Vol.25 板垣伴信×小林裕幸スペシャル対談(1)

本誌1月号~3月号で実現した、『鉄拳』シリーズの原田勝弘氏との対談に続き、またしても意外(?)な人物との対談が実現! 今回のゲストは、『ドラゴンズドグマ』などさまざまなタイトルをプロデュースするカプコンの小林裕幸氏。ふたりの"不仲説"は本当なのか……?

“Valhalla FREAKS”ヴァルハラゲームスタジオ公式連載 ファミ通Xbox 360【5月号】_01
板垣伴信(左)
Valhalla Game Studios
代表取締役 最高技術責任者(CTO)
兼ゲームデザインリード

小林裕幸(右)
株式会社カプコン
CS開発統括 副統括 兼 編成部 部長
プロデューサー
“Valhalla FREAKS”ヴァルハラゲームスタジオ公式連載 ファミ通Xbox 360【5月号】_02

■『鉄拳』の原田氏に引き続き"不仲"なはずの小林氏が登場!

――今回って、板垣さんのご指名なんですよね。板垣さんがこういった形で小林さんをご指名するとは……。

板垣 僕はケンカを売られると買ってしまうじゃないですか(笑)。読者の方は、僕と小林さんが険悪な仲なんじゃないかと思っているんでしょうね。『鉄拳』の原田さんに関しては、以前の対談で真実をわかってもらえたと思うのですが、やはり真実を伝えていきたいという気持ちはありますよね?

小林 そうですね。誤解は解きたいですね。僕も板垣さんと2年前にお会いして、誤解が解けてよかったです。あれは兼松さんの誕生会のときでしたね。兼松さんの「ああ、キミが小林君か」から始まったんですよ(笑)。

一同 (爆笑)

小林 その誕生会に板垣さんもいらっしゃって、僕が呼ばれたんですよね。そのときに、「あ、僕のことを知ってくれているんだ」と驚いたんですよ。僕は一方的に、テクモ時代から板垣さんのことは存じ上げていたんですけど。

板垣 もちろん知っていますよ。だって、E3とかでも会っていますよね?

小林 会場では見かけていますけど、お話しする機会はありませんでしたね。

板垣 その当時のE3は、カプコンの方々がドワーッといっぱい来ていましてね。僕なんかは、ひとりでどこでも行ってしまうタイプなので、カプコンの方たちのところに行って。でも、もしかしてそのときお会いしたのは、小林さんじゃなかったかな?

小林 僕は会っていないですね。三上さん(三上真司氏。TangoGameworks代表取締役)との取材のときはいっしょに仕事していたんですけど、たまたま同席したことはなかったんですよ。でも、板垣さんの話は、三上さんからも聞いていましたね。

板垣 E3でお会いしたのは、明らかに三上さんではないんですよね。そのときは僕がひとりでカプコンの方々のところに行って、「カプコンの皆さんですか」と。で、握手をして、「西のカプコン、東のテクモだ。アクションを作っているどうし、お互いがんばろう!」と言った記憶はあるんですけど、それがなぜかケンカしたことになっていて(笑)。

一同 (爆笑)

板垣 あのときも、何度かやり取りがあったんですよね?

小林 あれは、アメリカのプレスの人に、板垣さんがいろいろ話したことを聞かされて、それに対して僕が発言したら、お互いケンカしているという方向に持っていかれたんですよ。

――ああ、原田さんのときとまったく同じパターンじゃないですか(笑)。

小林 そう。いっしょですよ。『デビルメイ クライ 4』と『NINJA GAIDEN』のバトルになって、なぜか盛り上がっていたんですよね。

板垣 でも、原田さんの場合は、ラジオが発端ですからね。

――もとはそうでしたね。

板垣 ただ、その後ガソリンをどんどん注いだのはマスコミですけどね。で、ウチの兼松の誕生日に、小林さんがいらっしゃったときに、ずっといっしょに飲んだんですよ。僕らは飲むと、業界の仲間ですから。サバサバしていますよ。

――じゃあ、もう何度も飲んだりしている仲なんですよね。

小林 そうです。

板垣 なんか、疑似家族みたいな感じですよね。だから、おもしろいです。

――……今回は、あっけなく誤解が解けたというか、真相がわかってしまったようですね(笑)。つまり、仲が悪いというわけではなかった、と。

小林 もともとで言うと、お会いしたことがなかったんですよ。お互いしゃべったことが、海外のプレスにいいように取り上げられて、ケンカ状態ってことにされていたので……。取材が終わって日本に帰るじゃないですか。そうしたら、『デビル メイ クライ 4』のメンバーから、「小林さん、何言っているんですか!」と言われて。「何のこと?」って聞いたら、ケンカになっているふうに書かれていると聞かされて、「怖っ!」って(笑)。

板垣 そうだったんだ。いや、だから僕も、記事を見てカチンときて(笑)。まあ、マッチポンプで仕込まれたわけですね。

――そういうことになりますね。

板垣 まあ、まだ若かったし(笑)。

小林 でも、当時を振り返ると、アクションゲームで切磋琢磨して盛り上がっていた時代だったと思いますよ。

板垣 まさにその通りですね。

小林 いまは逆に、そういうのがないじゃないですか。業界全体が盛り上がっていないようにも思うので、寂しさもありますね。いい意味で、もっと若い子たちはケンカしてほしいですけどね。

板垣 ですよね!

――あまり接点がないんですかね?

小林 話題がないじゃないですか。タイトルとタイトルの話題が。コラボとかで盛り上がるというのはありますけど、それぞれががんばっているタイトルどうしが競い合って、みたいなものが。ウチも『ストリートファイター』と『鉄拳』という格闘ゲームがそれぞれあって、いまはコラボしていますけど。

板垣 あれは2Dと3Dじゃないですか。だから、コラボであり、かつシナジー効果がありますよね。あれはよかったと思いますよ。そうそう、原田さんと、カプコンの小野さんのコントを見ていると、死にそうになりますよ(笑)。

一同 (爆笑)

小林 お似合いコンビですよね(笑)。

――ホント、おもしろいですよ。

板垣 あれ、仕事していないでしょ? 遊んでいますよね?

小林 たぶん遊んでいると思います。

――いやいや、プロモーションの一環として、じゃないですか?

小林 そういう理由で、女の子をはべらかしているだけですから(笑)。

“Valhalla FREAKS”ヴァルハラゲームスタジオ公式連載 ファミ通Xbox 360【5月号】_03

■小林氏プロデュースの完全新作『ドラゴンズドグマ』の出来映えは?

―― 気づいたら、いつものアレ(酒)がテーブルに並んでおりますが……。

板垣 そうですね。喉もかわいたので、飲みながらやりましょうか。小林さんは梅酒がお好きと聞いたので、梅酒を用意しておきました(笑)。

小林 ああ、すみません! ありがとうございます! 梅酒好きなんですよ。

板垣 じゃあ、乾杯!

小林 乾杯!

――じゃあ、酒も入ったことですし、本日板垣さんが小林さんをお呼びした理由を語っていただきましょうか。

板垣 そりゃ、皆さんにケンカ報道の真実を知っていただこうと……。

――それは先ほどお聞きしましたよ。それじゃあ、もう今日の取材が終わってしまうじゃないですか(笑)。

板垣 (笑)。

小林 もう終わり(笑)。

板垣 まあ、さっきお話しされていましたけど、勢いのある若い人がいなくなっていますけど。原田さんも同じようなことを言っていましたよね。じつは、こうやって仲よく集まって飲んでいるというのを、読者の皆さんは知らないと思うんですよ。去年の3・11のときも、カプコンさんを始め、関西の企業さんにはいろいろと助けていただいたんです。ほら、ヴァルハラの全社員を避難させたじゃないですか。そこでいろいろとお世話になりましてね。まあ、夜は毎晩のように飲んでいましたけど(笑)。僕は危機管理能力には長けていると思っているので……お酒を飲まなければ、ですけど(笑)。だから去年も、最悪のケースを考えてすぐに社員を避難させたわけですけど、何十人もの社員を助けてくれるなんて、横のつながりがなかったらありえないですよ。本当にありがたかった。そのお礼を、公の場で言いたいという気持ちもありましたね。

――なるほど。

板垣 じつは、これは読者の皆さんは知らないことですけど、今回の取材を、1ヵ月延ばしていただいたんですよね。ちょうど僕が、海外に行くことになってしまったので……。その結果、小林さんの『ドラゴンズドグマ』のマスターアップ直前という、とても大事な時期に来ていただいてしまって……。本当にありがとうございます。

小林 いえいえ。

板垣 どうですか? 『ドラゴンズドグマ』は?

小林 もう、いい感じに仕上がってきています。ディレクターの伊津野とも話したんですけど、最初に書いた企画書通りに上がってきてはいますね。けっこういいスタッフで、社内では100人くらいの規模で作っていたんですけど。

板垣 100人ですか。

小林 外部のスタッフも加えると200人くらいですけどね。けっこう予定通りに上がってきて、あとは皆さんに遊んでもらって、どういう評価をされるか、というところですね。

板垣 それにしても、企画書通りというのはすごいですね。僕は1回も企画書通りになったことがないので(笑)。作っていくうちに、変えたくなったり足したりしちゃうんですよね。わりと企画書通りになるものですか?

小林 伊津野は、『デビル メイ クライ4』のときも、最初の企画のときにつかんで投げるというアクションを入れていたんですけど、企画のときに手描きのフラッシュアニメで作った、その通りのアクションができました。最初のコンセプトをしっかりと実現できるタイプですね。ウチのディレクターが全員できるというわけではないですけど。

板垣 ああ、わかった。いわゆる柱の部分、ここでお客さんに楽しんでもらうというところがキッチリと実現できた、と。

小林 そうですね。まあ、若干企画から落としたところはあるんですけど、だいたい企画書で考えた通りのゲームには仕上がっています。だいぶ苦労はありましたけどね。

板垣 ゲームの柱の部分が変わっちゃうと、開発期間が延びて、たいへんなことになっちゃいますからね。

小林 ええ。カプコン初のオープンワールドというものを作ろうというのは、企画書を見たときに「できるかな?」と思ったんですけど、チャレンジしようと。その結果、いい感じに仕上げることができましたし、仲間のキャラクターで"ポーン"という種族のパートナーを作るんですけど、ポーンのエディット機能も、ふつうに髪型や顔のほかに、傷を入れたりメイクをしたりといったことも、かなり細かくできます。オープンワールドのゲームとして、いろいろなものが用意できたと思います。

板垣 読者の皆さんはわからないかもしれないけど、おそらくマスターアップ直前なはずなんですよ。この時期にプロデューサーがこの場にいるということは、本当に部下を信頼しているということだろうし、このままのデキで発売して、ユーザーの皆さんに楽しんでもらいたいという、自信の裏返しだと思うんですよ。本当にすばらしい! まあ、僕もいつも部下に任せていますけど、お互い、部下への信頼がないと務まりませんよね。

→次号に続く

●表紙:『ドラゴンズドグマ』
本誌読者にも非常に人気が高いこのタイトルが表紙! 5月24日発売予定の『ドラゴンズドグマ』は誌面でも最新情報を掲載。ディレクター伊津野英昭氏のインタビューもあり!

●特別付録1:『Kinect スター・ウォーズ』 "オーラ・シング" ダウンロードコード
4月5日発売のKinect専用ゲーム『Kinect スター・ウォーズ』の"ジェダイ デスティニー"モードで使用可能なキャラクターのダウンロードコードが本誌だけの特別付録で入手可能!そのキャラクターは"オーラ・シング"。『エピソード1/ファントムメナス』に登場した賞金稼ぎだ。このチャンスを逃すな!
※本コードは、2012年4月5日よりご使用いただけます。

●特別付録2:NINJA GAIDEN 3 攻略ガイドブック
3月22日発売『NINJA GAIDEN 3』を本誌では特別付録で徹底攻略!敵キャラクター別に倒し方を伝授、NINJA TRIALSもミッションごとにその攻略法をお届け!

●特集:日本人クリエイターによるKinectの作りかた
日本マイクロソフトより、Xbox11 件 LIVE アーケードでKinectタイトルが3本リリース。どれも日本の開発スタジオによる、日本人クリエイターのゲームだ。Kinect専用ゲームとして、どのような経緯で各タイトルは生まれたのか……。タイトルごとプロデューサーとディレクターに出席していただき、Kinectへの熱き思いを語ってもらった!

●新作&攻略ゲーム
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