2012年6月28日の正式サービス開始に向けて開発中の、カプコンの新作ブラウザゲーム『鬼武者Soul』。自分だけの城下町を発展させ、武将を育成し、敵対勢力と合戦をくり広げる本作の見どころや魅力とは? プロデューサーの杉浦一徳氏に話を聞いた。
コンセプトについて
──『鬼武者Soul』のコンセプトについて教えてください。
杉浦一徳(以下、杉浦) まず、自分で好きなように城下町を作れる育成シミュレーションの要素があります。『鬼武者』ですので、幻魔陣営だったらオドロオドロしくて、鬼陣営だったら鬼武者の世界観が感じられる雰囲気、人陣営の場合はふつうの城下町が作れて、成長も楽しめます。
もうひとつは、武将を育てることに力を入れています。このふたつは大きく分けるとシミュレーション部分の要素で、それ以外に、クエストやストーリーも展開するアドベンチャー部分の要素も用意しており、ブラウザゲームとしては、相当リッチな作りになっています。
クエストを進めていくと幻魔に会ったり、何かイベントが起きることもあります。合戦では、声優さんのボイスで決めゼリフを言うなど、演出も派手ですね。このほかにも、オンラインならではの万単位の人たちと楽しめる要素を入れていきたいと思っています。
──城下町はどのようなものですか?
杉浦 自由にカスタマイズできる城下町ですね。生産力を上げて、建物を作るなど発展させていく楽しみがあります。城下町はかなり凝っていて、デザインもワンパターンではありません。本作は47都道府県から好きな所属国を選んでスタートするのですが、たとえば、沖縄県はお城が首里城になっています。ちなみにナビゲーター役の小姓も登場し、陣営によって違いがあるのですが、沖縄県だけは琉球王朝の特色をいかして別に作り起こしています。
また、最初に47都道府県を選ぶと、その県の代表的な武将がもらえます。青森県だったら南部晴政だったり、新潟県は上杉謙信など、その国の代表的な武将を用意してあります。ほかには静岡県には富士山があったり、滋賀県には琵琶湖があったりと、城下町の背景にもこだわっていますね。
また、建てられる城は、現存している日本の国宝級の場合には、進化していくとそのお城になるようにしてあります。兵庫県だったら姫路城、滋賀県だったら彦根城です。このようなご当地要素をふんだんに入れてあります。自分の好きなお城があったら、その県を選んでスタートするのもいいですし、自分の地元で選んでみようなど、ご当地要素を楽しいんでほしいなと思っています。
全体の流れとしては、まったりと城下町を育てていって、育ったらクエストをやってストーリーを進めながら、資材や武将などのリソースがある程度蓄えられてきたら隣国を攻めてみたり、東西に分かれて戦う大規模な合戦イベントに参加してみたりという形です。
──城下町は時間経過や勝敗で劣化しますか?
杉浦 劣化しません。劣化したりするとやる気をなくしたりする方もいると思うので。城下町がどんどん成長したら、2個目の城下町を育てていくことも可能です。現在は追加アップデートで実装する予定です。
──ほかのユーザーの城下町を見ることは可能ですか?
杉浦 見ることもできますし、お友だち用の設置物もあって、クリックしてもらうと育つというような建物もあります。友だちの城下町に行くことはぜひやってもらいたいですね。そこでのコミュニケーションも日課にしてほしいです。
──離れた県のユーザーの城下町へ行くことは可能ですか?
杉浦 できます。フレンド登録は県で縛っておらず、検索すれば可能です。なので、距離が離れていても行くことができます。
合戦やクエストについて
──武将はどれくらい登場しますか?
杉浦 武将は400人くらい最初に投入する予定で、さらにご当地武将が250人ほど登場する予定です。ご当地武将は、その県に住んでいて戦国時代のマニアじゃないと知らないような超マニアックな武将です(笑)。ご当地武将はほかの武将と違って、同じ武将でもレア度がいろいろあるので、やればやるほどすごいご当地武将が手に入るかもしれません。絵柄については、武将ごとに20~30パターン用意してあって、そんなにかぶらないようにしてあります。(本記事下部でさまざまな武将を紹介)
──合戦とはどういうものですか?
杉浦 合戦は基本的に隣国としかできません。因縁のある県どうし、ぜひ戦ってほしいですね(笑)。県単位でコミュニティーが形成されていくと思うので、ほかのオンラインゲームやソーシャルゲームとはコンセプトが違います。地方出身の私だからこだわったって感じですね(笑)。
ただ、青森県の人が沖縄県と戦いたいとか、東京都の人が大阪府を攻めたいとかあると思うので、東西に分かれても”天下分け目戦”の大規模イベントでは戦えるようになっています。また、鎌倉の大仏や、京都の清水寺など、ご当地設置物を用意してあります。これは、その県と戦って勝たないと手に入りません。鎌倉の大仏が欲しかったら神奈川県を攻めて合戦で勝つ必要があります。
──クエストとはどういうものですか?
杉浦 クリアーするとアドベンチャーゲームのようにどんどんストーリーが進んでいきます。せっかく『鬼武者』という世界感があるので、ダークファンタジーのテイストを持つ戦国仕立てのストーリーにしていこうかなと思っています。もともとの『鬼武者』は、プレイヤーが鬼武者として進めていくストーリーなので、本作のように人陣営でも鬼陣営でも幻魔陣営でも遊べる設定だと矛盾がでてしまうんですね。
ただ、もともとの『鬼武者』ファンの方々に根付いたストーリーを勝手にいじるのもどうかなという思いもありましたので、信長がギルデンスタンと契約して復活したところから完全に『鬼武者』と『鬼武者Soul』のストーリーを切り分けた形になっています。基本的にオリジナルのストーリーになっていますが、信長や秀吉といった重要人物のイメージはできあがっているので、それは壊さないように登場させたり、からませていきます。
『鬼武者』のボスキャラクターはストーリーの途中で重要な意味を持って出てきたり、クエストで突然割り込んでくるようなレイドボスという形で出てきたりもします。
県ごとの人数差や交流について
──県ごとに人数差ができてしまうとゲームバランスへの影響も出てきてしまうと思いますが、どのように調整していますか?
杉浦 まず、県ごとにランキングを設けてあります。人が多いところほど競争率が激しい状況になるので、そこをどうユーザーさんが判断するかというところですね。合戦に関しては、人数差で勝ち負けが簡単に決まらないように、偏差値的なランキングを入れようと考えています。
──ギルドは同じ県の人どうしで組むのですか?
杉浦 そうです。同じ県の人としか組めません。その県のなかでコミュニティーを作っていって、隣県に戦をしかけるというシステムになってます(笑)。チャットはルームを作るシステムを採用しているので、他県の方と話したりとかメールのやり取りはできるように考えています。また、オンラインゲームなので、掲示板がもっとも利用されると思っています。これについては県ごと、ギルドごとに用意する予定です。どちらかと言うと、他県との交流はわざと薄くしていますね。
──友だちといっしょに始める場合は同県や隣県でないと交流ができない?
杉浦 同じ県でないと厳しいですし、隣県だと戦い合う関係になりますね(笑)。好きな県を選択して始められますし、亡命システムも入れようと考えているので、ライバルが多すぎてランキングが厳しいなと思ったときには亡命してほかの県に移るのもいいかもしれません。
ゲームシステムの詳細について
──1日で実行できるコマンドに制限はありますか?
杉浦 コマンドはポイントを消費して実行するシステムです。現在調整中でして、“戦国体験 初陣”(期間限定のテストプレイ)のあいだは、あまり制限をかけずに、プレイヤーの皆さんの動向を分析してみようかなと思っています。
ただ、無料の場合は最初のうちはサクサク、だんだん待ち時間が出てくる感じになるでしょうね。内政、合戦、クエストと多数のコンテンツに分かれているので、待ち時間でもほかのことがいろいろできるようになっています。
──陣営についてですが、人間、鬼、幻魔で違いはありますか?
杉浦 都道府県ごとに陣営が決まっていて、同じ陣営の県は攻められません。
うまくバランスをとって陣営を配置していますが、意図的に極端な配置にしている場所もあります。たとえば人口の多い大阪はまわりが別の陣営ばかりになっていて、まわりから攻められやすく、あえて包囲網が敷かれているようになっています。
また、自分の陣営と同じ武将を使うとボーナスがつく予定です。幻魔陣営だったら幻魔武将にボーナスがつく感じです。ほかには城下町の建物のグラフィックの差、陣営で分かれる大規模イベントなどの違いがあります。
──武将の能力はどのようなものがありますか?
杉浦 攻撃、防御、知略の3種類と凄くシンプルです。多くするとシミュレーション慣れしていない人にはわかりにくくなってしまうので、3つに絞りこみました。攻撃は、クエストで武将や幻魔と戦うとき、合戦のときに参照されます。逆に防衛するときには防御、内政するときには知略が大事になります。
ただ、クエストには、防御や知略が重要になるものもあります。そのため、クエストごとに軍団を組み替える必要も出てきます。ひたすら攻撃だけを高めてもクリアーできるわけではありません。最低でも15人くらいは育てる必要があると思います。
武将にはグレードが10段階(イラストは4段階)あって、どんどん進化していきます。グレードが3になると技が使えるようになるので、慣れてきたところで技を使ったやりこみ要素を味わってもらおうかなと思っています。技は武将を手に入れた時点でいくつかあるなかからランダムでつきます。相当やり込む方はいい技がつくまで入手をくり返すかもしれませんね。
武将の育成には、強化、進化、継承の3つがあります。いちばん簡単なのが強化で、あまっている武将を生贄に捧げると経験値になって武将レベルを上げられます。武将レベルが上がっていくとグレードごとに定められたレベルでカンストするので、そこからはグレードを進化させて再びレベルを上げていくようになります。
進化には、同じ武将を生贄に捧げる必要があるので、レアな武将だと、進化は難しくなります。逆に入手率の高い武将の場合は、サクサク進化させることができます。
──武将のパラメーターは自分で割り振っていくシステムですか?
杉浦 自動的に上昇していきますが、自由にパラメーターが割り振れるアイテムを用意する予定です。どんな武将でもパラメーターが上限まで上がるようになっているので、弱い武将を最強に育てるという楽しみ方もできます。当然、もとから強い武将を育てるほうが手間も時間もかからないですけどね。
ただ、もうひとり引き当てないと進化ができないシビアな辛さもあります。また、技に関しては強い武将だから強い技がつくとは限りません。意外と弱い武将に強い技がついていたりします。それを技継承で移すこともできますが、技ごとに継承しやすさがあるので、簡単には成功しないようになっています。
──武将はどのように入手するのですか?
杉浦 基本的にクエストでたくさん入手できます。そのほかに、本作はコレクションできる家宝が多く出てくるんですが、その家宝をコンプリートすると武将やアイテムが手に入ったりもします。
隣国を攻めると、ご当地アイテムが手に入って、それをいくつか集めると相手の県のご当地武将が手に入ったりもします。また、武将と武将には"役"があって、たとえば前田利家と前田まつを揃えると”前田夫婦”という役がそろって報酬が手に入ったりします。あとは何枚かの武将がランダムで手に入る、「MHF」で言うところのブースターパックタイプのアイテム販売も予定しています。
──ゲームの大きな目的はなんですか?
杉浦 ひとつは自分なりの城下町を作ること。配置換えも好きにできるので、カスタマイズはいくらでも自由にできます。スクリーンショット機能もつけてますので、見せ合うこともできますよ。もうひとつは、自分の愛着のある武将を極限まで育てて強くすることですね。このふたつが大きな目標になると思います。
このほかにこちらが用意した、クエストやイベント、ストーリーを楽しんでもらえればなと思っています。もちろんランキングもありますからランキング上位も目指せます。
──一定のタイミングで城下町がリセットされる仕様なのでしょうか。
杉浦 いいえ、リセット要素は入れていません。私たちが苦しむ方を選びました(笑)。この件は最初の会議で出たいちばんの課題だったんです。
──リセットがない場合、新規のユーザーが入りにくいという懸念もありますが。
杉浦 ギルドでガチガチの排他的なコミュニティが築かれてしまったり、無差別なマッチングの対人戦だけが楽しいゲームの場合はそうなってしまいますが、本作の場合は、それ以外の楽しめる要素を多く用意しています。城下町だったらマイペースで作れますし、ストーリーも自分のペースに見合ったものを進行していけますし、あとから始めたからといって楽しめないゲームではありません。
唯一心配なのが合戦ですが、こちらは同じレベルくらいの相手を選べるようになっているので、弱い者いじめは起きないと言えますね。あとから始めた人でも、自分と同じくらいの状況しか視野に入らないようになっていて、だんだ
ん視野が広がってできることが増えていくようになっています。
また、ギルドに関しても縛りがそこまで強くはないので、ギルドに入らないと絶対遊べないとか、コミュニティーでがんばらないと恩恵がないという形にはなっていません。ですので気軽に遊べると思います。
ただ、ギルド専用の町は用意してあります。ギルドマスターの負担を軽減するためにカスタマイズは極端にできないようにはしてあるんですが、育てていけばパーツが解放されていく作りになっています。みんなでリソースを出し合って成長させていく町です。
──課金について教えてください。
杉浦 課金方式は、武将の入手に関しては、いわゆるガチャではなくて、何枚かの武将をセットにして販売する、『MHF』でいうブースターパック方式を検討しています。入手確率がわかりやすいほうが私は好きなので、その方向で考えています。
──消費アイテム系の販売はありますか?
杉浦 時間短縮のアイテムは販売しようと考えています。あとは武将を育てるアイテムですかね。マニアックな武将をお金をかけてでも育てたいという人には需要あるかなと。
――最後に読者へメッセージをお願いします。
杉浦 ひさしぶりに戦国時代の小説をたくさん読んで、鬼武者もやりこんで、いろいろ研究しました。そういう意味では、戦国ファンも鬼武者の世界観が好きな方も満足できるクオリティに仕上がったと思います。
また、戦国時代や鬼武者を知らない人でも気軽にスタートできるように配慮もしました。敷居は低く、奥が深いゲームになるよう努力はしました。後は、プレイヤーの皆さんの意見をたくさん取り入れて、プレイヤーの皆さんと一緒に作っていきたいと思っています。是非、『戦国体験 初陣』に参加してください。日本一の戦国シミュレーションRPGを目指します!
(C)CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED.
※ゲーム画面・画像は開発中のものです。