ときに姫との淡いロマンスを楽しみ、国家再建を進める……

 2009年にWiiで発売された名作RPG『王様物語』のストーリーやキャラクターを一新したKONAMIのプレイステーション Vita用ソフト『王と魔王と7人の姫君たち ~新・王様物語~』。国民ひとりひとりをカスタマイズできるなど、遊び応えも増した本作の魅力をライターの戸塚伎一が語る。

なかなかどうしてキュートな一作『王と魔王と7人の姫君たち ~新・王様物語~』インプレッション_04

 亡国の少年王が、わずかに残った仲間ととともに、魔王によって支配された世界を奪還していく──ファンタジー世界を舞台にしたテレビゲームでは比較的ありがちな設定の『王と魔王と7人の姫君たち ~新・王様物語~』。国民を従えてフィールドを歩き回るアクションRPGとのことで、「進め、進め、者ども!!」てな具合に勇ましく戦闘に明け暮れる内容なのかなと思いきや、これがなかなかどうしてキュートなゲームなんです。

 プレイヤーが扮する少年王コロボ(※名前変更可)は、寡黙さと人懐こさを兼ね備えたナイスガイ。ひとりでできるのは、人に話しかけたり、せいぜい剣を振り回すことくらいですが、そこは枯れても王家の血筋。勢力下の国民に命令を下すことで、あらゆる状況に対応できるようになります。命令、といっても小難しさは一切なし。

(1)「そこの国民、親衛隊になって!」
(2)「僕のすぐ後ろにいる親衛隊員、突撃!」
(3)「突撃したっきりの国民、全員戻ってきて!」

 おおよそこの3つと、あとは親衛隊の並び順変更や陣形チェンジを適宜実行すればオーケーです。

 ポイントとなるのは(2)。突撃した国民が何をするかは、職業や突撃先の状態次第です。魔物に向けて突撃させれば、各自の攻撃スタイルに合った間合いをとって攻撃開始、地面の割れ目に農民を突撃させれば穴掘りスタート、建設予定地の看板に大工を突撃させれば橋や階段を作りだす……といった具合に、ひとりひとりが勝手に判断・行動してくれるから、気楽なものです。

なかなかどうしてキュートな一作『王と魔王と7人の姫君たち ~新・王様物語~』インプレッション_03

 親衛隊の最大人数が少ない序盤はともかく、10人以上の国民を引き連れて遠征できるようになると、親衛隊の編成や、戦闘時の指示の出しかた次第で、冒険の手応えがずいぶん変わってきます。このあたり、新要素を学びつつ、段階を踏んで徐々に難しくなっていくので、リアルタイム操作があまり得意でない人も、どうにかこなしていけるでしょう。地形によっては思った形で展開しなかったり、集合命令を下しても引っかかって戻れなくなっちゃったりといった“不測の事態”も多々ありますが、そこは保育園の先生か、はたまた牧羊犬にでもなったつもりでせっせとフォローするうちに、自然と愛着心が芽生えてくるでしょう。

 突進はまた、国民ひとりひとりの生活に深く関わる出来事にも使用します。領土内にある特定の職業を表す看板を掲げている建物の入口の突進させると、強制的職業チェンジ(※費用がかかる場合もあり)。そして、好かれあう男女ペアを教会に突撃させると、結婚して子供ができる……といった具合です。ちょっと横暴な気もしますが、国民にお節介を焼けば焼くほど目に見えて感謝されるので、罪悪感はありません。人々のために尽くすことに喜びを感じる人ほど、本作の世界の居心地はいいと思います。

なかなかどうしてキュートな一作『王と魔王と7人の姫君たち ~新・王様物語~』インプレッション_01
なかなかどうしてキュートな一作『王と魔王と7人の姫君たち ~新・王様物語~』インプレッション_02

 失われた国土を取り戻す、という使命に加えて冒険のモチベーションになるのは、各地に捕らわれている、6人の姫君たち。要所に控えているボスキャラを倒すことで、ひとりずつ解放することができます。単にいずれ劣らぬ美女揃い、というだけでなく、冒険に帯同することで、攻撃力アップや体力回復といった、固有の支援効果を発揮してくれる頼もしい存在でもあります。

 ともに冒険をしていいところを見せたり、拠点にいるときなどに発生するムーディーなイベントで正しい答えを選択していくと、姫の好感度が上がっていく……という恋愛ゲーム的な要素もあります。ともすればベタベタなラブロマンスに進みそうな流れも、ちっとも喋らない(=セリフトテキストがない)少年王のキャラクター性がうまいこと中和していて、あくまでほのぼのムードに抑えられています。恋愛沙汰が大好きなプレイヤーは少々物足りないかもしれませんが、関係の想像が広がるネタは充実しているので、妄想力に自信がある人は、あえて挑んでみるのもいいでしょう(笑)。

 メインクエストを進めるかたわら、つぎつぎと更新されるサブクエストをこなし、所持金をしっかり稼いで王国の設備を整えながら進めること10時間。救助した姫は3人になり、最初は小屋同然だった拠点も2度の改築を経て、だいぶ豪華になりました。ゲームシステム的にも物語の雰囲気的にも進行を急かされることなく、マイペースに進められるのが、本作の大きな特徴といえるでしょう。素直で働き者な国民に囲まれながら、ときに姫との淡いロマンスを楽しみ、国家再建を進める……日常のアクセントとしてプレイするのにはもってこいのタイトルじゃないでしょうか?

■戸塚伎一プロフィール
ファミ通Xbox 360誌でクロスレビューを担当する文章&漫画かき。本作は、姫の声優陣の豪華さばかりがクローズアップされがちですが、男キャラや、キングオニーをはじめとした敵キャラもなかなかどうして実力派揃い。個性的な演技は聞き応えありです!


王と魔王と7人の姫君たち 〜新・王様物語〜
メーカー KONAMI
対応機種 PSVPlayStation Vita
発売日 2012年03月29日
価格 6480円[税込]
ジャンル アクションRPG