不思議で不気味、クレイジーな世界観に引き込まれる
プレイヤーはかつて豪腕で鳴らした元ピッチャー。試合中の故障で利き腕を痛め、マウンドに立てなくなった主人公が再起するために立ち上がる……! これだけ聞くと王道のスポ根マンガのような設定だが、実際は違う。主人公は廃墟の遊園地“ドリームランド”にある“何でも願いをひとつ叶えてくれる”というお城を目指すという、ファンタジーの要素が強いのだ。城を目指す途中では不気味なマスコットたちが立ちはだかるので、彼らにボールを投げつけて撃退していくことになる。腕を壊した主人公が投球できるの? と思う人もいるかもしれないが、細かいことを気にしてはいけない。案内人のマスコットから渡されたガントレットを装着することで、動かせなかった腕が動くようになるのだから、何の問題や不正もない。ありがたい話だ。その代わりと言ってはなんだが、血まみれのマスコットたちは主人公を本気で殺しにかかってくるのが恐ろしいところ。案内人いわく、主人公は死んだら成仏もできずに怨念となり、ランドを彷徨い続けるようだ……。こうして生か死か、再起をかけた命がけのクレイジーな夜が始まる。
夢中になって腕を振るってしまう
ゲーム中は、実際に自分がボールを投げるように腕を振ることで主人公が敵にボールを投げつけてくれる。左側に腕を振るえば左に、右側に振れば右、真っ直ぐ振り下ろせば中央と、自分の腕の動きがダイレクトに反映される。野球ゲームではないので、フォークやスライダーといった球種こそないが、その代わりに前方の180度からつぎつぎと迫り来る敵をどの順番で倒していくかを考えることになるのが肝だ。最初こそ敵の攻撃が緩いので、漫然とボールを投げているだけでも何とかなる。しかしある程度ステージを進めると敵の数が増えて攻撃も激しくなるので、そういうわけにはいかない。敵がにじり寄ってくるが、なかなかその進撃を止めることができない。そうしていつしか眼前に不気味なマスコットがやってきて、手にした凶器を振り上げて……という瞬間を想像してほしい。これはなかなかのホラーだ。気がつけば「右、右、左、中央、右っ!」などと、迫り来る敵を倒す順番を頭で考えながら、必死に腕を振るってしまうことだろう。また、利き腕以外の手をかざすと照準が表示され、敵をロックオンできる。そうしてボールを当てるとヘッドショットになって大ダメージを与えられるので、こちらもうまく使いたい。照準をしっかり合わせるまでに時間がかかるものの、大ダメージを与えられるロックオンと、照準は必要とせずに素早く攻撃できる通常の投球、これらを使い分けていくのも楽しい。臨機応変な対応こそがピッチャーには求められる!?
魔球をはじめとした多彩なアクションが熱い
敵に一定以上攻撃を当てていくと、現実ではありえない“魔球”を投げることが可能になる。炎の球を投げて敵を火だるまにしたり、電撃をまとった一撃を放ったりと、魔球はじつにさまざまだ。どれも発動する際には、腕をバッと横に伸ばしたり、両手を頭上に掲げたりといった特別なポーズを取る必要があり、それがまさに必殺技という感じになっている。当然威力も高くて派手なので、投げたときの爽快感も大きい。とくに爽快だった魔球は、腕が大砲になる“キャノンボール”。腕を敵に向けて突き出すと、炸裂音とともに砲弾が撃ち出され、ロックした直線状にいる敵をまとめて吹き飛ばすというもの。通常の攻撃ではなかなか倒れないタフな敵が、ものすごい勢いで吹っ飛んでいく様子はクセになりそうだ。魔球全般に言えることだが、筆者は投球フォームを取る際に思わず「くらえ!」と言ってしまったり、力んでしまうことが多々あった。
魔球以外では、キックやキャッチといったアクションも熱い。キックはその名の通り、目前まで迫った敵を蹴飛ばす強力な技で、いわゆる緊急回避的なアクション。このゲームには防御がなく、目前まで迫った敵の攻撃を防ぐ術はキックしかない。しかしキックには使用回数制限があるので、そう気軽には使えない。寄られたら惜しまず使うか、ピンチの際まで温存するかはプレイヤー次第だ。
キャッチは敵がボールを投げてきたときにのみ使えるアクション。タイミングよく両手を前に突き出すことで成功する。ほかの敵に気を取られているときにボールが飛んでくることが多いので、なかなかハラハラするはずだ。また、中盤以降はキャッチできないノコギリを投げてくるようになり、これは実際にジャンプするか素早くしゃがんで回避することになる。反応が遅れると容赦なくザックリ斬られて大ダメージを受けてしまう。このスリルがたまらない。
気軽に遊べてよい運動にもなる!
本作には育成の要素も盛り込まれている。ステージを進めていくとべースボールカードやお金が手に入る。お金を支払ってベースボールカードを買うことで、新たな魔球を習得したり、主人公のステータスが上がったりする。どんな選手にするかはプレイヤーの好み次第なのだ。もちろん、強化をいっさいせずにストイックに戦うこともできる。
最後になるが、本作はお手軽価格でダウンロードできるゲームとはとても思えないほどのボリュームと作り込みがされているので、遊べる環境にある人には強くオススメしたい。1ステージの長さもほどよく、ほんの十数分のあいだで気軽にささっと遊べるのも魅力的。そして、とにかく投げたり飛んだりしゃがんだりすることが多いので、いい運動にもなると実感した。というのも、筆者は日頃の運動不足もたたって、プレイ後は軽い筋肉痛になってしまったほどだ。慣れないうちは、本物の野球と同じで、ピッチャーもといプレイヤーは投球制限を設けたほうがいいかも!?
簡単すぎず、かといって難しすぎでもない、ほどよい長さと難易度のステージで、適度な緊張感とバツグンの爽快感を味わえる本作。あなたも1度、ドリームランドを訪れてみてはいかがだろうか。
■筆者紹介 サテライト池澤
好きなものはゲームとカラオケ、そして惰眠も大好きなライター。テーマパークで夢中になって腕を振っていたおかげで、野球をやりたくなったり遊園地に行きたくなったりと、節操がない。
Diabolical Pitch(ディアボリカルピッチ) (Xbox LIVE アーケード版)
メーカー | 日本マイクロソフト |
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対応機種 | X360Xbox 360 |
発売日 | 2012年04月04日 |
価格 | 800 マイクロソフト ポイント |
備考 | Kinect(キネクト)専用タイトル 開発元:グラスホッパー・マニファクチュア |