2008年にPAXで基調講演を務めたケン・レビン氏率いるIrrational Games。現在『バイオショック インフィニット』を開発中の彼らが、その創造性の源を明かす講演をPAX Eastで行った。
 お題は“Irrational Games: Making a Monster”。大ボスのケン・レビン以下、アートディレクターのネイト・ウェルズ、リードアーティストのショーン・ロバートソン、オーディオディレクターのパット・バルスロップらが登場して語ったのは、どうやって敵キャラクターを作っているか。

『BioShock Infinite(バイオショック インフィニット)』のクレイジーな敵キャラの作りかた【PAX East 2012】_17
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 講演では、スライドで多くのコンセプトアートが披露され、いかに作り込まれていくかを実際に見ることができた。たとえば“Motorized Patriot”。ジョージ・ワシントン人形風の、巨大なマシンガンを持った人形だ。コイツの初期イメージと現在の姿は、もう全然違う。

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 もちろんそのままいい具合にキャラクター化されたものもあるが、基本的にキャラクターをゼロから作るのと、動いても破綻がないよう3D化していくのは全然別の作業だ。「可愛い女の子の写真を見たからって、それで実際デートできるってわけじゃないよな」とレビン氏は笑った。
 そのほかにも、ソングバードや“Siren”など、さまざまなキャラクターのスライドが披露された。そしてレビン氏は、ギジェルモ・デル・トロ監督に言われたことを紹介した。いわく「いいモンスターは、リラックスした状態でもいい具合に見えなきゃいけない」という。

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 アート職がコンセプトイメージを手がけていると、もっとも面白いアイデアが思いも寄らずやってくることもしばしばあるという。たとえば“Boy of Silence”はバルスロップによるアイデアが元になっているのだが、当初は周囲の音を吸収するモンスターだったという。残念なことにゲームにうまく組み込むことができず、現在の形になっているそうだ(大きな“耳”を使いながらステージを周回して、プレイヤーを発見すると叫び出すという、一種の警戒装置になっている)。
 レビン氏の母親がその母にもらった古い陶製の人形からもインスピレーションを受けたそうで、彼はその顔が子供時代たまらなく怖かったそうだ。いわく「ほんっとにすごい嫌だった」。

 とはいえ、創造性が絶賛されるIrrational Gamesであっても、自分たちのやっていることに自信が持てなくなることもあるそうだ。最後にレビン氏はその解決法を明かした。
 「もちろんそれは、恐れないことだ。そして、自分の知っている賢い人々に囲まれていると信じること。そうすればきっとおもしろい何かにたどり着くはずだ」と。

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▲“Handyman”。見た目の通り、腕っ節が強い。

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▲“Siren”の叫びは倒した敵キャラを生き返らせる。厄介!

 Irrational Gamesはこの講演以外にも、『バイオショック』をテーマにしたコスプレイベントをやったり、本作のロゴ入り帽子を配ったりしていた。紙でできた『バイオショック インフィニット』帽子は、PAX Eastのあちらこちらで見ることができた。Irrational Gamesは開発の最後の数マイルにあっても、ファンを楽しませていたいのだ。そしてそれをやるのに、PAX East以上の場所はない。東海岸だから本拠地マサチューセッツから近いしね。(取材・文・写真:ジェイソン・ブルックス、翻訳・構成:編集部)

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