タワーディフェンスに食傷気味な方にこそオススメしたい快作

 栄えある賞を受賞した『Anomaly Warzone Earth』が、Xbox LIVE アーケードに満を持して登場!  プレイヤーは指揮官となり、特殊能力を駆使して勝利を目指す。戦略を練り、部隊編成とルート設定で困難な局面を打開していく。シミュレーションとアクションの融合に、世界中のゲームファンが胸を躍らせた名作。そのプレイインプレッションを、ライターの豊臣和孝がお届けする

 カジュアルゲームのなかでも一大ジャンルを築くに至ったジャンル“タワーディフェンス”。簡素なインターフェースでも奥深い戦略性が楽しめるとあって、またたくまに世界中のゲームファンに受け入れられていった。

 今回ご紹介する『Anomaly Warzone Earth』も、そうした“タワーディフェンス”にカテゴライズされるゲームだが、本作は単なるフォロワーではなく“逆転の発想”で作られている。一般的なタワーディフェンスはラインのようにルートを連なってくる敵を“迎撃”するが、『Anomaly Warzone Earth』はプレイヤー率いる地球軍が宇宙人の拠点めがけて攻め込むという、逆タワーディフェンスならぬ“タワーオフェンス”なのだ。

逆転の発想で作られたタワーオフェンス『Anomaly Warzone Earth』インプレッション_01
逆転の発想で作られたタワーオフェンス『Anomaly Warzone Earth』インプレッション_02
逆転の発想で作られたタワーオフェンス『Anomaly Warzone Earth』インプレッション_03
逆転の発想で作られたタワーオフェンス『Anomaly Warzone Earth』インプレッション_04
▲2018年、突如地球に落ちてきた巨大な宇宙船の残骸。落下地点に発生した巨大なエネルギードームの内部調査に向かうべく、プレイヤー率いる第14部隊はただちに現地に向かったのだが、そこで待ち受けていたものは……。

 すでにPCやiPhone向けにリリースされている本作だが、Xbox Live アーケード版はコントローラー向けに操作系を一新。Yボタンが戦略図、Xボタンが部隊編成、Aボタンがアビリティとアクション、Bボタンがキャンセル、RBが画面縮小、LBが画面拡大、RTとLTがスピードアップ(ゲームスピードの加速)、左スティックでマップ・メニュー・キャラクターの操作となっている。

 本作は、プレイヤーが操作する主人公キャラクターの指揮官(リーダーのようなもの)が存在する。設定されたルートに従って侵攻する味方戦闘車両と異なり、指揮官はマップ上を自由自在に動き回れる。このリアルタイムアクション要素と逆転の発想が、凡庸なフォロワーとは比較にならない楽しさを生み出している。

 プレイヤーこと指揮官は、目的地までの侵攻ルートを随時設定し、無事にたどり着くよう戦闘車両をリアルタイムでフォローしていく。最初に侵攻ルートを設定するが、プレイ中は“隕石や爆破で進路がふさがれる”、“新たな砲台が出現”など、さまざまなアクシデントが発生。そのたび、Yボタンで戦略図を開いて新たな侵攻ルートを設定していく必要がある。こう書くと「うわ、面倒くさそう」と感じるかもしれないが、実際は曲がり角や交差点といった“分岐ポイント”をきりかえていくだけなので、とても簡単だ。

逆転の発想で作られたタワーオフェンス『Anomaly Warzone Earth』インプレッション_05
逆転の発想で作られたタワーオフェンス『Anomaly Warzone Earth』インプレッション_06
▲侵攻ルートを設定すると、部隊はそのラインをなぞるように進んでいく。途中アクシデントなどが発生したときは、Yボタンで随時侵攻ルートを変更することになる。

 一方で、指揮官のリアルタイムアクションはゲームが進むにつれて忙しくなっていく。味方戦闘車両は、設定された侵攻ルートそって移動しつつ、ユニットごとに射程内にいる敵砲台を自動攻撃。このとき、指揮官は自ら囮(オトリ)になったり、回復、デコイ、煙幕などの“アビリティ”を駆使して戦闘車両の破壊を防がねばならない。ちなみに、全戦闘車両が破壊されるとゲームオーバー。直前のチェックポイントからリスタート、またはステージ最初から再開が選べる。

 戦闘のフォローだけでなく、味方航空部隊が落としていく補給物資(アビリティ)の回収も指揮官の大切な仕事のひとつ。本作はプレイ前に「イージー、ノーマル、ハード」の3段階から難易度を選べるが、ストーリー中盤以降あるいはパズルゲーム的に制作されているXbox LIVE アーケード限定モード“タクティカル トライアルモード”は、アビリティの効率的な運用が特に重要になってくる。

逆転の発想で作られたタワーオフェンス『Anomaly Warzone Earth』インプレッション_07
逆転の発想で作られたタワーオフェンス『Anomaly Warzone Earth』インプレッション_08
▲指揮官の役割は、とても重要。戦闘車両のフォローはもちろん、味方航空機が落とす物資(アビリティ)の回収など、ゲームが進むほど多忙になる。

 ちょっとダメージを受けた程度で回復させたり、たいした敵がいるわけでもないのにデコイ乱発などは、まさに自殺行為。部隊編成も重要で、余裕があるときは前後の車両をバリアーで守るシールドなどを必ずくわえておきたい。難易度に余裕があるときは趣味編成も可能だが、それ以外であれば徹底した効率化、すなわちバランス重視の編成とアビリティの節約は必須といっていい。

 ちなみに、回収して稼いだお金は各マップ限定で持ち越しは不可。一定額がたまったら戦闘車両を追加、あるいは即アップグレードすることをオススメする。

逆転の発想で作られたタワーオフェンス『Anomaly Warzone Earth』インプレッション_09
逆転の発想で作られたタワーオフェンス『Anomaly Warzone Earth』インプレッション_10
▲アビリティの使い方はとても重要。一見ムチャな侵攻ルートも指揮官のアイデア次第で突破できる。
逆転の発想で作られたタワーオフェンス『Anomaly Warzone Earth』インプレッション_11
逆転の発想で作られたタワーオフェンス『Anomaly Warzone Earth』インプレッション_12
▲左画像の中央やや上で光ってるのがお金で、近くを通ると回収できる。お金は戦闘車両の購入やアップグレードに使える。持ち越せないのでマップごとに効率よく使い切るべし。

適度なテンポとアクション性がたまらない、誰でも遊べる名作カジュアルゲーム

 シンプルなシステムゆえに、ブレイクと同時に雨後のタケノコのごとく安易なフォロワー作品が世にあふれ出た“タワーディフェンス”系。酷いものになるとコピー以前の劣化版といった代物も珍しくなく「しばらくコレ系はおなかいっぱい!」といった気分に陥っていた時期さえあった。

 そんな最中にあって……というか、そんな状況だったからこそ『Anomaly Warzone Earth』は多くのゲームファンに好意的に受け入れられた。リリース当時は「11 bit studios ……きいたこともないメーカーだなぁ」といぶかった筆者だが、丁寧なグラフィック、シンプルだがツボをおさえた操作性、絶妙なゲームバランスに、即どっぷりとハマってしまった。Xbox LIVE アーケード版はコントローラー操作に最適化されており、さらに遊びやすくなった感がある。

 逆からの視点という着想そのものは、とくに珍しいものではない。だが、それをハイレベルなエンターテインメントにまとめあげる丁寧な仕事とセンスは、誰もが備えているわけではない。アクション要素をくわえたアレンジも、本当に最適な範囲にとどめていると思う。センスがないディレクションでは、えてして「ガンガン攻撃させてみよう!」、「強力なユニットをDLCに!」など、蛇足を山盛りにして堅牢なベースを台無しにしてしまいがちだ。

 カジュアルゲームではあるが、難易度をハードにすればコアゲーマー向けに早変わり。気楽に遊びたい、あるいは「こういうジャンルは初めて」という人はイージーなど、幅広いユーザー層に対応する作りも好印象。「やたら忙しいゲームも嫌だけど、ただ眺めてるようなのも退屈だよね」という人には、本作をとくにオススメしたい。きっと“新たなお気に入りの1本”になってくれるはずだ。

■筆者紹介
豊臣和孝:フリーライター。ここ10年ほどはWebゲーム媒体メインで執筆中。ファミ通 Xbox 360ではインディーズコーナーを担当。


『Anomaly Warzone Earth』 (Xbox LIVE アーケード版)
メーカー 日本マイクロソフト
対応機種 X360Xbox 360
発売日 2012年4月6日
価格 800 マイクロソフト ポイント
ジャンル 戦略 & シミュレーション