ちょっとしたトレンドのドット絵ゲーム

 世にコンピューターゲームが現れて数十年、ハードの性能向上とともにゲームの映像はどんどんリアルに向かっていった。……が、最近になって過去の技術である“ドット絵”で描かれたゲームが再びポツポツと登場し始め、一定の市民権を得ている。有名どころではPSPの『勇者30』やプレイステーション3の『3Dドットゲームヒーローズ』、Wiiウェアで配信された『洞窟物語』(大本はPCゲームだけれど)、もっと視野を広げればPCのインディーズゲーム『Minecraft』や『Terraria』、さらにはiPhoneで配信されている『Tiny Tower』など、国内外問わず数々のドット絵作品が開発され、ヒットしているのだ。

 そんななか、新たにドット絵ゲームの新星がXbox LIVE アーケードで登場した。その名は『Fez(フェズ)』、カナダのインディーズ系ディベロッパーPolytron Corporationが、じつに5年の歳月をかけて開発した意欲作だ。

 「まあドット絵はかわいいけど、けっきょくよくあるアクションゲームなんでしょ?」なんて感想はちょっと待った! じつは『Fez(フェズ)』のキモは、そのドット絵ではなく、斬新なゲームシステムにあるのだ。

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▲海外産のゲームだけれど、いわれなければ気づかない、ホンワカとした外観の作品だ。

立体的だけど“見た目通り”に移動できる不思議な世界

 本作の主人公は、全身真っ白のゴメズくん。あるとき金色の大きな6面体に出会い、赤い帽子を手に入れた彼は、この世界が“立体”であることを知る。だが同時に、大きな6面体はバラバラに砕け散ってしまった。目覚めたゴメズは、"ドット”という不思議な光のお供(?)とともに、世界を巡って6面体の一部であるキューブを集めていく……というのが本作の目標だ。

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▲帽子をゲットしてご満悦のゴメズくん。ゆるキャラテイストなデザインが昨今の流行なのか……?
▲金色の小さな四角い物体がキューブの破片。これを8つ集めるとキューブになる。ひとまず32個のキューブを見つけるのが目的だ。

 世界の仕組みを知ったゴメズは、以降はRトリガーまたはLトリガーで世界をクルクルと90度ずつ回転できるようになる。そのままでは見えない横側にある扉や、裏に隠されていた欠片を発見できる、というワケだ。

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▲これまで二次元に見えていた世界は、じつは3Dで作られていたのだ!

 これだけでも探索がおもしろそうだが、じつは本作のすごいところはここから。世界は立体的に作られているが、じつは"移動できる部分は真横から見ただけの状態で判断される"という仕組みなのだ。……と言葉で説明してもちょっとわかりにくいので、連続写真で解説していこう。

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▲(1)右上に足場があるが、ジャンプでは届きそうにない。
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▲(2)そこで、時計回りに90度回転させてみると……
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▲(3)さきほどの場面を右側から見た状態になり、遠くの足場が近づいて移動できるように!

 立体的に考えると移動できない状況だが、本作では問題なく移動できてしまう。この特性を活かして、さまざまなトラップを突破していく快感が、本作最大の魅力なのだ。

各地にちりばめられた謎を解き明かそう!

 本作にはマップを回転させて解決する以外にも、多彩な謎が用意されている。たとえば、各地で見つかる鍵がかけられた扉。開けるためには、どこかで鍵を見つける必要がある。また探索を続けるなかで、4種類の道具や“お宝マップ”が見つかることも。これらは発見してもすぐ役立つわけではなく、使いかたから見つけなければならない。解決法を見つけるのは難しいが、アレコレ試行錯誤して正解にたどり着いたときのスッキリ感は格別だ。

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▲さまざまな場所で見つかる"お宝マップ"。いったい、何を表しているのやら……。

 このほかにも、巨大な謎の遺跡や不思議な壁画など、この世界に眠る謎を挙げだしたらキリがない。さらに、通常のキューブよりも見つけにくい"アンチキューブ"が隠されているなど、その全貌を解明するにはかなりの歯ごたえを感じるだろう。

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▲つねにこちらを向き続ける、巨大なフクロウの像。いったいどんな仕掛けが?
▲ある小部屋に描かれた謎の模様。携帯電話関係でよく見かける、あのコードに似ているような……?

ここはいったい何だ!? 好奇心をくすぐられる世界観

 もうひとつ筆者が魅力的に感じたのは、本作の世界観と演出だ。たとえばゲーム序盤で大きな6面体が壊れたとき、画面上にはいびつな数字が飛び交い、サウンドも途切れ途切れになって、まるで8ビットマシンでバグったかのような状態に。そのあと画面は一度真っ暗になり、PCが起動するときのBIOSのような画面が表示され、なんと本作のタイトル画面に戻ってしまうのだ。

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▲ゲーム中、いきなりこんな画面になったらビックリしますって!
▲そしてPC起動時に見かけるような画面に。つまり世界が再起動した、ってことを表している?

 もちろん本当にゲームがバグってしまったわけではなく、こういう演出。だが意外すぎるこの内容から、じつはゴメズたちが住んでいる世界はコンピュータの内部なのか?、ソフトウェアとして作られた町なのか? だからこの世界の住人たちはドット絵なのか?……なんてアレコレ想像してしまう。

 じつはこの謎の答えは、本編をクリアーした現在でもイマイチ不明。それどころか、さきほど述べた道具も4つのうちひとつしか入手しておらず、さらにはその使い道すらわからないままだ。

 さまざまな謎解き要素がおもしろくて、一気にクリアーしてしまった『Fez(フェズ)』だけど、じつは本編のクリアーは単なる通過点に過ぎない。この世界には、まだまだ解明されていない謎がタップリあるのだ! というわけで、仕事が一息ついたら再び『Fez(フェズ)』の世界へと入り浸ろうと思う。もし本作の世界に少しでも興味を持ったら、ぜひとも体験版をプレイしてほしい。きっとすぐに、その魅力がわかるハズ!

著者紹介 喫茶板東
ファミ通Xbox 360で海外ゲームマニアックス、実績解除愛好会などを担当するフリーライター。ゲームはスポーツ以外ならどのジャンルでも好んでプレイ。『Fez(フェズ)』は以前から気になっていた作品だけど、期待通りの完成度で非常に満足でした!


『Fez(フェズ)』
メーカー 日本マイクロソフト
対応機種 X360Xbox 360
発売日 2012年4月13日
価格 800 マイクロソフトポイント
ジャンル アクション& アドベンチャー, キャラクター アクション, パズル & 雑学クイズ
備考 開発元 : Polytron Corporation