共に、宇宙空間を漂う船の中で、いつ目覚めるともわからぬコールドスリープへと入った。『Halo 4』のキャンペーンモード(=新たな3部作の幕開け)は、『3』のエンディングから4年後、コールドスリープ中のマスターチーフが、コルタナの「Wake Up Chief, I need you」という呼び掛けで目覚めるところから始まる。
コルタナは、船内に侵入者があったことに気づきチーフを目覚めさせたようだ。何かに怯えるかのような表情でコールドスリープ解除の操作を行なっていた理由はこれだ。しかし、現時点で侵入者が何者なのかはわかっていない。目覚めたチーフが「そろそろ仕事に戻るか?」とコルタナに話しかけると、コルタナは「そのセリフはもう聞かないと思ってたわ」と返す。4年間の空白を経ても、いまだふたりの強い信頼関係が健在であることをうかがわせるやり取りだ。ちなみにコルタナはここで「あなたがいないあいだに、スーツをプログラムし直したわ」と話している。そのため、今回のチーフは若干外見が変化している。
目覚めたチーフはシリーズおなじみの武器アサルトライフルをかまえ、静まりかえった船内の移動を開始する。コールドスリープ機器が設置されていた部屋を出て、垂直になった通路(吹き抜け?)のハシゴを登っていると頭上からコンテナが落下してきて、あわや押し潰されそうに。コンテナは次々と落下してくるため、チーフはそれを回避しながら上を目指すことになる。このシネマティックな演出は、個人的に今回のデモでもっともわかりやすく『Halo 4』の新しさを感じる部分だった。
ハシゴを登りきったところで初めて敵と遭遇する。アーマーを装着したクリーチャーで、その姿は前3部作で登場した“コヴナント”を彷彿とさせる……。冒頭の静かな雰囲気から一転、ここから船内には大量の敵が湧き、チーフはアサルトライフル、近接攻撃、グレネードなどおなじみの攻撃でソレらを排除しつつ進み、船のコントロールルームと思わしき開いたエリアへと辿り着く。ちなみに体力ゲージは、一定時間で回復する従来どおりの仕様を踏襲。またHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)に関しては各種情報の表示位置が若干変更されたほか、“視界の表現”とも言うべき縁取りがあり、アーマーを装着している雰囲気がより強くなった印象。ただし、プレイするうえではいままでどおりの感覚でゲーム画面を見ることができた。コントロールルームへ到着後、敵の攻撃は止むどころから熾烈さを増し、ビークルで突入してくるものも。また、その中にはコヴナント軍の雑兵“グラント”らしき敵も確認できた。まるで物語終盤のような激しい戦闘がくり広げられるなか室内のシャッターが開かれると、船外に見えたのは漆黒の宇宙空間に輝く惑星。白く光るその惑星は、我々が知る地球ではないことは確かだ。いくつもの謎を残しつつ、デモはここで終了となった。
『Halo 4』は「『Halo(ヘイロー)』初めてプレイした時の感激」を描く
正直なところ、記者はデモを見て逆に『Halo 4』のストーリーに対する謎がますます深まってしまった。『3』で人類と和解したはずのコヴナントはなぜ再び襲ってきたのか? そして、最後に見えた惑星はどこなのか? これらの疑問は記者に限らず、デモを見たすべての人が感じたことだろう。しかし、343 Industriesはまだソレを明かすタイミングではないと考えているようだ。記者は今回のスタジオツアー中、複数のスタッフにインタビューを行ったが話題がその方面へ向かうと、途端に彼らは口を閉ざしてしまう。一方で、ホムルス氏によるプレゼンテーションからは、いくつかのヒントを得ることができた。
ホムルス氏は本作のキャンペーンモードを「『Halo(ヘイロー)』シリーズが持つ壮大さ、シリーズを初めてプレイしたときの感激を再び感じられる」内容にしたいと話す。その過程でマスターチーフは「新しいワールドの探索と克服すべき新たな脅威。これまで経験したことのないチャレンジに直面し、その人格を試されることになる」のだという。つまり本作の物語は“マスターチーフ”というキャラクターを、いままで以上に掘り下げることが目的とも言える。この点についてホムルス氏は「拡張版に出てきたキャラクターを加えることで、チーフおよび彼とコルタナの関係を浮き彫りにしていく」と説明。チーフとコルタナの会話で幕を開けるストーリー構成からも、そのコンセプトをうかがい知ることができる。
敵の存在についてもホムルス氏は言及している。まず、「コヴナントはひとつのエネミークラス」と同氏は語っているので、デモで登場したのはコヴナントで間違いないだろう。気になるのはホムルス氏が“ひとつのエネミークラス”という表現を使っている点。つまり、ほかにも敵勢力があるということだ。その詳細についてここでは明らかにされなかったが、スタジオツアー終了後に届いた最新情報で、新たなエネミークラスの住む世界が“Requiem(レクイエム)”と呼ばれていることが判明した。Requiem(レクイエム)は多数の異なる環境を特徴としており、物語を象徴する存在になるという。コヴナントはRequiem(レクイエム)の住人と手を組み、再び人類と対立したのかもしれない、あるいはコヴナントとRequiem(レクイエム)の争いにチーフが巻き込まれた可能性もある……物語の根幹に関わる部分なので、続報が非常に待ち遠しいところだ。
フランク・オコナー氏へのインタビューで新たな武器に関する情報も
デモが公開されたものの、まだまだ謎が多い『Halo 4』のキャンペーンモード。本記事の最後では、同作のすべてを知るフランチャイズ デベロップメント ディレクターのフランク・オコナー氏に行った、キャンペーンモードに関するインタビューの模様をお届けする。
――ゲームの開発状況はどれくらいでしょうか?
フランク すべてのステージが遊べる状態にはなっています。ただし、今日見てもらった部分に関しては、デモのために多少磨きをかけているところもありますが。テクノロジーレベルの作業はほぼ終了しているので、今後はゲームバランスの調整やブラッシュアップが中心となっていくでしょう。
――キャンペーンモードにおける敵は何者なのでしょうか?
フランク 敵はひとつのクラスだけではありません。また、コヴナントはストーリー面で重要な役割を演じることになるでしょう。そして新しいエネミークラスは、ストーリーだけでなくゲームの作りにも大きな影響を与えることになります。
――新しいエネミークラスの登場で、プレイ感覚も変わるということでしょうか?
フランク そのとおりです。戦いかた、利用するツール、武器も大きく変わるでしょう。
――新たな武器について教えてください。
フランク 詳細はまだ話せませんが、当然新しい武器はたくさん出てきます。新武器のボリュームは過去最大かもしれませんね。なお従来までの武器もありますが、一部は採用していません。
――マスターチーフは、新たなエネミークラスが持つ武器も使えるのでしょうか?
フランク 武器の使用に関してはいままでと同じ仕様なので、エネミーが落としたものはすべて使えますね。
――人類の武器、コヴナントの武器、新エネミーの武器、計3種類が存在するということでしょうか。
フランク それは正しい推測です。ただし、少しだけそれに付け加えるものがあります。
――キャンペーンの冒頭で落下物を避けながら壁を登るシーンがありました。シネマティックな演出の狙いは?
フランク マスターチーフの運動能力を正確に見せるという狙いがあります。また、キャンペーンモード内ではああいったシーンが複数あるので、チュートリアル的な意味も込められています。
――ジョンソン軍曹のような、ユーザーに強烈な印象を残すキャラクターは本作でも期待できますか?
フランク それを判断するのはユーザーの皆様ですが、新しいキャラクターはたくさん登場します。また、それほど数は多くありませんが前3部作のキャラクターもマスターチーフとともに帰還するでしょう。
――“Halo”は出てくるのでしょうか? 前作『3』でフラッドとコヴナントの脅威は解消され、Haloの存在意義もなくなったと思うのですが……。
フランク ストーリーのポイントになる点なので、いまはまだ明かせません。ちなみに、『3』で破壊されたHaloはひとつのみです。宇宙にはいまだ6つのHaloがあり、それらはいつか対処しなくてはいけないものとして存在しています。
――“Halo Fest”などで、シリーズの“リブート(再起動)”をするという発言をしていましたが、本作で大胆に変えた部分と、変えてはいけないと思っている部分を教えてください。
フランク まず、キャラクターやストーリーといったものの世界観、時間的な継続については変えていません。これらは『Halo(ヘイロー)』ユニバースのコアな部分ですからね。一方で、ストーリーの語りかた、ゲームプレイについては新たな切り口を探求しています。とは言え、リブート(再起動)という言葉については慎重に扱おうと考えていますね。